ソードアート・オンライン〜二人の黒の剣士〜   作:ジャズ

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こんばんは皆さん、ジャズです。
何とか書き上げました……それではどうぞ。


五十七話 暗躍する狂気

「はぁっ……はぁっ……!」

 

八十三層の森林エリアの中を、一人の少女が駆け抜ける。

金髪のポニーテールに緑色の装備に身を固めた少女、リーファだ。

 

「待ちやがれコラァ!!」 

 

「逃すな!!!」

 

リーファは複数の男達に追われていた。追いかける男達のカーソルはオレンジ。

 

何故彼女がこのような目に遭っているのか……

時は数時間前に遡る。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

その日リーファは、七十六層で兄のキリトと共に《太陽と月のペンダント》という名のクエストを受け、無事八十三層で目当てのアイテム『太陽のペンダント』の入手に成功した。

 

ところがその帰路、キリトとリーファはオレンジギルドと遭遇してしまい、先ほどキリトとリーファが入手したレアアイテムの指輪を要求してきたのだ。人数的に不利と感じたキリトは先にリーファを逃がし自身が殿となる事を選んだのだ。

当初は兄を置いていくことを渋ったリーファだったが、敵のレベルも高く、リーファでは太刀打ちできないため、仕方なく彼女は先に離脱したのだ。

 

ところがどうやら別働隊がおり、リーファは彼らに追われていたのだ。

 

「あうっ…!」

 

走っている最中、木の根に引っかかり、リーファは転倒してしまう。

それがタイムロスになり、リーファはとうとう追いつかれてしまった。

 

「はっ、随分と梃摺らせてくれたわね。ネズミが」

 

追いついたオレンジ達のリーダー格らしき女が現れ、舐め回すような視線でリーファを見下ろした。

 

「さて、それじゃ大人しくレアアイテムを渡してもらいましょうか」

 

赤髪の槍を持った女性が前髪を弄りながら告げた。

 

「………お断りよ」

 

リーファは立ち上がって左腰から片手剣を引き抜き、構えた。

 

「へぇ?じゃあ力づくで奪わせてもらうわよ」

 

女性は指を鳴らして周りのオレンジの男達に指を鳴らして指示を出し、男達も獲物を構えてリーファにすり寄る。

 

「へへ、こいつよく見たら中々の上玉じゃねえか。姐さん、アイテム取ったらこの女、いいですかい?」

 

「ああ、構わないよ。アイテムさえ取ったら煮るなり焼くなりあんたらの好きにしな」

 

「………っ!」

 

リーファは思わず後退りするが、指輪は自身が兄であるキリトとの思い出作りのために手に入れた品物であるため、何としても守り通したかった。

恐怖を押し殺し、剣を真っ直ぐに構えて男達と早退する。

 

「かかって……こい!!」

 

リーファがそう言った瞬間、男達が一斉に飛びかかった。

 

その時だった。

 

「ぎゃあっ?!」

 

「うわあっ?!」

 

突如、男達のうちの二人が前のめりで倒れ込んだのだ。

 

「な、なに……?」

 

リーファは突然のことに理解が追いつかずただ戸惑った。

倒れた男達の後頭部には一本の矢が刺さっている。何者かが狙撃したのだ。

 

「ーー後ろ、8時の方向」

 

狙撃の方向に気づいたメンバーの一人が振り返り、狙撃の方向を素早く察知し指差した。

リーダーの女はその方向を見つめ、ズームフォーカスシステムを使って狙撃手の位置を割り出す。 

その方向には一本の巨大な大木があった。リーファ達がいる場所から距離にして約200メートル。

その太い幹に、一人の人物が立っていた。

 

「……『純白の弓兵(アーチャー)』……!」

 

真っ白なコートと黒いミニスカート、白いブーツ、そして身長と同サイズはある大きな弓を携えた、リーファと年が近い少女。

 

「ハヅキちゃん!」

 

思わぬ援軍の登場に、リーファは目を見開いた。

直後、ハヅキから更なる矢が飛来し、別のオレンジ達に命中した。

 

「スグ!!」

 

「リーファさん!!」

 

さらに、兄であるキリトとサツキが駆けつけた。

 

「お兄ちゃん!サツキさん!」

 

頼れる兄達の登場にリーファは目を輝かせた。

 

「チ……《黒の双剣士》に……《黒の剣士キリト》……!」

 

リーダーの女は忌々しげに舌打ちしながら呟く。

 

「て、テメェ!俺たちの仲間はどうしたんだ?!」

 

「あんな奴ら、とっくに監獄送りにしておいたよ。あ、今は転移システムが壊れてるみたいだから、七十六層にある暫定の監獄ではあるけどな」

 

オレンジの男の問いに対し、キリトは不敵な笑みで返した。

 

「さて、俺の妹に手出そうとして……お前ら、ただで済むと思うなよ」

 

「お兄ちゃん……!」

 

威圧感を込めた声でキリトはオレンジの男達に対して言い、リーファは安堵した笑みで呟く。

 

「さて、どうします?人数は確かにそちらの方が多いかもですが……戦力差は歴然であることはご理解いただけると思いますが?」

 

「このっ……!」

 

憎悪に溢れた表情で睨むオレンジプレイヤー達。この状況で有利なのは間違いなくキリト達だ。

 

ところがその時だった。

 

「なぁ〜にをちんたらしてんだおめぇらぁ〜?」

 

突如オレンジ達の後ろから間延びした喋り方の大男が現れた。身長は恐らく2メートル近くはある高身長の男性で、さらにその身体は筋肉質で幅も大きかった。胴体には漆黒の分厚いアーマーを纏い、防御力も高そうに見える。

右肩には巨大な鉈を担いでおり、その顔に被っている特徴的なマスクも相まって、まるで13日の金曜日に現れる悪魔を連想させる見た目だった。

 

「じ……ジェイソン……!」

 

リーダー格の女が振り返り、震えた声で名を言った。

 

「てめぇらは下がれ、時間切れだ………ジョーカーが呼んでるぞぉ〜」

 

「なっ……ジョーカーだと?!」

 

キリトはジェイソンが告げた名を聞き驚愕した。

忘れるはずもない。ホロウエリアでフィリアを利用してツクヨを罠に嵌め、人殺しの罪過を背負わせようとした狂気の男。

対して女はジョーカーの名を聞くと顔が青ざめ、ふらふらとした足取りでその場を去った。

 

「お前……ジョーカーの仲間か?」

 

キリトは左右の手に持つ双剣を構え、ジェイソンに問いかけた。

 

「ふむ、そぉの質問に答える必要性はねぇなぁ〜……何故ならお前ぇさん達はここで、死ぬからなぁー!」

 

ジェイソンはそう言うなり右肩に担いだ大鉈を勢いよく振り下ろした。

 

「ぐっ……!」

 

キリトとサツキ、リーファは間一髪の所でその攻撃を躱した。衝撃で大きな土煙が上がり、鉈が直撃した地面は大きく抉れている。

 

「なんてパワーだ……!」

 

それを見たサツキが愕然とする。

 

「ブルルラアァァァァ!!」

 

そのままジェイソンは大鉈をキリト達の方へ薙ぎ払うように振るう。

 

「うわっ?!」

 

キリトとサツキは咄嗟に自身の武器でガードするも、とてつもないパワーで放たれた一撃によって二人は砂塵に舞う木の葉の如く吹き飛ばされた。

 

「軽いなぁ〜、てめぇらそれでも男かぁ〜?」

 

ジェイソンは退屈そうに首をグリグリと回し、鉈を手の内で回しながら言った。

 

「サツキさん!お兄ちゃん!!」

 

「女子を痛ぶる趣味はぁねぇが〜、ちょいと覚悟してもらおうか」

 

ジェイソンはリーファに目をつけると、鉈の刃部分をギラつかせながら近づく。

 

「はあぁぁぁぁっ!!!」

 

キリトはすかさず片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》を発動し、音速の速さでジェイソンに突っ込む。

 

「甘ぁ〜い」

 

だがジェイソンは音速に近い速度で迫る漆黒の刃を片手で難なく掴み、そのままリーファの方へキリトを投げ飛ばす。

 

「おおおおおお!!!」

 

今度はサツキがジェイソンの背後から双頭刃に竜巻のようなエネルギーを纏わせながら、ソードスキル《スピニングダンス》を発動し突っ込む。

 

サツキの技は見事にジェイソンの背中に命中し、イエローゾーンまでHPを削った。

 

「おいおいぃ〜、痛ぇじゃねぇか〜兄ちゃぁ〜ん?」

 

だがジェイソンはHPがイエローに落ちても全く怯む様子はなく、サツキの方を振り向くと彼の首を掴んで持ち上げる。

 

マッスルウゥゥゥ……ブルルルルレイクウゥゥゥーー!!!

 

ジェイソンはそのままサツキの胴体に強烈な一撃を叩き込む。

 

「ぐわあぁぁぁぁーーーっ!!!」

 

凄まじいパワーで殴られたサツキは大きな弧を描いて数百メートル先まで吹き飛ばされた。

 

「サツキ!!」

 

「マッスルウゥゥゥ………!!」

 

吹き飛ばされたサツキの元へ駆け寄ろうとするキリトだが、間髪入れずにジェイソンからの攻撃が来る。

 

「インパクトオォォォォォ!!!!」

 

キリトの直上から鉈が振り下ろされ、キリトはそれを左右の剣を頭上で交差させることで受け止める。

 

「ぐっ……おおおっ……!!」

 

凄まじい衝撃がキリトを襲い、歯を食いしばって踏ん張る。

 

「(何なんだよ……この出鱈目なパワーは……!指の一本まで気が抜けない……一瞬で潰される……っ!!)」

 

しかしジェイソンのパワーは圧倒的で、キリトの腕は徐々に下降していく。

 

「このおおぉぉぉっ!!!」

 

その時、リーファがソードスキル《ソニックリープ》を発動し、ジェイソンの右腕を斬り落とした。

 

「ほぉ〜、やってくれんじゃねえか嬢ちゃぁ〜ん」

 

ジェイソンは首をグリグリと回しながらリーファの方を睨む。

するとその直後、

 

「せああああっ!!」

 

白い閃光が走り、ジェイソンを吹き飛ばした。

 

「キリトくん、リーファちゃん!」

 

現れたのはアスナだった。細剣最上級スキル《フラッシング・ペネトレイター》でジェイソンに突っ込んだのだ。

 

「助かった、アスナ!」

 

「ええ、無事でよかったよ」

 

安堵したキリトに対し微笑みかけるアスナ。

 

「ほぉ〜、これはこれは《閃光のアスナ》じゃあねぇか〜。だがあんたが来たところで俺をどうにか出来るとでもぉ〜?」

 

「残念だけど、来たのは私だけじゃ無いわ。もうすぐここに私の仲間が駆けつけるわよ。大人しく引きなさい」

 

鋭い視線と威圧感のある口調で言うアスナ。

ジェイソンもアスナの言っていることがハッタリでは無いと感じたのか、鉈を背中の鞘に収める。

 

「オゥケイ分かった。今日のところは勘弁しといてやるよぉ〜。だぁがこの借りは必ず返させてもらうぜぇ〜」

 

そう言い残すと、ジェイソンは巨大に似合わぬ速度で駆け出し、この場から去った。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

一方こちらはハヅキサイド。

ハヅキは遠距離からキリト達を援護するためこの大木に登っていたのだが、途中見たこともない大男がキリト達に襲いかかり、その直後自分の方にも新手が現れた。

 

「キヒヒヒッ!!ほぉらこれでもくらえぇー!!」

 

黒いマスクを被り、子供のように陽気な声で毒ナイフを投げつけるオレンジプレイヤー。

今ハヅキを追い回しているのは、かつてアインクラッドに恐怖をもたらし、その名を轟かせたオレンジギルド《ラフィン・コフィン》の3幹部の一人であったプレイヤー……

 

『ジョニー・ブラック』

 

「っ……!」

 

ハヅキは木の枝を飛び移りながら逃走する。

毒の塗られた投げナイフが放たれるたびにハヅキは寸前のところで回避し、次の枝に飛ぶ。

だがスピードはジョニーの方がわずかに早く、徐々にハヅキとの差が埋まり始める。

 

「あうっ……!!」

 

直後、ハヅキの右踵に毒ナイフが刺さった。麻痺状態に陥ったハヅキは地面に落下し、そのまま転がり続けた。

 

「ヒャハハハッ!!追いついた追いついたぁ〜!!」

 

狂気的な笑みを浮かべながら、ジョニーは右手に新たなナイフを持ってゆっくりと近づく。

絶体絶命のピンチに陥ったハヅキ。麻痺状態でまともに動くこともできない彼女にゆっくりと殺人鬼が歩み寄る。

 

その時、空から無数の苦無と手裏剣が飛来し、ジョニーの足元に一斉に突き刺さり、彼の足を止めた。

 

「どうにか、間に合ったようじゃな」

 

直後、どこからかツクヨが現れ、ジョニーに相対する。

 

「ハヅキちゃん!!」

 

そして後ろからフィリアとサチが駆けつけ、ハヅキを介抱する。

 

「ファーー!!死神太夫のツクヨさんじゃないかぁ〜!!」

 

ツクヨを目にした途端興奮気味にはしゃぐジョニー。

そんな彼を前に、ツクヨは懐から苦無を取り出して構える。

 

「フィリア、サチ。3分時間を稼ぐ。その間にハヅキを頼んだぞ」

 

「そんな、ツクヨさん!」

 

殿を務める事を宣言するツクヨに、サチが不安げな表情で自身も行こうと立ち上がるが、それをフィリアが制した。

 

「大丈夫。ツクヨさんはあんな奴には負けないよ」

 

自信ありげな表情でサチに諭すフィリア。

サチはしばらくツクヨの方を見つめたが、やがて覚悟を決めハヅキをフィリアと共に担ぐと、同時に走り出す。

 

「ブッ……ハハハハハッ!!マジかよ?!あんた一人で俺を止められるとでも?!」

 

「ああ。主くらいわっち1人でも容易く止められる。これでも現実では本物の忍、真の《暗殺者》に師事していたのでな……」

 

腹を抱えて嘲笑するジョニーに対し、ツクヨは不敵な笑みで答える。

 

「さて……それでは《暗殺者(アサシン)》同士の対決と行こうではないか。ジョニー・ブラックよ」

 

両手の苦無をぎらつかせ、そしてツクヨはジョニーに斬り込んだ。

ツクヨの苦無がジョニーに届く寸前、彼はその場から飛び上がってすぐ近くの木の枝に飛び乗る。そしてそこからフィリア達が走って行った方角へ向かう。

 

「逃さんぞ」

 

ツクヨはそう呟くと、彼女もジョニーが飛んで行った方向へ駆け出す。

 

スピードはツクヨの方が早いため即座に追いつくと、ジョニーのいる木の枝よりもさらに高く飛び上がり、そして苦無をジョニーに向かって振り下ろす。

それを回避するためにジョニーは体を逸らすが、それによって僅かにバランスが崩れ、地面に降下する。ツクヨもそれを追って地面に降りると、左右の苦無をジョニーに向けて振るった。

左右交互に繰り出される苦無の刃を、ジョニーは右手に持ったナイフで弾き、防御していく。

数回打ち合った後に再びジョニーはその場から飛び、俊敏な動きで木の幹や枝を飛び移って行く。

 

それに対してツクヨは苦無術《自来也蝦蟇毒苦無》を発動しジョニーに向けて放つが、ジョニーは身柄に空中で身体をひねる事でそれらを回避した。

 

だがそれはツクヨが張った罠だった。

ツクヨは回避される事を承知の上で苦無を投げた。いや、回避させるために投げたのだ。苦無を投げる事でジョニーの行動を制限し、誘導したのである。

 

「はあっ!!」

 

ジョニーが回避した方向に先回りしていたツクヨは、そこ目掛けて飛び蹴りを放ち、その右足は見事にジョニーの腹部を打った。

 

「ギャウッ?!!」

 

鋭い蹴りを受けてそばに生える木の幹に叩きつけられたジョニー。

すかさずツクヨはジョニーに追撃の苦無を投げつけ、彼の両腕、両足に突き刺して行動を封じる。

そして勢いよくジョニーに接近し、その首に苦無の先端を突きつける。

 

「終わりじゃ。観念するがいい」  

 

だがその時、ツクヨの右側から凄まじい速度で新手が接近し、ツクヨはそれに気づくと即座にその場から飛び退く。

直後、ツクヨがいた場所に鋭い鈍色の一閃が振るわれた。

数メートル後退し、ツクヨが先ほどまでいた場所を見ると、そこには銀髪で左目を眼帯で覆い、鋭く光る赤い目を持つ男がいた。

 

「ジャック・ザ・リッパー……」

 

ジャックは右手の刀を軽く振り払うと、それを右肩に担ぐ。

 

「……大人しく引け。そうすれば、今回は見逃してやる」

 

ツクヨはジャックの言葉を受け、一瞬思案する。

ジャックもジョニーも危険な人物達だ。ここで見逃せばこの男達による被害が更に増えることになる。

しかしいくらツクヨと言えど、この2人を相手にするのは流石に分が悪い。まして向こうは確実にこちらを殺す気で来るのに対し、こちらは向こうを殺すことは出来ないのだ。それは例えるなら、捕食する気で襲いかかるライオンに対して人間が手加減して挑まなければならないようなものだ。

 

ツクヨは黙って苦無を懐に収納する。

 

「行くぞ」

 

それを見たジャックは、ジョニーを連れて遠くべ歩き去った。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

その日の夜、キリト達一行は食堂で一堂に会していた。

話題は、キリト達が遭遇した協力なオレンジプレイヤー達だ。

 

「まさかあんなオレンジ達がいるなんてな……」

 

キリトはため息をつきながら呟く。

 

「ジェイソン……本当に恐ろしい奴でしたね」

 

実際にキリトと共に邂逅したサツキもげんなりした顔で同意する。

 

「それだけじゃねえ。まさかあのジョニー・ブラックまだいやがるとはよ……」

 

「あの時捕まってなかったんだ……」

 

ジェネシスの言葉にティアが俯きながら言った。

 

「ただでさえジョーカーって言うヤバいやつがいるのに、その上こんな奴らまでいるなんてな……」

 

「今はとりあえず、情報が欲しいとこだな。アルゴに調査を頼んでんだが……時間かかってんな、大丈夫か?」

 

ジェネシスがそう呟いた瞬間。

 

「大丈夫に決まってるだロ、ジェネ坊」

 

入り口から女性の声が響き,そこにグレーのフードを被り,頬にネズミの髭のような3本の線が入ったプレイヤーが立っていた。

 

「アルゴ!来てくれたのか!」

 

キリトが立ち上がって彼女を迎え入れた。

彼女の名はアルゴ。キリトやジェネシス達が第一層の頃から世話になっている情報屋だ。値段は張るが、それでも彼女が提供する情報はかなり有益なものが多いため、ジェネシス達も信頼を置いているのだ。

 

「ようキー坊、お前さんも久しぶりだな」

 

「はは、キー坊はよせって……それで、アルゴ。調査の方はどうだったんだ?」

 

キリトの問いを受けると、アルゴは一旦咳払いを入れ、すぐさま真剣な面持ちに切り替える。

 

「ああ、はっきり言って最悪の結果だったがナ。とりあえず、結論から言っておく。みんなも心して聞いて欲しイ……

 

 

 

 

 

 

 

犯罪者(レッド)ギルドが現れた」

 

アルゴの言葉を受け,皆は息を呑んだ。

アルゴは報告を続ける。

 

「組織の名は《“J”》。オレっちから見るに、あのラフコフを遥かに凌ぐ最悪の集団ダ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い洞窟型のダンジョンの奥。

そこに1人の女性プレイヤーが座らせられていた。

それは、先ほどリーファを追い回していた女だ。

 

「よぉ、戻ってたかロザリアァ〜」

 

すると奥から、紫のスーツに身を包んだピエロ顔の男ーージョーカーが現れた。

ロザリアと呼ばれた女性は俯いたまま何も答えない。

 

「……んん?無理だったのかァ〜?

おいおい、おめぇ言ったよなぁ?『黒の剣士達に一泡吹かせる』ってよぉ。俺ァてめぇのその欲求を叶えてやるために、わざわざ軍の奴らと取引して黒鉄宮から出してやったんだぜぇ〜?」

 

「まあ、所詮は雑魚のオレンジだぁ……こいつには、荷が重かったんだろぉよぉ〜」

 

すると今度はロザリアの背後から大男ーージェイソンが現れ,肩をグリグリと回しながらロザリアを見下ろして言った。

 

「……じゃあ、仕方ねぇ。もうてめぇに要はねぇ……」

 

ジョーカーがそう言った瞬間、ロザリアは立ち上がり、

 

「ま、待って!あたしにもう一回!もう一回だけチャンスを頂戴!次こそ、必ず奴らに一泡吹かせるから……だから……!!」

 

と、涙目で懇願する。

 

「いいえ、もう貴女では無理ですよロザリア殿ォ」

 

今度は紺と紫のローブに身を包んだ痩せぎすの不気味な男性が現れ、ため息をつきながら言った。

 

「これはこれはァ……『青髭』のジルじゃねえかぁ。んで、そりゃどう言う意味だ?」

 

「どうも何もそのままの意味でございますよ我が主人よ。この女には清楚さ、可憐さ、お淑やかさが全っっったく無い!!」

 

「要するにそりゃアンタの好みじゃねえかァ〜」

 

ジルの熱弁に対しジェイソンが呆れた顔でやれやれと首を振る。

 

「まあいい。どの道この女にゃ期待してねえ……」

 

ジョーカーはそう言って指をパチンと鳴らす。

するとジルの隣にジャックが現れ、背中から刀を引き抜く。

 

「ま、待ってくれよ……あたしはまだ出来るから!ねぇジョーカー!!もう少しだけ……!!」

 

地面を這いずり回りながらジョーカーに懇願するロザリアだが、ジョーカーは背を向けて聞く耳を持たない。

 

「いやぁ!!誰か、誰か助けて!!し、死にたく無いい!!」

 

「その言葉、貴様が殺してきた奴らに是非聞かせてやりたいものだ」

 

ジャックはニヤリと口角を上げると、刀をロザリアの腹部に突き刺す。

 

「ギャアァァァァァァァーー!!!」

 

痛覚抑制が無効化され、ロザリアに今まで感じたことのない激痛が襲う。

 

「いい声だ……」

 

ジャックは満足げな笑みを浮かべると、腹部から刀を抜き、今度は右腕と左足を斬り落とす。

その瞬間、洞窟中に木霊するほどのロザリアの絶叫が響く。

 

「ククク……これだから、人斬りはやめられん」

 

そう言うと、ジャックは人想いにロザリアの首を撥ねた。

 

「さて、おめぇら。そろそろ準備に取り掛かるぞ……」

 

それを見届けたジョーカーは、全員に指示を出す。

 

「さっきジョニーのやつから連絡があった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………Pohを始末するぞ」

 

 




お読みいただきありがとうございます。
今回登場したジェイソンですが、イメージCVとして若本規夫さんで考えてます。口調は銀魂の松平片栗虎に近づけたつもりですが、いかがだったでしょうか?

そして本作では実に二ヶ月ぶりの登場になるジャックとジョーカー。これからいよいよ、こいつらが暗躍し始めます。ジェネシス達はこの狂気にどう立ち向かっていくのか……

では、次回もよろしくお願いします。評価、感想などお待ちしております。
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