ソードアート・オンライン〜二人の黒の剣士〜   作:ジャズ

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こんにちは皆さん、ジャズです。
今回はいよいよ、あの男との決着です。


六十四話 人斬りとの決着

鬱屈とした洞窟の中に、1人の幼い白無垢の少女が横たわっていた。

両腕、両足はロープで縛られている。 

 

囚われた少女ーーーーレイは不意に目を覚ました。

身体には特にダメージは受けていない。ゆっくりと身体を起こし、辺りを見回す。

レイがいる場所は明かりが特になく、ただ無造作に置かれた薪に付けられた火だけが明かりとなっている。

 

自分が何故ここにいるのか、時は数刻前に戻る。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

父、ジェネシス達が迷宮区に立て篭もる“J”に対処するため戦いに行った後、レイはユイと共に七十六層の宿に残っていた。

不安ではあったが、レイは彼らの無事を信じてユイと待ち続けたが、一時間が経過した時だった。

ユイがあまりにも不安がるので、その気晴らしにと街の売店で飲み物やお菓子を購入しに出掛けた。

その道中での事だった。

 

「すまない、そこのお嬢ちゃん」

 

後ろから男性プレイヤーに呼び止められ、レイは振り返る。

 

「君が“レイ”ちゃんで合ってるかな?」

 

「はい、私がレイですよ」

 

レイは人当たりの良い笑顔で頷く。

 

「そっか、良かった。

先に謝っておく………すまねえ」

 

次の瞬間、レイは後頭部に『ゴッ!』と強い衝撃を受けて気を失い、倒れてしまった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「旦那!頼まれてた娘、連れてきましたぜ」

 

レイを拉致した2人の男性達は、九十五層のダンジョンにあるとある部屋にやって来た。

その部屋の奥には、逆立った銀髪の侍、ジャック・ザ・リッパーがいた。ジャックは自身の刀の刃を布で拭いており、男性達の声を聞くと手を止めて歩き出す。

男性達は床に大きな黒い袋を置き、チャックを開く。

中には、両腕と両足を縄で縛られたレイが気を失って横たわっていた。

それを確認したジャックは満足げに頷く。

 

「……良くやってくれた。では、これが報酬だ」

 

「へへ、んじゃあ約束通り例のアイテムを……」

 

男達がニヤニヤと笑みを浮かべていると……

 

『ザシュッ!』と言う音を立てて1人の胴体に深い切り傷が入った。

 

「ぎ………ギャアァァァアアァァァァァーー!!!」

 

痛覚抑制のない攻撃により、斬られた男性は蹲って絶叫を上げる。

 

「そ、そんな……!なんで?!話が違うじゃねえですか!!」

 

もう1人の男が青ざめた顔でジャックに問い詰める。

 

「戯け。この幼女は白夜叉の娘だ。奴の娘を拐ったとなれば、貴様らもどの道生きてはおられまい……

遅いか早いかだ。どの道貴様らは死ぬ」

 

ジャックは冷淡な表情でそう告げると、その男の首をソードスキルを使って刎ね、そのまま2人目の男の身体を真っ二つに両断する。

 

「ぐわあぁぁぁぁーーーっ!!!」

 

そして、2人は青白いガラス片となって爆散し消滅した。

 

ジャックはそのままもう一度レイを見下ろすと、写真を撮ってメールをとある人物に送信し、ニヤリと笑って奥の岩に腰掛ける。

 

「さあ来い白夜叉………貴様の大事な娘はここにいるぞ……クククククッ」

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「目が覚めたようだな」

 

レイの後ろから声が響き、レイは目を見開く。

レイはその声を知っていた。かつて自分に襲い掛かった、人斬りの声。

レイはゆっくりと振り返ると、その男はいた。

逆立った銀髪に眼帯で片目を隠し、もう片方の赤い瞳がこちらを見下ろす。

 

「ジャック……ザ…リッパー……」

 

レイは恐怖のあまり震えた声でその名を呟く。

 

「フッ、そう身構えるな。今更貴様を殺すつもりなど無い……」

 

ジャックは口角を上げて不気味な笑みを浮かべながらレイに近づく。

 

「なんで……私にこんなことをして、貴方は何が目的なんですか……?」

 

レイはジャックを睨みながらそう問いかけた。

 

「フン、知れた事……お前を人質にすれば白夜叉は怒る。

怒りは奴の理性を狂わせ、凶暴な人斬りに変貌させる……」

 

するとジャックは眉をピクリと動かし、後ろを振り返る。

 

「……噂をすればだ。お出ましのようだぞ」

 

ジャックはニヤリと笑うと、顎で洞窟の入り口の方を指す。

レイもそれに促されてその方向を見ると、暗闇の奥から白い人影がゆっくりと歩いてくるのが見えた。

レイと同じ銀髪に白マントを羽織った女性。見間違えるはずもない、レイの母親であるティアだ。

 

「ママ……!」

 

ティアは何も言わずにこちらに近づく。

だが近づくにつれ、彼女が放つ多大な圧力がひしひしとこちらにも伝わってきた。

 

「ほう……この気迫……怒っているな、白夜叉?」

 

ジャックもそれを感じ取ったのかティアに問いかける。

 

「………レイをまきこんだ貴様と、それを阻止出来なかった私自身にな」

 

ティアの声は普段レイに見せる慈愛と優しさに満ち溢れたものではなく、怒りと憎悪に満ちたドスの効いた声だった。

ティアは鋭い目つきでジャックを睨みながら答えると、左腰からスラリと刀を引き抜く。

 

「ククククク………いいぞ白夜叉………」

 

それを見て満足げな笑みと共にジャックは満足げに笑い、背中から太刀をゆっくりと引き抜いた。

 

「来るがいい……“ゲーム(殺し合い)”開始だ」

 

ジャックがそう告げた直後、ティアはその場から飛び出し、同時にジャックも上空に飛び上がる。

真上から振り下ろされるジャックの刀をティアは横一閃に振るって弾く。

だがジャックは着地すると同時にそこから猛攻を加えた。上、下、斜め方向からランダムに斬撃が飛び、ティアは持ち前の反射神経でギリギリのところで回避、防御を続ける。

 

ティアは自身の頭部目掛けて来るジャックの刀を上半身を後ろに逸らすことで回避し、そのまま自身の刀をジャック目掛けて下から振るう。

が、ジャックはそれを何なく弾いた。

 

「……そんな腕で俺が殺せるか?」

 

ジャックは退屈そうな顔で刀を自身の右肩に担ぎながら言った。

 

「……っ!」

 

ティアは一度彼と距離をとり、刀の柄に左手を添えて切っ先をジャックに向けた状態で自身の真横に構える。

 

しばし睨み合いが続いた後、今度はティアの方から斬りかかった。

刀身に青白い光が宿ると同時に、ティアはそれを右上から左下方向に繰り出す。刀ソードスキル《幻月》

それに対してジャックは左腰あたりに刀を構え、ティアの刀が振り下ろされると同時に素早く振り抜く。刀ソードスキル《絶空》

2人の剣が火花を散らしてぶつかり合う。

 

「くっ……!」

 

ティアは苦い顔で歯軋りをした。弾かれたのはティアの刀だった。

宙に浮いた彼女の刀を、ティアは素早く掴み取り、逆手で持ち替えてそのままジャック目掛けて振るった。

 

「それは悪手だな」

 

ジャックは首を横に振ってティアから振り出された刃を左手で受け止め、そのまま返しに自身の刀を突き出す。

その瞬間、『ザシュッ』と言う何かが突き刺さるサウンドエフェクトが鳴り、ティアの両眼が見開かれた。

ティアの腹部にはジャックの刀が深々と突き刺さっていた。

痛覚抑制の無い攻撃により、ティアは腹部に今まで感じた事のない痛みが襲った。

 

「逆手で構えるのは逃げの一手だ」

 

「ぅぐっ……!」

 

ジャックはティアの腹部から刀を引き抜くとそのまま再び猛攻を始めた。

 

「ママっ!!」

 

レイは悲痛な顔で叫ぶ。

ティアは痛みで意識が散漫しまともに反撃する事ができない。

防戦一方だったティアに対してジャックは蹴りを加え、彼女を壁に叩きつける。

 

「くっ……!」

 

ティアは地面に膝をついて倒れ込んだ。

 

「……その程度か?白夜叉。こんなものでは貴様を斬ったところで何の面白味もないぞ」

 

ジャックはため息を吐きながら自身の刀身を左袖で拭う。

 

「本性を曝け出せ白夜叉。言ったはずだ、貴様の性根は人斬りだと。このままでは大事な娘は返ってこないぞ?」

 

「だ…まれっ!!」

 

ティアはジャックの言葉を遮って叫び、その場から飛び出した。

ティアの刀身に赤い光が宿り、やがて炎のエフェクトを纏い始めた。

そのまま炎の斬撃をジャックに突進しながら無数に繰り出していく。

ティアが保有する、アインクラッドでは恐らく最多の連撃数を誇るソードスキル。

抜刀術39連撃スキル《緋吹雪》

 

「緩い」

 

だがジャックは淡々とその乱撃を容易く弾いていく。

そして技が終わり、動かなくなったティアの右肩目掛けて鋭い刺突攻撃を加えた。

ジャックの刀の切っ先がティアの右肩アーマーを軽々と吹き飛ばし、地面に『ガシャン』と音を立てて転がった。

 

「ぬん!」

 

そのままジャックはソードスキル《旋車》を発動。

黄緑の斬撃が突風を巻き起こしながらティアの身体を切り裂いていき、そのまま吹き飛ばした。

 

「ぐぁっ……!!」

 

横腹と太腿辺りを抉られ、再び激痛に襲われるティアは地面に刀をついてそれを支えに膝立ちする。

 

「…まだ迷っているのか白夜叉。殺す気で掛からねば俺には勝てぬぞ。

………それとも、こうでもせねば本気は出せんか?」

 

するとジャックは後ろを振り返り、レイの方を見た。

そして右の掌を伸ばし、レイの目を見て赤い瞳を向け、鋭い目つきで睨む。

 

「……っ?!」

 

次の瞬間、レイは目を見開いて地面に崩れ落ちた。

苦悶の表情で身体を震わせ、踠き苦しむ。

 

「れ……レイ?!」

 

ティアは目を見開いて娘の名を叫ぶ。

レイの視界には、かつて自分が見て、感じ取ってきた人の感情データが流れ込んでいた。

それらは全て、自身が対処するべきであった人々の負の感情だった。絶望・後悔・悲哀・憤怒・憎悪・狂気・殺意と言った、MHCPである彼女たちが片付けるべきもの。

しかし、今のレイにそれを対処できる能力は無い。だが負の感情は絶えず自分に流れ込んでくる。

やがてレイの視界にエラー表示が現れた。かつて、自分が崩壊しかけた時と同じように……

 

「《心の一方》を強めにかけた……聞けば、お前の娘はMHCP、人の感情を見る機能があるそうじゃないか。

今お前の娘には俺の剣気・殺意・憎悪・憤怒と言った負の感情が流れ込んでいる。それらを処理出来ないあの娘はエラーを蓄積しやがてそのデータは崩壊する……」

 

「ぁ……ぅ……ま…………ま………」

 

レイは苦しそうに息も絶え絶えになりながら、悲痛な表情でティアに助けを求めた。

 

「貴様……!」

 

ジャックの言葉を聞いたティアは怒りに身体を震わせる。

 

「時間はないぞ。言いたいことは剣で言え」

 

ジャックがそう告げた瞬間。

ティアが一瞬の動作で飛び出し、ジャックの首目掛けて刀を振るった。寸前のところでジャックは回避し、ティアはそのままジャックを通過してレイの前で着地する。

 

「命が惜しければ、レイに掛けた心の一方を解けッ!!!」

 

ティアはジャックの方を振り返り、ドスの効いた声でそう怒鳴りつける。

 

「戯け。俺にはもう解けぬ」

 

ジャックは軽い笑みを浮かべながら答えると、そのまま真顔に戻して自身の刀の切っ先をティアに向けた。

 

「方法は二つに一つ。

《自力で解く》か、《術者を殺して気を断ち切るか》だ。

ククククッ」

 

薄ら笑いでジャックはそう告げた。

 

「……ならば!!」

 

最早ティアに残された選択肢は一つだけ。それを悟ったティアは走り出し、再びジャックと剣戟を繰り広げた。

ティアは怒りに任せて剣を振るった。最早型も何も無い。ただ己の身に任せて、ジャックに襲いかかる。

 

その間にも、レイの視界にエラー表示は段々と増えていき、自分の中にある大事な何かが崩れ落ちていく感覚がし始めた。

 

早くしなければ、大事な娘が再び消えて無くなってしまう。

その事をティアは分かっており、早くジャックを殺す事で頭がいっぱいになっていた。

そう、この時ティアは既に、ジャックに対して明確な殺意を抱いていた。それは最早、ジャックが言っていた修羅、人斬りとしてのティアであった。

 

「フハハハハ!いい、いいぞ白夜叉!もっと貴様の本性を見せてみろ!!」

 

ジャックは楽しげな笑みでティアに刀を振るった。

だが、ティアはジャックの斬撃を弾き返した。そのあまりのパワーに、ジャックの上体は大きくのけ反った。

 

「ぬおっ!こ、これ程とは……!」

 

「だあぁぁぁぁっ!!!」

 

次の瞬間、ティアは自身の刀をジャックの腹部には思い切り突き刺した。

 

「ぐっ……おおおっ……!!」

 

するとジャックは両眼を見開き、今まで見せなかった苦悶の表情で腹部を抑えた。

それを見てティアは違和感を感じた。普通のプレイヤーには痛覚抑制が働いているので、刀を突き刺した所で痛みは殆ど発生しない。最も、彼の刀にはそれを無効化する機能があるようだが、彼の刀で突き刺した訳ではないので痛みは発生しないはずなのだ。

 

「ぐ…………ククッ……ククククッ…」

 

だがジャックは、苦悶の表情の中で徐々に不気味な笑い声を上げ始めた。

 

「心地いい痛みだ………痛覚抑制を外して正解だったな。

やはり、斬り合いはこうでなくてはな」

 

ティアは驚愕のあまり息を呑んだ。

この男、自らペインアブゾーバーを外してあるのだ。

ジャックのあまりの狂気っぷりに、ティアは思わず後退りした。

一方でジャックのテンションのボルテージはどんどん上がっていく。そして赤い瞳に、徐々に光が宿っていく。

 

「これでこそ………戦いだ!!!」

 

ジャックはそう叫ぶと同時にティアを吹き飛ばした。

ティアは数メートル下がった後、再びジャックの方を見る。

 

「ククククッ……戦場(ここ)が俺の居場所、これが俺だ」

 

ジャックは楽しげに笑みを浮かべながら言った。

その右目の瞳には赤い光が灯っていた。

次の瞬間、ジャックは一瞬でティアの目前に肉薄し、刀を上から振るう。

ティアは辛うじてそれを防ぐが、ジャックは素早い動作で次の攻撃を繰り出す。ティアの左下方向から刀を振るい、そのままティアの胴体を斬りつけた。あまりに早い動作でティアは反応が追いつかず、その攻撃を受けてしまった。

そして、ジャックは左腰から短刀を引き抜くと、それをティアの右肩に深々と突き立てる。

 

「があっ……!」

 

「らあっ!!」

 

右肩を抑えるティアに対してジャックは左足で思い切り蹴飛ばす。

地面を数メートル転がり続け、ティアはレイの目の前で倒れ込んだ。

 

ティアの目の前には、苦しそうに悶える愛娘の姿があった。

両目から涙を流し、その表情には苦悶と恐怖に満ちていた。

 

「ま………ま……っ………ぅ………」

 

ティアは苦しむレイの姿を見つめた。

 

その瞬間、ティアの心がすぅ…と冷え切っていく感覚がした。怒りでも、殺意でもない。最早ティアではない、別人のような何かに変貌してしまったかのような感覚。

 

そして、ティアの脳内にある大きな鋼鉄の扉が、ゆっくりと開いていく。ジェネシスやキリトが到達した究極の次元に今、ティアも到達するーーーー

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

『一定数の脳波を感知』

 

『ナーブギア、リミッター解除』

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

ティアは自身の右肩に突き立てられた短刀を引き抜き、無造作に投げ捨てる。

 

「勝負だ、『白夜叉のティア』」

 

背後から高らかにジャックが告げると、ティアは刀を拾い上げてゆらりと立ち上がる。

俯き加減で立ち、ゆっくりと振り返る。

 

「遊びは終わりだ………

 

……殺してやるからさっさとかかってこい

 

凄まじい殺気と怒気を放ちながら、ティアは両目から青い眼光を孕んだ目で睨む。

 

「ククククッ………オーケー。

いざ、参るっ!!」

 

ジャックは満足げに頷くと、刀を両手で構えながらティアに突っ込む。

ティアも同時に駆け出し、ジャックと刀をぶつけ合った。

 

ゾーン状態に入った事で両者互角の戦いが繰り広げられる。刀が火花を散らしてぶつかり合い、しかもその速さ、パワーも格段に増し、白熱した剣の撃ち合いが続く。

 

だがその時、ティアが一瞬の隙にジャックの懐に潜り込み、背後に回り込む。

ジャックはすぐ様振り向くが、そこにはティアの姿はない。

 

「はああああっ!!」

 

直後、真上からティアが刀を上段から振り下ろし、ジャックの脳天を打つ。

 

「ぐおおっ……!」

 

ジャックは頭を斬られた事による激痛で思わず膝をつく。

そんなジャックを冷ややかな目で見下ろしていたティアは、踵を返して数は歩き、距離を置く。

 

ジャックは激痛に耐えながら再び立ち上がってティアの方を見やる。

 

ティアは刀をゆっくりと左腰の鞘に収めていく。

刀の鍔が鞘の鯉口に付いたとき、鈴の音のような軽い金属音が洞窟内に鳴り響いた。

腰を落とし、左足を引き、身体を横向きにする。そして刀を左腰に携え、左手は刀の鯉口辺りに添え、右手はやや前方に突き出す。

 

「ほう……抜刀術か」

 

ジャックはそう呟くと、刀を両手で構えて一気に突っ込む。

刀最上級スキル《散華》

 

ジャックの刀がティアに向かって振り下ろされた瞬間、ティアは素早く右手を自身の刀の柄に持っていき、掴み取る。

右足を大きく前に踏み出し、その勢いで刀を引き抜いて一気に右上に振り抜く。

眩く銀色に輝く刃がジャックの右腕を捕らえ、そしてそのまま斬り払った。

抜刀術最上級スキル《飛閃一刀》

 

「ば……かなっ…!」

 

右腕を斬り落とされたジャックはその場に跪いた。

 

「これで終わりだ。お前の剣の道も……そして」

 

ティアはゆっくりと立ち上がってジャックを見下ろし、そして刀を高く掲げる。

 

「お前の命もな」

 

ティアの刀が青い光を帯び始めた。

そんな彼女を、レイは苦しみの中から見つめていた。

 

「だ……め………っ」

 

必死に訴えるが、その声は届かない。

 

「レイの命を守るために……お前はここで死ね!」

 

「ククク……さあ、殺せ白夜叉ァ」

 

そしてティアは刀を勢いよくジャックの首元目掛けて振り下ろす。

 

「だめええぇぇーーーーっ!!!」

 

だがその時、レイの悲痛な叫びが響き、ティアは寸前のところで手を止めて目を見開いてレイの方を見た。

 

「殺しちゃ…………ダメですっ、ママっ……!

ママはそんな事をしたら……ダメです…!ママの剣は……みんなを助けるためのものです!人を、この世界の人を助ける為の……《活人剣》……それが、ママの剣ですっ……!」

 

涙を流し、息も絶え絶えになりながらレイは必死に訴えた。

ティアはレイの声を聞き、刀を引いてジャックの元から離れる。

 

「決着をつけるぞ、白夜叉……」

 

だが背後から、ジャックが立ち上がって残った左腕で刀を持ち、構える。

 

「……もうやめなさい。左腕しか残っていないお前に勝機は無い」

 

ティアは振り返らずに背後のジャックに向けてそう告げる。

 

「フッ…世迷言を。まだ終わってなどおらぬさ……」

 

ジャックはニヤリと笑って刀を逆手に持ち帰る。そしてその刀を振り上げてーーーー

 

 

 

 

 

自身の腹部に突き刺した。

 

「っ?!」

 

振り返ったティアは思わず目を見開く。

 

「……これでわかった筈だ……貴様の性根は人斬り。

お前がいつまで活人剣などとほざいていられるか………地獄の淵で見ていてやる……ククククッ」

 

そして不気味な笑い声を上げながら、ジャックはHPを切らして爆散した。

地面に『ガシャン』と音を立てて彼の刀が落ちる。

 

「〜〜っ、はぁ……はぁ……!」

 

彼が死んだ事で苦しみから解放されたレイが深く息を吸って呼吸を整える。幸い、多少のダメージはあるものの崩壊に至ってはいない。自力でも修復可能な範囲だ。

 

ティアはゆっくりとレイの元へ歩み寄る。そしてレイの縄を解いて彼女を解放した。

 

「ママーーっ!!」

 

ようやく全てから解放されたレイはティアに抱きついた。

 

「……ごめんね、レイ。私のせいで……」

 

ティアは蹲み込んでレイの頬を優しく撫でる。

 

「ママっ……違います、ママのせいじゃありません…!」

 

レイは首を振ってそれを否定する。

 

「ママは私の……世界一のママですから!!」

 

「レイっ……ありがとう……!」

 

ティアは涙を流してレイを強く抱きしめた。

 

 

 




こ れ が や り た か っ た 。
お読みいただきありがとうございました。今回のお話は、ジャズがこの作品で一番やりたかった事です(その割には完成度がorz)

終盤、修羅に陥ったティアを止めたのはレイの声……奇しくも、ラフコフさんでのジェネシスとティアの構図と同じであることに気付いた方はおられるでしょうか?

では、今回はこの辺で。次回は遂に、ダークナイト・ジェネシスとジョーカーとの戦いをお送りしたいと考えております。


〜告知タイム〜

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では、長くなりましたが今回はこの辺で。
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