ソードアート・オンライン〜二人の黒の剣士〜   作:ジャズ

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こんばんは、ジャズです。
では、ホロウフラグメント後半戦、これより開幕です。
今回より新キャラが二名出ます。


四十五話 二人の幼馴染〜前編〜

七十六層・アークソフィア

 

フィリアとツクヨの二人がホロウエリアから帰還してから数日後。

その日は皆攻略を休み、各々の休日を満喫していた。

そしてそれはジェネシスとティアも例外では無く、二人は揃ってアークソフィアの街を散策していた。

二人は他愛のない会話を交わしながら仲睦まじい雰囲気を漂わせながら街を歩いて行く。

 

「ねえ、次はどこに行こっか?」

 

「どこ行くったってな……もうこの街は大抵散策し終えただろ」

 

「そうかな?まだ行ってないお店とかいっぱいあると思うよ?最近じゃ下の層から来たプレイヤーも増えてるし」

 

「ほんと物好きな奴がいたもんだよな。こっちに来たらもう下の層には戻れねえってのに」

 

「あはは……確かに」

 

ジェネシスの言葉を受けティアは苦笑する。

 

「なんじゃ主ら、こんなところにおったのか」

 

そこはやって来たのはツクヨ。左腕には何かが沢山詰まった紙袋を抱えている。

 

「見ての通り散歩中だ。そっちもか?」

 

「ああ。この街にも大分慣れて来てな。今日も歩き回っていたら、なかなかいい掘り出し物があった」

 

そう言ってツクヨは紙袋の中身を二人に見せた。

中に入っていたのは大量の饅頭やおかき、牡丹餅と言った和菓子だった。

 

「なんだこれ?和菓子の店なんざこの層にあったか?」

 

「いつからあるのかは知らん。じゃがどれも中々いい味をしておる。気になるなら行ってみるといい……《えっちゃんの和菓子店》という名の店じゃ」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

ツクヨは店の場所だけ教えたのちに皆と寝泊まりしている宿へと戻って行った。

ジェネシスとティアはツクヨが行ったという和菓子店に興味を持ち早速そこへ向かう。

 

「しっかし、西洋マシマシのこの世界で和菓子とはな。随分粋な奴がいるもんだぜ。ちょっと和菓子が食いたくなってたからちょうど良かったわ」

 

と、甘いもの好きなジェネシスはかなり楽しみなようだ。

一方それに対してティアは顎に手を当てて何か考え込んでいる様子だ。

 

「《えっちゃんの和菓子店》…………うーん……まさかね……」

 

「ん?どうしたんだよ」

 

ティアの様子を訝しんだジェネシスが彼女の顔を覗き込む。

 

「ちょっと現実での話になるんだけどね……私の家族がよく和菓子を買いに行ってた店があって。

それが《えっちゃんの和菓子店》っていう今から行くところと全く同じ名前なのが気になって……」

 

「はあ?んなもん偶然に決まってんだろ。えっちゃんなんざよく聞く名前だ」

 

ジェネシスはティアの疑念に取り合わずに先に進む。

ティアも黙ってついて行くが、その疑念は晴れなかった。

やがて二人は建物と建物の間のやや薄暗い路地裏を進んでいく。すると、微かな甘い匂いが鼻を突いた。

そして薄暗い路地裏の中で暖かなオレンジ色の光を放つ扉と窓が見えて来た。その壁には丸く小さな木の板で出来た看板があり、手書きの字で《えっちゃんの和菓子店》と書かれていた。

 

「ここか…」

 

ジェネシスは早速木のドアを押し開けて中に入る。

『チリーン』という鈴の音と共に「いらっしゃいませ〜」という気の抜けた少女の声が響く。

中はオレンジの暖かな光で照らされているが控えめで僅かに薄暗い。

彼らの目の前には現実にあるスイーツ店と同じくガラス張りのショーケースに美味しそうな和菓子が沢山並べられている。

そしてその奥に立つ店員と思われる人物は、薄めの金髪に頭部にはアホ毛が立っており、口元は赤いマフラーで覆われている。黒いメガネの奥の両目は気だるげに垂れている。

 

「……あの、御注文はありますか」

 

しばし沈黙があった後に店員の少女がそう尋ねる。

 

「ああ、えっと……

そんじゃ何かオススメのやつを

 

「えっちゃん!!!」

 

ゴベブハッ?!!」

 

突如ティアが店員の少女を見るなり興奮した様子でジェネシスを押し除けて飛び出した。

 

「えっちゃん!えっちゃんだよね?!私だよ私!現実でそっちの店によく行ってた一条雫!!」

 

店員の《えっちゃん》と呼ばれた少女は一瞬ポカンとした様子だったが、数秒間ジッとティアの顔を見つめた後、

 

「……ああ、雫ちゃんですか。お久でーす」

 

と、気の抜けた口調でそう発した。

 

「やっぱり!!わぁ〜懐かしい!

お店の名前と和菓子を売ってるって聞いてもしかしたらと思ったんだよ〜!!でもまさかSAOに来てるなんて思わなかったな〜」

 

「私も雫ちゃんがいるなんて思ってませんでしたよー。

お互い運悪く巻き込まれちゃったみたいですねー」

 

お互い再会を喜び合い、笑顔で言葉を交わす。

 

「……よーし、ちょっと待とうか」

 

ここで先程ティアに吹き飛ばされたジェネシスが戻り、二人の間に割って入った。

 

「え、なに?お前ら知り合い?」

 

「えっと、うん。この子は《江戸川 澄香》ちゃん。の家は現実世界でも和菓子店をやってて、私の家族がよく買いに行ってたの」

 

「こっちでは《オルトリア》です。よろしくです」

 

そう言ってオルトリアはゆっくりと頭を下げた。

 

「それで、こっちは私の………………

 

か、彼氏で夫の《ジェネシス》……だよ///」

 

ティアは顔を真っ赤にしながらジェネシスをオルトリアに紹介した。

 

「なんで今更そんな事で恥ずかしがってんだよ……。

んま、そういう訳だからよろしく頼むぜ。

 

そんで、なんかおすすめのやつってあんのか?」

 

「おすすめ、ですか……私の店の商品はどれも味には自信があるのでどれが一番かは決めづらいのですがね〜……」

 

ジェネシスの問いにオルトリアは悩ましげな表情でガラスケースに並ぶ商品を見渡した。

彼女のいう通り、ガラスケースの中に並ぶ和菓子はどれも非常に見た目の良い物ばかりであった。

大福や牡丹餅、羊羹、どら焼き、団子と言ったメジャーなものから、現実ではマイナーなものである金鍔や桜餅、中には地方の名産である赤福まであった。

 

「確かに…………こりゃどれも旨そうだ」

 

甘いものが大好きなジェネシスも、目の前に並べられた沢山の和菓子を前に思わずそう言った後に黙り込んでしまった。

すると横にいたティアが身を乗り出す。

 

「あ、じゃあさ!あれってあったりしない?

あの、現実のえっちゃんのお店でも1番のオススメだった《黄金のわらび餅》!!」

 

ティアは目を輝かせながらワクワクした様子で尋ねる。

するとオルトリアは「あぁ〜……」と申し訳なさそうに目を伏せる。

 

「……あれ?ひょっとして無い感じ?」

 

オルトリアの様子を見て何かを察したティアが尋ねるが、彼女は首を横に振る。

 

「いえ、あるにはあるんですけど……今ちょっと在庫がなくてですね」

 

「えっ、じゃあここでも食べられるの?!あのわらび餅!!」

 

「え?あ、はい……まあ、材料があればいつでも作れますよ」

 

するとティアは「よっしゃあぁ!!」といつになく高いテンションでガッツポーズをとる。

 

「……なあ、質問なんだが……

 

そんなに美味いの?そのわらび餅」

 

ティアの高いテンションに押され気味のジェネシスがおずおずと尋ねる。

 

「久弥……ここのわらび餅を食べたら他のわらび餅食べられなくなるよ?」

 

「よしわかった。

そんじゃ取りに行くか、材料」

 

ティアの言葉を受け、ジェネシスは意を決してそう宣言した。

 

「……え、今から行くんですか?」

 

「うん!だって食べたいもん!えっちゃんのわらび餅!!」

 

「甘いもん好きな俺としちゃなんとしても食いたいからなそれ」

 

二人はメニュー欄を開き、戦闘用の衣装に手早くチェンジし、各々の武器もセットして準備を整えた。

 

「あ、それなら私も行きます。私が行った方が材料も手に入れやすいでしょうし」

 

するとオルトリアもいそいそと店の奥に移動を始めた。

 

「えっ?でもえっちゃんのも店番が……」

 

「大丈夫です。こんな路地裏にありますから滅多にお客さんなんて来ませんし、どのみち早く材料を手に入れないといけなかったんです。問題ありませんよ」

 

「そりゃ助かるから良いんだが……お前戦えんのか?」

 

「ご心配には及びませんよ。雫さんたちには及ばないかもですけど、美味しい和菓子を作るために鍛えて来ましたので自信はあります。伊達に最前線まで来てません。」

 

そしてオルトリアは自分の店を手早く片づけ、戸締りをした後に一行は早速出かけた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

彼らがやって来たのは76層の色とりどりの草木が生えるフィールド。

 

「ここに素材があるの?」

 

「はい。ここで取れるカタクリがあれば、それを粉状にして作れますので」

 

「要するに片栗粉じゃねえか。

まあそりゃ良いけどよ……お前すげえ格好だな」

 

ジェネシスが気になったオルトリアの今の格好は、先ほどまでの大人しめな服装などではなく、赤黒いロングコートとなっている。頭にはフードを被せており、眼鏡やマフラーは外されている。下半身の衣服はミニスカートから黒い短めのホットパンツとなり、タイツ生地の靴下を履き靴は厚底のブーツとなっており、先ほどまでとは印象が全く異なるものだった。

 

「これは私の戦闘服ですが……何か問題でも?」

 

「いや、別に問題があるってわけじゃ無いんだがよ……」

 

「私はすごくかっこいいと思うよ?えっちゃん」

 

「どうも」

 

そんな会話をしていると、目の前に一体の巨大なカブトムシ型モンスターが出現した。

 

「まあ正直無視しても良いんだが……ちょっと腕試しと行くか」

 

「うん。油断しないようにね」

 

ジェネシスが背中から大剣を引き抜き、ティアは左腰から刀を抜く。

するとオルトリアは懐から紙袋を取り出し、中から真っ白な饅頭を一つ取り上げ口に運ぶ。

 

「って待たんかいいぃぃぃ───────!!!」

 

その時ジェネシスが鬼の形相でオルトリアに蹴りかかった。

オルトリアは間一髪のところでそれをかわす。

 

「……何するんですか。貴重な和菓子を落とすところだったじゃないですか」

 

「知るかぁボケェ!!これから戦闘ってときに何呑気にお菓子食ってんだ!!」

 

「何言ってるんですか。食べたい時に食べる、それがおやつタイムと言うものです」

 

怒鳴るジェネシスに対しオルトリアは悪びれる様子もなく淡々と答える。

 

「戦闘は私、あまり得意じゃないので」

 

「じゃあ何のために戦闘服に着替えたんだ!?

俺が『腕試し』って言ったの聞こえなかったか?!」

 

「腕試しも何も、あんなモンスタージェネシスさんと雫さんがいれば一瞬じゃないですか。私の出番無さそうですよね」

 

「俺はてめぇの実力がどのくらいなのか測るつもりで『腕試し』って言ったんだよ!いいからとっとと武器構えろ!菓子食うのはその後だ!!」

 

「あ、あの久弥!取り込み中悪いけどいまそっちに……」

 

喚き立てるジェネシスに対しティアが警告を入れた束の間だった。

 

「ぐおおおわああああーー!!」

 

ジェネシスはカブトムシ型エネミーに突進され数メートル吹き飛ばされた。

 

「ほらぁ!!てめぇのせいでこいつの攻撃喰らっちまっただろうが!!」

 

「えー、私のせいですか」

 

涙目でオルトリアを睨みながら叫ぶジェネシスに対し、首を傾げながら答えるオルトリア。

 

「あ、えっちゃん!!危ない!!」

 

するとカブトムシ型エネミーは今度はオルトリアを標的に変え、巨大な角を真っ直ぐにオルトリアに向けて勢いよく走り出し──────

 

「えい」

 

直後、『シュバッ!!』という鋭い空切り音が響き、数秒後にカブトムシの角がカランと地面に転がった。

 

「危ないじゃないですか。私の和菓子に何かあったらどうするつもりなんですか」

 

オルトリアはカブトムシを見下ろしながらそう言った。

左腕は和菓子の入った紙袋を大事そうに抱え、反対側の右手には赤く光る剣が握られていた。その剣の柄は丸く黒い円筒状のもので、そこから伸びる刃は金属の物ではなく、まるでレーザー状のものに見えた。

そう、オルトリアが携える剣はまるで……

 

「…アイエエエェェェェェーー?!ビームサーベル?!ビームサーベルナンデ?!!」

 

SF映画に登場する光剣そのものだったのだ。

 

「名前は《クロスカリバー》っていうそうです。まあそれはどうでもいいですが……

とりあえず早くお菓子食べたいので倒しますね」

 

そしてオルトリアは菓子袋をストレージに収納した後にコートの内ポケットからもう一本同じ光剣を取り出し、それを右手の剣の反対側に取り付けて両刃刀の形状に合体させた。

この世界ではサツキしかいない《双頭刃》スタイルだ。

 

「そぉい」

 

オルトリアは双頭刃のビーム状の刃を頭上から振り下ろし、そのまま横に切り払う。

そのまま持ち手を左右の手で器用に回転させ、風車のように素早い連撃を加える。

オルトリアから思わぬ猛攻を受けたカブトムシ型エネミーは羽を展開して空中へ逃避する。

 

「逃しません」

 

オルトリアは空中へ逃げたエネミーに向けて双頭刃を投げた。すると彼女の剣はブーメランのように回転しながらモンスターへと飛来し、羽を切り裂いて地面に突き落とす。

 

「ナイスだよえっちゃん!とどめは任せて!」

 

ティアは落下したエネミーの元へ駆け出し、そのまま刀を横一閃に斬り払った。その一撃を受け、カブトムシ型エネミーは消滅した。

 

「ふう…では糖分補給の時間です」

 

オルトリアはビーム刃を収納した後にグリップをポケットに収め、再び先程の菓子袋を取り出して食べ始めた。

 

「お疲れ様えっちゃん。凄かったじゃん!」

 

刀を納めたティアが笑顔でオルトリアに駆け寄る。

 

「雫ちゃんもお疲れ様でした。これ、よかったらどうぞ」

 

オルトリアは袋の中から大福を一個取り出すと、それをティアに手渡した。

 

「えっ、いいの?!ありがとう〜!

…………ん〜!!おいひい!!」

 

ティアは受け取った大福を口に放り込むと、その美味しさについ顔が綻んだ。

 

「はあ……もう色々疲れたわ」

 

立ち上がったジェネシスは嘆息しながら呟いた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

一行が再び歩き出してから数十分後、少し開けた林道に入った。

 

「あっ、ありました」

 

オルトリアが指差した先には、鮮やかなピンク色の花が咲いたカタクリが群生していた。

オルトリアはそれに向けて駆け出す。

 

「…!待ってえっちゃん!止まって!!」

 

すると何かを察知したティアがオルトリアに叫ぶ。

その声を聞いたオルトリアは慌ててその場から飛び退くと、彼女が立っていた場所に一体のモンスターが轟音と共に着地した。

土煙が晴れるにつれ、その姿が露わになっていく。

それは蜘蛛型の巨大なエネミーだった。HPバーは3本あり、名前が《ラグナック》と表示されている。

 

「マジか……よりによってエリアボスがこんなとこに来るとはな」

 

既に大剣を引き抜き戦闘態勢に入っていたジェネシスが苦い顔で言った。

 

「でも、こいつを倒さないとわらび餅が作れません。なので倒します」

 

「うん。必ず勝とうね!」

 

オルトリアとティアも各々の武器を構えてそう掛け合った。

 

「うっし、んじゃ戦闘開────」

 

「ちょっと待ったぁぁーーー!!!!」

 

ジェネシスが戦闘開始と言いかけた所で、彼らの背後から叫び声が響き、同時に黄色の眩い光を放つ極太のビーム光線が放たれ、ジェネシス達の頭上を通過した後にラグナックに直撃、轟音を立てて吹き飛ばした。

一体何者の仕業なのか後ろを振り返って見てみると、そこには一人の少女が立っており、その隣にはほぼ彼女の等身大のサイズがある巨大な弓があった。

少女の艶のある黒髪はツーサイドアップの髪型になっており、瞳は真紅。装備の色は上が白生地に金のライン、したが黒という構成だが、水着とほぼ同じサイズしかなく彼女の素肌をこれでもかと晒している。が、当の本人は気にしていない様子。

 

「待たせたわね、この私が華麗に参上したのだわ!!」

 

少女はジェネシス達に対して得意げな顔で叫ぶ。

ジェネシスは一瞬なんだこいつはと感じたが、ふと彼女の顔を見て何かを思い出しはっとした顔になる。

 

「て、てめぇは…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……凛、か……?」

 

 




お読みいただきありがとうございます。
さて、今回出たのはオルトリア、モチーフはFGO のヒロインXオルタになります。
そして終盤に出たキャラは……FGOを知っている方ならもう分かったかな?正体は次回明らかになります。
では、また次回。


〜おまけー

ミツザネ「これからどうなるか……楽しみに待っていろ」

分かる人には分かる中の人ネタ。
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