ソードアート・オンライン〜二人の黒の剣士〜   作:ジャズ

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どうも皆さん、ジャズです。
今回はいろんなネタを積み込んでおります。


四十九話 シノンの苦悩

七十六層・アークソフィア

 

「これで全員揃ったかな?」

 

クラインがグラスを片手に周囲を見回して確認する。

食堂にはジェネシスやキリトを始めとした仲間達が同じようにグラスを持って座り、クラインの方を見つめていた。

 

「それじゃあ九十層到達記念パーティを始めたいと思います!

思い起こせば2年前、俺は一流のプレイヤーになろうと……」

 

「アンタの話なんかどうでもいいから、早く乾杯しなさいよ」

 

クラインの話を遮ってリズベットがそう急かした。

 

「ひっでぇ?!まだ話のさわりも言ってねえってのによ!

……まあ、いいか。それじゃ、コホン……

 

九十層到達おめでとう!乾杯!!」

 

『『『『かんぱ〜い!』』』』

 

皆は一斉に仲間達とグラスを打ち付け合い、『カラン』という音が響いた。

このデスゲームが始まって約2年。プレイヤー達はここでようやく、ゴールの目前まで迫ることが出来たのだ。

 

「ようキリトにジェネ公、九十層到達おめでとさん」

 

クラインがキリトとジェネシスの元にやって来た。

 

「ああ、おめでとうクライン」

 

「おめえらと会ってから2年……お互いこうしていられるなんて感慨深いじゃねえか、なあ?」

 

「俺はそうでもねえけどな」

 

「なんでぇ?!」

 

ジェネシスの素っ気ない答えにクラインは悲痛な顔で叫んだ。

 

「キーリトっ、楽しんでる?」

 

「料理も美味しいし、仮想世界も侮れないわね」

 

そこへリズベットとイシュタルがやって来た。

 

「リズにイシュタルか。ああ、楽しんでるよ。料理もう美味いしな」

 

「そりゃあ一流シェフのアスナにティア様が直々に作ってる料理だもん。美味しいに決まってるわ!」

 

「ええ、あの子ったらかなり気合入れて作ってたわよ〜。

『久弥に美味しい料理食べてもらうんだ〜』って」

 

イシュタルがニヤニヤと笑いながらそう告げた。

 

「こんな美味え料理をお前らは毎日食べてんのか!この幸せ者め!あとジェネシス、おめぇはさっさと爆発しろ!」

 

「毎日食ってるわけねぇだろあいつらだって忙しいのに。

あとクライン、悔しかったらテメェも早くいい相手見つけろよ」

 

「食えるだけでも幸せだっての!くそう、今日くらい俺が全部平らげてやる!」

 

そう言ってクラインはテーブルに並べられた料理を一斉にかき集め始めた。

 

「何してんだクラインテメェ!!」

 

「なっ、そうはさせるか!!」

 

するとジェネシスとキリトもクラインに料理を取らせまいと慌てて取り始めた。

 

「あ〜あ」

 

「何やってんだか……」

 

それをイシュタルとリズベットは呆れた顔で見つめていた。

 

「おいキリトにジェネシス。こっちの料理も食ってみてくれねえか?」

 

そう言ってエギルはテーブルに二つの大きな皿を持って来た。

皿の上には、皿一杯の大きさがある丸い生地に、赤いケチャップソースが塗されておりその上にこんがり焼けたチーズが香ばしい匂いを漂わせている。

その料理はどう見ても……

 

「こりゃ…ピザか?」

 

「ああ。SAOのアイテムでどこまで再現できたかは分からんが……兎も角食べてみてくれ」

 

「おお!それじゃ早速……」

 

そう言って手を伸ばしたキリトだったが…

 

「ああ、ちょっと待った」

 

その手をエギルが制した。

 

「実はな。余興も兼ねて少し趣向を凝らしてみた。

この中の一切れに、激辛が混ぜてある」

 

エギルは悪戯な笑みを浮かべて言った。

 

「激辛って…どれだけ辛いんだろう……」

 

それを聞いたリーファがやや不安げな表情で呟く。

 

「因みにありえない量のソースを混ぜてたわよ」

 

するとここで、一緒に料理を手伝っていたアスナとティアが戻った。

 

「主ら何故止めんかったのじゃ」

 

「だって楽しそうだったんだもん……」

 

ツクヨが呆れた顔で問いかけ、ティアが俯きながら答えた。

 

「因みに何を混ぜたの?」

 

「えっとな……確か『マックスハザードデスソース』って奴だ」

 

「「「「ぶっっ?!!」」」」

 

それを聞いた瞬間、MHCP組のレイ・ユイ・ストレア・サクラが吹き出した。

 

「な…な……」

 

「何てもの混ぜてるんですかエギルさあぁぁぁん!!!」

 

そして青ざめた顔でレイとユイが詰め寄る。

 

「な、なんだ?どうしたんだお前ら」

 

レイ達の様子にエギルは戸惑った表情で狼狽えた。

 

「『マックスハザードデスソース』はSAOが開発された段階で出てきた没案の一つだよ。理由はバカみたいに辛いかららしいんだけど……

最近起きたカーディナルの不調でこういう没案のアイテムが出てきちゃってたりするんだよね……」

 

ストレアが皆にエギルの使った激辛ソースの正体を説明した。

 

「なあ、辛いってちなみにどれくらい辛いんだ?」

 

「……唐辛子300本分です」

 

「いや辛すぎィ!!」

 

「そんなの食べたら舌がガタガタゴットンズッタンズッタンになるわよ!!」

 

「完全にYABEEEEEEI!ソースじゃんそれ!!」

 

「味覚エンジンがOVERFLOWしますよ!」

 

そのソースの恐るべき辛味のレベルをサクラが伝えた瞬間、リーファ、イシュタル、サチ、サツキが喚き始めた。

 

「おお、そんなにエグい代物だったのか……まあ、一種のロシアンルーレットだ。寧ろ当たればラッキーくらいのもんで行ってみればいいだろ」

 

元凶のエギルは一切悪びれる様子もなくそう言った。

 

「ふざけんじゃ無いわよ!あたしは絶っっ対に食べないんだからね!!」

 

「あ、あたしも……ちょっと遠慮しようかな」

 

「私もパスで。リスクの割にペナルティがあまりに大きすぎるわ」

 

少女達は『マックスハザードデスソース』の恐るべき辛さに慄き、そのピザを食べるのを拒んだ。

 

「おいおい、そりゃあそのピザをお前らが食べないのは勝手だ……だがそうなった場合、誰がそのピザを完食すると思う?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……万丈だ

 

「いや誰だよ」

 

「冗談だ。キリトとジェネシスがこれを完食する」

 

「待て待て待て待て、なんで俺らが食うことになったんだよ」

 

勝手に話を進めるエギルにキリトが抗議する。

 

「ああ、それなら激辛を食べたやつはキリトとジェネ公に、何か好きな事をお願いできる、とかはどうだ?」

 

するとクラインが皆に対してそう提案する。

 

「き、キリトさんとジェネシスさんに、ですか?」

 

「ああ。買い物に付き合ってもらうもよし。一緒にクエスト攻略もするも良し。レアアイテム取りに行くも良し。いろちろあんだろ」

 

「な、成る程……」

 

クラインの提案の結果、次々に少女達が参加の意を表明した。

 

「わっちはパスで頼む」

 

「わ、私も。辛いのは本当無理なので……」

 

「俺もやらん。てめぇらだけで楽しめばいい」 

 

ツクヨ、ハヅキ、ミツザネが不参加なので、計二十名が参加することになった。

 

「良し、ちょうどいい。20切れあるから、みんな自分の食べるやつを選んでくれ」

 

そして皆は各々が食べるピザを手に取った。

 

「よーし、みんなピザは持ったか?それじゃせーので食うぞ……

 

せーの!!」

 

瞬間、皆は一斉にピザを口に放った。

さて、ソースがソースなので、その辛味は一瞬で襲ってくる。その餌食となったのは……

 

「ゔっ………

ホギャアアアアアアアアアアアアアーーー!!!!

 

「く、クライイイン!!」

 

クラインだった。

口から炎のようなエフェクトを放ちながら凄まじい絶叫を上げてクラインはのたうちまわった。

 

「AHYEEEEE!AHYEEEEEEE!AHYEEEEEEEEEEEI!

OHOOOOOOOOOO!!AバGレブhmu◯△□※……」

 

もはや理解不能な言語を発しながらその激辛ソースに悶絶する。

 

「く、クラインさあぁん!!」

 

「ブァッハハハハハハ!!いいリアクションだぞクライン!!」

 

それを見て大爆笑するエギル。

 

「水うぅぅぅーー!!水をくれぇキリトにジェネ公ーーーー!!!」

 

悲鳴に近い声で水を求めるクライン。

キリトとジェネシスは慌ててテーブルに乗せられていたピッチャーを持ち、

 

「クライン、水だ!!」

 

そしてそれをクラインの口に一気に流し込んだ。

 

「んぐっ…んぐっ…ブハアッ!!

ちきしょう、これが唐辛子300本分の辛さってやつか……」

 

クラインはフラフラと立ち上がる。その顔はもはや生気がない。

 

「俺は止まらねぇからよ……だからよ………止まるんじゃねぇぞ……」

 

そしてクラインはパタリと倒れた。

 

「クライイィィィィン!!!」

 

「クラインが死んだ!!」

 

「この人でなし!!!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

それから数日が経った。

ジェネシスはシノンに用事があったので、彼女の部屋をノックした。

 

「おーい、シノン」

 

しかし何度呼びかけても返事がない。

仕方なく彼は、一階の食堂へ足を運んだ。

 

「え?シノンちゃんいないの?」

 

一階に降りると食堂の角の席にティアが座っており、事情を聞くなり驚いた顔をした。

 

「ああ。ちょいと射撃訓練にでも付き合ってやろうかと思ったんだが、いねえんならしょうがねえ」

 

「………」

 

するとティアは何か思い詰めた表情で考え込んだ。

 

「シノンちゃん、最近すごく悩んでるみたいで……」

 

曰く、彼女は先日行われたボス戦で、自身がドラゴンの攻撃を受けた際にロクな回避や反撃が出来なかった事を気にしているようだった。

そしてその後、迷宮区攻略の際にモンスターに詰め寄られた時があり、その時も同じように反撃が出来なかったのだ。

シノンは射撃武器を使用しているので、接近された場合に反撃できないのは致し方ないのだが、彼女はどうやらそれを非常に気にしているらしく、『自分が皆の負担になっているのではないか』と不安になっているそうだ。

 

「射撃武器は近づかれちゃどうしようもないわけだろ?そうならねえようにすんのが前衛の仕事だろうが」

 

「そうなんだよね……だからあの時は私たちの責任でもあるから気にしなくていいって言ってるんだけど……」

 

「たく。そんな小せえことウジウジ気にしやがって……」

 

「さっきもその事を話しに行こうとアスナと行ったんだけど、見つからなかったんだよね」

 

「……分かった。シノンを見かけたらお前らが探してたって伝えといてやるよ」

 

「ありがとう、じゃあお願いね」

 

そう言うとティアは席から離れ、宿から出て行った。

 

「はぁ……んま、あいつがいそうな場所ならおおよそ検討ついてんだけどな」

 

ジェネシスは1人呟くと、モーニングで注文したコーヒーとホットサンドを食べ、席を立った。

 

アークソフィアの街を抜け、草原地帯にやって来ると、1人の少女が弓を構えてトレーニングをしていた。

 

「おっ、いたいた」

 

「ジェネシス!あんた何でここに……」

 

「おめぇを探してたんだよ。訓練をするんなら言ってくれりゃ手伝うのによ」

 

「訓練始めた時、アンタは寝てたからね」

 

ジェネシスの言葉にシノンは呆れた顔で答えた。

 

「おいおいそんな時間からやってんのかよ。まさかぶっ通しでやってねえよな?」

 

「それより、折角来たのなら訓練手伝ってくれない?近接戦での回避の練習がしたいの」

 

「そりゃいいけどよ、お前ちゃんと休んでんのか?」

 

「何日も寝てない訳じゃない。今は大丈夫よ、訓練を優先するわ」

 

「……はいよ。ただし途中で必ず休憩は挟むからな」

 

そしてジェネシスは大剣を引き抜き、シノンの前に立った。

 

〜10分後〜

 

大剣を肩に担いだジェネシスとそれをじっと観察するシノンが向かい合う。

そして何のフェイクも予備動作もなく、ジェネシスの大剣の切っ先がシノンに飛び出した。

 

「あっ……!」

 

シノンは回避が間に合わず、切っ先が腹部に直撃した。

 

「だーめだ、集中力が切れてきたな。一旦休憩だ」

 

ジェネシスはそう言って大剣を納めた。

 

「で、でも……」

 

「あのなぁ、効率的なプレイってのは短時間で集中してやんのがセオリーってもんだ。だらだらやるのは一番良くねえ」

 

ジェネシスはそう言うが、シノンは納得できていない様子だ。そこで彼は、先程ティアから聞いた事を思い出す。

 

「…アレか?お前この間のやつ気にしてんのか。んなもん気にすんなっての。

いいか?射撃武器ってのはどう足掻いたって近接戦が弱点なんだよ。だからテメェの所に敵を行かさないようにするのが俺たち前衛の仕事だ。反対に、近接戦じゃカバー出来ない遠距離からの攻撃はおめぇみたいな奴が担当…とまあ、パーティ戦ってのは役割分担が大事なんだよ。持ちつ持たれつって奴だ」

 

「……そう言う事じゃないの」

 

シノンはやや小さめの声でそう呟いた。

 

「私は強くなりたいの!今は誰かに頼らないと戦えない…それじゃダメ、全然意味が無い!」

 

強い口調で訴えるように言うシノン。

 

「私はこの矢で沢山の敵を撃ち殺して……膨大な屍の山で全てを埋め尽くして……それで私は、私を取り戻せる。

 

そうでなければ……強くならなければ意味が無いの……!」

 

振り絞るようにそう言葉を出した直後、シノンは突然街に向かって走り出した。

 

「ちょ、待てよシノン!」

 

ジェネシスはそれを慌てて追いかける。

しかし彼は、途中でシノンを見失ってしまった。

 

「チッ、あんにゃろうどこ行きやがった……」

 

街の隅々まで探したが、シノンを見つけることは出来なかった。

しかしそれよりジェネシスが気になったのは、シノンの言葉だった。

“強く無ければ意味が無い”…まるで何かに取り憑かれたように話すシノンの姿が脳裏に鮮明に残っていたのだ。

 

「強くなりたい、か………

まさか最前線の層に行ってたりしねえよな」

 

若干の不安を抱えながら彼は転移門から九十層に移る。

 

九十層に到着した彼は、フレンドの位置情報を検索する機能を使ってシノンの位置を割り出す。

 

シノンは、迷宮区にいた。

 

「ははは………はぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………あんのバカやろおおぉぉぉぉぉぉーー!!!」

 

ジェネシスは思わずそう叫びながら全速力で走り出した。

 

迷宮区の入り組んだ道を兎に角走り続け、ジェネシスはシノンを探す。

幾らレベルが十分に上がったとは言え、今のシノンが最前線の迷宮区を1人で攻略など無謀に過ぎる。最悪の事態を回避するため、ジェネシスがひたすら走り続けた。

 

「くっ……!」

 

不意に、彼の耳にシノンの悲鳴が響く。

その聞こえた方角に向かうと、シノンが五体ほどのモンスターに囲まれていた。

 

「おい、シノン!!」

 

「じ、ジェネシス…!」

 

見ると、彼女のHPは既にレッドゾーンに入っていた。事態は一刻を争う所まで迫っていた。

 

「シノン、頼むから持ち堪えろよ…!!」

 

ジェネシスは大剣を構えると、モンスターの群れに斬り込んでいった。

先ずはカブトムシ型のモンスターがジェネシスにその角を突き出して飛びかかった。それに対してジェネシスは大剣ソードスキル《アバランシュ》で応戦し、すれ違い様にカブトムシの腹に思い一撃を叩き込んだ。その一撃でカブトムシは消滅する。

続け様にやって来たのはスケルトン。細い骨に見合わない大きな斧を振りかざし、ジェネシスに襲いかかる。

同時に左右・後ろから別のモンスターが襲いかかる。

 

「このっ…!」

 

それに対して暗黒剣ソードスキル《ドレッド・ブレーズ》を発動し、4体纏めて斬り伏せ、吹き飛ばした。

暗黒剣の大技を受けた四体のモンスターは一気に消滅した。

 

「ジェネシス……」

 

地面にへたり込んでいたシノンが彼を呼んだ。

 

「ごめんなさい…面倒をかけたわね……」

 

「てめぇなあ……マジで心臓止まるかと思ったぞ!なんでこんな無茶しやがった?!!」

 

自分の命を顧みない無謀な行為に、ジェネシスは怒り、強い口調でシノンに詰め寄った。

 

「HPが無くなったらどうなるか、テメェだって分かってんだろ?!」

 

「そんなの、もちろん分かってるわよ……

でも、それで消えるなら……それでも良いと思った……

このまま無力に怯えて生きていくよりは……そっちの方が何倍もマシだって……」

 

「おまっ……!」

 

あまりにも自分の命に対してぞんざいな発言をするシノンに対しジェネシスは思わず引っ叩きそうになる。

 

「でも……いざHPゲージが赤くなって…本当に消えるんだって思うと………怖くなった……!」

 

「……!」

 

「怯えたまま……何も出来ないまま終わってしまうのが………辛くて……悲しくて……ううっ……!」

 

とうとうシノンは両眼から涙を零して泣き出し始めた。

そんな彼女をみて、ジェネシスは何も言えなくなり、ただ彼女の頭を撫でることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「……ごめんなさい、泣いたりして」

 

しばらくして落ち着きを取り戻したシノンは、恥ずかしさから赤面して謝った。

 

「……それは謝る事じゃねえよ」

 

そんな彼女の謝罪を、ジェネシスは軽く流した。

 

「……なあシノン。てめぇの過去に何があったのか、テメェが何を抱えて生きてんのか……今は聞かないでおく。シノンが話したくない事を無理やり聞き出すような鬼じゃねえからな。

ただこれだけは覚えてくれ……辛い時は辛いって言え。泣きたい時は大きな声で泣け。助けて欲しけりゃ、腹の底から助けを求めろ。俺たちはぜってぇにお前を見捨てたりなんざしねえからよ。もう二度と、テメェ1人で抱えるんじゃねえぞ」

 

強く念を押すようにジェネシスは言った。

 

「……これは私の問題だから、多分私にしか解決できない…でも、ありがとう。気持ちは嬉しい」

 

シノンは笑顔でそう言った。

 

「ねえ……恥ずかしいんだけど、私まだ足が震えてて動けそうに無いの……だから、もう少しだけ、このままでいさせて……」

 

甘えるようにシノンは彼に身を委ねてそう頼み込む。

が、

 

「……悪いけどなシノン。そう言うわけにも行かなさそうだぜ」

 

「…え?」

 

ジェネシスは通路の遥か遠くを睨んでいる。その先は真っ暗でシノンには何も見えないが……

 

「索敵スキルに反応があった。モンスターの群れが押し寄せてくるぜ」

 

「嘘でしょう?どうすんのよ」

 

「はっ、決まってんだろ。この足を使うんだよ」

 

ジェネシスは自身の足をポンと叩き、立ち上がる。

 

「あんたの足を………って、ちょっと」

 

するとジェネシスはシノンをひょいと持ち上げ、肩に担ぐ。

そして……

 

「逃げるんだよォ!スモーキー!!」

 

「ひゃあああッ!!あんた、もっとゆっくり!ゆっくり走りなさいよ!!」

 

「バカヤロウッ!モンスター来てんのにゆっくり走ってどうすんだ!!」

 

「にゃああああああっ!!!」

 

ジェネシスの全速力に揺さぶられて悲鳴を上げるシノンの声が九十層の迷宮区に響き渡った。

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。
さて、次回はいよいよ五十話。とうとうここまで来たか……と感無量の思いです。ここまで続けられたのも、一重に読者の皆さんのお陰です。本当にありがとうございます。
そして次回の内容ですが、少し幕間を挟みたいと思います。具体的な内容は、今後の展開につながる現実世界のお話にしようと考えています。SAO HF編終結後の伏線や多数登場する新キャラのヒントも詰め込んでおりますので、どうぞお楽しみに。
では皆さん、また次回。評価、感想などお待ちしております。
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