このオリジナル編が思ったより反響が良くてとても嬉しく思っています。
それではvs“J”編2話、どうぞ。
ドーム状の巨大な部屋。いや、部屋と呼ぶには広い空間だが、その中に3名の男女が動き回っていた。
黒衣の男女と、青いポンチョを身につけた少女。
黒い和風装備の女性、ツクヨは、部屋を縦横無尽に駆け回るジョニー・ブラックを追い回していた。
ジョニーに向かって突進しながら苦無を横一閃に振るうが、ジョニーは素早く飛び上がってそれを躱す。
ツクヨもそれを追って空中に上がり、ジョニーに向けて苦無を投げつけた。
「チッ……!」
しかしジョニーは空中で身軽に身体を捻ることでそれらを回避した。
「だぁッ!!」
だが今度は反対側からフィリアが現れ、彼に向けて強烈な蹴りを叩き込んだ。
「このっ…!」
ジョニーは舌打ちして懐から赤い刃のサバイバルナイフを取り出し、フィリアもソードブレイカーを構える。
ジョニーが赤いサバイバルナイフの刃を突き出すと、フィリアはソードブレイカーの凹凸の部分で受け止める。
赤い刃がフィリアの短剣の凹凸部分に噛み合って、ジョニーの動きを封じる。
「はぁっ!」
フィリアはそのまま左膝を突き上げてジョニーの右手の甲を蹴り上げ、ジョニーのナイフを落とす。そして続け様に短剣ソードスキル《ラビットバイト》を繰り出し、ジョニーの腹を斬りつけた。
「くぅっ……!」
ジョニーはその場から飛び退いて一旦距離を置く。
フィリアがそれを追おうとした瞬間。
ジョニーは黒い霧に包まれて消えた。
「なっ……どこに?!」
フィリアは慌てて周囲をキョロキョロと見回す。
「落ち着きなんし、フィリア」
するとツクヨが余裕のある笑みでフィリアの横に立った。
「隠蔽スキルじゃな。それも中々の熟練度と見える。伊達に暗殺集団の幹部をやっている訳ではなかったらしいのう」
「ちょ、ツクヨさん!感心してる場合じゃ…」
呑気にそんなことを呟くツクヨにフィリアが慌てて言った。
「慌てるでないフィリア。幾ら隠蔽スキルを上げていようとも、見つけることなど造作もない」
そしてツクヨは「フウ」とキセルの煙を吐き、一呼吸おく。
「良いか、たとえゲームの中と言えど隠しきれないものがある……それは気配じゃ。
足音や呼吸、鼓動や匂い、そう言ったものは隠そうとしても隠し切れるものではない。それはゲームの世界でも同じことじゃ。特にこのような敵には、確実にこちらに対する“殺気”と言うものを放っておる。
それを感じ取るには目ではなく、身体で感じよ。視覚以外にも、聴覚・触覚・嗅覚を研ぎ澄ますのじゃ。そうすれば……」
そう言ってツクヨは徐に手裏剣を取り出すと、
「……見つけるのは容易い。特に今のようなやつは単純だからのう、大抵は後ろからノコノコとやって来る」
素早く振り向き様に右手の手裏剣を放った。
手裏剣は真っ直ぐに走行中の自動車のタイヤの如く回転しながら飛んでいくが、その途中何もない場所で『グサッ』と刺さるサウンドエフェクトが鳴る。
「ぐわああぁぁっ?!」
すると再び黒いモヤが発生し、中からジョニー・ブラックが現れた。
「うっそぉ〜……」
フィリアは思わず呆気にとられて呟く。
「てめぇ……なんで分かった?!」
「なんでも何も、分かりやすいのじゃ主は。隠蔽スキルはそこそこ上げていたようだが、殺気だけは全く隠せておらんかったぞ。
暗殺者を名乗るならば殺気は一番隠さねばならぬもの。それをあそこまで剥き出しにしているようでは、主もまだまだ三流以下じゃな」
「この……やろおぉぉっ!!」
煽るような口調で言うツクヨに、ジョニーは憎悪の視線で睨みつけながら飛び出す。
そして再び飛び出すと、もう一度隠蔽スキルで姿を消す。
「フィリア、やってみせるがいい」
「え?……ええ?!」
突然の事でフィリアが戸惑い、目を見開く。
「なに、主ならば確実に出来る。案ずるな、もしもの場合でもわっちがおる。主の全霊をかけてやってみよ」
ツクヨにそう言われ、フィリアはしばし戸惑い気味だったが、一度深呼吸して精神を落ち着かせ、ゆっくりと目を閉じる。
神経を研ぎ澄まし、五感をフルに働かせて微細な情報まで全て拾い上げる。
今、フィリアは自身の脳内イメージで水面に立っていた。
果てもなく、どこまでも透き通った水。
波はなく、風もなく、ただ静かな空間。
だが時折、何もない水面に波が発生していた。発生とタイミングはランダムで、自分の周囲を囲むように発生している。
一方、フィリアは自身のすぐ横に暖かな光を感じ取った。言うまでもなくそれはツクヨだとフィリアは断じた。
すると自身の右方向で、大きな水飛沫が上がった。水溜りを人が思い切り踏みつけたような、大きな水飛沫。
それは段々と、自身に向かって近づいていく。
ツクヨの暖かな気配と違い、それは冷えた氷のような、冷たい気配だった。
そしてその水飛沫が自身のすぐ横まで来た瞬間。
「……せやっ!!」
フィリアは短剣を右方向へ真っ直ぐに勢いよく突き出した。
『ドシュッ』と言う痛々しい音が鳴り、それと共にまたあの黒い霧が発生し、ジョニーが姿を表す。
「な……なんで……」
自身の腹部に短剣を突き刺されたジョニーは、目を見開いてフィリアの顔を見た。
その直後、ジョニーの眉間に漆黒の日本刀が突き立てられた。
「所詮、主はその程度という事じゃ。ジョニー・ブラック」
フィリアの背後からツクヨが自身の太刀『宵闇』を突き出したのだ。
その一撃でジョニーは数メートル後方へ吹き飛ばされた。
「上出来じゃ、フィリア。よくやったぞ」
「あ……えへへ」
ツクヨがフィリアの頭を優しく撫で、フィリアはそれを受けて自然と顔が綻んでいた。
「ク………ククッ」
すると、壁にもたれかかって座り込んでいるジョニーが不気味に笑い始めた。
「フハッ……ハハハッ!ハァーーッハハハハハハハハッ!!」
状況的に見て明らかにジョニーの方が不利なのに、なぜこの場で笑い始めるのか。訝しんだ様子で見つめるフィリアと、表情を変えずにジョニーを見るツクヨ。
「残念だったなぁ!!あんたらは今ので決めるべきだった……今ので俺を殺すべきだった!!
もう遅いぜ……あんたらはもう“蜘蛛の巣”にかかった獲物なんだ!!」
狂ったように嘲笑うジョニーがそう叫んだ瞬間。
「あ……っ、ツクヨ、さん……!」
突如、フィリアの体が地面に崩れ落ちた。
ツクヨが蹲み込んで彼女を支える。よく見ると、カーソルには麻痺状態が表示されていた。
「ヒャハハハッ!実はこの部屋にはなぁ……最初から麻痺毒の粉が撒き散らしてあったのさ!!漸く毒が回ったみてぇだなぁ〜、この瞬間を待ってたぜぇ!!」
ジョニーが指をパチンと鳴らす。
すると、部屋の壁から突如としてオレンジプレイヤーが出現した。ツクヨでも察知できていなかったようなので、隠蔽スキルとは別のものなのだろうが……
その数は約20名。状況は一変してツクヨ達が絶体絶命な状況に。
「っ、ツクヨさん……!」
「ふむ……どうしたものかのう……」
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一方こちらは、青髭のジルが構えた部屋。
「ホォ〜ウ!!」
ジルは杖のような長い細剣を素早い動作で突き出す。
その攻撃を、ジャンヌは旗を最小限に動かす事で弾いていく。
「こんのおぉぉ!!」
するとイシュタルがジルの背後からマアンナに宝石のパワーを集め、彼に向けて放つ。
「ホワァァッ!!」
その一撃はジルの背中を撃ち抜いた。
「たぁー」
更にオルトリアが空中で身軽に回転しながらジルはに斬りかかった。ビーム状の刃が彼の右腕を斬り落とす。
「ホホホホッ、いやはや3対1は流石に分が悪過ぎましたかなぁ〜」
ジルは斬り落とされた右腕を見て呑気にそんなことを呟く。
「ええ、あんた一人じゃあたし達には勝てっこないから。死にたくなかったら大人しく降伏しなさい!」
イシュタルが再びマアンナにエネルギーを集めて発射態勢を取り、ジルに圧力をかける。
「ホォ〜ッホホホホホホ!!まさか降伏などするわけがないでしょう!私は嬉しかったですよぉ〜、貴女達のような麗しいお嬢さんたちがここに残ってくれた事。特ぉくにぃ〜」
ジルは飛び出た目玉をギョロリと動かしてジャンヌの方を見遣る。
「そこの貴女!貴女からは清楚さ・お淑やかさ・可憐さ・高貴さ・そして神聖さをひしひしと感じまぁすよぉ〜っほほ。
私は楽しみでならないのです…貴女のような女性が………
不気味で悍しい触手のようなものに凌辱されたらどのような顔を見せてくれるのかとっっ!!」
ジルは声高々にジャンヌを指差しながら叫んだ。
「とてつもない変態ですね。もう斬っていいですか」
心底うんざりだ、とばかりにオルトリアが呟く。
そのとき、ジルは残った左腕を懐に突っ込み、そして中から一冊のボロボロの本を取り出す。
「ね……ねえちゃん!!気をつけて!」
「あの本はよくないものだーっ!」
すると、ジャンヌの後ろに下がって様子を見ていた子供が叫ぶ。
その直後、ジャンヌ達がその言葉の真意を考える間もなく、ジルは本を高く掲げる。
「さあ!おいでなさい……我が忠実なる僕よ!!今こそあの尊き貴婦人を食すのです!!」
ジルが叫んだ瞬間、部屋の床に魔法陣のようなものが形成され、そして一瞬の眩ゆい光が部屋を包んだ。
光が止んですぐの事だった。
『っ!きゃあっ?!』
突如ジャンヌの足に何かが巻きつき、そのままジャンヌの身体を軽々と持ち上げ逆さ吊りにする。
部屋の中には、巨大な蛸型のモンスターが出現していた。
「ちょ、なんでこんなのが湧いてくるのよ?!」
「ホホホホッ!!お答えいたしましょう……この本は去るお方から頂いた特殊な本でしてねぇ〜、私のHPを犠牲に、任意のモンスターを召喚することが出来るのです!」
イシュタルの言葉にジル得意げに答えた。
「何ですって……きゃあっ?!」
直後、イシュタルを蛸の巨大な足が弾き、彼女を壁に叩きつけた。
その間に、ジャンヌの身体に蛸の触手が巻き付く。
両腕・両足を縛られ、身動きが取れない。しかもその触手は何故かローションのようなヌルヌルとした感触があり、ジャンヌからすればたまったものではない感覚であった。
『っぐうぅっ……!』
更に触手がジャンヌの首に巻きつき、そのまま力強く縛り上げる。
「オォォォォォッホホホホホホホホホホ!!!これですよこれ!!!これが見たかったのですっ!!なぁぁんと素晴らしい光景でしょうか?!!聖なるものが穢わらしい汚物の如く生物に陵辱されると言うこの光景っっ!!
どうですかぁ〜、オルレアンの聖処女の名を語る乙女よ!!
貴女の信じる神などと言うものが本当におわしますならば、私には今すぐにでも天罰が下りましょうぞお!」
ジルは興奮気味に仰々しく手振りを加えながら高々に叫ぶ。
「貴女方の信じる神などこの世にはいない!!そんなものは我々が作り上げた幻想に過ぎないのです!!やれ信仰だやれ救済だなどと、所詮は庶民が作り上げた妄想!!
そもそも!!神など!!あの男がなにをすると言うのです!!神が世界を救うと言うのですぅ〜?!!
解せぬ、全っったく解せぬ!!疫病の如き信仰の何ォ処にィ尊さがあると言う?!」
『それは……違う……!』
するとジャンヌはジルの方を睨みながら言った。
『神とは……私達を慈しみ、見守ってくださる方です……大事なのは、信じること……!』
「無駄無駄だぁ!!そんな信仰など無意味!!無価値!!神が本当にいるならば今すぐにでも貴女をお助けになるはず!!なのに貴女は我が蛸の触手になされるがまま!
ああそれとも、こうすればよろしいですかなぁぁ?!」
ジルがそう叫んだ瞬間。
『っ!が……はっ……!』
ジャンヌの身体に巻き付く蛸の触手が更に彼女を固く締め上げる。ギチギチと音を立て、ジャンヌの呼吸を封じた。
「どうですか救国の聖女よぉ〜?貴女の信じる神などこの世界にはない!!何故なら!!誰一人として貴女を救えるものなどいないのだから!!!神は貴女を見捨てた!!救いなどしなかったのですよ!!!
貴方の持つ信仰が如何に無駄なものか、よおぉぉくお分かりになったのではないですかぁぁ?!!!」
『おこ……とばですがっ………私が信じているのは………神だけではありませんよ……!』
ジルの言葉に対し、ジャンヌは首を絞められながらも不敵に笑って見せた。
その次の瞬間、ジャンヌを締め上げていた蛸の触手が刹那の光の後に一斉に断ち切られた。
「お待たせしました、です」
「あいつがあんたに釘付けのお陰で助かったわ!!」
オルトリアがビームサーベルで斬り、イシュタルがマアンナで撃ち抜いたのだ。
因みにオルトリアはモンスターが出現したのを察知した瞬間、部屋にいた子供達を誘導して部屋の安全な場所へ流していたのだ。巨大なモンスターの攻撃の巻き添えを受けることのない、安全な場所まで。ついでに手持ちのお菓子を与えて落ち着かせていた。
そしてイシュタルは、モンスターの攻撃で壁に叩きつけられたあと、衝撃でうまく立ち上がらない身体に鞭打って、ジルがジャンヌの方に気を取られている隙にマアンナにエネルギーをチャージ、照準を合わせていたのだ。
「こ………この匹夫めがあぁぁぁぁ!!!」
ジルは怒り心頭な様子で狂ったように叫んだ。
「はあ、全く喧しいったら無いわ……それよりジャンヌ、大丈夫かしら?」
『ええ、問題ありません。信じていましたから』
ジャンヌは立ち上がり、再び旗を手に取った。
「しかし、これどうしましょう。さっき私たちが斬り落とした触手が再生してるみたいです」
オルトリアは変わらない口調で、しかしやや苦い表情で指を差した。
先ほどオルトリア達が斬り落とした触手が瞬時に再生していたのだ。しかもHPも回復しているようだ。
これ程の再生力と回復力を持つモンスターであれば、一撃で超高火力の技をぶつけるしか無い。
「私のマアンナならなんとかいけるかもしれないけど……
こんな狭い部屋でぶっ放したら大変なことになるしね」
イシュタルの弓に搭載されたスキルを使えば、間違いなく一撃で消滅させられるだろうが、威力が尋常では無いので最悪の場合ここにいる子供達まで危害が及ぶ可能性もある。
『大丈夫です……私に秘策があります』
するとジャンヌは、旗の紐を解いてバサリと旗を展開した。
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「オオォラァァァ!!!」
ジェイソンから振り下ろされる巨大な鉈を、キリトは左右の剣で受け止めた。
「っぐうっ……!」
歯を食いしばってその衝撃になんとか踏ん張る。
真上からまるでプレス機にかけられているかのような圧力が襲い、堪えきれずキリトは膝をついた。
「せやああぁっ!!」
そこへ背後からアスナがジェイソンの背中に突っ込んでいく。
「俺の背後に……立つんじゃねえぇぇぇ!!!」
だがジェイソンはキリトを蹴飛ばしてそのまま身体をターンして反転させ、鉈をアスナの胴に叩き込んだ。
「が…はっ……!」
「アスナ!!」
腹部に強烈な衝撃が襲い、アスナは苦悶の表情で顔を歪め、その直後に弧を描いて吹き飛んでいく。
HPは辛うじてイエローゾーンです止まったが、たった一撃でこれ程の破壊力を有するとなれば迂闊に手出しは出来ない。
「だあぁぁぁぁっ!!!」
すると今度はストレアが空中に飛び上がり、両手剣を頭上に構えて勢いよく振り下ろす。
大きな土煙と衝撃音を上げ、ストレアの両手剣は見事ジェイソンを直撃した。
「ほぉ〜う、威勢がいいな嬢ちゃん、今のは良かったぜぇ〜」
しかし土煙が晴れると、そこには衝撃の光景があった。
ジェイソンは頭上から振り下ろされたストレアの大剣を難なく掴み取っていたのだ。
「だがまだ甘ぁ〜い!!」
ジェイソンは大剣を掴んだままストレアを地面に背中から叩きつける。地面にヒビが割れるほどの強さで叩きつけられたストレアの華奢な身体にとてつもない衝撃が襲った。
「まぁだ弱あぁ〜い!!」
そしてそのまま大剣の刃を掴んだままストレアを壁に激突させた。
「ぐ……ぁ…っ…」
立て続けに強烈なダメージを受けたストレアは気を失ってそのまま地面に倒れ込んだ。
「ストレア!!」
「今度はあたしが相手よ!!」
するとリズベットがメイスを構えてジェイソンの懐に飛び込む。
ジェイソンはそれに気づくと巨鉈をリズベットの方に振り下ろした。しかしリズベットはそれを間一髪の所で受け止める。
「今よ、ヴォルフ!!!」
リズベットがそう叫んだ瞬間。
「グウゥゥゥゥゥルルレイトオオォォォォォーーーー!!!!」
雄叫びを上げながらヴォルフが反対側からハルバードを振りかぶって突っ込む。
ヴォルフの奇襲を受けたジェイソンはそのまま壁に激突した。
首を『ゴキゴキ』と鳴らしながら捻り、ゆっくりと立ち上がる。
「んんん〜〜、今のは効ぃたぜえ坊主ぅ〜〜」
するとジェイソンはその巨大に似合わないスピードでヴォルフの方へ駆け出していく。
そのまま鉈を突き出し、ヴォルフも自身のハルバードで応戦、パワー勝負に持ち込んだ。
鉈とハルバードがぶつかり合うたびに大きな衝撃波飛び込む金属音、火花が飛び散る。
「ほほぉ〜う、随分と歯応えのある野郎が出てきたもんだなぁ」
ジェイソンは眉をピクリと動かしながら言った。
「ぬぅんっ!!」
ジェイソンから繰り出された鉈を、ヴォルフは見事にハルバードで弾いていく。
「んじゃ……これでも食らいやがれッ!!」
だがすかさずジェイソンは鉈を頭上に構える。
「ンマッッスルルウゥゥゥ……ギャルルルルァァァアクシイイィィィブウゥゥレレィクウウゥゥゥゥゥーーー!!!!」
紫のオーラを纏った鉈をヴォルフに向かって大きな叫びと共に全力で振り下ろす。
巨大地震のような地響きが発生し、地面は抉れ地割れを起こす。衝撃波が発生し、彼の周囲にいたキリトとリズベットは遥か後方へと吹き飛ばされていく。
「ヴォルフーーーッ!!!!」
リズベットが悲痛な顔で彼の名を叫ぶ。
土煙が晴れると、ヴォルフは抉れた地面に埋もれる形で沈黙していた。辛うじてHPは残っているようだが、あれほどの攻撃を受けて完全に気を失っている。
「こ、のおぉぉ!!」
それを見て逆上したリズベットがメイスを振りかぶって突っ込む。
「虫ケラがぁ……」
ジェイソンは興味なさげに呟き、リズベットの頭を左手で殴り、更に鉈で腹部を殴る。
「はぁいつくばれえぇぇぇい!!!」
地面を転がって倒れ込むリズベットにジェイソンは追い討ちをかけんと近づく。
「リズ!!」
『Complete』
ピンチのリズベットを救出せんとアスナがエクストラスキル『神速』を発動。アーマーが弾け飛ぶ代わりに、アスナはただ一人許された神速の世界へと足を踏み込む。
『Start Up』
直後、視認不可能な速度でジェイソンの前に割り込んだアスナはすり抜けながらリズベットを抱きかかえてその場から離脱した。
リズベットを救出したアスナは、そのまま速度を生かしてジェイソンに斬り込む。幾らジェイソンと言えど、今のアスナの速度には敵わない。目にも止まらない速さでアスナはジェイソンを斬り付けていく。
だが……
『3…2…1』
『TIME OUT』
神速の限界時間が訪れ、アスナの高速移動状態が途切れてしまう。
「ふむ、今のも中々良かったがぁ〜……制限があるんじゃあ〜楽しめねぇなあ〜」
ジェイソンはやれやれとため息を吐くと、高速移動の反動で疲弊しているアスナを一思いに蹴り飛ばした。
「くっそおおぉぉぉ!!」
するとキリトが叫びながら二刀流突進スキル《ダブルサーキュラー》を発動し斬り込む。
だが……
「てめぇはこの中じゃあ一番ダメだ。速さ・パワーどっちも中途半端だぁ〜」
ジェイソンはキリトが突き出した黒い剣の切っ先を難なく掴み取った。
「なん……だと……?!」
キリトの両眼が衝撃で見開かれる。
「テメェなんぞに……俺と戦う資格はねええぇぇ!!!」
ジェイソンはそう叫ぶと、キリトをそのまま力任せに投げ飛ばした。
キリトは壁に背中から叩きつけられた。
「(勝てるのか……?俺はこんな怪物に……)」
圧倒的すぎるジェイソンに、キリトは段々勝てるビジョンが見えなくなっていた。周囲にはジェイソンの圧倒的な戦闘力により倒れ伏す仲間達。辛うじて戦えるのは自分のみ。
「いや……やるしかない……俺しかいないんだ!!」
キリトはそう言って自分自身を奮い立たせ、ジェイソンに飛びかかった。
「(もっと速く……もっと強く!!)」
自身にそう言い聞かせ、キリトは己の全てを賭け、文字通り全身全霊を以てジェイソンに挑む。
彼の圧倒的なパワーを前に弾かれても、何度倒れようとも、そのたびに立ち上がって果敢に立ち向かい続けた。
ここで自分が倒れたらみんなが死ぬ。それどころか、更なる被害が出る事になる。
だからこそ、戦わなくてはならない。自分がやらなければならない。
「おおおおおおおおおお!!!!」
キリトは左右の剣を巧みに使ってジェイソンに斬りかかる。
───守る
────アスナも、みんなも……俺が守る!!
この時、キリトの脳内イメージに、一つの巨大な鋼鉄の門が現れた。
そして、キリトがそう念じた瞬間。『ガチャリ』と鍵が解かれる音がし、そして『ゴゴゴ……』という重々しい音と共に、その扉はゆっくりと開かれる。
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『ナーブギアとのシンクロ率120%を検知』
『ナーブギアのリミッターを完全解除』
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「無駄だってのが……分あぁぁぁかぁんねえぇのかあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ジェイソンに弾き飛ばされ、地面に膝をつくキリトに、ジェイソンが苛立ち気味で鉈を振り下ろす。
その直後だった。
『ギィン!!』という音と共に、ジェイソンの手から巨鉈が弾き飛ばされたのだ。
「テ…メェ……!」
ジェイソンはマスクの奥で驚愕の表情を浮かべ、キリトを見下ろす。
この瞬間、キリトの纏う雰囲気が一変した。
氷のように冷たい雰囲気を纏い、両目からは謎の黄色い光が灯っている。
「……そう言うなよジェイソン。俺だって伊達にここまで戦い続けてきたわけじゃないさ」
キリトはゆっくり立ち上がると、落ち着き払った声でそう言った。
「キリ…トくん……!」
その様子を遠目に見ていたアスナも気付いた。
あれは、かつてホロウエリアでの最終決戦でジェネシスが入った、絶対無敵の領域。選ばれた者にしか入れない、究極の次元。
《ゾーン》
キリトはゆっくりと右足を引き、左手の『ダークリパルサー』を前に突き出し、右手の『エリュシデータ』を右肩に担ぐ体勢を取る。
「ここからが俺たちのステージだ………
第二ラウンドと行こうぜ、ジェイソン!!」
ーーーーーーーーーーーー
その頃、ジェネシス・ティア・サクラの3人はJのプレイヤー達に囲まれてしまっていた。
3人はなんとか応戦し、Jのメンバー達を沈黙させていく。
だがこのままではいつまで経っても先に進めない。
「……久弥!ここは私たちが食い止めるから先に行って!!」
ティアが一人のオレンジを斬り飛ばしてそう言った。
何を言ってるんだ、と言い返そうとしたジェネシスだったが、
「大丈夫です!私たちは必ず後で追いつきます!
それよりお父さんは早くジョーカーのところへ!あの人を止められるのはお父さんだけです!!」
ジェネシスは一瞬迷ったが、ティアとサクラの目を見て何も言えなくなった。
そして一呼吸おいて決意を固める。
「……死ぬんじゃねえぞ」
そう言い残し、彼は先へ走り出した。
だがジェネシスが走り出して数分後の事だった。
ティアの元に一通のメッセージが届いた。
戦闘も落ち着いていたので、ティアはそのメッセージを開き………
そして目を見開いた。
送られていたのは一枚の画像。
ティアはそれを見て冷や汗が吹き出て、呼吸が乱れ始める。
そこに写っていたのは………
………手足を縛られ、地面に横たわっているレイだったのだ。
「な……に……これは……?!!」
ティアは思わず掠れた声で呟く。
「母さん!行ってください!」
すると事態を察知したサクラがティアにそう告げる。
「私なら大丈夫です!だから早く!!」
サクラの訴えを受け、ティアは頷いて走り出した。
メッセージに添えられていた場所に向かって。
「……とは言え、もう粗方片づいちゃってるんですけどね」
そう言ってサクラは辺りを見回して苦笑した。
周囲には戦闘不能となって転がっているオレンジプレイヤー達。既に全員ロープで捕縛しており、放っておいてももう確実に襲ってくることはないだろう。
自分はキリト達の救援にでも向かおうか、そう考えた時だった。
「いやぁ〜、これがMHCPの力か!実に見事だったねぇ〜!!」
サクラの背後からパチパチと拍手をしながら歩いてくる人物が一人。
「あ、貴方は……」
ゴージャスな白金の鎧に身を包んだ男。
アルベリヒが、不気味な笑顔を浮かべながら歩み寄ってきたのだ。
ーーーーーーーーーーーー
ジェネシスが走り続けた先に、ボス部屋があった。
ジェネシスはその扉に近づくと、それがゆっくりと開く。まるで自分を招いているかのように。
扉が完全に開かれると、ジェネシスがゆっくりと部屋の中に入った。
「よぉ〜、待ってたぜェ《
部屋の中央に、紫のスーツに不気味なピエロ風の化粧をした男が立っていた。
「ジョーカー……!!」
ジェネシスは鋭い目つきと共に、その名を口にした。
お読みいただきありがとうございます。
Jの幹部戦第一編、いかがだったでしょうか?
ティアの娘、レイに何があったのか。
アルベリヒがなぜそこにいるのか。
そしてジェネシスvsジョーカーのボス戦も始まります。
では、次回もよろしくお願いします。
評価・感想などもお待ちしております。