ソードアート・オンライン〜二人の黒の剣士〜   作:ジャズ

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どうも皆さん、ジャズです。
今回、『衛宮さんちの今日のごはん』要素があります。


三十七話 糖分補給〜チョコレートマカロン〜

七十六層・アークソフィア

 

ジェネシス達が過ごす宿部屋の窓から眩い朝日が差し込む。

その光でティアは眠りから目覚める。

上体を起こし、腕を上にあげて身体を伸ばす。

ふと隣を見ると、未だ夢の中にいる恋人のジェネシスがいた。何度見ても飽きない、愛しい彼のあどけない寝顔。

 

「ふふっ……おはよう、久弥」

 

ティアは小声でそう呟きながら、彼の頬を愛おしそうに撫で、すやすやと寝息を立てる唇にそっと口づけをした。

そして彼を起こさないように慎重にベッドから降りると、寝巻きの青いキャミソールから普段着の青い胸元の開いたニットにジーパン、そして白いマントを羽織って着替え、部屋を出た。

 

宿から出て広場に出る。

少しひんやりとした空気が肌を撫で、温かい日光が全身を照らし、心地よい空気にティアは包まれる。

 

しばしその空気に浸ったのち、アイテム欄を開く。

その中からとある武器をオブジェクト化する。

 

純白の鞘に銀色の光を放つ鍔。

そしてその柄に手をかけ、ゆっくりと引き抜く。

 

その刃は日の光を反射して鋭く、そして美しく輝く。刀身はしなやかに湾曲し、刃紋は滑らかな波を打っている。

かつて自身の武器であった銀牙にも勝る名刀、《雪片》。

 

ティアは雪片の柄に左手を添えると、それを真上に構え、そして勢いよく振り下ろす。

 

その刀を今度は自身の左側に持ち上げる。刀の切っ先を前に向け、中段に構える。

その体制から左足を踏み出し、刀を右下方向に振り下ろす。

『ヒュン』と言う鋭い風を切る音が静かな街に響く。

 

素振りをするティアは、以前ジャック・ザ・リッパーから言われた言葉を思い出していた。

 

『お前の活人剣などでは俺は止められん』

 

────そんな事はない

 

『人斬りになって出直してこい』

 

────私は人斬りなどにはならない!

 

ティアは頭に響く宿敵の声を掻き消すように刀を振う。

 

「綺麗……」

 

ふと響いた声にティアは素振りを止め声が聞こえた方に視線を移す。

緑色の装備に身を包んだポニーテールの少女、リーファが瞳を輝かせてティアを見つめていた。

 

「……はっ!あ、お、おはようございますティアさん!」

 

「ああ、おはようリーファ。早いんだな」

 

ティアは笑顔でリーファに対し言った。

 

「はい。現実じゃ剣道部の朝練があったので、その習慣で」

 

「へえ、剣道部だったのか。私もリアルでは剣道をやっていたよ」

 

「えっ、本当ですか?!」

 

そこからリーファとティアは剣道の話で盛り上がった。

始めたきっかけ、剣道で大変だったことや思い出に残っている事など、話題は尽きなかった。

 

「あの、ティアさん……試合しませんか?」

 

「試合?」

 

「はい!同じ剣道をやるもの同士、少し力比べをしたいと思いまして……」

 

するとティアはすうっと目を細め、

 

「ああ、構わないぞ。だが……手加減するつもりは無いがいいのか?」

 

「ふふっ、甘いですよティアさん。確かにSAOでの時間は私の方が短いですが、これでもリアルじゃ剣道の全国ベスト8ですよ?それに、同じVRMMOのALOは一年近くやっていましたから、私だって一方的に負けるつもりはありませんよ?」

 

リーファはティアの問いに対し不敵な笑みで返す。

 

「いいだろう、上等だ。受けて立とう」

 

ティアはメニュー欄からデュエル申請画面を開く。

リーファはそれを承諾すると左腰から長刀を抜き、それを正面に両手持ちで構える。

60秒のカウントが徐々に減っていき、二人の緊張感が高まっていく。

 

そして0になり、デュエルが始まった瞬間、リーファは飛び出した。

真上から振り下ろされる一撃を、ティアは刀を水平に振るうことで受け止めた。

 

「面ぇん!!」

 

「甘い!!」

 

再び繰り出される斬撃をティアは難なく防ぐ。

刃がぶつかり合う度に火花が飛び散り、金属の音が人気の少ない早朝の街に轟く。

 

「くっ…(やっぱりティアさんは強いや……そう簡単には決めさせてはくれないか!)」

 

「(中々やる……だがまだソードスキルの使い方が甘い!)」

 

二人は一度距離を置き、リーファは剣を自身の右側で垂直に持ち、ティアは刀をゆっくりと鞘に収め、抜刀術の体勢を取る。

数秒間睨み合ったのち、先にリーファが動いた。

片手剣ソードスキル《ソニックリープ》を発動し、ソードスキルのシステムアシストによる勢いに乗って一気にティアとの距離を縮めていく。

対するティアは刀居合ソードスキル《辻風》でそれを迎え撃つ。リーファの速度を注視し、抜刀のタイミングを見極める。

そしてリーファの剣が自身に向けて動いた瞬間、ティアは右手を刀の柄にかけた。右足を大きく踏み出し、その勢いに乗せ上体を時計回りに回し、刀を素早く抜刀する。

リーファのエメラルドグリーンに光る剣と、ティアの銀色の光を放つ刀が大量の火花と凄まじい音を立てた衝突した。

しばし二人の剣は拮抗したのち、それぞれの剣の軌道がそれぞれの目標を逸れて振り抜かれる。

 

「わわっ!」

 

しかしその時、リーファがソードスキルによる勢いを殺す事が出来ず、そのままティアに対して倒れ込む。

 

「えっ……?」

 

ティアは予想外の事態に反応が遅れ、そのままリーファに覆い被さられる形で倒れ込む。

二人が重なって倒れた瞬間、リーファの顔が『ポニュッ』という柔らかい感触に包まれる。

 

リーファはこれが何なのか分からず、そのまま顔を上げる。

目の前には青と肌色のふくよかな二つの双丘があった。

少し視線を上に上げると、目を丸くして自身を見つめるティア。

その瞬間リーファは全てを察した。自分の頭を守ってくれたクッションはティアの……

 

「わ……わーーっ!!ごめんなさいティアさん!」

 

リーファは慌ててその場から飛び退いた。

 

「い、いや……気にしないでくれ」

 

ティアは平然とした様子で起き上がる。

リーファは両手で自身の頬をさすり、先程まで自分の顔を包み込んだあの柔らかい感触を思い出す。

 

「あの、ティアさん……その、えっと……お、大きいですね?」

 

リーファは少し冷静さを欠いており、何を言えば良いか分からずとりあえずそう口にした。

 

「え……」

 

そう言われ、ティアは戸惑いの表情を浮かべる。

確かに自分の胸は他の女性に比べるとやや大きい方かもしれない。

しかし目の前のリーファはどうか。自分より年下なのにも関わらず、自分のものよりも一回り大きい。

 

「そういうリーファも、中々だと思うが……」

 

「ええっ?!て、ティアさんそれは……あ、あうぅ…///」

 

ティアにそう指摘され、一気に赤面するリーファ。

気まずい空気が流れ、しばし二人は沈黙する。

 

「……も、戻ろうか」

 

「そ、そうですね!そろそろ朝ご飯の時間ですし!戻りましょう!」

 

二人は立ち上がると、並んで歩き出した。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「あ、い、ウ、、え…お……」

 

「うんうん、上手に発音出来てるわジャンヌ!」

 

「ア…… merci.」

 

「ジャンヌ、今はフランス語は禁止だぞ?」

 

「あ……アリガトウゴザイマス」

 

朝食を終え、皆各々時間を潰す中、アスナとティアとジャンヌは同じテーブル席で何やら話し合っていた。

 

「あいつら何やってんだ?」

 

「日本語の勉強、だってさ」

 

それをカウンター席でコーヒーを飲みながら見ていたジェネシスの問いに対し、隣に座るキリトが答える。

 

「日本語の勉強って……翻訳機能があんのに何でわざわざ?」

 

「ジャンヌが翻訳機能無しでも話せるようになりたいって言ってさ。それでアスナとティアが付き合ってるんだよ」

 

そう言ってキリトは一枚の紙を見せる。

 

「ジャンヌが最初に書いた日本語だ」

 

そこに書かれていたのは……

 

 

『みなちんこんにさわ わたしわぢゃんめです』

 

 

 

「ブッ……」

 

それを見てジェネシスは思わず飲みかけのコーヒーを吹き出してしまった。

 

「ご覧の通りだ。“さ”と“ち”・“ぬ”と“め”の区別がついてないみたいでな。

今も苦戦してるよ」

 

キリトが苦笑しながらジャンヌの方を指差すと、彼女は「あうぅ…」と頭を抱えていた。

 

「……ちょっくら出てくるわ」

 

ジェネシスはコーヒーを飲み切り、カップをテーブルに置くと立ち上がった。

 

「ん、どこに行くんだ?」

 

「ま、ちょっとした気まぐれだ。勉強には息抜きが必要だろ?」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ジェネシスが買い物や料理の素材集めの為にフィールドでクエストやモンスター狩りを行い、戻ってきた頃には既に昼を回っていた。

 

扉を開けて宿の食堂に入ると、いつものメンバーが既に揃っていた。皆はそれぞれのグループで雑談を交わす中、ジャンヌの方を見ると、彼女は未だに机に向かって読み書きの練習をしており、それをティアとアスナの二人が見守っていた。

 

ジェネシスはそれらを見ながら宿のリビングを通っていき、そのままバーのカウンターの中へ入っていく。

 

「エギル、ちょっくらキッチン借りるぜ」

 

「ん?ジェネシスか?まあ構わねえが……」

 

バーカウンターで食器を拭いていたエギルにそう言い、中に入って行く。

 

「さて……いっちょやるか」

 

ジェネシスは台所に今日集めた素材を並べる。

 

・アーモンドプードル

・粉糖

・ココアパウダー

・卵

・グラニュー糖

・ビターチョコ

・生クリーム

 

「フランスの定番の菓子と言ったら……やっぱマカロンだな」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

始めにガナッシュ作りから。

まず生クリームを鍋に入れて沸騰直前まで温め、温め終わったら火からおろす。その中にビターチョコを割って入れ、ヘラで良くかき混ぜる。

混ぜ終わったらボウルに入れて蓋をし、冷蔵庫で冷やす。

 

続いて生地。

網皿などに粉類を投入し、振るいながらボウルに入れる。

続いて別のボウルに卵の白身を投入し、白っぽくなるまで混ぜ合わせる。グラニュー糖を四回に分けて加え、その都度泡立つまで混ぜ合わせる。ツノが立つまで混ぜ合わせたらメレンゲの完成。

そこへ先程振るった粉類を投入し、メレンゲの泡を潰さないよう切るように混ぜる。馴染んできたらボウルの側面に押し付けるように混ぜる。ヘラをすくって全体が繋がりゆっくり落ちるようになったら完了。

 

天板にシートを引いて、先程混ぜ合わせた生地を直径3センチくらいの大きさに分けて並べ、一旦乾かす。この時しっかり乾かさないとオーブンに入れた時に生地が割れてしまうので注意。

十分に乾いたらオーブンに入れて焼く。本来は13分ほどかかるのだが、ここはSAOなので数秒で出来上がり。

 

焼けたら生地の片方に、先程冷やしたガナッシュを塗り、挟み込んで、チョコレートマカロンの完成。

一応全員が食べられる分量で作ったので個数は約60個。かかった時間はここまでで僅か5分。SAOの料理は色々と簡略化されているので味気なく感じるが、工程が楽なので助かる面もある。

 

60個のマカロンを皿に盛り付け、それをジャンヌ達が座るテーブルに運んでいく。

 

「よう、捗ってるか?」

 

「ああ、ジェネシス……って、それは?」

 

ティアがジェネシスに気づくと、彼が持つ皿いっぱいに盛られたマカロンを見て目を丸くする。

 

『ま、マカロンじゃないですか!!』

 

「こ、これ…貴方が作ったの?!」

 

「ああ、そうだ」

 

ジャンヌが嬉しそうに飛び上がり、アスナが驚いた表情でジェネシスを見る。

 

「勉強してっと糖分が欲しくなるだろ?まあこの世界じゃ栄養なんて無いが……まあとりあえず息抜きがてら食っとけ」

 

「ジェネシスお前……料理なんて出来たのか?!」

 

「まあ甘いもの欲しさに自分で色々やってたからな。コンプはまだだが、ある程度なら出来るぜ」

 

「ま、マジか……」

 

キリトの問いかけに対しジェネシスはあっけらかんと答えた。

すると騒ぎを聞きつけた仲間達が次々と集まり始めた。

 

「えっ、これジェネシスさんが?!」

 

「すごい……美味しそう……!」

 

「あんた…中々やるじゃ無い」

 

「人は見かけによらないのね」

 

シリカ、サチ、リズベット、シノンが口々に言った。

 

「パパ、さすがです!」

 

「これ、僕らも食べていいですか?」

 

「構わねーよ。全員分作ってあるから」

 

「やったあぁー!」

 

その瞬間、全員が山積みにされたマカロンに手を伸ばした。

 

『ではジェネシスさん、いただきます』

 

ジャンヌは一口サイズのマカロンを口の中に放り込んだ。

 

噛んだ瞬間、『サクッ』という食感とビターチョコの甘すぎない味が口内に広がる。

 

「お、美味しい…!」

 

「ああ、これは美味いな!」

 

アスナとキリトがマカロンの味を絶賛する。

するとティアがジェネシスの方を向き、

 

「ジェネシス、どうせならアレも淹れてくれないか?」

 

と追加注文する。

ジェネシスはアレが何なのかを察し、「しょうがねえなあ」と苦笑しながらカウンターへと向かった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

ミキサーのコンテナに牛乳、コーヒーの粉、キャラメルソース、そして氷を入れ、ミキサーを起動して混ぜ合わせる。

 

出来上がったものをカップに注ぎ、生クリームを乗せたら完成。

これもフランス由来の飲み物、《フラッペ》だ。

人数分のカップに注いだ後、バットに乗せて運ぶ。

 

「出来たぞ。俺特性《キャラメルエスプレッソフラッペ》だ」

 

『こ、これがニホンのフラッペ……!』

 

「すげえ……マカロンによく合う!」

 

皆運ばれたフラッペのストローに口をつけて、感想を述べる。

コーヒーの苦味とキャラメルソースの甘味が見事にマッチし、口当たりの良い味わいとなっている。

 

『マカロンとフラッペ……現実世界を思い出します』

 

「んま、それを意識して作ったしな」

 

『そうだったんですね!本当にありがとうございます、ジェネシス!!』

 

「……気に入ってもらえたようで、何よりだ」

 

ジェネシスはそう言って、自身の作ったマカロンを口に放り込んだ。

 

それ以降、ジェネシスに対しエギルやアスナがスイーツやコーヒー飲料のレシピを頻繁に聞くようになったのは別の話。

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。
今日紹介したマカロンとフラッペのレシピはネットで調べたものです。興味があれば是非一度試してみてください。
では、また次回。
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