ソードアート・オンライン〜二人の黒の剣士〜   作:ジャズ

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どうも皆さん、ジャズです。
今回、いよいよ彼らが出ます。


二十三話 現実からの使者達

その日の夜、新たに最前線に来た仲間達との交流を深めるために全員で夕食をとった。

 

「あんたの剣、珍しいわね〜。どこで作ってもらったの?」

 

「この剣は四十八層にある『七色の武具店』と言うところで作ってもらったんです」

 

「ああ〜あそこね!主街区から少し離れたところにある隠れた名店!うわぁ〜、あたしもそんな武器使った事ないからなんか負けた気分だわ〜」

 

リズベットはサツキと彼が持つ双頭刃について語り合っていた。

 

「サチさんは、ジェネシスさんとどんな風に出会ったんですか?」

 

「私は、《月夜の黒猫団》って言うギルドに入ってるんだけど、私って凄く弱くて……そこで、ジェネシス達が戦い方を教えてくれたの。

シリカちゃんはどんな感じだったの?」

 

「あたしは、ピナが死んじゃった時にジェネシスさん達に助けてもらったんです。それで、ピナの蘇生アイテムが出る場所まで連れて行って貰って……」

 

「へえ〜、いいなぁ。なんだか正義のヒーローみたい」

 

「えへへ……そうですよ。ジェネシスさんは、あたしにとってはヒーローなんです」

 

「そっか〜…でもそれは、私も同じだよ」

 

シリカとサチは、想い人であるジェネシスとの出会いについて語り合い、頬を赤らめていた。

そんな彼女達を、ティアはなんとも言えない顔で見ていた。

 

「また随分と女の子が増えたね……」

 

「全く……只でさえ少ない女性プレイヤーが、よくもまあこんなに集まったものだな」

 

「あはは……ジェネシスさんもキリトさんも人気者なんですね……」

 

アスナも目の前で各々会話を楽しむ女性プレイヤー達を見て苦笑し、ティアも呆れたような顔で呟く。ハヅキもそれに便乗する。

 

「それでクライン、『森に妖精が出る』って言うのはどう言う事なんだ?」

 

一方キリト、ジェネシス、クライン達は、最近出てきたとある噂について語り合っていた。

 

「ああ、俺も噂で聞いただけだから確証は無いんだけどな。

なんでも、北西の森の中に、背中に小さな翅が生えた妖精のようなNPCがいる、らしいぜ」

 

「らしい?そりゃどう言う意味だ?」

 

「NPCにしちゃおかしいらしいんだ。誰かを探してるみたいなんだが、一言喋りかけたらどっかに行っちまうみてぇなんだよ」

 

「なるほど……」

 

クラインの説明に、キリトは納得したように頷く。

 

「あーそれとな、もう一つ奇妙なプレイヤーの噂があるぜ」

 

するという今度は、追加の料理を持ってきたエギルが切り出した。

 

「奇妙なプレイヤー?」

 

「ああ。そいつは男性プレイヤーなんだが……戦闘スタイルが常軌を逸しているらしくてな」

 

「常軌を逸している?どんな風に?」

 

キリトが疑問符を浮かべながらたずねる。

 

「まずそいつは、武器を使わねえらしい。主に格闘スタイルで戦うそうだ。手持ち武器は円形の盾だけ。しかもそいつは、盾を防御のために使うだけじゃなく、ブーメランみてぇに投げて戦うらしい」

 

「いや何そのアメコミのヒーローみたいな戦い方」

 

エギルの説明にジェネシスは思わずそう言った。

 

「SAO内で格闘か……もしかしたら、新手のユニークスキル使いか?」

 

「あり得ねえ話でも無いな。この世界の体術スキルは最高まで上げてもこの七十六層レベルのモンスターとは戦えねえ。恐らくは、その体術スキルの上位互換的なユニークスキルだろうな……」

 

キリトの予測にクラインが頷きながら言った。

その二人のプレイヤーについては翌日調査することに決め、彼らの会談はお開きとなった。

 

 

 

〜翌日〜

 

 

予定通り、キリト・ジェネシス達は例の謎のプレイヤー達の調査に乗り出した。

キリト・アスナが妖精プレイヤー、ジェネシス・ティアがおっさんプレイヤーを捜索する事になった。

 

鬱蒼とした森林の中、道無き道を彼らは進んで行く。

 

「いやいやこんな森のど真ん中にプレイヤーなんていんのか?ガセネタに引っかかったとかじゃねえよなぁ?」

 

ジェネシスが茂みを払いながらうんざりした様子で呟く。

 

「確かに……こんなところにプレイヤーなんて入りそうに無いんだけどなぁ〜」

 

ティアも茂みを鬱陶しそうに払いながら進む。

既にこのエリアを調査してから数十分が経過していた。

だが、例のプレイヤーらしき姿は愚か、人影すら見える事もない。

 

「はぁ〜……ったく、もういいや。帰ろうぜ。どーせそんなおっさんなんていっこねえよ」

 

ジェネシスはもう飽きた様子で元来た道を帰ろうと振り返った。

しかしその時、少し離れたところから戦闘の音が響いた。

 

「ん?この音って……」

 

「誰か戦ってんのか?」

 

「もしかして、例のプレイヤーかも!」

 

そう言ってティアは音のする方向へ走り出した。ジェネシスもその後を慌てて追いかける。

 

その音がしていた場所は、ジェネシス達がいた場所から数メートル先だった。

 

彼らが見たのは、一人の男性プレイヤーが三体のモンスターに囲まれているところだった。

その男性は、グレーの民族衣装のような服に茶色のマント、そして焦げ茶色のフードを被り、左手に持っているのは円形シールド。おそらく彼が噂のプレイヤーなのだろう。

ジェネシスとティアはその男性の救援に向かおうと剣の柄に手を掛けた直後。

一匹の狼型モンスターが男性に向かって突進して行った。その鋭い牙をむき出しにし、男性に噛み付こうとする。

 

だがその時、男性の右拳がゴールドのライトエフェクトを纏う。

そして男性は、その金に輝く右拳で狼の左頬に向けて思い切り殴りつけた。

それによって狼はゴロゴロと転がりながら後ろの大木に衝突し、そしてその身をガラス片に変えて消滅した。

 

「マジかよ…?」

 

「い、一撃で……?!」

 

ジェネシスとティアはその光景に思わず戦慄した。

何せあの男は今、最前線のモンスターをたった一撃で葬り去ったのだ。

 

しかし戦闘はそれで終わらない。

 

今度は男性の背後にいる人型モンスターが両手で構えた大鎌を振り下ろす。

しかし、それと同時に男性の右足に青い電流が走り、鎌が振り下ろされると同時に男は振り向きざまに上段回し蹴りを放った。

男性は振り向いたタイミングも相まって見事に鎌を避け、そして彼の右足は見事にモンスターの頭部を直撃させた。

 

モンスターはそれによって後ろに仰向けになって倒れ込み、直後爆発四散した。

 

残る一体は男性の戦闘能力の高さを察したのか、その場から慌てて駆け出す。

しかし男性はそれすらも逃すまいと、左手の円形シールドを投げつけた。

 

そのシールドはモンスターの足に命中し、一瞬動きを止める事に成功する。

その先に男性はその場から数歩駆け出して前方に飛び上がり、右足を突き出して飛び蹴りを放った。

 

その蹴りは見事にモンスターを捉え、その攻撃を受けてモンスターは爆散した。

 

目の前で繰り広げられた無双にジェネシスとティアはしばし呆気に取られていたが、

 

「い、いやぁ〜!実に見事な戦いっぷりだったなぁ〜!あんた、見ない顔だけどいつこの層に来たんだ?」

 

ジェネシスは引きつった顔のまま男に近づいていく。

男性はその声でジェネシス達の方を振り向く。

だが、彼はティアの顔を見た瞬間目を見開き、

 

「オイイイィィィィー!ようやく見つけたぞ雫ううぅぅぅ!!!」

 

ティアに向かって勢いよく走りだし、彼女の両肩を掴んだ。

 

「え…えぇ?」

 

ティアは完全に戸惑った表情をしている。

 

「おいちょっと!女に気安く触れるんじゃねえよ」

 

ジェネシスは呆れた顔で男をティアから引き離す。

 

「おいコラァ!!てめぇどこの馬の骨か知らねぇが、そっちこそ何で雫と一緒にいやがる!!」

 

「何でってそりゃあ俺がこいつと付き合ってるからに決まってんだろうが!」

 

「んなっっ?!雫、それは本当なのか?!」

 

男は驚いた顔でティアの方を見る。

 

「え?ええと……まあ、はい……」

 

「ガッッッ?!」

 

ティアにそう尋ねられると、男はショックを受けた様子で地面に蹲った。

 

「そ、そんなバカな……俺が2年も見放していたうちに、いつのまにか彼氏ぃ?!」

 

そして勢いよく立ち上がり、ジェネシスの胸ぐらを掴んでブンブンと振り回す。

 

「おいテメェ!!人の親が見てない隙に、何勝手に付き合ってんだコラァ!! 」

 

「ちょっとちょっと落ち着いて!というか、貴方誰なんですか?!」

 

ティアが男とジェネシスの間に入って慌てて止める。

 

「だ、誰だとぉ?!俺だよ雫!お前のお父さん!《一条 光実》だよ!!」

 

「えっ…………?」

 

その瞬間、ジェネシスとティアは硬直した。

 

「《一条 光実》って………えええぇ?!」

 

「お……お父さんんんんんん?!!」

 

「やっと分かったか、雫」

 

男は安堵した顔でフードを外す。

その瞬間、髪の毛のない光沢のある頭が露わになった。

 

「ほ、本当にお父さんなの?」

 

ティアが疑り深い目で男ーーーー《ミツザネ》を見つめる。

 

「なっ、何でそんなに疑い深いんだ!」

 

「だ、だって私の知ってるお父さんは……そんな禿げてないし」

 

「なっっ?!は、ハゲてなんかねぇ!!ちょっと娘と一緒にゲームの世界に囚われただけだあ!!」

 

「言い訳無茶苦茶過ぎんだろ……」

 

ジェネシスは呆れた顔でツッコミを入れた。

 

「で、でも……そんなの信じられないよ。お父さんがこのSAOの中にいるなんて……」

 

「あ、それなら定番のアレやったらいいんじゃね?」

 

にわかに信じられない様子のティアに、ジェネシスが手を打って提案する。

 

「身内の人間じゃなきゃわからないような暴露話。つうことでお義父さん、何かこいつの恥ずかしい話とか無い?」

 

「てめぇにお義父さんと言われる筋合いはねぇ……まあしかし、雫の暴露話か……。

ああそうだ、とっておきのがあるぜ。昔、こいつが小学二年生の時にな……」

 

その瞬間、ティアは目を見開いて

 

「わぁーーーーっ!!ちょっと待って!!それだけはだめぇぇーー!!分かった、信じる!信じるから!!お父さんだって認めるからああぁぁーーーー!!!」

 

ティアが必死になってミツザネの口元を押さえつけた。

 

「おいおい落ち着けよティア。まだ何も聞いてねえし」

 

「それ久弥が私の恥ずかしい話聞きたいだけだよね?!」

 

「ああその通りだ。だからおめぇは大人しくしとけって」

 

「いやあぁぁぁぁ!!!」

 

ジェネシスが無理矢理ティアを引き離し、そして尚も抵抗するティアを押さえつける。

 

「それでお義父さん、続きは?」

 

「あ、うむ。その時にな…………」

 

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!!!

 

 

 

〜数分後〜

 

 

「──────いやぁ〜笑った笑った♪ティア、お前そんなことあったんだなぁ〜w」

 

ジェネシスは一頻り笑い終えた後呼吸を整え、背を向けて蹲るようにいじけて座るティアの肩をポンと叩いた。

 

「うるせー…バカ…あほ……」

 

ティアは顔を真っ赤にして頬を膨らませ、涙目でジェネシスを睨みながら言った。

 

「そんで、この人の事お父さんって信じるか?」

 

「もーとっくに信じてるよ……」

 

ティアは尚も不貞腐れた態度で答えた。

 

「しかしそれより気になっているんだが……お前さん、一体何者だ?」

 

するとミツザネがジェネシスの方を向いて尋ねた。

 

「あー、俺は《ジェネシス》。まあ一応、こいつのパートナーやらせてもらってまーす。リアルの名前は《大槻 久弥》っす」

 

「大槻……久弥……ああ、娘をイジメから助けてくれたって言う久弥くんか!そうかそうかぁ!前々から礼を言いたいと思ってたんだが、まさかこんなとこで会えるとはなぁ!」

 

ミツザネはジェネシスの正体を知るや優しげな笑顔でジェネシスの肩をポンと叩いた。

 

「……しかし、娘と付き合ってるっつうのは本当なのか?」

 

「付き合ってるじゃなくてもう結婚してるよ」

 

すると蹲っていたティアがミツザネに向けてそう言った。

 

「なっっっっ?!!ちょ、ちょっと待って!付き合ってるとかそんなんじゃ無しに……け、結婚んん?!」

 

その瞬間、先程までの優しげな顔から一気に怒気を孕んだ顔でジェネシスの首を掴み、

 

「おいぃ!!娘を助けてくれたのは感謝してるが、それとこれとは話が別だ!!!

てめぇ!!親の許諾無しに勝手に結婚とかどう言うつもりだコラァ!!」

 

「ちょ、落ち着けよ!結婚って言ってもゲーム内での話!!実際に結婚とかまだしてるわけじゃねえから!機嫌なおしてくれよお義父さん!!」

 

「てめぇにお義父さんなんて呼ばれる筋合いはねえぇぇ!!!」

 

その瞬間、ミツザネの拳がジェネシスの左頬を直撃した。

 

「てんめぇ!!殴りやがったな?!親父にも打たれた事ねぇのに!!」

 

ジェネシスは左頬を抑えながら叫ぶと、ミツザネに掴みかかった。

そこから二人の男たちの取っ組み合いが始まった。

 

しかし数秒後、彼らの目の前を銀の光が一閃した。

 

二人が見ると、ティアが立ち上がった状態で刀を持っていた。

そしてその切っ先を二人に向けるとニコッと笑い

 

「……とりあえず街に帰ろうか?」

 

と優しい口調で言った。

しかし優しげな顔と口調ではあるが、その表情や仕草からはとてつもない怒気を放っているのがジェネシスとミツザネにも感じられた。

 

「え、えっと〜、ティアさん?」

 

ジェネシスは引きつった表情でティアに話しかける。

 

あ゛あ゛っ?

 

その瞬間、ティアはかつてない鋭い視線をジェネシス達に向けた。

その覇気に押され、男たちは黙って待ちの方まで歩いて行った。

 

 

 

 

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街まで戻り、ジェネシスはミツザネをエギルの宿屋へと連れて帰った。

 

ドアを開け、大広間に入ると

 

「あ、お帰りなさいパパ!」

 

ジェネシス達の娘、レイが銀の長髪を揺らしながらジェネシスに向かって駆け出した。

 

「よぉ〜、いい子にしてたかレイ?」

 

「もちろんですよパパ!ユイと一緒にお留守番をしてました」

 

「そうかそうか。偉いぞ〜」

 

ジェネシスは優しくレイの頭を撫で、レイはそれを満足げな笑顔で受けている。

しかしここでレイがあることに気づく。

 

「あの、パパ」

 

「ん?どうした」

 

そしてレイはジェネシスの後ろを指差し、

 

「この男の人は誰ですか?」

 

「ああ〜そうだ、紹介するよレイ。この人は──────」

 

その瞬間、ジェネシスは後ろからとてつもない殺気を感じた。

恐る恐る振り返ると、そこには両目を目一杯開かせて、顔を真っ赤にして怒り心頭の表情をしているミツザネが。

 

「あ、あの〜お義父さん?何か勘違いしてるみたいですけど、こいつは……」

 

ジェネシスが慌ててミツザネにレイの事を説明しようとするが、その前にミツザネがジェネシスの顔を片手で掴んだ。

 

……おい。“パパ”ってどう言う事だ?このゲーム、そんな淫らなことになってんの?

《SAO》って、“竿”って意味なの?!

終わらせちゃってもいいかな?おじさん、このゲームが終わる前に君の人生ゲームオーバーにしちゃっても良いかな?!」

 

威圧感のある低い声でそう尋ねるミツザネ。

ジェネシスの頭を掴む手からはミシミシと言うサウンドエフェクトが鳴っている。

 

「ちょ、ちょっとお父さん落ち着いて!この子は私たちの子供だけどそうじゃ無いと言うか…」

 

「やっぱり雫の子供じゃねえか!!見ろこの銀髪を!!完全に雫の遺伝子受け継いでんじゃねえか!!完全に雫の子供じゃねえか!!!」

 

ティアの説明で更にヒートアップしてしまったミツザネ。

そんな彼をティアはなんとか宥め、それをレイが不思議そうな顔で見つめると言う光景が数分続いた。

 

 

 

 

 

 

 

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「成る程、つまりこいつ……レイちゃんは、お前達の養子、みてえな感じって事か」

 

漸くレイについての説明を終え、落ち着きを取り戻したミツザネは納得したように頷く。

 

「初めましてミツザネさん。パパとママの娘、レイと言います」

 

レイはミツザネに向かって礼儀正しくお辞儀をした。

 

「ほう、これは驚いたな。お前さん本当にプログラムかい?いや、そんなことは重要じゃねえわな……

こちらこそ初めましてだな、レイちゃん。俺はお前さんのママの親父である、ミツザネだ。よろしくな」

 

ミツザネは優しげな口調でレイに自己紹介をした。

 

「ミツザネさんはママのパパ……つまり、私のおじいちゃんって事ですね!」

 

「んん?まあ、そう言うことになるな」

 

するとレイがテーブルから身を乗り出して

 

「じゃあじゃあ!ミツザネさんの事は、これからおじいちゃんって呼んでもいいですか?」

 

「お、おじいちゃん?

…ああ、まあ構わねえよ」

 

するとレイは満面の笑みで

 

「わぁーい!おじいちゃん、これからよろしくお願いします!!」

 

そしてミツザネに抱きついた。

するとミツザネはレイを抱き上げると涙目になり、

 

「くっ……まさか四十代で孫の顔を見ることになるとは……」

 

しかしどこか嬉しそうな顔でレイを見つめていた。

 

「にしても、まさか例の男性プレイヤーがティアのお父さんなんてな……」

 

その様子を遠くから眺めていたキリトが思わずそう呟いた。

 

「俺もいつか、アスナのお父さんに会うときが来るんだよな……」

 

「大丈夫だよ。お父さんならきっとキリトくんを認めてられるわ」

 

「そうだと良いんだけどな」

 

キリトはアスナの言葉に苦笑しながら答えた。

 

「あの〜……お兄ちゃんとアスナさんってどんな関係?」

 

するとキリトの隣に座っている金髪ポニーテールの少女がおずおずと尋ねた。

 

「どんな関係って……まあ、一応恋人同士になるのかな」

 

「へ、へぇ〜」

 

キリトがそう答えると、その緑の少女は苦笑いになった。

 

「んで、キリト氏。その金髪ポニテ巨乳美少女が例の妖精ってわけかい?」

 

ふとジェネシスがキリトの方を向き、少女の方を指差しながら尋ねる。

 

「あ、ああ……どう言う因果か、こっちも俺の身内でな……名前は《リーファ》。リアルでの俺の妹なんだ」

 

「は、初めまして。《リーファ》と言います」

 

少女ーーーーリーファはジェネシスに向けてぺこりとお辞儀をした。

 

「おう、こちらこそよろしく頼むわ。

んで、そっちのもてめぇの知り合いか?」

 

そう言ってジェネシスはテーブルの角を指差す。

そこには黒髪のクールな雰囲気を放つ少女が腕を組んでなんとも言えない顔でこちらを見ていた。

 

「ああ、この子は違うんだ。名前は《シノン》。急に空から落ちてきてさ」

 

「いやいや何その登場の仕方。『親方!空から女の子がぁ!!』ってか?ここは『天空の城ラ◯ュタ』ですか?

……そう言えばここもある意味ラピ◯タだわな」

 

「『天空の城』じゃなくて『浮遊城』なんだけどなここ」

 

ジェネシスの言葉に対しキリトがやんわりとツッコミを入れる。

 

「ところで……リーファにシノンさんだっけ?あんたらは何だってこんなデスゲームにわざわざ来たんだ?」

 

「私は元々、ALOって言うゲームで遊んでたんです。そしたら、いきなりここに飛ばされて……」

 

「私は……ごめんなさい、少し記憶が飛んでるみたいなの」

 

リーファは困惑した表情で答え、シノンは目を伏せながらそう告げた。

 

「リーファは何故かここに飛ばされて、シノンに至っては“記憶にございません”ってか。全く、不運すぎて同情するぜ……」

 

「そう言えば、ミツザネさんは何でここに来たんだ?」

 

キリトが未だにレイを抱き上げているミツザネに問いかけた。

 

「俺は現実では総務省のトップ兼このSAO事件の対策本部長でな。内部調査という事でログインしたんだ」

 

「総務省のトップ?!それって凄く偉い人じゃ……」

 

「そんな大層なもんでもねぇさ。

前々からこのゲームに入って内部調査する案は出てたんだが、何せここはデスゲームだからな。リスクが大きいから中々踏み込めなかったのさ……

だが先日、このSAOサーバにハッキングかました馬鹿野郎がいやがったんだ」

 

「は、ハッキングだって?!」

 

ミツザネから告げられた衝撃の言葉にキリトは目を見開いた。

 

「ああ。その影響もあって、このゲームの根幹を成すシステムが大幅にダメージを受けてな。お前さんたちなら既に心当たりがあるだろう?」

 

そこで思い出されるのは、この七十六層に上がった時に起きたいくつもの不具合。レイやユイの報告でカーディナルシステムに不具合が生じていたことは既に把握していたが、まさかそれがハッキングによるものだったとは……

 

「でも、総務省のトップがログインする事も無いだろう?それこそ、そう言うのは部下とかに任せておけば……」

 

「そんな事出来るか!部下をこんな危険な場所に行かせられる訳がねぇだろ!!」

 

キリトの言葉に対し、ミツザネは目を血走らせながら叫んだ。

 

「お父さん、本音は?」

 

「愛しの雫ちゃんが心配だからに決まってんだろうがコラアアアァァーー!!!」

 

するとここでリーファはミツザネに

 

「あ、あの〜、ミツザネさんってALOやってたりします?」

 

と尋ねる。

 

「ALO?ああ、まあ暇つぶしにやってたが。ちなみにこのキャラクターデータも、ALOのものをコンバートしたもんだ」

 

「や、やっぱり!!」

 

それを聞きリーファは勢いよく立ち上がりながら叫んだ。

 

「お、おいどうしたんだよスグ?」

 

妹の様子にキリトが訝しんだ表情で尋ねた。

 

「ALOはいろんな種族間で闘争があるんだけど、ミツザネさんはそこで《星海坊主》って呼ばれてて、世界最強のプレイヤーなんだよ!」

 

その瞬間、キリトとジェネシスの目が見開かれた。

世界最強──────その称号は既に彼らも持ち合わせている。

しかし目の前の男はこことは違う別の世界で最強の名を持っている。

 

「《星海坊主》……そういや向こうじゃ、そんな名前で呼ばれてたな」

 

ミツザネは遠く懐かしむような顔で呟く。

 

「なあ、ミツザネさん……一つ頼みがあるんだが」

 

ここでキリトが不敵な笑みを浮かべながら尋ねた。

 

「……何だ?まさかお前さん、俺と戦えって言うつもりか?」

 

「まあ、本音を言えばそうなるな。ALO最強の強さがどんなものか、ゲーマーなら知りたくもなんだろ」

 

ミツザネの問いに対しジェネシスも好戦的な笑みを浮かべながら答えた。

 

「世界最強……俺は別にそんな称号に興味はねぇがな………

まあ、上等じゃねえか。このデスゲームをここまで導いてきたお前さん等の力、見せてもらおうじゃねえか」

 

そう言ってミツザネは立ち上がり、ジェネシス・キリトもそれに続いて大広間を後にし、アークソフィアの広場へと向かう───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。
原作には無かった保護者の参戦。しかもそのモチーフが銀魂のキャラ……前回はサイタマかと言う予想が感想欄で出てましたね。まあある意味ワンパンマンですがw
自分、星海坊主めっちゃ好きなんですよ。めっちゃかっこいいじゃないですか彼。
CV速水奨さんって言うのもいいですよね。超イケボ。
ミツザネのCVも速水奨さんでやって頂ければ。
実は今後、もう何人か銀魂モチーフのキャラを出していくつもりです。

評価、感想などお待ちしております。

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