さて、今回新たにオリキャラが出ます。
七十六層アークソフィア
「しっかし……また派手にやられたな」
ティアとジェネシスが寝泊りする宿部屋のリビングで、ジェネシスは折れたティアの刀を見て呟いた。
「うん…手も足も出なかったよ」
「ジャック・ザ・リッパー、ねえ……また面倒くさそうなのが出てきたもんだ」
ジェネシスはソファに腰掛けながら参ったとばかりに呟く。
「キリト達は?」
「ジャック・ザ・リッパーの情報を集めに行ったよ。あれは、絶対に無視できない存在だしね」
キリト達は彼との戦いの後、その次の日からジャックの捜索及び調査に向かった。ただでさえ危険性を孕んだ性格の上、痛覚抑制機能であるペインアブゾーバーを無効化する武器を持っているのはあまりにも脅威的すぎる。
「それよか問題は、おめぇの刀だな」
「うん……そうだね」
折れてしまったティアの刀、『銀牙』。それに代わる新たな刀を製作しなければならない。その為にはやはり、最高レベルの素材を手に入れる必要がある。
「こういう時は、あそこだな」
ジェネシスはそう言ってソファから立ち上がり、ティアもそれに続く。
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「……で、懲りずにまたやって来たと言うわけか」
ホロウエリアの管理区で、ツクヨはキセルを蒸しながら呆れた表情で言った。
因みにどうやらフィリアは不在のようだ。
「刀が折れたんだ。しゃーねえだろ」
「ほう?刀が折れたと?一体どんな使い方をすれば折れるのかのう?」
ツクヨは悪戯な笑みを浮かべながらティアに詰め寄る。
「……うるさい。いいから黙って付き合え」
ティアは視線をそらしてややぶっきらぼうに言い、管理区の出口に向かう。
「全く……付き合わされる身にもなれと言うものじゃな」
ツクヨは呆れ顔で呟いたあと、それに続く。
一行はホロウエリアの草原地帯を歩いていた。
一面が緑豊かな草木で覆われ、温かい日差しも相まって快適な気温だった。
「これがピクニックならよかったんだがな」
「馬鹿を言え。ここはモンスターの大量出現地帯じゃ。主らもそれを知ってここに来たのじゃろう。まあ、あんなモンスターと戯れながらでもいいと言うなら、どうぞ先にやるがいいでありんす」
ツクヨが顎で指した先にいたのは、巨大な熊。
《フリージングベアー》という名のモンスターだ。
「奴からドロップするアイテムを使えば、そこそこいい刀でも作れるじゃろう」
「こんな草原にフリージングベアーとかあいつ出る場所間違えてんだろ」
ジェネシスとツクヨはそう交わしながら武器を構えた。
ティアもメニュー欄から予備の刀をオブジェクト化し、引き抜く。
「そんななまくら刀で戦えるのか?」
「無いよりはマシだろう、こんな刀でも少しは戦える」
ツクヨはティアが引き抜いた刀を見て尋ねる。
ティアは強気にそう答えるが、その刀は銀牙に比べて輝きも鈍く、見るからに安物の刀であった。
フリージングベアーはティアに爪を立てて突っ込む。
ティアは回避行動は取らず、その場で抜刀術の構えをとる。
左腰の刀が銀色の鋭い光を帯び、刀居合スキル《辻風》が発動、勢いよく抜刀し熊の爪とティアの刀が火花を散らしてぶつかり合う。
しかし、『バキン!!』と言う音と共にティアの刀が刀身の半ばから叩き折れた。
呆気に取られるティアの一瞬の隙をつき、熊は反対側の腕でティアを殴りつけた。
「ぐっ…!」
ダメージを受け草原を転がるティア。
何とか体勢を立て直すティアだが、彼女の右手に握られた刀はガラス片となって消滅した。
「だから言わんことじゃ無い。主は大人しく下がっていなんし」
「………チッ」
ティアは悔しそうに舌打ちをしつつも、ツクヨの言う通りに数歩下がった。
「さて、主の嫁に嫉妬されんうちにさっさと倒すとしようかのう」
「ああ、ティアに手ェ出した罪は重いぜ」
ジェネシスは大剣を振りかざして熊に突っ込む。
熊から交互に繰り出される巨大な拳とジェネシスの赤黒い大剣がぶつかり合う。
熊がジェネシスに気を取られている隙に、ツクヨが背後から手裏剣や苦無を投げつける。
熊は雄叫びを上げて背後に腕を力任せに振るうが、そこには既にツクヨの姿はなく、空振りに終わる。
「おおおおお!」
その時、ジェネシスが赤黒い光を纏った大剣を横薙ぎにする。
暗黒剣二連撃スキル《ヘイルストライク》
斬撃の余波で発生する暴風が辺りの草を大きく揺らす。
攻撃を受けた熊はジェネシスの方を振り返ると、口からブレスを吹きかけた。
「何っ?!」
するとそのブレスでジェネシスの足元が凍りつき、身動きが取れなくなる。
そこへ熊が容赦なく拳を繰り出した。
「ぐおおっ!」
ジェネシスはその攻撃を受け大きく吹き飛ばされた。
「久弥っ!!」
ティアが慌てて彼に駆け寄る。
熊のレベルがそこまで高くないのか、幸いHPはそれほど減ってはいない。
彼らに対し、熊は追撃を与えるため両腕を振り上げて接近する。
ツクヨは彼らの救援に向かうが、その前に熊の前に立ちはだかるものが現れた。
それは、純白の衣装を纏った少女だった。
右手には2メートル程ある大きな槍を持ち、左腰には片手剣をぶら下げている。
少女は彼らの方に一瞬振り返って微笑みを浮かべると、両手で槍を掲げた。
「
彼女がそう唱えた瞬間、槍の先端部分に巻きついていた布が大きく展開した。
そう、それは槍ではなく、旗であった。
旗の布からゴールドの光が放出され、彼女を中心に三角形上のバリアが展開される。
「Luminosite eternelle!」
金に輝く暖かな光がジェネシスとティアを包み込み、熊の拳を受け止める。
拳とバリアはしばし拮抗していたが、やがてバリアが熊の拳を弾き飛ばした。
バリアを展開していた旗は布が自動的に折り畳まれ、再び槍の形状となる。
「
槍の先端が黄色い光を帯び、ソードスキルが発動する。
「《
その光の槍は熊の腹部を貫き、一気にHPを消し飛ばし消滅させた。
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「あ、ちょストップストップ!」
戦いが終わり、歩き去ろうとする白無垢の少女をジェネシスが呼び止めた。
少女は怪訝な表情で振り返る。
「えーっと……あ、I really thank you for help us」
ジェネシスはなんとか捻り出した英語で彼女に礼を述べるが、少女は苦笑して首を横に振った。
すると何かに気づいたティアが一歩前に出る。
「
ティアのフランス語を聞いた瞬間、少女ははっと顔を上げた。
そしてじわりと両目に涙を浮かべた後、わっと泣き出した。
「
そして少女はティアの両手を掴み、
「
興奮気味に早口口調で捲し立てた。
「
フランス語でやり取りするティアと少女を見つめ、ジェネシスとツクヨはただ困惑した。
「何言ってるか全然わからないんだが……」
「わっちも同じじゃ」
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彼らが戦った《フリージングベアー》からツクヨの言う通り武器の素材アイテムがドロップし、目的を果たした一行は管理区まで戻って来た。
「さて、そんじゃ俺たちは戻るぜ」
「ああ。次はいい刀を持ってくるんじゃな」
「Au revoir」
彼らは転移門の青白い光に包まれ、姿を消した。
「………あ」
ここでツクヨは何かを思い出した。
「あの男……ジョーカーの事を伝え忘れたわ」
〜七十六層・アークソフィア〜
街の中央にある転移門から3名の男女が現れる。
彼らは新しく出会った少女を連れて宿屋まで歩く。
少女はジェネシス達の後を、物珍しそうに辺りを見回しながら歩く。
「ああ、その前に……」
ふと、ティアが進路を変更して別の方向に歩き始める。
向かった先は鍛冶屋。《グリム武具店》
「なんだ、リズベットはまだ二号店やってねーのか」
「そう簡単にお店は開かないよ。多分リズちゃんも色々苦労してるんじゃないかな」
店の外観はコンクリートで出来た質素な見た目。
木のドアを開けると、中には様々な武器が飾ってある。
「いらっしゃいませ」
中にいたのは、男性プレイヤー。平均的な身長に平凡な見た目の男性だった。
「えっと、オーダーメイドを頼みたいのですが……」
「畏まりました。では、素材をお預かりします」
ティアはグリムに今回ゲットしたアイテムを手渡す。
ジェネシスはそれを見守っていたが、ふと少女の方を見ると、彼女は壁にかかっている武器を取っ替え引っ替えして見ていた。
〜数分後〜
「お客様、お待たせいたしました」
グリムが店の奥から布に包まれた長細い金属を持ってやって来た。
3人はカウンターテーブルに駆け寄り、グリムがそのテーブルにそれを置く。
グリムは丁寧に布を解いていき、やがてその中から現れたのは、眩い銀色の光を放つ日本刀だった。
「銘は《雪片》。性能としては伝説級のものになります」
ティアは雪片を手に取ると、早速茎を柄に差し込んで試し振りをした。
鋭く、それでいて心地よさすら感じさせる風切り音が鳴り、銀の刃の奇跡が空中で弧を描いて現れた。
「Belle……」
少女はその刀の美しさに見惚れて思わずそう呟いた。
「ああ、とてもいい刀だ……」
「お気に召したようで何よりです」
グリムは刀の絶賛にやや嬉しそうに頭を下げた。
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ティアの新たな刀を手に入れた一行は、いよいよ普段寝泊まりしている宿屋へと足を運んだ。
ドアを開けると、中には既にいつもの面子が揃っていた。
「よう、ジェネシス。戻ったのか……って」
キリトがジェネシス達に声をかけると、後ろの少女に気づき怪訝な表情をした。
「えっと、この子は……?」
「あーえっとな、ホロウエリアでちょっと手を貸してくれたんだ」
アスナの問いにジェネシスがそう答えた。
「ああ、一つ付け加えるとこの子は海外のプレイヤーでな。これまで言葉が通じるものが居なくて苦労していたそうだ」
フランス語で彼女とやりとりをしたティアがそう付け加えた。
「海外プレイヤー?!そんな人まで居たのか……」
「言葉が通じないって……それって凄く大変だよね」
キリト達が少女の方を見遣ると、やはり何を言っているのか理解できないのか頭に“?”マークを浮かべている。
するとそこへ……
「パパ、ここSAOには海外からのプレイヤーの為に、言語翻訳機能がついていますよ」
そう教えたのは、部屋の奥からひょっこりと現れたレイ。
「マジでか」
「はい、マジです!」
レイは得意げな顔でそう答えると、トコトコトコトコ少女の方へ歩き、「ちょっと失礼しますね」と彼女の右手を拝借しメニュー欄を開く。
ある程度操作を終えると、「これで大丈夫です!」と設定を終えたらしいレイが少女から離れた。
『…あ……えっと……』
戸惑った様子の少女から聞こえて来たのは、日本語。
「おおっ、日本語になってるじゃねえか!」
『ええっ?!つ、通じてる!』
少女は驚愕のあまり目を見開いた。
「凄い……SAOにはそんな機能まであったのね……」
『あうう……私のこれまでの苦労とは一体……』
少女はそう言って地にへたり込んだ。
「まあ、これで万事解決ってもんだな。で、てめぇさえよけりゃだが、これからも仲良くしてくれ。俺はジェネシス。よろしく頼むわ」
ジェネシスはそう言って右手を差し出す。
『えっと……い、いいんですか?』
「ああ。君なら間違いなく私達のいい仲間になってくれると思う。それに、助けてもらった礼をまだ出来ていないしな。これからその礼もさせてくれ。私はティアだ」
ティアも人の良さそうな笑顔で少女に言った。
少女は一瞬戸惑った表情だったが、
『わ、私でも力になれるなら……喜んで!』
少女は笑顔でジェネシスの手を取り握手を交わす。
『私の名前は《ジャンヌ》。お会い出来て、本当に良かった!!』
お読みいただきありがとうございます。
今回出てきたキャラクターのモチーフは、もう皆さんお気づきでしょう。
FGOのジャンヌダルクです。欲しいんだけど中々出てこない……
では、次回もよろしくお願いします。