ソードアート・オンライン〜二人の黒の剣士〜   作:ジャズ

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前回は五十話記念を読んでくださり、ありがとうございます。
感想欄でいろいろな新キャラが何者なのかと言う予想が出ていてとても嬉しかったです。彼らと皆さんがお会いできるよう、なんとしてもこの小説を続けて参りたいと思います。

では、五十一話、どうぞ。今回はジャズがホロウフラグメント編でやりたかったことの一つです。


五十一話 みんなで店番

その日、ジェネシスやキリト達が利用している宿屋の食堂は大勢の人で賑わっていた。

 

「なぁ、ジェネシス……一ついいか?」

 

両手に注文の料理を乗せた皿を持ったキリトがげっそりとはした顔で尋ねる。

 

「ああ、キリトよ……て言うか、俺も多分同じことを思ってるわ……」

 

厨房に立って客席を眺めているジェネシスは苦笑いで頷く。

 

「「……ど う し て こ う な っ た ?」」

 

2人は同時に呟いた。

時は数時間前に遡る───────

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「おっ、キリトにジェネシス!少しいいか?」

 

食堂でジェネシスとキリトが寛いでいると、エギルが近づいてきた。

 

「仕入れの関係で、今から急に店を空かなきゃいけなくなったんだが……その間の店番、頼めねぇか?」

 

「店番か……ああ、別に構わないぜ」

 

キリトは二つ返事でそれを了承した。

 

「恩に着るぜ!戻ったら何でも好きなの奢ってやるからよ。じゃ、ちょっくら行ってくるわ!」

 

「ああ、ごゆっくり」

 

エギルはそう言って小走りで店を後にした。

 

「おいおいいいのか?店番なんて軽々と引き受けちまってよ」

 

ジェネシスが訝しんだ顔でキリトに問いかける。

 

「大丈夫だって。どうせそんなに客は来ないだろうし、装備品の確認でもしながらゆっくりしていればいいだろ」

 

「……今すんげえフラグが立った気がするんだが」

 

2人はそう交わしながら店のカウンター奥へと足を運んで行った。

 

しかしその日はあれよあれよと言ううちに客がやって来て店は溢れかえり、店番の経験のない2人はあっという間に追われることになった。

 

「すまん、フラグ通りになったな…」

 

「よりによってこんなに客が来るとはな……」

 

2人はげんなりした表情でそう交わす。

その間にも……

 

「おーい、こっち飲み物着てないぞ!」

 

「すみません、武具の予約をしていた者なんですけど…」

 

「「は、はいただ今!」」

 

次々と新たな客の注文がやってくる。

とりあえず2人はできる範囲で対応をやる事にした。料理スキル保持者のジェネシスが厨房、キリトがホールで客に対応すると言う形だ。

 

「ジェネシス、ホットサンド二つとアイスコーヒーを頼む!」

 

「あいよ」

 

冷蔵庫からトマト、レタスやチーズ、卵を取り出す。

卵をお湯につけて茹で卵にし、中身を砕く。トマトは輪切りにしてレタスを数枚千切ると、辛子マヨネーズを塗ったパンに挟み、ホットサンドメーカーで温める。

その間にコーヒーを沸かし、氷の入ったグラスに注ぐ。

 

「おーい、出来たぞ」

 

「早いな?!」

 

SAOの料理は簡略化されているためここまで約2分程度で済んだ。そのおかげで料理やドリンクに関してはある程度早く対応することが出来た。

問題は注文の方だ。幾ら料理が早く出来上がるからと言ってキリト1人では多数の客には対応できない。

 

「こっちの注文まだか〜?」

 

「あの、注文いいですか?」

 

このように店に来たはいいものの注文がまだの客がいるのだ。

 

「こりゃ不味いな……」

 

厨房から店を眺めたジェネシスは少し考え込んだ後、仲間達に一斉メールを飛ばす。

 

『手の空いてる奴はエギルの店に大至急集合』

 

するとその1分後……

 

「すみませんジェネシスさん、何かご用ですか?」

 

「遅くなりました!……って何かすごいお客さんの数ですね?!」

 

やって来たのはリーファとシリカ。

 

「ジェネシス、来たよ〜!」

 

「お呼びでしょうか?ジェネシスさん」

 

さらにサチ、サツキとハヅキも来た。

 

「よし、よく来てくれた。唐突だがてめぇら今からホールやれ」

 

「ええっ?!」

 

ジェネシスの唐突な指示にシリカが素っ頓狂な声をあげた。

 

「済まない、エギルに店番頼まれてさ。安請け合いした結果がこれだ……」

 

「はは、たしかにこれは凄いですね」

 

店の惨状を見回してサツキが苦笑いを浮かべた。

 

「俺たち2人じゃ手が回らないんだよ。手伝ってくれ!」

 

「わ、分かりました!そう言う事なら……」

 

「了解、まぁこう言うのは未経験だけど…やってみる!」

 

「もちろんいいですよ。困ったときは助け合い、ですから」

 

ハヅキとサチ、サツキがそう言い、新たに来た5名はキリトに加わってホールの仕事に入った。

 

「はい、メロンソーダとシフォンケーキですね。ご注文承りました」

 

「ありがとうございます。ホットコーヒーとフルーツサンド、ですね」

 

リーファとサツキが慣れた手付きで注文を受け付け、ジェネシスに伝える。

 

「はいよ、これ頼むぜ」

 

それをテンポ良く作り上げ、即座にホールに手渡す。

これで暫くは回すことが出来たが、今度は新たな問題が浮上した。

 

「ジェネシス、四番の席にアップルティーだ」

 

「ジェネシスさん、十一番のお客様がミートスパゲッティの注文です!」

 

「三番にベーグルサンドお願いします!」

 

「十五番にミラノ風カツレツを……」

 

キリト、シリカ、ハヅキ、サチが同時に注文を持って来たのだ。

 

「よーしちょっと待てお前ら、幾ら何でも多すぎだ。とりあえず急ぎのやつはあるか?」

 

幾ら彼の手際がよく料理が出来上がるのが早いとはいえど、複数の注文が同時に来られては流石に対応できない。

そのため、今は優先順位を決めるため、『料理をずっと待っている』『早く料理が食べたい』など、急いで対応するべき注文から作っていく事にした。

 

「とはいえ、流石に俺1人で料理作んのはキツいな……誰か料理スキルを持ってるやつが来てくれたらいいんだが……」

 

すると店のドアが開き、2人の人物がやって来た。

 

「あれ?キリトくんにみんな……ここで何してるの?」

 

「ごめん、久弥。遅くなった……って、何かすごいね」

 

ジェネシスの仲間たちの中でも一流シェフの2人、アスナとティアが来たのだった。

 

「アスナ、来てくれたのか!」

 

「あ、ティアさん。悪いんですけど、ジェネシスさんの厨房をおねg「分かった、直ぐにいく」……お願いしまーす」

 

サツキが言い終わる前にティアは普段の白マントを外して代わりにエプロンを身につけ、厨房に駆け込んだ。それを追うようにアスナも厨房へ向かう。

 

「いいタイミングだぜ。悪いが料理が追われててな……」

 

「全然大丈夫だよ。それで、レシピ表とかってある?」

 

「ああ、これがそうだ。頼むわ」

 

ジェネシスは2人にこの店の料理のレシピ表を渡し、2人は早速慣れた手つきで料理を作っていく。

 

「シリカ、頼まれてたベリーソーダ二つ。お願い!」

 

「はい、持っていきます!」

 

「キリトくん、七番席のアフォガードとクリームシチューできたよ!」

 

「サンキューアスナ!」

 

一流の料理人であるアスナとティアが加わったことで、料理のオーダーには大分対応が間に合うようになった。

 

すると……

 

「ごめんジェネシス、ちょっといい?」

 

「どうした、サチ?」

 

慌てた様相のサチが厨房に飛び込んできた。

 

「武器鑑定のお客様が来たんだけど……私鑑定スキル持ってないから対応出来なくて……他のみんなも持ってないみたいだしどうしたらいいかな?」

 

「マジか……そりゃ専門外だな」

 

ジェネシスも鑑定スキルは持っていない。これに関しては完全に手詰まりだ。そこでジェネシスが出した指示は……

 

「サチ、そのお客さんには少し待って貰え。じきにうってつけのスタッフが来るはずだ」

 

「わ、分かった!」

 

そしてサチは鑑定場まで走っていき、そこで待つ客に頭を下げていた。

 

「ジェネシス、鑑定スキルを持ったスタッフって…?」

 

「そりゃお前、一流の武器職人がいるじゃねえかよ」

 

アスナの問いにジェネシスがあっけらかんと答える。

するとそこへ……

 

「あれ?あんたたちここで何やってんのよ?」

 

「うわぁ……すんごい混んでるわね」

 

やって来たのはリズベットとイシュタル。

 

「よう、ちょうどいいところに来てくれた」

 

「は?何よ一体……」

 

訳がわからない様子のリズベットにジェネシスが事情を説明する。

 

「なーるほどね、分かったわ。そう言う事ならあたしに任せなさい!」

 

「そんじゃそっちは頼むぜ」

 

リズベットは早速鑑定場へと向かっていった。

 

「ジェネシス、私も鑑定場に行くのだわ」

 

するとイシュタルがジェネシスに対してそう進言した。

 

「は?凛お前鑑定スキルなんて持ってんの?」

 

「一応ね。ほら、私って宝石を武器に使ってるじゃない?だからその収集用に持ってるのよ。

まぁリズベット程じゃ無いかもだけど、手伝いくらいにはなれると思うわ」

 

ジェネシスは少し考え込んだ後、

 

「…分かった、任せる」

 

「ええ、それじゃ行ってくるわ」

 

そう言ってリズベットの座る鑑定場に向かっていくイシュタルの背中に向けて、

 

「凛ちゃん、うっか凛を起こしたらダメだよ?」

 

「あんたねぇ!そのうっか凛て言うのやめなさいったら!!」

 

ティアが悪戯な笑みを浮かべながら言い、イシュタルもそう言い返した。

その後、リズベットとイシュタルは手際良く鑑定の客に対応していた。

 

「ありがとうございまーす!では鑑定しますね……

ふーむ……この鎧、ちょっと傷があるみたいですね……」

 

「ご来店ありがとうございます〜!ではこちらの宝石預かりますね。

……ふむふむ……」

 

リズベットが武器の鑑定、イシュタルがその他宝石などのアイテムの鑑定と言う風に分担して対応していた。

 

「……あっちは大丈夫そうだな」

 

暫く鑑定場の方を眺めていたジェネシスはそう判断し厨房に戻る。

 

ところがここで新たな問題が起きた。

 

「ねえ、久弥。この《最中》の作り方ってこれで合ってるのかな?」

 

ティアが右手に餡子、左手に最中の記事を持った状態で尋ねた。

 

「作り方?レシピがあんだからそれで行けるんじゃねえの?」

 

「ううん、このあんこの量とか挟み方がレシピだけだといまいち分からなくて……」

 

レシピを何度も見返しながら餡子を左手の生地に挟もうとするが、中々上手くいかない様子だ。

他にも……

 

「えっと……赤ワインってどれくらいの量を入れたらいいんだっけ……」

 

こちらはフランス料理に苦戦しているようだ。メニューは《赤ワイン煮込みのビーフシチュー》。

しかし何故か、レシピには肝心な赤ワインの量が明記されていないのだ。

 

幾ら料理スキルがあっても、専門的な知識が無ければ作ることが出来ない。

和菓子とフランス料理、これに対応できるメンバーと言えば……

 

「雫ちゃん、最中の挟み方はそうじゃ無いですよ」

 

「うわぁ?!びっくりした!!」

 

音もなくティアの背後に突然現れたのはオルトリア。

オルトリアはティアから餡子と最中の生地を取り、生地の裏側に餡子を塗っていく。少しずつ上乗せしていき、2〜3cmの厚さになったところでもう一つ同じ生地を用意して挟み込んだ。

 

「これで完成です」

 

「……流石は和菓子マイスター」

 

オルトリアの手慣れた和菓子テクニックを見たティアは呆けてそう呟いた。

 

一方フランス料理に苦戦するアスナの元には、やはりその道の専門家がタイミングよく現れていた。

 

『お手伝いいたしましょう』

 

やって来たのはジャンヌ。

彼女は机に置かれた赤ワインの瓶を取ると、大さじ3〜4杯の分量で鍋に入れた。

 

『ビーフシチューには大体これくらいの量が丁度いいですよ』

 

「成る程……勉強になります!」

 

ジャンヌのアドバイスもあって、《赤ワイン煮込みのビーフシチュー》が漸く完成した。

 

『では、ついでに私が持っていきますね』

 

そう言ってジャンヌは出来上がった料理を運んで行った。

 

「こんにちは〜、何か大変そうだね?」

 

「何じゃ?随分と賑わっておるな、今日は」

 

「何か手伝うことはある?」

 

するとそこへフィリアとツクヨ、シノンが現れた。

 

「お前らまで来たか……そうだな……」

 

現在ホールは6名、キッチンが5名、そして鑑定には2名が構えている。

 

「……よし、シノンとフィリアはホールに行ってくれ。ツクヨはこっちでドリンクでも作ってくれ」

 

「うん、分かった」

 

「普段みんなにはお世話になってるからね」

 

「……ま、これだけ揃っていればわっちらの出番もそれほどなかろう」

 

そして更に3名が加わった。

 

「あ、フィリアさん!丁度いいところに……今手が離せなくて、一番席の注文、行ってもらっていいですか?」

 

「はーい!任せといて!」

 

リーファの頼みを受け、フィリアが代わりに注文を取りに行く。

 

「一番先に注文入りました、抹茶ラテを二つお願いします!」

 

「承知した」

 

フィリアがドリンク担当のツクヨに注文内容を伝える。

 

「あ、こっちも注文入った。二番席にホットコーヒー2つだ」

 

「ああ、分かった」

 

「すみません、僕のところも……八番席に野菜ジュースです!」

 

「了解した」

 

そこへキリトとサツキが立て続けにやって来てツクヨに伝える。

 

「おいおいお前ら、同時に言うのは止めろって。一気に来られたらツクヨも……」

 

「もう出来ておるぞ」

 

そう言ってツクヨはカウンターに抹茶ラテを二つ、ホットコーヒー、野菜ジュースをサッと並べる。

 

「……ウッソだろお前」

 

「これくらい朝飯前でありんす」

 

唖然とするジェネシスに対し涼しげな顔でツクヨはそう返した。

 

「うーん……うーん……!」

 

ふと、ジェネシスが客席の方を見ると、シリカが上の棚に必死に手を伸ばしていた。

 

「どうした、シリカ」

 

「あ、ジェネシスさん……あそこの物を取りたいんですけど……」

 

視線を移すと、高さ2メートルほどの高さの棚の上にコップがたくさん詰められた段ボールのような箱があった。どうやら客数が多く、あらかじめ準備されてあった物では足りなくなったらしく、新しく用意しようとしているらしい。

 

「おいおい、ありゃあエギルじゃなきゃ取れねえ高さじゃねえか……」

 

ジェネシスの身長でもあの高さの物は取ることが出来ない。

 

「任せて、シリカ」

 

するとシノンがボウガンを構えてやって来た。

矢を装填し、段ボールの箱に向けてそれを放つ。すると命中した衝撃で箱が落下する。

 

「おっと」

 

それをジェネシスが両手で受け止めた。

 

「あ、ありがとうございます!シノンさん」

 

「いえ、どういたしまして」

 

「…成る程、ノックバックを発生させて落としたのか。考えたな」

 

「まあ、何となく行けるだろうな、と思っただけよ」

 

しかしそれは、シノンがこの世界に大分慣れて来た証拠でもあった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

あれから数時間が経過した。店は未だに賑わい続けている。

 

「みんな、かなり板について来た感じだね」

 

「ああ。案外、出来るもんなんだな」

 

キッチンで料理を作りながらティアは客席であくせく動き回るメンバーを見て隣で洗い物を片付けるジェネシスに言った。

 

「でもこんな時に限ってお客さん全然減らないよね」

 

「なに、人数は足りてんだ。まあ、あとは全体を見て的確に指示を出せるやつ、どこにでも入れる万能なやつがいるな……」

 

エギルの酒場は普通の店に比べてかなり広い。客席も多く、取り扱う料理やドリンクの範囲も非常に多い。加えて客の流入が激しいので注文も立て続けにやって来る。しかもここで取り扱っているのは飲食だけでは無い。今はリズベットとイシュタルが担当している鑑定まであるのだ。

思えばこれだけのものを良く一人で切り盛りしていたものだと改めてエギルに対して敬意が湧くジェネシスだが、今は後回しにしてもう一度現状を確認する。

 

先ほどのジェネシスの言葉通り、人数は十分対応できる人数だ。しかし、店の流れには必ず波が発生するものだ。例えば客が一気に押し寄せればホールが客席案内や注文といった作業に追われ、その次に押し寄せた客の数だけ注文が来るのでキッチンが追われる。そのため、今必要なのは彼の分析通り、客の流れを的確に把握して指示を出せる司令塔のような人材と、いつどのポジションが対応に追われてもヘルプに入れる万能なスタッフが要る。

 

ジェネシスがそう考えていた時だった。

 

「ただ今戻りました〜」

 

「パパ、ママ。ただいまです」

 

「あれ、今日は何かすごく人が多いね〜?」

 

「あの、皆さん。お父さんからのメッセージ読んで無いのですか……?」

 

そこはやって来たのは、レイ・ユイ・ストレア・サクラのMHCP四人。

 

「これは………行けるな」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「鑑定待ちのお客様が3名を超えました。ヘルプをお願いします」

 

「カウンター席のお客様が注文みたいです」

 

ジェネシスの読み通り、レイとユイは広い範囲の視野で状況を把握し、皆に的確な指示を出している。

そして……

 

「はーい、じゃあアタシが鑑定行って来まーす!」

 

「では、注文は私が行って来ますね」

 

ストレアとサクラ。彼女らもまた有用なサポーターとして機能していた。

 

「はい、こちらの鑑定終わりました。代金はこちらでーす」

 

「えっと、このアイテムは……あ、かなりのレアものですよ!!」

 

ストレアには鑑定スキルは無い。しかしその代わりにMHCP本来の分析能力、SAOの全てに関する知識があるため、鑑定スキルが無くとも対応できる。

 

「モンブランとカフェラテの注文入りました」

 

「ごめんなさい、今少し手が離せなくて……」

 

サクラがキッチンに注文を伝えるが、今はそれ以外の注文で立て込んでいるようだ。

 

「あ、では私が作りますね」

 

そしてサクラは慣れた手つきでモンブランを作成していく。

彼女もまた、SAOに関する知識を保有しているので、ある程度の料理スキルがあればそれらを駆使して一定の料理を作ることが出来る。

このように、MHCPの四人はある種最強の店員であった。

 

「ママ、もうすぐレタスとニンジンの在庫が切れそうです!」

 

「分かった、すぐに行くわ!」

 

ユイの指示を受けて準備するアスナ。

 

「ジャンヌ、少し鍋を見ててくれる?」

 

『はい、わかりました』

 

「ありがとう!10秒で戻って来るわ!」

 

『10秒……?』

 

アスナの10秒と言う言葉の真意がわからないジャンヌだったが、その直後。

 

《Start Up》

 

アスナが目にも止まらない速さで店を飛び出す。

そして10秒後…

 

「ただいま!!」

 

『早っ?!』

 

アスナは自身のユニークスキル《神速》を発動して買い物を済ませたのだ。

 

「流石はレイ達だ。的確に指示が出せてんな」

 

「そうですか?えへへ、お役に立てているのなら嬉しいです♪」

 

「うんうん!すごく偉いよレイ!

じゃあ、この調子でどんどん行こう!」

 

ティアが愛娘を褒め称え、皆を鼓舞して作業に勤しんだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「……かなり長い時間、店を開けちまった。それは俺が悪かった」

 

「いや、気にすんなって」

 

エギルの謝罪に対しキリトが軽く流した。

 

「そして……店番の礼には何でも奢るとも言った」

 

「ああ。たしかにそう言ったな」

 

ジェネシスは首を縦に振る。

 

「しかし、それにしたってな……」

 

エギルの目の前には、各々食べたい料理を口にする少女達が実に18名。

 

多いわ!超多いわっ!!

 

堪らずに叫ぶ。

 

「しょうがないじゃ無い。だって私たち……」

 

「頑張って店番したんだもん。ねー?久弥」

 

イシュタルとティアがジェネシスにそう確認を取る。

 

「ああ。こいつらは本当によくやってくれたよ」

 

「売り上げを見たら、俺たちがどれだけ頑張ったかエギルには分かるだろ?」

 

「そ、そりゃそうだけどよぉ……」

 

「ま、今日の分の売り上げは俺たちの腹に収まる覚悟でいてくれよな」

 

悪戯な笑みでエギルに言うジェネシス。

 

「うぅ……あ、あんまりだあぁぁ〜……」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

その夜、《店番おつかれ会》と称する宴会じみた賑やかさが起きる食堂から一人抜け、外の空気を吸いに来たジェネシス。

 

「はぁ〜……しっかし、今日は疲れたぜ……」

 

ベンチに座ってゆったりと寛ぐ。

そこへ……

 

「こんばんは。『暗黒の剣士』さん。いえ、もう一人の『黒の剣士』さん、と呼ぶ方がいいのかしら」

 

女性の声が響く。

声が若干ジャンヌに似ているが、彼女はジェネシスのことをそんな名では呼ばない。

一体何者か、声がした方を見る。

 

そこには真っ白な和服を来た嫋やかな女性が立っていた。

頭部はフードのような被り物をしており、口元には優しげな笑みを浮かべている。

 

「……誰だ、あんた?」

 

やや警戒心を出して問いかける。

 

「私は……そうね……」

 

その問いかけに対し、ゆったりとした動作で被り物を取る。

中から現れたのは、月明かりを反射して青白く妖艶に光る素肌と、美しく風に靡く黒い短髪。

そして青い優しげな瞳がジェネシスを見つめる。

 

「私の名前は────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────《シキ》、と名乗っておこうかしら」

 

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。店番回、いかがだったでしょうか?

さて、終盤に登場した《シキ》ですが……もうネタバレしておきましょう。
こちら元ネタは『空の境界』に登場する「両儀式」でございます。人格がいろいろあるためややこしいキャラのようですが……今作でのイメージはFGOでの剣式です。

では、評価・感想などお待ちしております。
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