ソードアート・オンライン〜二人の黒の剣士〜   作:ジャズ

58 / 81
皆さんどうも、ジャズです。
少しシリアスが続いたので、息抜きがてらイベント回です。

今回はホロフラではなく、ホロウリアリゼーションにあるイベントを元にしております。


五十八話 みんなでお泊まり会

「やっぱみんなやる事は一緒なのね〜」

 

「枕投げは基本ですよ!」

 

ある日、ジェネシスとキリトが攻略から帰ると、リズベット、リーファ、フィリア、アスナ、そしてジャンヌとティアが食堂で団欒していた。

 

「普段にはないシチュエーションだから、きっとテンションが上がっちゃうんだよね」

 

「独特の雰囲気というか、兎に角楽しいよね!」

 

「うんうん。学校生活じゃ一番の思い出になるよね〜」

 

『な、成る程……』

 

アスナ、フィリア、ティアの言葉を聞き、ジャンヌは真剣に聞いている。

 

「よう、何の話をしてるんだ?」

 

「あ、お兄ちゃん!今ね…」

 

『ニホンの《しゅうがくりょこう》というものを教わっていました』

 

キリトとジェネシスが彼女らの元へ歩み寄り、ジャンヌが今話している話題について答えた。

 

「フランスには修学旅行がないっていうから、私たちが説明してたのよ」

 

「そう言うことか……」

 

リズの補足にジェネシスが納得したように頷く。

 

「でも、枕がどうのって……」

 

「ああ、それは枕投げの話。修学旅行と言ったら定番みたいなものでしょ?」

 

「そう言うの、一度でいいからここでもやってみたいよね〜」

 

キリトの問いにアスナが答え、リーファがそう呟く。

 

「枕投げをか?」

 

「ううん、お泊まり会的なやつ。ここで出来たら楽しそうじゃない?」

 

「確かに。ここにいるメンバーでやれば凄く面白そうです!」

 

フィリアの言葉にリーファが同調した。

 

「まあ別にいんじゃね?こことは違う場所の宿部屋をとってみんなでそこに泊まれば、そんな感じのやつは出来んだろ」

 

「なるほど……それは名案だね」

 

ジェネシスの提案にティアが頷く。

 

『わ、私…お泊まり会、やってみたいです!』

 

「そうね、ここで出来るとなれば試してみたくなるわよね」

 

ジャンヌとアスナが参加の意を示し、リズやリーファ、フィリアも続く。

 

「じゃあ、宿の確保はお願いね?」

 

「は?俺らがやるの?」

 

「そうだけど?」

 

戸惑うジェネシスにリズが当然、とばかりに答える。

 

「お、俺たちもお泊まり会に参加なんです?!」

 

「寧ろ何でいないことになってるのよ?」

 

「ふふっ、2人も一緒にやろう?きっと楽しいよ!」

 

アスナが笑顔でそう言い、他の女子達も同意する。

 

「問答無用の強制参加ってか。へいへい、分かりましたよ。んじゃ宿部屋の方は任せとけ」

 

ジェネシスがやれやれとため息を吐きつつも、笑顔で承諾した。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

日が傾き始めた頃、七十六層アークソフィアの端の方にある、和風の旅館を模した宿に、皆は集まった。

木造建築で出来た建物の中の明かりはやや控えめで薄暗いが、それが中々いい雰囲気を醸し出していた。

そして今夜彼らが泊まる部屋はやや広めで、床には畳が敷き詰められている。部屋の扉は襖によって仕切られ、ちゃぶ台や押し入れといった日本伝統の部屋となっていた。

 

「うわぁ〜……何この部屋!」

 

「すごっ……畳、畳がある!!」

 

「まさか西洋風のSAOの中にこんな和風のものがあるなんて……!」

 

女子達はキリトとジェネシスが用意した部屋にご満悦のようだ。特に……

 

『こ、これが………Japonais TATAMI……』

 

初めて触れる日本の畳を、好奇心旺盛な様子で畳を眺める。

 

「ジャンヌ、畳っていうのはねぇ……こうやって、寝転がったら最高に気持ちいいのよ〜」

 

リズは畳の上に寝転がりながらジャンヌに言うと、リズに言われるままにジャンヌも畳に寝転がる。

 

『こ、これは……なぜでしょう。故郷の干し草の山の上で寝る感触とはまた違った、心が癒される感じがします……これは……良いものですね!』

 

ジャンヌは畳の感触にかなり満足しているようだ。

すると部屋の襖が開き、中にティアがやって来た。

 

「お待たせ、みんな」

 

「いらっしゃ〜い!さあ、入った入った!」

 

リズベットがティアを中に促す。

 

「お泊まり会って事で、夜のおつまみ買ってきたんだ〜」

 

そう言ってティアはアイテム欄から紙袋をオブジェクト化する。紙袋の中に入っていたのは、歌舞伎揚と呼ばれる煎餅菓子。余談だが関西地方では“ぼんち揚げ”と呼ばれる。

 

「おお、これは良いじゃない!でも煎餅ってことはもしかしなくても…」

 

「うん。えっちゃんの和菓子店で買って来たの」

 

「あそこの和菓子ほんと美味しいよね〜。でもその分、えっちゃんの苦労が私には想像がつくよ……」

 

ティアはちゃぶ台に歌舞伎揚を広げ、皆は早速その菓子を囓った。

 

「ま、とりあえずこれで全員揃ったわけだな」

 

「ああ。それじゃ、お泊まり会を始めようか」

 

ジェネシスとキリトがメンバーを確認し、ついにお泊まり会がスタートした。

 

「この人数だからね。流石に全員分の布団は無さそう…」

 

「大丈夫でしょ。眠くなったら適当に寝転がれば。畳の上なら簡単に寝れるわよ」

 

そしてメンバーは、各々の場所を決める。フィリアとリズベットはちゃぶ台の近くにある椅子に、ジャンヌとリーファは押し入れの近くに敷いてあった布団に、アスナとキリトがちゃぶ台に据えられた座布団に、その向かいにティアとジェネシスが座った。

 

「えっへへー、ごろごろしちゃお〜!」

 

リーファは楽しそうにジャンヌの隣の布団で転がり回る。それを隣に座るジャンヌと兄であるキリトが微笑ましく見守った。

すると、ごろごろと転がり回っていたリーファの動きが突然ピタッと止まり、そのまま動かなくなった。

 

『あ、あれ?リーファさーん?』

 

ジャンヌはリーファの様子を訝しんで彼女の頬を突っつくが、反応がない。

 

「zzz……」

 

「ああ……そうか」

 

それを見てキリトが納得したように頷く。

 

「リーファのやつ、布団に入ったら速攻で眠りにつくと言う特技があるんだよ」

 

「何それ。のび太くんかよ」

 

キリトの説明にジェネシスが呆れた顔でぼやいた。

 

「まあ、寝ちゃったものは仕方ないし……このまま始めましょうか」

 

「それじゃ、何の話をしようか?」

 

リズベットがそう促し、フィリアが話題をどうするか悩んでいると……

 

『え?皆さんもこのまま寝るのではないのですか?』

 

ジャンヌが目を丸くして尋ねる。

 

「なーに言ってんの。お泊まり会って言うのは、夜中までみんなとおしゃべりするのが一番の醍醐味なのよ」

 

『ええぇ?!でも、それでは生活習慣が……』

 

「ジャンヌは真面目だなぁ〜…でも、こう言う時こそハメを外すってものだよ?」

 

ジャンヌが意外そうな顔をすると、アスナがそう教えた。

彼女もそれで納得したところで、再び話題をどうするか皆で考える。

 

「う〜ん……恋愛の話、とかは修学旅行ではよくやるじゃない?」

 

「来たわね〜、定番中の定番!」

 

「正にガールズトークって感じだね!」

 

アスナの提案にリズとフィリアが乗る。

 

「ガールズトークって、俺らがいるんですがそれは」

 

「細かいことは気にしない、気にしない」

 

ジト目で言うジェネシスに対しフィリアがそう流した。

 

「恋愛の話ね〜…何かある?アスナ」

 

「え?私の?!」

 

「こういうのは言い出しっぺがやるものだよ」

 

ティアがアスナに話を促した。

 

「な、何かあるかな?」

 

「ここで俺に振るのか?!」

 

「だって、恋愛の話って言ったら……」

 

アスナがキリトに持ちかけ、他のメンバーは期待度大の視線で見つめる。

 

「う〜ん……何かあるかな?」

 

「いつも当たり前のように一緒にいるしね」

 

「だよな。逆にいつも一緒だから、アスナが飽きないか心配なくらいだよ。気の利いたデート先とか、俺あまり知らないし……」

 

「そんな!場所なんて関係ないよ!

私は、君と一緒ならどこだって幸せだよ?」

 

「アスナ………」

 

「キリトくん………」

 

 

 

 

 

 

 

チェェェェェェンジ!!!ピッチャー交代だ、終わり終わり!!

 

キリトとアスナが2人だけの世界に入り、甘い空気が出始めた所でジェネシスが打ち切った。

 

「な、なんだよ急に」

 

「見ているこっちが恥ずかしいんだもの。これ以上見てられないわ!」

 

「ご馳走様でした。もう満腹です!」

 

リズとフィリアも恥ずかしそうに頬を赤く染めながらジト目で言った。

 

「じゃあ、話題を変えようか。フィリア、何かある?」

 

ティアが次なる話題の提案をフィリアに促す。

 

「あ、じゃあお宝の話とかはどう?」

 

「お宝の話?」

 

「うん。みんなにとってお宝は何かって話。

例えば、私は色々あるんだけど……」

 

するとフィリアはアイテム欄から一つの短剣を取り出す。

それはフィリアが普段から使用しているソードブレイカー。

 

「これ、ツクヨさんと初めて出会ったときにくれたものなんだけど……」

 

そして、フィリアは語り出した。自分とツクヨとの初めての出会いを。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

今から約数か月前、フィリアは突如ホロウエリアに飛ばされた。

そこには自分が今まで出会ったこともないような強力なモンスターがそこら中にいた。

しかも敵はモンスターだけでは無い。ごく稀に現れるオレンジのホロウが襲いかかってくるのだ。

さらにホロウエリアには安全圏と呼ばれるものがなく、安心して休める場所など存在しなかった。そのためフィリアは、毎日死の危機と隣り合わせの日々を何日も過ごしていたため、心身をすり減らしていた。

 

そんなある日、フィリアは運悪くモンスターの群れと遭遇し、囲まれてしまう。一時は何とか対処できていたが、不運な事に武器の耐久が切れてしまい、丸腰になってしまったのだ。

武器がなくなった事で戦う手段を失ったフィリアは、いよいよ死を覚悟する。

モンスター達はフィリアに襲いかかり、HPをどんどん削っていく中、突如としてフィリアを襲っていたモンスターが一斉に消滅したのだ。

顔を上げると、そこには1人の女性が立っていた。金髪で髪を苦無の形をした簪で止め、服装は右側の袖がなく、右足が露出する形でスリットが入った和服を着た美女。それがツクヨだった。

 

「あ……貴女は……?」

 

フィリアが恐る恐る口を開く。

 

「ふむ、どうやら主もわっちと同じ、プレイヤーのようじゃな。ならば良い、偶然通り掛かっただけじゃったが…助かって何よりじゃ」

 

ツクヨは優しげに微笑みながらそう言った。

 

「……何で、私を助けたの」

 

「む?」

 

フィリアが呟いた言葉にツクヨは疑問符を浮かべた。

 

「私が死んだって、あんたは困らないじゃ無い……私とあんたは他人同士なんだから……」

 

この時のフィリアは連日の過酷な日々の中で心が磨耗していたため、命を救ったツクヨに対してこのような言葉しか出なかったのだ。

 

「ほう?主は別に死んでも良かったと。あそこで終わっても良かったと、そう言うんじゃな?」

 

フィリアは黙ったまま何も答えない。

 

「だがわっちはそうは思わぬ。ここで死んでもいいと思うなら、なぜ主は武器を手にしていた?なぜ戦っていた?」

 

フィリアはその言葉を受けてハッとした顔になる。

ツクヨはそれを見て満足げに笑うと、フィリアの目の前に一つの短剣を放った。

 

「主にくれてやろう。それの使い方を知りたくば……生き残りたいなら、わっちと来るがいい」

 

ツクヨはそう言いながら身体を反転させて歩き出した。

フィリアはしばらく黙ってその背中を見つめていたが、やがて意を決して短剣を掴むと、ツクヨの背中を追った。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「……それ以降、私にとってツクヨさんは恩人で、師匠みたいな感じなんだよね」

 

「そんな事があったのか……」

 

キリトは話を聞き終えると成る程と頷く。

 

「いや〜、でもツクヨさんってほんと凄い人だよね。いろんな意味で。あたしの中じゃミツザネさん並みに頼れる人なんだけど」

 

「それは言えてるね。私はあまり面と向かってちゃんと話した事は無いから、今度一緒にご飯でも行ってみようかな」

 

リズベットとアスナが各々そう口にした。

 

「あ、ツクヨさんお饅頭好きだからそれ上げると機嫌良くなるよ」

 

と、フィリアは最後にそう教える。

 

「でも、そう言うエピソード付きの宝物っていいよね。私たちって何かあるかな?」

 

ティアがジェネシスにそう尋ねる。

 

「宝物なぁ〜……まあ俺はこの世界に来てからの思い出ぐれえかな、思いつくとしたら」

 

「ジェネシス……」

 

ジェネシスの答えにキリトがそう呟く。

 

「正直テメェらと会ってなかったら、俺は多分グレてたと思うぜ。だからまあ、感謝はしてる……特にティア、おめぇにな」

 

「も、もう…久弥ったら……」

 

ティアは顔を赤くして嬉しそうに微笑む。

 

「はーい、やめやめーー!!」

 

するとリズが強制的に打ち切った。

 

「ちょ、何でだよリズ!!」

 

「何かしんみりして来たし、何よりあんたがそんな事言ったら背中がむず痒くなるのよ!」

 

「普段のジェネシスなら絶対言わなさそうだしね……」

 

「いやそんなことある訳………あ、あるわけ………あるかも」

 

「あるんかいぃ!!」

 

小恥ずかしそうに頬を染めながらリズが言い、フィリアもうんうんと頷き、認めてしまったジェネシスの頭をキリトが引っ叩いた。

 

『で、でも!私達も貴方にはとても感謝してますよ!みんなもお会いできて良かったとそう思ってる筈です!』

 

「ちょっとジャンヌ!そんな分かりきってること言わなくていいのよ!!」

 

必死に伝えるジャンヌの口をリズが抑えた。

少し一悶着あったのち、次なる話題をどうするか話し合う。

 

「じゃあ次はジャンヌに話題を貰いましょうか!」

 

『わ、私ですか?!』

 

リズ次にジャンヌを指名する。

 

『で、では………皆さんの憧れの人、とかは如何でしょう?』

 

「憧れの人、か…」

 

ジャンヌは頷き、続ける。

 

『私は、皆さんもお分かりかと思いますが……フランスの偉人である《ジャンヌ・ダルク》ですね』

 

「ジャンヌはフランスに住んでるんだもんね」

 

ジャンヌの言葉にアスナはうんうんと頷いた。

 

『特に、私の住んでいるオルレアンでは、それはもう神様の如く崇められているのです。かく言う私もそうでして……』

 

「オルレアンって言うと、百年戦争の最中に敵軍に囲まれた街だよね。そこをジャンヌ・ダルクが奇跡を起こして解放したのは有名な話だよ」

 

ティアの説明にジャンヌは首を縦に振った。

 

『今の私たちがあるのは、あの方のおかげと言ったもの過言ではありませんから……。

このゲームがデスゲームになった時、私はこの名に誓って皆さんを解放しようと、今日まで戦い続けて来たんです』

 

「それが、君が旗を持って戦う理由か……これからも、頼りにしてるよ、ジャンヌ」

 

『はい!お任せください』

 

キリトの言葉にジャンヌは自信ありげに答えた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「じゃあ、最後にあたしが話題を出しましょうか」

 

深夜になり、そろそろ話の種がつき始めた頃にリズがそう言った。

 

「おや、秘蔵の話ありって感じだね?」

 

「何の話?」

 

アスナが問いかけると、リズはニヤリと笑い答える。

 

「『恐怖、夜の街に出る女性の幽霊』〜」

 

その瞬間、アスナの顔が一瞬で引きつる。

 

「怖い話ってやつ?うわぁ……怖いけど聞きたいっ!」

 

「何か楽しそうだな」

 

『それは興味深いですね』

 

「気になるなぁ〜♪」

 

他の皆は興味津々の様子だが……

 

「ほ、他の話の方が良く無いかなぁ〜?例えば……怖い話以外とか!」

 

「いや例えになってないからそれ」 

 

怖いものが苦手なアスナは話題の転換を促すもジェネシスにそう突っ込まれる。

 

「じゃあ、始めるわね〜」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

これは、リズベットが鍛冶屋の常連さんから聞いたお話……

 

「きゃああああっ!!!」

 

「いやどこでビビってんだよ?!!」

 

「まだ何も話してないじゃない!!」

 

………を話し始めた瞬間、アスナが絶叫を上げる。

 

「だって……だってぇ〜」

 

もう既に泣きそうな顔のアスナ。

 

『まあまあアスナさん、所詮は余興ですから大丈夫ですよ』

 

「ちょっとジャンヌ!それ言ったら台無しじゃないの!!

……まあむしろ、これくらい怖がってくれる方が話し甲斐があるわね」

 

そこからリズベットは再び話し始める。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

七十六層を探索していたとあるギルドがいた。

彼らはとても仲良しで、普段から常にメンバー全員揃って行動していた。

 

ある日、彼らは道に迷ってしまい、気がつくともう深夜になっていた。逸れないように皆は固まって動いていたのだが、気がつくと1人メンバーが居なくなっていた。

全員が必死になって捜索していると、無事にそのメンバーは見つかった。

だがそのメンバーは戻った瞬間、真っ青な顔でこう言った。

 

「早く逃げろ!!得体の知れない女が来る!!」

 

血相を変えて訴えるそのメンバーのただならぬ雰囲気に皆は何か嫌な予感を感じ、急いでその場を離れた。

 

しばらく走っているうちに、彼らは街に到着し、普段寝泊まりしている宿に無事戻った。

安心した彼らは部屋に戻って夕食を取ると、そのまま部屋で夜遅くまでおしゃべりをしたりカードゲームに興じていたそうだ。

 

ところがその時、部屋の電気が突如として切れた。

メンバーの誰かが間違えて消したのかと思い各々が確認するが、誰も消していないと言う。

数秒後、電気は再びついて何事もなかったかのように思われた。

 

しかし、異変は起きた。

 

部屋の隅に立つ、白い着物姿の女性。

そして、掠れた声でこう言ったそうだ………

 

 

わたしも いっしょにまぜて

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「きゃああああああーーーーっ!!!」

 

アスナが耐え切れず頭を抱えて悲鳴を上げた。

 

「……とまあ、これが常連さんから聞いた話よ。嘘が本当か知らないけど」

 

話し合えたリズが一息ついてコーラを飲む。

 

「嘘に決まってるじゃない!お化けなんて無いから!お化けなんて嘘だから!!」

 

「アスナ、落ち着けって…」

 

必死になってお化けの存在を否定するアスナをキリトが宥める。

 

「うーむ……」

 

「ん?どうかしたの、久弥?」

 

何故か考え込むジェネシスを見て不思議そうな顔で覗き込むティア。

 

「いや、何でもねえ(白い着物姿の女性……いや、まさかな)」

 

ジェネシスの頭に浮かんだのは以前から度々出会っている、嫋やかな仕草や雰囲気を持つ不思議な雰囲気の貴人。

まさか彼女なのでは……そんな事をジェネシスが考えていた時だった。

 

部屋の電気が消えた。

 

「ちょ、ちょっと!!誰よ部屋の電気消したの!!」

 

「わ、私は何もしてないよ!!」

 

「お、俺だって何もしてない!!」

 

『私も何もしていません!!』

 

「というかそもそもスイッチって何処にあったっけ?」

 

皆突然の事で戸惑いの声を上げる。

だが誰も部屋の電気を消していないようだ。

 

数秒後、再び電気が回復する。

 

「もう、何だったのかしらね」

 

「システム的なトラブルの一つかな。アークソフィアに来てからカーディナルシステムに異常があるみたいだし」

 

リズの疑問にキリトがそう答えた。

 

「あ、あああぁぁ………!」

 

するとフィリアが真っ青な顔で指を刺す。

 

「う、うしろ………」

 

「え、ええっ?!ちょっと……そんな?!」

 

「うそ……そんな……!」

 

『あわわ……』

 

フィリアが指を刺した方向を見た皆は一斉に固まった。

 

「な、なに?!」

 

「あ、アスナ……うしろ……!」

 

状況を把握できていないアスナに、キリトが指を刺して教える。

恐る恐るアスナが振り返ったその先に………

 

 

 

 

女は立っていた。

 

「い……いやああああああ!!!」

 

黒い艶やかな短髪に白い着物姿の女性がゆらりと部屋の隅に立っている。

 

「ほ、ほんとに出たあぁぁぁぁ!!」

 

「わ、私は食べてもおいしくないよ!!!」

 

「そんな……うそでしょ?!」

 

「ゲームの中に幽霊が出るなんて、そんな事あるのか?!」

 

『ああ、神よ……どうかこの哀れな魂を導き下さい……!!』

 

皆は各々絶叫を上げる。

すると幽霊(?)はニヤリと口を三日月の形に曲げる。

 

「ふふふ……すごく楽しそうな事をしているじゃない」

 

と、透明感のある声を発する。そして……

 

「私も、一緒に混ぜて?」

 

『『『ギャアアアアアァァァーーー!!!』』』

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

絶叫を上げてキリト達は部屋を飛び出して外に出た。

 

「ちょっと!!何なのよあれ!!」

 

「俺にもわからねえよ!!まさかほんとにあれが……」

 

リズが息絶え絶えになりながら叫ぶが、キリトにも分からないので首を横に振る。

するとティアが何かに気づく。

 

「あれ?ジェネシスは?」

 

皆は一斉に辺りを見回すが、彼の姿は無い。 

 

『もしや、まだ部屋にいるのでは……』

 

「急いで戻るぞ!」

 

嫌な予感を感じたキリトとティアが走って戻る。

 

「ちょっとキリトくん!!もう〜、やだあぁぁぁ!!」

 

ただでさえ幽霊が嫌いなアスナは泣きながらその後を追う。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

皆が悲鳴を上げて部屋から飛び出した後、一人部屋に残ったジェネシス。

 

「……で、一体なにしてんだシキ」

 

呆れた顔でそう問いかける。

幽霊……もといシキは肩を竦めて

 

「もう、あんなに怖がらなくてもいいじゃない。ちょっと楽しそうだったから覗いただけなのに」

 

と、残念そうに答える。

 

「あのな、タイミングが最悪なんだよ……」

 

やれやれとジェネシスは首を振った。

 

「はあ……さて、私はもう行くわね」

 

「ん?何だ、あいつらには挨拶しねえのか?」

 

立ち上がるシキにジェネシスが問いかける。

 

「ええ、まだ彼らにちゃんと会うには少し早いわ。

悪いけど、適当に誤魔化しておいてくれるかしら」

 

「あのなぁ……こんなのどうやって誤魔化すんだよ……」

 

ジェネシスのぼやきにシキは「ふふっ」と笑って部屋を出ようとする。

 

「あー、ちょっと待った」

 

そんな彼女をジェネシスは少し引き止める。

 

「あんたの正体だが……多分分かっちまった」

 

するとシキは振り返って優しげな笑みを浮かべ、

 

「へぇ……では、貴方の推理を聞かせてくれるかしら」

 

と興味深そうに問いかける。

 

「あんた……レイやサクラと同じMHCPなんじゃねえか?

この世界のことに誰よりも詳しいし、普通のプレイヤーとはちょっと違うみてえだし」

 

「ふふっ。流石、鋭いわね。では答え合わせといきましょう……。

貴方の推理はイエスでもあるし、ノーでもある。半分正解で半分不正解、というところね」

 

ジェネシスの指摘に対しシキはそう答える。

 

「今の私のこの身体は、確かにMHCP4号《シキ》のもの。だけどこの身体を動かしているデータはまた別のものなの」

 

「何だそりゃ。ますます分かんねえよ……まさか、この間見せたあのスキルって……」

 

「ええ、《直死の魔眼》は元々この身体の持ち主であった《シキ》に備えられていたもの。だから本来の私の力ではない、とはそういうことよ。

さて、申し訳ないのだけれどこれ以上詳しくは言えないわ。

もうすぐ彼らも帰ってくるし」

 

そう言ってシキは再び歩きだす。

 

「はあ……まだあいつらには話さねえ方がいいんだな?」

 

「ええ。そうしてほしい。正直な話、私はまだ会うわけにはいかないの。私の存在が露見してしまうと色々と厄介だから……あとはお願いね?」

 

そしてシキは次の瞬間、姿を消した。

 

その数秒後、キリト達は戻ってきた。

 

「じ、ジェネシス!!あの幽霊はどうしたんだ?!」

 

「はっ、俺が払っといてやったから安心しろ。もう二度とあんな悪戯はしませんと泣きながら謝って出て行ったぜ」

 

と、ジェネシスはあっけらかんと答える。

 

「大丈夫だった?呪われたりしてない?」

 

「大丈夫だっての。心配すんな、あいつはそんなやつじゃねえ」

 

心配そうにジェネシスに問いかけるティアに対し、ジェネシスは諭すような口調で言う。

 

その後、皆は無事就寝し、お泊まり会は一応成功を収めた。

 

 




お読みいただきありがとうございます。

両儀式っていいですよね……あと月詠さんも。

個人的に今作でのツクヨさんは、フィリアと師弟関係的なものに出来たらと考えてます。

では、次回もよろしくお願いします。
評価、感想などお待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。