ソードアート・オンライン〜二人の黒の剣士〜   作:ジャズ

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こんばんは皆さん、ジャズです。
今日、Fateの劇場版を見てきました。マジで終始鳥肌が立ちっぱなしでした。
皆さんも、是非見ていただきたいと思います。



六十八話 家族で遊ぼう・ブチ切れたオルトリア

01 『家族で遊ぼう』

ある日、ジェネシスが宿の自室で寛いでいると……

 

「パパー、いますか〜?」

 

レイがドアをノックして来た。

ジェネシスがドアを開けて中に促すと、どうやらそこにいたのはレイだけではなく、ティアとサクラもいた。

 

「お、どうしたんだ?」

 

「久弥、これから時間ある?」

 

ジェネシスは特に予定もなかったので頷く。

 

「じゃあ、これからみんなで散歩に行かない?」

 

「散歩?」

 

「ええ。お父さん、最近ずっと忙しかったじゃないですか。たまには、リフレッシュしませんか?」

 

「成る程な……いいぜ、今日くらいはゆっくりするか」

 

「わーい!それじゃあみんなで行きましょう!」

 

ジェネシスが了承するとレイが嬉しそうに飛び跳ね、4人は街に歩き出した。

因みにサクラには以前アルベリヒによって取り付けられてしまったドライバーがあるのと、レイが一緒という事で圏外には出ない事にした。

 

街は暖かな日差しが照らし、気温もちょうど良く気持ちのいい風が吹き抜ける。

しかし、こんな天気であるというのに街には誰もおらず、閑散とした空気が流れていた。

 

「こんな日だってのに、誰もいねえな」

 

「きっと、みんな攻略に出てるんだよ」

 

ジェネシスの疑問にティアがそう答える。

ジェネシスが「俺は行かなくて良かったのかね」と気まずそうに呟くと、ティアは自身の左手で彼の右手を優しく包むように握る。

 

「今日くらいは…………ね?」

 

ティアは彼の耳元まで顔を寄せると、うっすらと笑みを浮かべながらそう囁く。

するとサクラが反対側のジェネシスの手を握り、同じように耳元まで顔を近づける。

 

「そうですよ?今日はみんなで、ゆっくりしましょう……?」

 

左右から美女に挟まれて少し戸惑い気味のジェネシス。

すると少し前を楽しそうに歩いていたレイが振り返る。

 

「あーーっ!!2人ともずるいですよ!!私だってパパと手を繋ぎたいのに!!」

 

レイは頬を膨らませてジェネシスに駆け寄って飛び乗る。

 

「パパ、抱っこしてください!!」

 

「おいおい、いきなり飛びつくなって」

 

ジェネシスは困ったように笑いながらレイを抱きかかえた。

するとそれを見たサクラが負けじとジェネシスの背中に乗りかかる。

 

「じゃあ私はおんぶでお願いします♪」

 

「ちょっ、サクラお前なぁ……」

 

それを見たティアが「むぅ〜…」と頬を膨らませてジェネシスによじ登り、両肩に座り込んだ。

 

「なら私は肩車ね!」

 

「オイィィ!!お前ら一回降りろ!重すぎて歩けねえから!!」

 

ジェネシスは3人の女子に乗り掛かられる重みで満足にバランスが取れずにフラフラと覚束ない足取りで進む。

 

「ヤベッ……もう、無理……!」

 

とうとうバランスを崩し、ジェネシスはそばにあった噴水に倒れ込んだ。

 

「きゃあぁっ?!」

 

「わあぁぁっ?!」

 

「ひゃあああっ!!」

 

それに伴ってジェネシスにしがみ付いていたレイとサクラ、ティアも噴水に飛び込んでしまう。

 

「ぷはっ!もう〜、全身びしょ濡れだよ〜」

 

ティアが水中から顔を上げて、眉を八の字に曲げて言った。

ティアの白い髪はずぶ濡れになって先端から水滴が滴り落ち、身につけている服はぴったりと身体に張り付き彼女のボディラインをより強調していた。

それはサクラとレイも同じで、2人が着ている真っ白なワンピースがびしょ濡れになって2人の身体にぴったりと張り付いてしまっていた。

 

「いや、いくらなんでもてめぇら3人抱えてられるわけねぇだろうが……」

 

ジェネシスはそれに対してジト目で3人の方を見ながら答える。

 

「えいっ!」

 

するとレイがジェネシスに向かって水鉄砲を飛ばした。

そしてそれに便乗してサクラとティアもジェネシスに向かって水を飛ばしていく。

 

「ちょ、おい?お前ら何してんの?」

 

「どうせずぶ濡れだし、ここで水遊びをしましょう!私たち3人と、パパで勝負です!」

 

「お父さん、覚悟ぉ〜!!」

 

ティア、レイ、サクラの3人から一斉に水飛沫を浴びせられるジェネシス。

 

「危なっ?!」

 

だがジェネシスは素早く反応すると巧みにその水飛沫を回避していく。

 

「む、中々やるね久弥。でも……これならどうかな!」

 

するとティアは水の中に深く腕を沈め、そして勢いよく前に突き出した。

 

「スペシャルソードスキル!緋吹雪ならぬ『水吹雪』〜!!」

 

「ぎゃーーっ!!」

 

一際大きな水鉄砲が飛び、ジェネシスの身体に命中した。

 

「じゃあ私も行きますよ〜!『ライジングインパクト』!!」

 

レイも同じように大量の水飛沫をジェネシスに飛ばした。

 

「あははっ!やったね、クリティカルヒット!!」

 

「わーい!やりましたよママ!」

 

ティアとレイは嬉しそうにハイタッチを交わす。

 

「いや、スペシャルソードスキルて……ただの水鉄砲じゃねえか」

 

「あら?あの《暗黒の剣士》ジェネシス様が避けられなかったんだから、“ただの”水鉄砲じゃないんじゃない?」

 

悪戯な笑みでティアに言われたジェネシスは「ほぉ……」と口角を吊り上げてニヤリと笑う。

 

「てめぇら……俺を本気にさせたな?」

 

そしてジェネシスは両腕で思い切り水面を叩きつけ、大きな水飛沫を立てて3人に向けて飛ばした。

 

「「「きゃあーーーっ!!」」」

 

水飛沫は容赦なく3人に命中した。

 

「や、やったなぁ〜!」

 

「お返しですっ!!」

 

そこから3人とジェネシスの水の掛け合いが始まった。

噴水の水溜めでバシャバシャと水飛沫がいくつも発生し、楽しげな声が静かな広場に響き渡った。

 

〜数十分後〜

 

「だぁ〜……くそ、ダメだ。降参、降参だ」

 

ジェネシスは両方を激しく上下させながら両手を上げた。

彼は頭からずぶ濡れになっており、至るところから水滴がポタポタと落ちている。

 

「わーい!私達の勝利です♪」

 

「まあ、3対1という人数差もあるかもですけど……」

 

レイが嬉しそうに飛び跳ねるのに対し、サクラはやや苦笑いで呟く。

 

「それじゃ、そろそろ休憩しようか」

 

「ああ。流石に少し疲れたわ……」

 

4人は噴水から上がると近くのベンチに並んで腰掛ける。

ジェネシスの左隣にティアが、その反対側にサクラが腰掛け、彼の膝の上にレイがちょこんと座り込む。

 

「はぁ〜……ちょいとはしゃぎすぎたかな」

 

「うん。みんな子供みたいにはしゃいでたよね」

 

ジェネシスとティアは背もたれにゆったりと上半身を預けながら言葉を交わす。思えば、2人してあのようにはしゃいだのは初めての経験である。

 

「凄く楽しかったですね!」

 

「はい、とても幸せな時間でした」

 

レイとサクラは家族との新しい思い出を記憶に刻み、楽しそうな笑みで2人に言った。

 

「これから……みんなでもっと楽しい思い出を作りたいですね!」

 

「うん、もちろん!もっともっと、いろんなことをしようね!!」

 

期待に満ちた表情でいうサクラに対し、ティアは満面の笑みで頷いた。

 

 

 

 

 

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02『ブチ切れたえっちゃん』

 

その日、えっちゃんことオルトリアは非常に不機嫌な様子で食堂の一席に座り込み、ズズズとコーヒーを啜っている。

普段から感情の起伏が少なく、またその感情も表に出にくいタイプの彼女だが、この日はひと目見ただけで誰が見ても不機嫌であると理解できるほど負のオーラが彼女を中心に充満していた。

 

「………で、何があったんだアレ」

 

ジェネシスが少し離れた席からそれを眺め、向かいに座るティアに気まずそうに問いかける。

 

「実は……えっちゃんが今日楽しみにしてたレアモノのチョコケーキ、誰かが食べちゃってたみたいで」

 

「ベタだな。お菓子好きなあいつからしたら辛いだろうが……けどお菓子一つ食われたくらいであそこまで怒るような奴か?」

 

「ところがそれだけじゃないみたいよ」

 

すると今度は同じ席に座るイシュタルが口を挟んだ。

 

「何かね、あの子ここ最近不運続きだったみたいで」

 

イシュタルが言うには、・お店の品物が揃って資材不足で品薄になる、・戦闘中に彼女が使用するフォトンソードの充電が切れて死にかける、・最近客足が良くなく、売り上げが少なくなる、・昨日女子メンバー全員でウノをやったら惨敗する、と言うことがあったそうだ。

 

「それは確かに、フラストレーションも溜まるわな……」

 

ジェネシスが同情の目線をオルトリアに向ける。

オルトリアは未だにテーブルの一点をじっと見つめながらコーヒーを啜っている。

 

「…どうにか、えっちゃんの気分を晴らしてあげられないかな……」

 

ティアが心配そうな目で彼女の方を見る。

 

「まあ、あの子の気晴らしと言ったら甘いものとかしかないでしょうね」

 

イシュタルはやれやれと首を振りながら紅茶を口にした。

このままこれを放っておけば今後、彼らの攻略や日常に何かしらトラブルが起きる可能性もあるし、何より『人の悪意』に敏感な状態のサクラがいるため、この状態のオルトリアを放っておくわけにはいかなかった。

 

とりあえずジェネシスは何かいいものはないか買い出しに行くことになり、その間にティアとイシュタルがオルトリアの面倒を見ることになった。

 

「す、澄香?これ私達が作ったショートケーキなんだけど、食べる?」

 

イシュタルが試しに2人で(ほぼティアが)作ったショートケーキをおずおずと差し出す。

 

「………お気持ちは嬉しいですが今はショートケーキの気分じゃ無いのですみません」

 

と、全く取り合う様子もなかった。

 

「そ、そうだよね〜!今はショートケーキの気分じゃ無かったよねぇ〜!ごめんねえっちゃん!!それじゃあこっちのどら焼きなんかはどう?」

 

するとティアが慌ててショートケーキを下げてどら焼きを差し出す。

 

「ごめんなさい、どら焼きの気分でもありません。少し、1人にしてもらえますか」

 

だがオルトリアは尚もそっぽを向いて取り合わなかった。

 

「あ、ああ!そうよね!!今はお菓子とかの気分じゃ無いわよね!!な、何か欲しいものとか、クエストに付き合って欲しいとか、そんなのは無いかしら?」

 

「ありません。私には構わないでください」

 

オルトリアはしつこく構ってくる2人に嫌気が差してきたのか徐々にその声にドスが効いてくる。

それを2人は感じ取ったのか冷や汗をかいて慌て気味になり、どうにかして彼女を宥めようと努める。

 

「ご、ごめんごめん!でも、えっちゃんが凄く疲れてそうだから何かしてあげたいなぁ〜って思って!

どうしたらいい?あっ!肩揉みとかしてあげよっか?」

 

「な、何でもいいのよ?ほら、頭を撫でて欲しい〜とか他に色々やってあげるわよ?」

 

ティアが後ろからオルトリアの肩を持ち、イシュタルがオルトリアの頭をわしゃわしゃと撫で回す。

 

だが、イシュタルが撫でる手がオルトリアの頭に出ているアホ毛に触れてしまった。

 

その瞬間、オルトリアの両眼がカッ、と開かれ、直後に爆発のような突風が発生してイシュタルとティアを吹き飛ばした。

 

「あー、痛た……な、何なのよ今の爆発……」

 

イシュタルが腰をさすりながらゆっくりと立ち上がる。

 

「わ、私にも分かんないよ〜……」

 

ティアも頭を押さえながら立ち上がる。

2人は何が起きたのか確かめるためにオルトリアの元へと向かう。

 

「え、えっちゃ〜ん?」

 

ゆっくりとオルトリアを呼びかける。

 

何か用ですか、雫

 

帰ってきたオルトリアの声は普段ののほほんとした雰囲気の彼女とは正反対の、低く猛獣が唸るような、ドスの効いた声だった。

ピシリ、と空間が固まる。

冷蔵庫に放り込まれた時のような悪寒が2人の背中を襲った。

ジロリと2人を睨むオルトリアの瞳からはハイライトが消え、特徴的だったアホ毛も引っ込んでいる。

 

「あわ、あわわ、あわわわ……え、えっちゃん?!」

 

「はわ、はわわ、はわわわ……え、えっちゃん?!」

 

2人は思わず抱き合って震え上がる。

人形のような端正な顔立ちからは鋼のような殺気や威圧感が発せられ、2人を無慈悲に抑圧した。

 

「り、凛ちゃんパス!パス!!わ、私には無理無理っ!!」

 

「は、はあ?!ふざけんじゃ無いわよ!!私にも無理よこんなの!あ、あんたが何とかしなさいよっ!!」

 

2人はくるくると回りながら押し付け合う。

そんな2人に対して愛想が尽きたのか、オルトリアはため息をついてずいっと2人に詰め寄る。

 

「雫、凛」

 

「ひゃ、ひゃいっ?!申し訳ないありません、私が悪ぅございましたぁ〜!」

 

イシュタルは咄嗟にティアの背後に隠れて涙目になって謝罪する。

 

「2人ともどうしたのだ?私に何かおかしいところでもあるのか?」

 

首を傾げてオルトリアは相変わらずドスの効いた声で問いかける。

 

「い、いいえ何も!なぁんにもおかしいところはないです!!いつも通りのえっちゃんですぅ〜!!

ね?凛ちゃん?!!」

 

早口気味になってイシュタルに同意を促す。イシュタルもうんうんと首を激しく上下させて後退する。

 

「……ならば良い。私は腹が減った。雫、何か用意せよ」

 

「ひゃいっ!かしこまりましたぁ〜!!」

 

ティアは早足でキッチンに向かって走っていく。

今のオルトリアを戻すはやはり、甘い和菓子が必要であろう。それも、半端なものではなく高級和菓子店にあるような一流の品だ。

 

ティアは逸る気持ちをどうにか鎮め、ゆっくりと深呼吸する。

豹変してしまったオルトリアのために、ティアは全身全霊をかけて作り始めた。メンバーの中でもトップクラスの料理スキルを保有する者としてのプライドと意地を持って、和菓子を作り上げた。

ティアが作った一品は、オルトリアの好物である大福餅。

餡子をたっぷりと詰め、トロリとした生地が特徴の品だ。

 

これなら、行ける……!

 

ティアは一種の確信と自信を持ってオルトリアに提供した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「不味い。半日で堕落したな、雫」

 

「こふっ?!」

 

冷ややかな声で告げるオルトリア。

ティアは思わずその場に崩れ落ちた。

 

「し、雫!泣いてる泣いてる!とにかく今は手を動かして!」

 

蹲ってしくしくと泣くティアをイシュタルは何とか宥める。

 

「う、うるしゃい……私の、私の自信作を不味いって………しかもよりによってえっちゃんに、えっちゃんに………!」

 

そのままうわぁんと泣き出すティア。

 

「凛。貴女が偶に作る手を抜いたあの料理が良い。雫に手本を見せてやれ」

 

するとオルトリアがイシュタルに対してそう告げた。

オルトリアのいう凛の料理とは、ハンバーグ・野菜・ピクルスなどをパンで挟んだ、あの手抜き料理。

 

「それって、まさか……!」

 

ティアもあの料理が分かったのか、目を見開いた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

もっきゅもっきゅ、もっきゅもっきゅ

 

リズムの良い咀嚼音が響き渡る。

オルトリアは何も言わずに、あのジャンクフードの王様であるハンバーガーをスナック菓子のように頬張っていく。

 

「なんだ、アレ……?」

 

それを遠目に、キリトが困惑した表情で見つめる。

 

「何か、ご機嫌斜めだったオルトリアちゃんを宥めようと、イシュタルとティアがあれこれしたらあんな事になっちゃったんだって」

 

キリトの問いにアスナが答えた。

テーブル一杯にあったハンバーガーの山はあっという間に無くなり、オルトリアがお代わりを要求する。

するとティアが慌ててキッチンに戻り、再びハンバーガーを作り出す。

 

「……そう言えば、オルトリアは最近不幸続きだったしな………その不満が爆発してしまったんだな、きっと」

 

同情した表情でキリトはオルトリアの対応に追われるティア達の方を見つめた。

 

「まあアレだ、“触らぬ神に祟りなし”。ああいうのは変に構わずに、時間に任せるべきだったって事だな」

 

ジェネシスもうんうんと頷きながらそうそう答えた。

 

その後、山盛りのハンバーガーを食べ切ったところでオルトリアも元に戻り、彼女の怒りもそれで鎮まったようだ。

そして、今後はオルトリアを絶対に怒らせないようにしようと皆は誓ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。
ヒロインXのオルタであるオルトリアのオルタってもう分かんねえな。
今回は少し短めでしたがどうかご了承ください。

では、次回も宜しくお願いします。
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