ソードアート・オンライン〜二人の黒の剣士〜   作:ジャズ

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一昨日まで熱で寝込んでたジャズでございます。
寒くなってきましたが皆さんはお変わりないですか?
健康って大事。

さて、オリジナル回続きです。


十三話 黒白の兄妹

ジェネシス達の前に現れた謎のプレイヤー達。

 

「《黒白の、兄妹》…?」

 

ジェネシスは前と後ろのプレイヤーを交互に見た。

見た所、どちらも自分と同い年か年下に見える。

だが二人が使用しているのは、彼が約二年に渡るアインクラッド生活でも見たことのない武器だった。

 

前の黒い少年プレイヤーは、柄の両端から伸びる刃を持つ《双頭刃》。後ろの真っ白な女性プレイヤーはこの世界にあるはずのない射撃兵装、《弓》を使っている。

 

「ちょ、《黒白の兄妹》って……」

「最近この辺りのオレンジ達を狩りまくってるって言う、あのイカれた二人組かよ?!」

「く、《黒白の兄妹》…なんでこんなトコに?!」

 

オレンジ達は目を見開きながら少し後ずさる。

すると、双頭刃使いの少年が漸く口を開いた。

 

「……話す必要などない。お前達、この人達をあんな目に遭わせといてただで済むと思ってるのか?」

 

少年は静かに、そして冷徹な雰囲気を纏いながらそう言った。

 

「ひ、ひぃっ?!ま、待て!悪かった!もう俺たちは下がる!こいつらには手ェ出さないから!!」

 

片刃のブレード使いのオレンジがその剣を地面に捨て、両手を挙げながら情け無い声で降参の意を示した。

だが、

 

「……問答無用だ。お前達全員、ここで粛清する」

 

再度氷のような冷たさと怒気を孕んだ声でそう言いながら、少年は鋭い目つきで右手の双頭刃をプロペラのようにクルクルと回転させながらゆっくりと近づく。

そしてその回転は徐々に早くなっていき、やがてチェーンソーの様な高速回転となった。

その回転の風圧で、少年の周りにはまるで竜巻のように空気が渦巻いていく。

そして少年はその場から一瞬で上空に飛び上がり、回転する双頭刃を上に掲げる。

 

「ひ、ひいいぃぃぃっ!!」

 

オレンジ達はもう恐怖に慄き動くことも出来ない。

 

「ーーーっ!!」

 

少年は迷うことなく、その双頭刃を地面に着地すると同時に叩き込んだ。

その爆風で半径5メートルのオレンジ達が全て吹き飛ばされる。

 

双頭刃広範囲ソードスキル《スピニング・ダンス》

 

少年はジェネシスの方を向くとゆっくりと彼のそばに近づいて行き、

 

「……早くその子を連れて逃げて。ここは僕たちがやる」

 

耳元で静かにそう告げると、そのままジェネシスのそばを通り抜け次の標的を見定めた。

 

「く、くそっ!ならせめて、この女だけでも人質に……!」

 

その時、オレンジの一人がレインに向けて駆け出した。

どうやら彼女を捕まえて人質にし、交渉材料にするつもりのようだ。

だが彼に向けて一筋の光が直撃した。

直後大爆発が起き、彼は数メートル後方へ吹き飛ばされる。

 

見ると、どうやら白い弓使いの少女が狙撃したようだ。

 

「アタシを忘れてもらっちゃ困るわね」

 

そう言って少女は、もう一度矢を取り出し、弓の弦にかけてゆっくりと引く。

すると、矢が眩いエメラルドグリーンの光を浴びる。あれは間違いなくソードスキルの発動状態だ。

 

少女はそれを天高く虚空へと放った。

ヒューーンと言う甲高い音を立てながら矢は鮮やかなグリーンの尾を引きながら天へ飛翔していく。

が、ある程度飛んだところでそれは停滞し、緑色の球体となると暴発した。

そして今度は、無数の光の矢がまるで流星群の如く地に降り注ぐ。

至る所で小規模爆発が起き、中には緑の流星が直撃する者も。

 

射撃広範囲スキル《プラネタリウム・エクスプロージョン》

その名の通り、まるで夜空から流れる流星の如く無数の流れ星が降り注ぐ技。

 

しばしその光景に圧倒され続けていたジェネシスだったが、はっと我に帰ると急いでレインとティアを回収し、その場を離脱した。

 

「誰だかしらねぇが、助かったぜ。この礼は必ずするぜ、精神的にな!」

 

ジェネシスは少年の方を振り向くと、サムズアップしながらそう言った。

すると双頭刃使いの少年もジェネシスの方を向くと

 

「気にしないで。だって、困った時は助け合い、でしょ?」

 

と優しげな笑みでそう返す。

ジェネシスはそれに頷いて返すと、今度こそ撤退した。

 

ちなみに、山を降りる道中彼らの背後からオレンジプレイヤー達の悲鳴が響き続けたのはまた別の話。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

数時間後、なんとかレインの店に戻ってきた彼らは、自分達の窮地を救ったあの《黒白の兄妹》の話題で持ちきりだった。

 

「結局あいつら何者だったんだろうな?」

 

ジェネシスは店内に据え付けられた椅子に座りながらそう呟いた。

すると、彼の呟きに答えたのはレインだった。

 

「彼らは中層ゾーンで活躍してるプレイヤー達だよ。

主にオレンジプレイヤーや犯罪者ギルドと戦ってる」

 

そしてレインはゆっくりと語り出した。

 

少年の名は《サツキ》。《黒の双剣士》と呼ばれ、主に二本の剣や双頭刃を駆使して戦うプレイヤー。

もう一人、白の少女の名は《ハヅキ》。《純白の射手》と呼ばれており、この世界では珍しい弓使いの少女。

彼らはどうやら兄妹らしく、その実力もミドルゾーンの中では攻略組に最も近いプレイヤーと言われている。

 

「……オレンジ狩りか。まるで正義のヒーローのようだな」

 

ティアはレインの話を聞き、腕を組みながらそう呟く。

デスゲームであるこの世界では、プレイヤーはなるべくオレンジの出没地帯などは避けて活動している。

この世界に警察組織などは存在しない為、プレイヤー達は各々の身を自分で守らなければならない。

だがオレンジプレイヤー達はあらゆる搦め手を用いて一般プレイヤーを襲撃する。少し前の《タイタンズハント》のように一人のグリーンが獲物をオレンジ達が待ち伏せするポイントまで誘導する手を使ったり、今や壊滅した最凶の犯罪者ギルド《ラフィン・コフィン》などは様々なシステムの抜け道を見つけては新手の殺人方法で何人ものプレイヤー達を葬ってきた。

 

「勇気あるねぇ、あんなイカれたオレンジどもとやりあうなんざ」

 

ジェネシスも感心したように言う。

 

「それにしても…随分変わった武器を使っていたな、あの二人。双頭刃に弓……どちらもこの世界では見たことのない物だ」

 

ティアが顎に手を当ててそう疑問符を浮かべていると、

 

「……実はね、彼らにあの武器を作ったのは、私なんだ」

 

レインの思わぬ告白にティアとジェネシスは目を見開いた。

 

「最初は、作り方とか全くわからなかったから断ろうかと思ったんだよ。だってどちらもこの世界には無い武器だし。

でも、あの二人の顔見てたら……何もせずには居られなくなっちゃって……」

 

そしてレインは再び語り出した。

レインはサツキ達の依頼を受けた後、単身先ほどジェネシス達と訪れた無法地帯の五十九層の山へ向かったそうだ。

だが当然のようにレインはそこでオレンジと揉め事になり、結果レインはオレンジギルドに拉致されたそうだ。

彼女の鍛冶スキルの高さに目をつけたオレンジギルドの長はレインにギルドの武器を作るよう強要し、そこで軟禁状態となった。

 

そこへ駆けつけたのがあのサツキ達だったそうだ。

無論、オレンジギルド達はそれを許すはずも無く、総力戦を持ってサツキ達を追い込んだ。

その窮地を見て、レインは土壇場で大博打に打って出た。彼らの依頼の遂行だ。

 

レインはただ無心に、彼らのためを思って金槌を振り続けた。

 

そして奇跡は起きた。

 

眩くゴールドの光の中から現れたのは、完全新規の二つの武器。

 

双頭刃《ユナイティッドセイバー》

弓 《ルシファーズアロー》

 

その性能も今までレインが作ってきた武器達の中でも最高クラスの性能を誇る、素晴らしい武器だった。

 

サツキ達はそれを受け取ると、瞬く間にオレンジギルド達を一掃、そして見事生還したのだ。

以後、サツキ達はレインへの恩返しと称し、あの無法地帯である五十九層の山からオレンジプレイヤーを無くし、レインのような鍛冶屋が自由にアイテムを採掘できる場所を目指して活動している。

 

「へぇー、そいつぁ泣ける話じゃねぇか。なあ?」

 

「ああ。土壇場で完成した完全新規の武器。あの二人が羨ましくなるな……」

 

ジェネシスの意見にティアが同意して頷く。

 

「そ、そんな!私もあの時は無我夢中だったし……」

 

そこでレインはある事を思い出す。

 

「そうだ!サツキ達が助けてくれたおかげで、なんとかレア鉱石はゲットできたから、これで君達の武器が作れるよ!!」

 

そう言ってレインは、アイテム欄から二つの鉱石をオブジェクト化して机に置く。

眩く輝くゴールドの鉱石。《ゴルドクリスタルインゴット》。

 

「ほんとか!なら、ぜひ頼むわ!!」

 

ジェネシスが身を乗り出してそう頼むと、レインは笑顔で

 

「任せて!!」

 

と自信満々の笑みで返す。

 

そして3人はレインの作業場へ。

窯の中で熱せられた鉱石がマグマのように輝き、レインはそれを金床の上にゆっくりと置く。

 

「それじゃ始めるけど、どっちの武器から作る?」

 

「んじゃ、ティアの刀から頼むわ」

 

ジェネシスがそう答え、レインは「わかった」と返すとゆっくり深呼吸し、そして金槌を勢いよく振り下ろす。

 

カン!

 

カン!

 

という甲高い音が部屋に何度も木霊し、ジェネシスとティアはその様子を静かに見守る。

レインは真剣な眼差しで鉱石を見つめながら叩き続け、その表情は職人のそれだ。

 

そして叩く事数分。

 

ゴールドの鉱石が一層眩く輝きを放ち始める。

そしてゴールドのひかりはやがて、鋭く光る銀色へと変わっていき、鉱石の形状もあっという間に刀へと姿を変えた。

 

そして銀色の光が収束し現れたのは、それは見事な日本刀だった。

その刀身は光が止んでも尚銀の光を放ち続け、日本刀のシンボルとも言える波紋は美しい波を打っており、しかしそれでいてまるで獣の牙のような荒々しさも持っていた。

恐らく現実世界にあれば大業物の一振りに数えられるだろうと言えるほど、この刀の出来は素晴らしい物だった。

 

「名前は……《銀牙》。凄い、前にサツキ達に作った武器の性能とほぼ同等だよ…」

 

レインが刀の銘とその性能をメニュー欄を開いて確かめながら言った。

 

「ティア、試してくれる?」

 

「ああ」

 

ティアはゆっくりと銀牙を手に取った。だがこの状態の銀牙は茎が剥き出しになっているため持つことができない。

そこでティアはメニューから簡易の柄と目釘を取り出し、銀牙を嵌める。

 

そして、一閃。

 

ヒュン、という軽い音と共に銀の光が虚空を切り裂く。

 

「どうかな……?」

 

レインがおずおずとティアに尋ねる。

 

「……文句なし。最高の刀だ」

 

ティアは満足気に頷きながらそう答えた。

レインはそれを聞き飛び上がりそうになったが、それを堪えた。

喜ぶのはまだ早い。まだもう一つ残っている。

 

そう、ジェネシスの両手剣だ。

ここで彼の剣作りに失敗しては本末転倒である。

レインはもう一度意識を高め、集中力を極限まで研ぎ澄ます。

 

先ほどと同じ工程で、レインは剣を打っていく。

基本、いくら鍛治スキルが高いからと言っても剣の出来はランダムだ。

だがそれでも、レインは気持ちがあればきっといい剣が打てると信じてここまでやってきた。

あの時、サツキ達に打った武器のように、今回も必ず成功させる。

 

そうして打つこと数分。

再び先ほどと同じゴールドの光が部屋を包む。

 

そしてその光は、徐々に黒く染まっていき、所々赤い光を伴いながら禍々しいオーラを放ち始める。

その光景に圧倒されながらもレインはじっと金床の鉱石が変化する瞬間を見続けた。

 

四角い立方体のような大きさだったインゴットは、その質量に見合わないとんでもない大きさの大剣へと姿を変えた。

あまりの大きさに、下手な両手剣サイズはある金床を少しはみ出してしまっているほどだ。

 

禍々しい赤黒いオーラが収束し、現れたのは……

赤と黒の大剣。

グリップは白と深緑のラインで構成され、鍔の部分にはまるで目のような赤い丸の装飾が施されている。

 

見ているだけで攻撃的な、それでいて先ほどの《銀牙》と同じくかなりの名剣である事は一目でわかった。

 

「この剣の名前は、《アインツレーヴェ》。私が見たことのない名前だから、情報屋のリストにもこの剣は出ていないと思う。

試してみて?」

 

先ほどと同じく剣の情報を読み上げたレインはジェネシスに素振りを促す。

 

ジェネシスはその剣のグリップを握り、ゆっくりと持ち上げる。

 

ゴトンという鈍い金属音が少し鳴り、この剣の重さをその音だけで周りに伝える。当のジェネシス本人は顔色ひとつ変えずに、その大剣を片手で持っているが。

 

そしてジェネシスは、空いたグリップに左手を添えると、アインツレーヴェを一思いに思い切り振った。

 

直後凄まじい風切り音と突風が部屋の中に発生し、紙類や軽い武器などが部屋中に吹き飛ぶ。

 

「これは……凄い威力だな」

 

ティアがジェネシスの一振りを見て苦笑いで呟いた。

 

「けど、こいつぁいい剣だぜ。気に入った。やっぱおめぇに依頼してよかったわ、レイン」

 

ジェネシスはアインツレーヴェを肩に担ぐと笑顔でそう言った。

 

「ふふっ、こちらこそありがとう!そう言ってもらえると、鍛冶屋名利に尽きるよ」

 

その後二人は鞘を見繕ってもらい、新たに手に入れた剣を装備する。

 

ティアの新しい刀は鞘が白色となっており、まさに《白夜叉》の異名を持つティアにふさわしい刀となった。

一方ジェネシスの方は、前の剣と比べると更に一回り大きくなり、その背にある大剣を見るだけで見るものに威圧感と畏怖を与える見た目となった。

 

「……さてと、肝心の料金だな」

 

ジェネシスはメニューからトレード画面を表示しようとするが、レインがそれを制した。

 

「あ、お代はいいよ!今回はジェネシス達も一緒に素材集めに協力してくれたのもあるし」

 

「だが、それでは……」

 

食い下がるティアに、レインはこう告げた。

 

「なら、今後は私を君達の専属スミスにしてよ。攻略の後は、毎回メンテに来てね」

 

その答えに対し、ジェネシスは少し目を丸くしていたが、すぐに悪戯な笑みを浮かべ

 

「…なぁ〜るほどねぇ。ちゃっかりしてんな店長」

 

つまりレインは、今この場でのジェネシス達の売り上げを犠牲にする代わりに、今後彼らを常連に引き込む事で継続的な利益を得ようというわけだ。

 

「ふふっ。店の経営と言うのは、先を見据えることが大事ですから!」

 

レインは得意げな笑顔でそう答えた。

 

「流石、伊達にこのリンダースで鍛冶屋をやっている者は違うな」

 

ティアも笑顔でそう返した。

 

「……さて、もうこのまま帰っちまってもいいんだが……どうせなら、ここは一つ大仕事と行こうじゃねえか」

 

ジェネシスの突然の提案に、レインは疑問符を浮かべる。

 

「そうだな。まだ奴らに借りを返せていないし、どうせなら折角手に入れた新武器の性能……試すにはちょうどいい機会だろう」

 

ここでレインはジェネシス達のやろうとしていることに気づき、

 

「ま、待ってよ二人とも!君たちが関わる必要はないよ!」

 

「けど、あのオレンジどもをぶっ潰したらレインの今後の売り上げも増えんだろ?それに、あの黒白の兄妹さん達にも違う意味で借りを返せてねぇしな。

んま、テメェが何言おうと、どっちみち俺たちには黙って帰る選択肢はねぇんだ。安心しろ、テメェが魂込めて作った武器があんだ。そう簡単にやられやしねぇよ」

 

そう言ってジェネシスは店のドアを開けて外に出る。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

一方、黒白の兄妹達は終始オレンジ達を圧倒し続けていた。

 

「はあっ!!」

 

サツキの双頭刃が青い電流を帯び始め、放電現象を起こす。

そしてサツキはその場から一気に飛び出し、目の前のオレンジ達を目にも留まらぬ速さで斬り伏せていく。

 

双頭刃六連撃スキル《ライトニング・ソニック》

その名の通り雷の如く光速の速さで敵を叩き伏せるソードスキルだ。

 

「クソが、舐めやがって!!」

 

オレンジ達は逆上し一気にサツキに畳みかけようとするが、それは一筋の光によって阻まれた。

 

「ちょっと、さっきからアタシを放ったらかしにしないでくれる?」

 

そう言ってハヅキは弓の弦を思い切り引き、そして矢を放った。

その矢は徐々に青い狼の姿を形どり、獲物に噛み付くようにオレンジ達に直撃する。

 

射撃スキル《ウルフシューティング・ブラスト》

 

「ちくしょう!こんな奴ら相手に勝てるわけがねぇ!!」

「お前ら、逃げるぞ!!」

 

オレンジ達は形成不利と見て次々と尻尾を巻いて逃げ始める。

 

「待て!今日こそは逃さないぞ!!」

 

サツキはそう叫ぶと、双頭刃を水平に構えた。

すると、双頭刃の刃が徐々に冷気を帯びていき、そしてサツキはそれを思い切り横薙ぎに一閃した。

冷気を帯びた斬撃が逃げ惑うオレンジ達の足を捉え、拘束する。

その直後、オレンジ達は麻痺状態となって動けなくなった。

 

双頭刃ソードスキル《ブリザード・ゲイル》

相手に冷気を帯びた斬撃を浴びさせ、強制的にランダムで状態異常に陥らせると言うとんでもない技だ。

勿論、その分デメリットも多く、硬直時間が通常のソードスキルより長いのだが、今のサツキには大した問題ではない。

 

「……これで終わりよ」

 

ハヅキが冷たくそう言い放ち、弓を拘束したオレンジ達に向けて構える。

だが、その矢が放たれることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「残念でしたぁ〜、まだ終わりじゃ……ないのよっ!!」

 

突如ハスキーな男の声が響き、ハヅキの身は吹き飛ばされた。

そこに立っていたのは、人間離れした逞しい筋肉に緑色のモヒカン、そして不気味に引き裂かれた口から先端が二つに割れた舌が出ており、そのプレイヤーの異質さをこれでもかと見せつけていた。

そしてその肩に担いでいるのは、彼の体格以上の大きさを持つ巨大なハンマー。

 

「ハヅキ!!」

 

サツキは思わず吹き飛ばされた妹の名を呼ぶが返事はない。

 

「アララ、最近この辺でオレンジ狩りをやってる悪い子がいると聞いて来てみれば、アナタ随分と男前じゃな〜い、嫌いじゃないわ!!」

 

そのあまりにマッシブすぎる体格から出て来たのはまさかの女口調。どうやらこいつはオネェのようだ。

 

「貴様……よくもハヅキを!」

 

サツキは双頭刃を構えて男を睨みつける。

 

「んもう〜、そんな怖い顔しないでよ傷つくわぁ〜!!」

 

そして肩に担がれたハンマーを左右に振った後、地面に突き立てる。

 

「……でもアタシ、女には厳しいのよ?」

 

そう言ってサツキを睨み返した。

 

サツキは突如何かを思い出したように目を見開く。

 

「そうか…お前、この辺のオレンジプレイヤー達を仕切ってるって言う《ブルワーズ》の棟梁……『クダル・カデル』か!!」

 

オレンジギルド『ブルワーズ』

中層ゾーンで恐れられている大規模な犯罪者ギルド。殺人ではなく主に強奪や拉致と言った行為が主。

ラフコフが壊滅してからは更に勢力を拡大し、その被害はかなり甚大なものとなっている。

そしてそのブルワーズを仕切っているのが目の前のオネエ、クダル・カデル。大型ハンマー《ジャイアント・グシオン》を使用し、主に男性プレイヤーに対する拷問を趣味としている凶悪なプレイヤーである。

 

「あらぁ?アタシ結構有名人?うれしぃわあ〜♪まさかアタシのファンがいただなんて!」

 

陽気な声でそう言った後、

 

「……じゃあ、これからアタシと、い・っ・ぱ・い♪楽しいコト、しましょ?」

 

醜悪な笑みに変えて舌なめずりをしながら、ハンマーを引きずってサツキの方に歩み寄っていく。

 

その時だった。

 

何かがクダルの頬を掠め取った。

 

「おにい、ちゃんに……手を…出すな……!」

 

ハヅキだった。

弓を落としてしまっているため、ピックによる投擲攻撃を行ったのだ。

 

「……ふぅーん、まだそんなこと出来たんだ」

 

冷ややかな目でハヅキをにらみながらクダルは言った。

 

「でも、レディの顔に傷をつけた罪は重いわよん?

いいわ、まずはアナタから先に始末しましょうか!!」

 

そう言ってクダルは一瞬でハヅキの背後に回り込むと、再びハンマーを高く振りかぶり、それをハヅキに向けて振り下ろした。

 

「がっ……」

 

凄まじい衝撃がハヅキを襲い、そのまま数メートル先へ吹き飛ばされた。

 

「貴様あああぁーーーっ!!」

 

サツキは双頭刃を上段に構え、その場から上空へ飛び出す。

双頭刃の刃が徐々に炎を纏い始め、刃全体がメラメラと燃え始めた。

 

「うおおおぉぉーーーっ!!」

 

サツキはそのまま大車輪のように回転しながらクダルに向けて一気に降下する。

 

双頭刃ソードスキル《バーニング・ディバイド》

 

「そぉい!!」

 

だが、炎の大車輪はいとも容易く弾き飛ばされた。

サツキは成すすべなくハヅキと同じ場所へ落下した。

HPを確認すると、自分もハヅキも既にレッドゾーンに達しており、絶体絶命のピンチだ。

 

そんな彼らにクダルはハンマーを肩に担ぎながらゆっくり近づき、

 

「さぁてとアナタ達、兄弟仲良く……

逝ってらっしゃああぁーーーい!!」

 

片手棍ソードスキル《ストライク・ハート》を発動し、二人に向けて一気に振り下ろす。

 

だが、ハンマーが二人に命中する直前、クダルはハンマーごと吹き飛ばされた。

 

先程までクダルが立っていた場所には、サツキ達が先程出会った赤髪の男が肩に赤黒い大剣を担いだ状態で立っていた。

 

「よぉ、待たせたな」

 

暗黒の剣士(ダークナイト)》、ジェネシスが不敵な笑みを浮かべながらそこに立っていた。

 




今回色々な他作品ネタをぶっ込みました。皆さんは気づけたでしょうか?
それはそうとオリジナル回って書くの凄く難しい。
駄文になってないか凄く心配なのですが、大丈夫だったでしょうか?何かありましたら感想欄にてまた教えてください。



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