ソードアート・オンライン〜二人の黒の剣士〜   作:ジャズ

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どうも皆さん、ジャズです。
予告していた通り、今回は咲野皐月氏の作品《異世界はスマートフォンとともにIF》とのコラボ回、その前編となります。


三十一話 ☆コラボ回前編〜withイセスマIF(作:咲野皐月氏)〜異世界からの使者

 

ここは、0と1の数字で構成されたVRMMOとは異なる、完全な異世界。

自然が織りなす景色が美しく、活気あふれる街の中心には大変豪壮な西洋風の城がそびえ立つ。

その一室。豪華な城の見た目とは裏腹に、かなり質素と言える部屋の中に、少年は一人ソファーで優雅な体制で座っていた。少年はただ一点を見つめている。その視線の先にあるのは、右手に握られた我々現代人にもお馴染みの電子機器、スマートフォン。

彼の名は《盛谷 颯樹》。とある事情により、いわゆる『異世界転生』というものを経てこの世界にやってきた人物だ。

 

しばらくすると彼の部屋のドアをノックする音が響く。

そしてドアが開かれ、一人の少女が姿を表す。金髪のロングヘアに翠色と碧色のオッドアイが特徴的な少女だ。

彼女の名は《ユミナ・エルネア・ベルファスト》。ベルファスト王国の王女であり、颯樹の婚約者でもある。

 

「颯樹さん、お時間ですよ」

 

「ああ、今行くよ」

 

颯樹はゆっくり立ち上がり、ユミナに促されながら部屋を出て、階段を降りる。

その先のロビーでは、すでに複数の少女達が彼を待っていた。

 

「待っていたでござるよ、颯樹殿」

 

和服の少女、《九重 八重》。

 

「遅いわよ!」

 

「おはようございます、颯樹さん」

 

銀髪ロングの少女と、同じく銀髪でショートの姉妹、《エルゼ・シルエスカ》と《リンゼ・シルエスカ》。

 

「やっとおいでになられたのですね、颯樹様」

 

薄めの緑色の髪の少女、《ルーシア・レア・レグルス》

 

「レディ達を待たせるなんて、男としてどうなの?颯樹くん」

 

やや不機嫌そうにいうのは、紅い長髪を後ろに束ねた少女、《アヤナ・カーディナリア》。

以上5名の少女達は皆、颯樹の婚約者の少女達だ。

 

颯樹は皆をゆっくり見回したあと、

 

「……よし、行こうかみんな!」

 

「「「「「おーー!!」」」」」

 

彼らは今からとあるクエストを受けに行く。

これから彼らを待ち受ける冒険はどのような物なのか、そんな期待を胸に、彼らはその扉を開け歩みを進めた。

 

「────?」

 

が、一歩足を進めたその瞬間、颯樹は突如として首を傾げて足を止めた。

何かがおかしいと感じた。違和感は体の内から発生していた。体調が悪いのかと言うとそうでは無い。何か……体内の魔力が乱れている感覚がしたのだ。

 

「颯樹さん、どうかされたのですか?」

 

ユミナが颯樹の様子に気づき、振り向いて尋ねる。

颯樹はそれに対して優しげな微笑を浮かべ、

 

「……大丈夫。何でもないよ」

 

と答える。

きっと気のせいだ、と彼は違和感についてそう片付けた。

今日もいつも通り、何の問題もなく進む筈……そう信じていた。

 

「颯樹くん、それじゃいつものアレ頼むわよ!」

 

アヤナが颯樹をそう急かす。

 

「わかった、ちょっと待っててくれ」

 

颯樹はそう言って右手を前に差し出す。

 

「《ゲート》!!」

 

これは任意の場所に転移できる便利な魔法。簡単に言うなら《どこでもドア》だ。

これで彼らの目的地へと行くことができる────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────が、今日の《ゲート》は何かがおかしかった。

いつもならオレンジの輪と共に目的地の景色がリング状に見る事が出来る。

しかし今日は、リングの向こうに景色が見えるどころか、リングの中はブラックホールのような禍々しい黒い渦が巻いている。

全員がその光景に絶句した。

 

「あの……颯樹殿、これは一体……」

 

「ぼ、僕にも何が何だか……」

 

その時だった。黒い渦から凄まじい暴風が発生し、彼らを引き込み始めたのだ。

 

「うわあぁぁーーっ!!」

 

「ちょ、ちょっと颯樹くんー!!」

 

「こ、これは一体何なのですかーー?!!」

 

「ぼ、僕が聞きたいよーーー!!」

 

そして彼らはなす術もなく渦へと吸い込まれ、そこから姿を消した。彼らを吸い込んだ渦はやがて消滅し、辺りは静寂が訪れた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

場所は変わって、ここは0と1のデータで構成されたVRMMO《ソードアート・オンライン》の世界。

七十六層《アークソフィア》にある大きな宿屋のリビングで、ジェネシス達一行は歓談をしていた。

 

「……今日はホロウエリアにでも行くか」

 

「おっ、そりゃいいな」

 

ジェネシスの言葉にキリトが乗ったとばかりに言った。

そうと決まれば話は早い。早速彼らは立ち上がり移動を始めた。

 

「ちょっと待った」

 

すると彼らを引き止める者が現れた。

彼らの嫁、アスナとティアだ。

 

「私たちも行く」

 

「ホロウエリア見たいな危ない場所に、キリトくん達だけで行かせられないわ」

 

「な、大丈夫だよ。別に俺たちだけでも……」

 

キリトは彼女らの同行を遠慮する素振りを見せるが、

 

「ともかく!行くと言ったら行きます!」

 

「それに……挨拶しなきゃいけない奴もいるしな」

 

意見を曲げないアスナと、何故か闘争心剥き出しのティアがそう言った。

ここまで来たらどんなに拒否しようとアスナとティアはしがみ付いてでも付いてこようとするだろう。

 

キリトとジェネシスは観念して彼女達を連れてホロウエリアに行く為転移門へと足を運んだ。

転移する前に、以前そこで出会ったフィリアとツクヨに会う為連絡を入れ、いよいよホロウエリアへと向かう。

 

「うし、んじゃ行くか」

 

「ああ」

 

「「転移《ホロウエリア》」」

 

その瞬間、四人は青白い光に包まれ姿を消した。

 

彼らの視界に映るものが西洋風の街並みから一転し、プラネタリウムのような天井に様々な電子の文字列やデータが常々表示される場所に変わる。

 

「ここが、《ホロウエリア》…」

 

「そう。ここはその《管理区》だよ」

 

辺りを見回しながら呟くアスナに対し、後ろから少女の声が響く。

振り向くと、そこにはオレンジの髪に青いポンチョを身につけた少女と、長身でキセルを咥え金髪のショートヘアに和風の衣装で身を固めた女性が立っていた。

 

「フィリア!ツクヨ!」

 

キリトが彼女達の名を呼ぶ。

 

「フゥ…全く、こんな所に自ら飛び込んでくるとは呆れた奴らじゃのう」

 

ツクヨはキセルの煙を吐いたあとそう言った。

 

「済まない、ちょっと時間が空いちゃったな」

 

「ううん、全然平気。こっちはこっちでホロウエリアの事とか調べてたから……

本当に、来てくれたんだ」

 

「バッカ。ちゃんと来るつったろーが」

 

フィリアの呟きに対しジェネシスがややぶっきらぼうな口調で答える。

 

「うん……でも、来ないんじゃないかと思ってたけど……

あんた達って本当に」

 

「“お人好しでバカ”、だろう?」

 

「そこに“向こう見ず”と言うのも付け加えておこうかのう」

 

キリトの自嘲気味な言葉に対しツクヨが呆れたような、それでいてやや嬉しそうな口調で言った。

すると……

 

「……んんっ!えーっと盛り上がってる所悪いんだけど」

 

ここまで静観を貫いていたアスナがジト目で割り込んできた。

 

「あ、ごめん……えっとこちらは?」

 

「ああ、こっちはアスナ。俺の……」

 

ここでキリトは一瞬悩む。素直に“妻”と言うか、それともここでは伏せておくか。

一瞬の迷いの末、キリトは……

 

「……仲間だ」

 

と答える。

 

「こんにちは。キリトくんが助けてもらったそうで。ありがとうございました」

 

アスナは笑顔で、しかし彼女らしからぬ冷え切った口調でフィリアに言った。

 

「あ、うん……へえ、あんたの仲良しなんだ」

 

「ええ。仲良しというより……“家族”ですね」

 

アスナは“家族”という部分を強調してそう言った。

 

「お、おいアスナ……」

 

「何?私がキリトくんの奥さんだって言ったら何か都合の悪い事でも?」

 

慌てた様子のキリトに対しアスナは不機嫌そうにジト目で睨みながらキリトに答えた。

 

「あっちは大変そうだな……」

 

ジェネシスは彼らの様子を見てそう呟いた。

 

「随分と他人事だな」

 

すると彼の右手を掴みながらティアが彼の隣に立って言った。

 

「随分と仲が良さそうじゃのう。もしや主らも……」

 

ツクヨが彼らを見て何かを察したように言った。

 

「ああ、まぁ……こいつはティア。俺の仲m……痛えよなんだよティアって痛えって待て待て離せ手がミシミシ言ってるから分かった分かったから離してくれこいつは俺の嫁ですうぅぅーー!!」

 

“仲間だ”と言いかけたその時、ジェネシスの右手を掴むティアの手が一層力強く握られ、ジェネシスが“嫁”だと口にした瞬間再びその力は弱められた。

 

「存じておる。四天王が一人《白夜叉》のティアよ。

主らおしどり夫婦の噂はわっちの層まで届いておったぞ」

 

「ほう?知っていたのか。ならば私の言いたいことは分かるな?」

 

ツクヨはそんな彼らを微笑ましく見つめながら言い、ティアは目を細めながらツクヨのすぐ前まで歩み寄り、鋭い目つきでツクヨを見上げた(ツクヨの身長は170cm、ティアの身長は161cmの為必然的にティアが見上げる形になる)。

 

ツクヨは少し驚いた様子で目を見開きティアを見下ろしていたが、「フッ」と軽く笑うと

 

「安心するがいい。コイツとはそんな関係ではありんせん。

主の大事な男を取ったりすることは無いぞ」

 

諭すような口調でそう言った。

それを聞き、ティアは「なら良い」と振り向いてジェネシスの方に戻る。

しかし……

 

「それに、わっちがこんな男に惚れる事など、満に一つもありんせん」

 

その一言が余計だった。

 

……“こ ん な 男”、だと?

 

かなり怒気を孕んだ声でゆっくりと振り向く。

 

「なんじゃ?何かおかしな事でも言ったか?」

 

ツクヨは肩を竦めてティアにそう言うが……

 

「この人の何も知らん癖に……よくそんなことが言えるな。

この男は確かにぶっきらぼうで目つきが悪くて死んだような目をしてる男だがな……そんなでも多くの女がこの男に惚れて来たんだ。

お前もそうならんとは限らないんだぞ?」

 

低く唸るような声でいうティアにて対し、

 

「ふん、確かにわっちはこの男については何も知らん。

じゃがこんな男に惚れる事など満に一つもないと断言してやる」

 

「ほう?本当にそう言い切れるのか?」

 

「無論じゃ」

 

「……」

 

「……」

 

再び黙って睨み合う二人の女。その目と目の間で火花が散っているような険悪な空気が流れる。

 

「いや、何の言い合いしてんだお前ら……」

 

それを離れたところから呆れた顔で見つめながらジェネシスはそう呟いた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「それで、主らは何か目的があってここに来たのか?」

 

数分後、一息ついてツクヨがジェネシス達に尋ねる。

 

「いや、特に目的とかがあってきたわけじゃ無いんだ。

何かレアアイテムとか面白そうなクエストがあったりしないかな〜って思って来たんだよ」

 

ツクヨの問いに対しキリトが後ろ頭をさすりながら答える。

 

「何じゃ。何の計画も目的も無しに来たというのか?ここは観光地などでは無いぞ」

 

ツクヨは彼の答えを聞きため息を吐きながらそう言った。

 

「…クエストなら、良いやつがあるよ」

 

するとフィリアが顎に手を当てながら言う。

 

「へえ、どんなものがあるの?」

 

「討伐系のクエスト。詳しくは知らないけど、剣の素材みたいなのが手に入るらしいよ」

 

「素材か……そりゃ面白そうだな。案内頼めるか?」

 

「苦労して見つけたクエストを易々と教えたくは無いんだけど……でも、どのみちツクヨさんが一緒でも難しそうなクエストだし、良いよ」

 

そして一行はフィリアにて連れられる形で歩き出した。

 

〜数十分後〜

 

鬱蒼とした森林の中を、6名の男女は進んでいく。

 

「この先が、目的の場所。もうすぐとあるモンスターが出るんだけど、それが出たら自動的にクエストが始まるわ」

 

フィリアの説明を受け、戦闘が始まることを察し各々気を引き締める。

するとその時だった。

 

彼らの通るすぐ近くの木々の中で『バチッ』と言う放電現象が起きる。

皆はモンスターの出現かと考え武器を引き抜き警戒態勢に入る。やがて放電現象は強まっていき、そして黒い渦が発生する。

しかし現れたのはモンスターなどではなかった。

 

「うわああぁぁぁぁーーー!!!」

 

悲鳴と共に出現したのは、複数の男女。

ドサドサッと音を立て、雪崩のように地面に倒れ込んだ。

 

「えっ、プレイヤー?!」

 

アスナが目を見開いて叫ぶ。

一人は黒のファーコートを身につけた少年。

 

「いたた……なんだった、ん、だ……?!」

 

少年が頭を上げて辺りを見回す。

 

「ん……?」

 

するとジェネシスが彼の顔を見た瞬間首を傾げて凝視し始めた。

 

「んん〜?」

 

「どうした?ジェネシス」

 

「いや、あいつ……サツキに似てねえか?」

 

そう言われてキリトは目の前の少年を見る。

 

「た、確かに……凄く似てるな」

 

キリトもそれに同意し頷く。

その少年の見た目は、彼らの仲間である双頭刃使いの少年とよく似ていた。

するとその声に気づいた少年ーー颯樹は顔をあげる。

 

「んなっ……(キ、キリト?!しかもその隣にいるのはアスナ!そしてホロウフラグメント編のメインキャラのフィリアまで?!)」

 

その瞬間、颯樹は目を見開いた。

 

「(知っている……僕はこの人達を知っている。そう、僕がまだ元の世界にいた時ちょうどアニメやらゲームやら様々な媒体で人気を博したライトノベル作品……そして今僕の目の前にいるのはその主人公……つまり今僕らがいるのは……)

SAOの世界か?!」

 

颯樹の叫びでその隣に倒れていたユミナが顔をあげる。

 

「ううん……颯樹さん、どうされたのですか?」

 

「……あっいや!……何でもない」

 

ユミナの問いに颯樹は慌てて首を横に振る。

 

「おいおいどうした?いきなりこんなとこにやってきて大事なもんでも飛んでったか?」

 

颯樹の様子を見たジェネシスがため息を吐きながら問う。

 

「……?!?!?!(あ、れぇ〜?!ジェネシス?!ジェネシスナンデ?!ホロリアの噛ませとか言われてた悪役じゃんか!!

しかもその隣にいるのはティア?!ホロリアの双子の女神の大人版?!)」

 

訳が分からず内心で騒ぎ立てる颯樹。

 

「(どうなってるんだ?何故彼らがここにいるんだ?……もしかしてここは俺の知ってるSAOの世界じゃない……?)」

 

「大丈夫かよコイツ……ホラ」

 

すると颯樹の様子を見かねたジェネシスが右手を差し出す。

 

「えっ……あ、どうも……」

 

颯樹は戸惑いつつもジェネシスの右手を掴み、それをジェネシスが引っ張り上げた。 

 

「あ、君達大丈夫か?もしかして君たちもアインクラッドの下層から来たのか?」

 

キリトが颯樹達にそう尋ねる。

 

「アインクラッド?いいえ、私たちはアストライア公国から……むぐっ」

 

「あーそうそう!ダンジョンを探索してたらいきなりこんな所に飛ばされてさ!」

 

「むむむ〜!」

 

正直に答えようとするユミナの口を颯樹が慌てて押さえた。

 

「ちょ、颯樹殿何を……」

 

突然の彼の行動に目を見開いて戸惑いの表情を浮かべる八重。

すると颯樹は全員の肩を掴んでジェネシス達から数歩離れる。

 

「ちょっと、何だって言うのよ颯樹くん」

 

怪訝な顔で颯樹の顔を見るアヤナ。

他の少女達も彼の行動の真意がわからないと言う様子だ。

 

「済まない、頼みがある。

簡潔に言うとここは僕らが元々いた世界とは違う世界だ」

 

「違う世界……異世界転移でもしたって言うの?」

 

エルゼの言葉に颯樹は頷き、

 

「ああ、原因は分からないけど……とりあえず彼らに僕らの事は通じない、寧ろ変に怪しまれて終わりだ」

 

「颯樹様はこの世界について、何か心当たりがあるのですか?」

 

ルーシアが首を傾げながら問いかけると、颯樹は黙って首を縦に振り、

 

「とりあえず、僕に適当に話を合わせてくれ。それでこの場をやり切ろう」

 

「分かりました。では、颯樹さんの言った通りに」

 

ユミナが颯樹の言葉に同意し、颯樹もそれを確認して元の位置に戻る。

 

「済まない、あまりに突然のこと過ぎて色々情報を整理してたんだ。

ここは……一体何処なんだい?」

 

颯樹は前世の知識からここについてはある程度知識はあるものの、敢えて何も知らない体を装った。

 

「ここは《ホロウエリア》と呼ばれておる。主らも大変じゃったのう。わっちらも突然ここに飛ばされてきた身じゃ」

 

「そ、そうなんですか……(やっぱり、僕の知るSAOじゃない。いや、見た事はあるけどそれは別の漫画作品で少なくともこんな人はSAO出てきてない)」

 

颯樹はツクヨを見て戸惑った様子を浮かべつつも、それを気づかせないよう平静を装って頷いた。

 

「俺は《キリト》だ。君たちの名前は?」

 

「僕は……《サツキ》です」

 

するとキリトの表情がピタッと固まった。

 

「ん?あの、どうかされました?」

 

「え?ああいや……君と同じ名前で似たような雰囲気のやつが俺の知り合いにいるからついな……」

 

「ヘ、へぇ〜、一度会ってみたいですね」

 

「やめとけ、そっくり過ぎて俺たちが区別つかなくなるから。

俺は《ジェネシス》だ。まあよろしく頼むぜ」

 

「ど、どうも……」

 

ジェネシスに対して颯樹はペコリと頭を下げる。

 

「私は《ティア》。まあ、仲良くしてやってくれ」

 

「はい、よろしくお願いします……(やっぱり、ホロリアのジェネシスとティアだ……ティアに関しては少し色々違う点があるけど……一体どうなってるんだ……)」

 

ティアから差し出された右手を颯樹は両手で掴み握手を交わしながらティアとジェネシスを交互に見た。

 

「私は《アスナ》。キリトくんの……奥さんです!」

 

「《フィリア》よ。まあ、ホロウエリアに飛ばされた者同士、気が合いそうだね」

 

「わっちは《ツクヨ》じゃ。一先ずよろしく頼むぞ」

 

「ど、どうも…(わあ〜…一人は違うけど紛れもなくSAOのキャラ達だ……何か、感慨深いな)」

 

アスナとフィリア、そしてキリト達といった者達との邂逅を経て内心感慨深く感じている颯樹。

 

「それで?君も私達の旦那と負けず劣らずの女誑しのようだが……とりあえず名前を聞いても良いか?」

 

ティアが颯樹の後ろに立つ少女達を見て尋ねる。

 

「あ、ああ……この子は」

 

「《ユミナ》と申します。以後お見知り置きを」

 

するとユミナは颯樹の意図を汲み本名ではなくファーストネームで名乗り、礼儀正しく会釈をした。

 

「拙者は……《ヤエ》でござる」

 

「あたしは《エルゼ》。こっちは妹の《リンゼ》よ」

 

「《ルーシア》と言う者です。宜しくお願い致しますわ」

 

「《アヤナ》よ。よろしくね」

 

すると少女達はユミナに倣って自身のファーストネームをプレイヤーネームにして名乗った。

 

「また随分と大所帯だね……」

 

アスナが苦笑いで呟く。

 

「君達は何層辺りで過ごしてたんだ?」

 

「ええっと〜……ろ、六十層辺り、かな〜?」

 

「六十層…結構上の方じゃないか」

 

颯樹の答えにティアが感心したように呟く。

 

「そっか。ダンジョンを探索してたら飛ばされたんだよな?」

 

「ええ。いつも通りに進んでいたら突然…」

 

キリトの問いにユミナが首を縦に振ってこたえる。

 

「(ユミナ……ナイスだ!)」

 

颯樹は彼の言う通りに話を合わせてくれたユミナにグッドサインを送る。

 

「それは大変だったな……でも安心してくれ。アインクラッドに戻れる転移門がある場所を知ってるんだ。案内するよ」

 

「ほ、本当か?!それはありがたいな〜(まあ、アストライア公国に戻れないと意味ないんだけどな……)」

 

颯樹は内心で肩を落とした。

 

「それじゃ付いてきてくれ」

 

そしてキリトは管理区を目指して歩き始める。

 

「あ、ああ〜待った!」

 

「ん?」

 

すると颯樹は彼を引き留めた。

 

「おいおいどうしたいきなり」

 

ジェネシスが颯樹の行動の真意がわからず尋ねる。

 

「みんなはこの後何をするんだ?」

 

「この後?普通にクエストを受けようと思ってるんだけど……」

 

「なら、僕らも一緒に行って良いかな?戻れる手段を教えてくれたお礼もしたいし、折角こうしてアインクラッドのトッププレイヤーと会えたんだから、少し戦い方とか学びたいな〜とか思ってさ(それに、向こうの世界に戻るための手間かかりも見つけたいし、何よりあのキリトと一緒に戦えるんだ、こんなチャンスは滅多にない!)」

 

颯樹の答えにキリト達は少し考え込む。

 

「大丈夫か……?」

 

「平気じゃね?六十層辺りにいたんなら簡単にやられる奴等じゃねえはずだし」

 

「ああ。それにここで会ったのも何かの縁だ。これで彼らが成長して最前線に来てくれたら戦力強化にも繋がる。それくらいの投資はしても良いだろう」

 

ジェネシスとティアは彼らの同行について賛同する。

 

「もう……また勝手に決めて」

 

「ま、死なない程度でやりなんし」

 

やや呆れた顔のフィリアとツクヨ。

 

「じゃあよろしくね、サツキくん、みんな!」

 

「はい!」

 

笑顔で言うアスナとそれに対して同じような笑顔で返す颯樹。

 

そしてジェネシス達は歩き出し、颯樹達一行もそれに続く。

 

「ちょっとどう言うつもりよ?」

 

エルゼが颯樹の耳元で尋ねる。

 

「彼らは一流の戦士達だ。彼らの戦い方は僕らの世界でも参考になる。

それに……向こうの世界に帰るための手がかりも見つけないと」

 

「なるほどね〜……ま、あんたがそう言うならそれに従うわ」

 

「ありがとう」

 

こうして、異世界からの使者達を引き連れた異色のグループは歩き出した。

 

 




お読みいただきありがとうございます。
今回はイセスマIF組とSAO組との邂逅で終わってしまいましたが、次回はいよいよ本格的に攻略させます。
どうぞお楽しみに。

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