ソードアート・オンライン〜二人の黒の剣士〜   作:ジャズ

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四十三話 虚の守護者

全てのエリアボスを撃破した一行は、合流した後にいよいよ最後の難関である地下エリアのダンジョンへと足を運んだ。

 

「いよいよか……」

 

転移門を前にしたジェネシスがそう呟く。

待ち受けるのは間違いなくこれまで以上の難敵であるのは間違いない。

 

「必ず倒して、ホロウエリアから出よう!」

 

「うん!」

 

キリトの言葉にフィリアが強く頷く。

そして一行はいよいよ目の前の転移石を起動し、秘匿領域へと向かう。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

転移した先にやって来たのは、黒い空間に浮かぶ円形状のアクリル板のようなフィールド。

周りには何も無く、宇宙空間のような深淵が広がる。

 

だが突如、空間全体を揺るがす振動が発生し、同時に真上から巨大な何かが舞い降りる。

それはジェネシス達の立つアクリル板の周りを飛んだあと彼らの前に相対する。

それはドラゴンと蜂を合わせたような見た目をしていた。胴体から生える6本の脚。その内一対の脚の先端は大剣の形状をとっている。

その尾の先端には鋭いブレード状のものが付いている。

 

「つまりこいつがラスボスって訳か」

 

ジェネシスが大剣を引き抜き、肩に担ぐ。

 

「俺たちは入ってはならない場所に入った侵入者だからな。システム側としてはなんとしても排除したいんだろう」

 

キリトも背中から2本の剣を引き抜きながら言った。

 

「んじゃ、さくっと倒しちまおうぜ」

 

「ああ。それじゃ戦闘開始だ!!」

 

キリトの掛け声と共に皆各々の武器を手に飛び出す。

キリトとジェネシスがシステムアシストによる速度を生かしてボスの胴体に斬り込む。

だがボスは胴体の大剣が付いた腕をその大きさに見合わない素早い速度で全てブロックすると、二人を弾き飛ばす。

 

続けてティアとアスナが速さを生かして斬り込むが、これもボスは大剣で容易く受け止めた。

しかしその隙をつき、ジャンヌとフィリアがその上から飛び込み、ボスの胴体に攻撃を加えHPを削る。

 

「スイッチ!」

 

キリトの合図を聞いた四人は即座にその場から飛び退き、そこへ再びジェネシスとキリトが重い一撃を叩き込む。

だがその時、

 

「ブレス攻撃が来ます!離れてください!!」

 

サクラの警告が響き、皆は即座にその場から離脱する。

その直後、ボスの巨大な口部から白銀のビームがフィールドを一直線に貫く。

幸いサクラの警告が間に合ったため、ジェネシス達に被害は無かったが、

 

「あれは直撃したら不味そうだな……」

 

「うん。サクラの警告はしっかり聞いておこう」

 

ジェネシスとティアが顔を見合わせながら交わす。

そして皆は再びボスに飛びかかる。

だがボスは素早い動作でその場から離脱し、その攻撃を躱す。

だがそこ目掛けて苦無と手裏剣が飛び、ボスの胴体に突き刺さる。

ボスの動きを読んだツクヨがボスが移動する数秒前に苦無と手裏剣を投げたのだ。

その攻撃を受けたボスは、今度はフィールドに下に潜り込む。

 

「何か来るぞ!気をつけなんし!!」

 

ボスの不審な動きを見たツクヨが皆に対して叫ぶ。

皆が警戒する中で、ボスの鋭いブレード状の尾がフィールドの中央から突き出る。

 

「危なっ?!」

 

その近くに立っていたキリトとアスナは間一髪のところで回避する。

しかし間髪入れずにボスはジェネシス達の背後に回り再び上体を晒すと、先程のブレスの発射態勢をとる。

 

「またブレスが来ます!」

 

「ダメだ、間に合わねえ……!」

 

サクラの叫びも虚しく、恐らく回避する時間はない。

だがその時、彼らの一番前に飛び出した人物がいた。

ジャンヌだ。

 

『我が旗よ、我が同胞を護りたまえ!』

 

そう叫び、ジャンヌは旗を真っ直ぐに持って高く掲げる。

すると旗がゴールドの眩い光を放ち始める。同時に、ボスの口から白銀のブレスが発射される。

 

『《リュミノジテ・エテルネッル(我が神はここにありて)》!!』

 

黄金の光がジャンヌから後方に扇状に展開し、彼らを守護する。

白銀のブレスが直撃し、扇状のバリアがそれを切り裂く。

 

『…っ、ぐうっ……!』

 

凄まじい衝撃がジャンヌを襲うが、歯を食いしばって踏ん張る。

永遠にも感じられるブレスが止むのと、光のバリアが解かれるのはほぼ同時だった。

 

『ふう……どうにか務めを……果たせました…』

 

ジャンヌは安堵のため息を吐きながら地面にへたり込む。

 

「助かったぜジャンヌ!!」

 

ジェネシスがジャンヌにそう言うと、ブレスによる反動で動きが止まっているボスにもう一度斬りかかる。

今度はジェネシスのユニークスキル《暗黒剣》の特性である『自身のHPを犠牲にして攻撃力を上げる』スキルを発動し、ボスに挑む。

攻撃力が飛躍的に上昇したジェネシスの猛攻を受けてボスのHPは急激に減っていく。

だがHPバーの一本目が削り切れる直前にボスは左腕を横一閃に薙ぎ払う。ジェネシスはその攻撃を大剣で弾くも、直後彼の目の前で大爆発が起きる。

 

「うおっ?!」

 

慌てて飛びのいた事で何とか生き延びたものの、すでに彼のHPバーはレッドゾーンに入ってしまっていた。

 

「お父さん!」

 

サクラがジェネシスのもとに駆け寄り、即座に回復スキルを施した事で彼のHPは一気に全快する。

 

「悪い、助かった」

 

「いえいえ、どういたしましてです」

 

サクラとジェネシスがそう言葉を交わす間に、ボスは再びあのブレスの発射態勢を取った。

 

「不味い、みんな回避だ!!」

 

今回は先ほどのようなジャンヌのバリアを張る時間は残されていないようだ。そう判断したキリトが叫んで皆に指示を飛ばすが、

 

「……ふん」

 

ツクヨが素早い動作で苦無を飛ばした。

苦無は真っ直ぐにボスの方へ飛来し、その胴体に突き刺さる。

その瞬間、ボスの身体に黄色い電流が走り、麻痺状態に陥る。苦無術《自来也蝦蟇毒苦無》によるスタン効果だ。

 

「撃たせなければどうと言う事はありんせん」

 

ツクヨはキセルから「フゥ」と煙を吐きながら言うと、再び苦無を両手の指の間に挟んで飛び出す。その後ろにフィリアが続く。

 

「はあああああっ!!」

 

フィリアはソードブレイカーを逆手に持ち、短剣ソードスキル《ラビット・バイト》でスタン状態のボスの胴体を斬り付ける。

その一撃でようやくボスのHPバーが一本吹き飛んだ。

 

「みんな、パターンが変わるぞ!気を付けろ!!」

 

ボスのHPバーが一本削れる毎に攻撃パターンが変わるのはこのSAOでは常識だ。

キリトはそう言って皆に注意を促す。

皆がキリトの指示を受け警戒する中、ボスは唸り声を上げながらゆっくり動き出す。

 

そして口部から複数の黒い球体を発射した。それらはしばらくフィールドを浮遊したのち、ジェネシス達を囲うように停滞する。

次の瞬間それらは同時に弾け飛び、皆を巻き込んだ。

全員HPが一気にイエローゾーンまで削られ、さらに麻痺状態が付与されてしまった。

 

だがその時、唯一巻き込まれなかったサクラが動いた。

 

「開け……《天の杯(ヘブンズフィール)》!!」

 

サクラが右手を高く掲げてそう叫ぶと、彼女の掌から桜色の光が溢れ出し、霧散してフィールドを包む。

その光を浴びたジェネシス達のHPは即座に100%回復し、さらに麻痺状態も解除された。

 

「サクラ……こんなスキルまで隠し持ってたのか」

 

キリトはサクラを見て驚いた様子で言うと、サクラは「それが私の役目ですから」と得意げな顔で答えた。

 

「全く……心強いことこの上ないな!

サクラ、パターンの見極めは君に任せる!みんなは彼女の指示に従って攻撃するんだ!」

 

「サクラ、分析は任せるぞ!」

 

「はいっ!」

 

ジェネシスの言葉にサクラは威勢よく答えた。

そして皆は各々の武器を携え、ソードスキルを持って畳み掛けた。

全員の総攻撃を受けボスのHPはみるみるうちに減少していく。

だがここで、ボスは反撃とばかりに先程の黒い球体をフィールドに放出した。

 

「その球体はソードスキルで破壊できます!一気に潰してください!」

 

「なら、私が行く!」

 

ここでアスナが神速を発動し、ソードスキル《クリムゾンスマッシュ》を連続で発動した。フィールドに解き放たれた黒い球体を一斉にロックオンし、瞬く間に一掃する。

 

続けてバスは左腕を大きく後方に振りかぶると、勢いよく前に突き出した。ジェネシスに大ダメージを与えたあの一撃だ。

 

「私が行く!」

 

今度はティアが迎撃態勢に出た。刀を左腰の鞘に収め、抜刀術の姿勢を取る。

そしてボスの大剣がティアに迫る直前に、ティアは刀を勢いよく抜刀した。

銀色の鋭い一閃とボスの赤黒い一撃が轟音と火花を散らして衝突する。しかしその直後、空中に銀色の刃が回転しながら舞い、そしてガラス片となって消滅した。

ボスの大剣は半ばから折れてしまっていた。ティアの抜刀術最上級スキル《飛閃一刀》がボスの一撃を上回ったのだ。

ボスのHPはすでに残り一本を切っていた。

 

「うちの旦那に傷をつけた借りは返させてもらった」

 

ティアは刀を左右に振るいながらそう言い放った。

それに対してボスは雄叫びを上げると共に再びあのブレスの発車姿勢を取った。

 

『主の名の下に命じます……跪きなさい!』

 

しかしジャンヌが旗を掲げてそう叫んだ瞬間、ボスはスタン状態に陥った。彼女が持つユニークスキル『聖女の加護』のスキル《神明採決》によるものだ。

 

「今が好機じゃ。行くぞフィリア」

 

「うん!行こう、ツクヨさん!」

 

ツクヨが漆黒の太刀を引き抜き、フィリアがソードブレイカーを持って飛びかかった。

フィリアの短剣の刃にエメラルドグリーンの光が宿り、そしてフィリアはそれを5回、疾風の如く振るった。

短剣の最上級スキル《エターナルサイクロン》だ。

 

「良い太刀筋じゃフィリア」

 

ツクヨがフィリアの攻撃を見てそう褒めると、しなやかな動作で太刀を上段に構えた。

 

「これはわっちも、少しばかり本気を出して見るかのう」

 

するとツクヨが持つ太刀の漆黒の刃が真紅の光を放ち始めた瞬間、それを勢いよく振り下ろす。

彼女が放った斬撃はボスの胴体を斬りさき、そのままボスの体を大きく後方へノックバックさせた。

手裏剣術最上級スキル《零次元・表式》。

 

その一撃でボスのHPバーは一気にイエローゾーンに陥る。

 

「よし、最後決めるぞ!」

 

キリトが左右の剣に青白い光を纏わせて斬りかかる。

二刀流最上級スキル《ジ・イクリプス》

星の炎の如く斬撃がボスの胴体を切り刻んでいく。

それによってついにHPバーがレッドに到達した。

 

「最後は頼むぞ!」

 

「おうよ!」

 

そう言って飛び出したのはジェネシスだ。

大剣が赤黒い光を纏い、暗黒剣の最上級スキル《ジェネシス・ディストラクション》十五連撃が発動する。

超弩級の連撃がボスを切り刻み、一気にそのHPを消しとばした。

 

耳をつんざく断末の叫びを上げて、ようやくボスはその身をガラス片に変えて消滅した。

 

「よし……何とか討伐できたな」

 

ジェネシスが一息ついて大剣を収める。

 

『《システムガーディアン》討伐を確認。最終シークエンスに移行します』

 

「最終シークエンス?」

 

システムアナウンスの単語を呟くように言うフィリア。

その次の瞬間。

 

「っ!ぐっ……」

 

「なっ…キリト、君……!」

 

ティアとアスナが突如力が抜けたように倒れ込んだ。

 

「きゃあっ!」

 

『こ、これは……?!』

 

「くっ……!」

 

「なに?!」

 

続けてサクラ、ジャンヌ、ツクヨ、フィリアも倒れた。

 

「ぐ……くそっ……」

 

そしてキリトまでも倒れた。

全員共通しているのは、HPバーに麻痺毒のアイコンが表示されている事だ。

ジェネシスは近くにいたティアに駆け寄り彼女の体を支える。

 

「っ、久弥……あれ……!」

 

ティアが目を見開いて前方を指差す。

床から半径2メートルほどの漆黒のサークルが現れ、その中から何かがゆらりと立ち上がる。

 

「嘘だろ……?!」

 

キリトもまた、信じられないとばかりの顔でそれを見た。

 

そこに立っていたのは皆がよく知る人物に酷似、いや全く同じと言ってよかった。

 

赤黒い装備に漆黒の大剣を背負い、赤い逆立った髪の男。

 

そこにいるのは紛れもないジェネシスだった。

 

ただ、瞳が虚ろである点を除いて。

 

『ホロウエリア最終シークエンス、これより開始します』

 

無機質なシステムアナウンスが響くと共に、目の前の《ホロウ・ジェネシス》は漆黒の大剣を徐に引き抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。
気づけばホロウエリア編も第一のクライマックスを迎えました。ここまで来られたのも皆様のおかげです。本当にありがとうございます。
次回でホロウエリア編も大詰めです。どうか楽しみにお待ちください。
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