ソードアート・オンライン〜二人の黒の剣士〜   作:ジャズ

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どうも皆さん、ジャズです。
今回で祝福の儀式は終了です。


七十話 祝福の儀式2〜思い出の地・絆の神殿〜

その日、ジェネシスとキリトは八十三層の町外れにある湖畔に来ていた。というのも、ここはかつて彼らが休暇中に過ごした二十二層に非常に似ていたのだ。

 

そこで二人は見つけてしまった。湖畔に立つ、一軒のログハウス。かつて彼らが住んでいた家と同じような、質素かつシンプルであるが、どこか家庭的で温かな雰囲気のあるログハウス。

 

「ここ、いいなぁ〜」

 

キリトがそのログハウスを見つめながら懐かしそうに微笑んで言った。

ジェネシスも同じ事を考えており、目の前のログハウスをじっと見つめる。

 

「……なぁキリト。俺もこのログハウス、結構いいと思ってる」

 

ジェネシスがそう言うと、キリトは「へえ」と目を細め、ジェネシスの方を見る。

 

「俺も、このログハウスが欲しいって思ってるぜ」

 

「はっ、どうやらてめぇとはここで決着をつけなきゃいけねえ見てえだな…」

 

ジェネシスはニヤリと笑って右拳を突き出す。

 

「上等だぜ、行くぞジェネシス!!」

 

キリトもそれに便乗して右手を差し出す。

 

「「じゃんけん……ぽん!」」

 

 

 

 

 

 

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「ちくしょおぉぉ……」

 

その日の夜、ジェネシスは七十六層の宿にある食堂で悔しげに項垂れていた。

あの時、じゃんけんに負けたのはジェネシスの方だったのだ。従ってあのログハウスにはキリトとアスナが住む事になったのだ。

 

「そんなに落ち込まないで、久弥。私は大丈夫だから」

 

そんな彼の背中を優しく摩って宥めるティア。

 

「……で、あいつはなんであんなに落ち込んでるの?」

 

「ティアさんのためにログハウスを用意しようとしたらしいんですけど、どうやら同じ事を考えてたキリトさんに負けちゃったそうで……」

 

後ろからそれを眺めるイシュタルの疑問にシリカが苦笑いを浮かべながら答えた。

 

「なるほど、つまりサープラーイズが失敗してドゥーン状態にあるわけですね」

 

「まあそう言う事になるわね。ならカツ丼でも食べさせとけばいいんじゃない?」

 

「イシュタル、それカツ丼じゃない。カ◯ミ丼」

 

オルトリアが成る程と頷き、イシュタルが肯定しつつそう提案し、サチがその提案に対し冷静にツッコミを入れる。

 

「クソァ………」

 

「いいんだよ久弥。私はこうしてみんなと過ごす方が好きだから」

 

「……そうか?ならいいんだがな」

 

ティアの励ましを受けてゆっくりと起き上がるジェネシス。

その後、二人は二階に上がって宿部屋に戻っていく。

 

「さてと、そんじゃ風呂にでも入ってくるわ」

 

ジェネシスはそう言って宿部屋に備えられた風呂場の脱衣所に入っていく。赤と黒の装備を解除し、ボディタオルを持って風呂場に入る。

シャワーのレバーを引いてお湯を出し、霧雨状のお湯が身体に降り注ぐ。ゲーム内での風呂はステータス等に影響が出るわけではないが、しかし気持ち的に風呂はかなり有効だ。

 

ジェネシスがボディソープを手に取って泡立てようとしていたその時だった。

 

風呂場のドアが『ガチャリ』と開かれ、中に一人の女性が入ってくる。

 

「お邪魔するね、久弥」

 

中に入って来たのはティアだった。

彼女は身体にバスタオルを巻いた姿でゆっくりとジェネシスに歩み寄る。

ジェネシスの方は突拍子も無いティアの行動に思わず固まってしまい、近づくティアを凝視してしまっている。

 

「ふふっ、驚いた?まあびっくりするよね。でも、私たち夫婦なんだし、偶にはこう言うのもいいかなって思って……」

 

ティアはうっすらと笑みを浮かべながらジェネシスの左後ろに膝をついてしゃがみ込み、その耳元に顔を近づける。

 

「……今日は、私がひさやを洗ってあげるね」

 

小さく、蠱惑的な笑みと声で囁く。しっとりとした両掌でゆっくりとジェネシスの背中を下から撫で回していく。

そこでジェネシスはハッとした顔になり、慌ててその場から飛び退き、タオルを自身の腰に巻く。

 

「お、おまっ……何やってんだよ!」

 

ジェネシスは恥ずかしいそうに頬を赤らめながら叫ぶが、ここでティアが更なる行動に出る。

ティアは自身の胸元あたりに手をかけ、バスタオルの巻目に指を入れて、そして解く。

するとティアの胸元から腰あたりまでを隠していたバスタオルがハラリと取れ、床に落ちる。

そしてティアの乳白色の素肌、キュッと締められたウエストとふっくらとした胸、腰が露わになった。

 

「な、なんでタオル取ってんです?!」

 

「だって、私たちもう全部見せ合ってるじゃない。久弥だってこの間言ってたでしょう?今更だ、って」

 

ティアは悪戯な笑みを浮かべながらジェネシスにひたり、ひたりと足音を立てて歩み寄る。

そしてジェネシスの前でしゃがみ込み、彼の両肩に手を回して上目遣いで問いかける。

 

「ねぇ………いいでしょ?」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

観念したジェネシスは風呂場のバスチェアに座ってじっと固まる。

その背後でティアが楽しそうに鼻歌を口ずさみながら、自身の両手にボディソープをつけて泡立たせる。

 

「それじゃ、行くね」

 

ティアは泡塗れになった掌をジェネシスの背中にピトッ…と貼り付け、そのまま背中一杯を塗りつぶすように擦っていく。

ティアの手がついた瞬間、ひんやりとした感覚が背中に伝わりジェネシスは一瞬ピクリと反応する。

 

「ちょ、なんで手で洗ってんだよ?」

 

「え〜?だって、ボディタオルなんか使ったら久弥の肌にキズがついちゃうもん。綺麗な肌なんだから、キズをつけちゃダメなんだから」

 

「いや、現実なら兎も角ここはゲームだから……」

 

「むぅ、とにかく私は手で洗うんだからね!」

 

ティアは頬を膨らませて更にジェネシスの背中に泡を塗りたくっていく。背中が終われば次は両肩に行き、腕を擦っていく。

腕が終わると、続いて首元、更に脇下から手を回して胸部、腹部を洗っていく。

 

「ふふっ……はぁ……ひさや、逞しいね……」

 

ティアはうっとりとした表情でジェネシスの身体を洗っていく。

 

「それじゃあ次は……ここを洗うね……」

 

そしてティアはゆっくりとジェネシスの下腹部に手を伸ばしていく。

 

「待て待て待てえぇい!!そこは自分で洗うから!大丈夫だから!!」

 

そう言ってジェネシスは慌ててティアの手を振り解き、素早くボディタオルに石鹸をつけてそのまま下半身を洗っていく。

それをティアは「あっ……」と切なそうな顔で見つめる。

 

「……悪い、でも助かった。その、なんだ……また、頼むわ」

 

「……うん、分かった」

 

ティアはジェネシスの言葉を聞くと、少し残念そうな笑みを浮かべて頷く。

 

するとここで、二人の指に嵌められた指輪が輝き、薄いエメラルドグリーンに色が変化した。

 

「あれ、色が変わった!」

 

「二つ目のクエストは確か『思い出の他』……そうか、ここで風呂に入って思い出を作ったからクエストが進んだってことか」

 

ジェネシスの説明にティアは「なるほど」と頷く。

 

「ふふっ、この調子で進めて行こうね」

 

「ああ」

 

 

 

 

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その数日後、ジェネシスとティアは自身のクエストログが更新されているのを見つけた。

そのログが示しているのは、八十六層の迷宮区の北側だった。

 

「久弥、これって……」

 

「ああ、『絆の神殿』。このクエストの最後の段階だな」

 

ジェネシスはティアの言いたい事を察して頷く。

 

「……ようし!行こう、久弥!!」

 

「おうよ。とっととクリアして、このエラーを戻そうぜ」

 

二人は頷き合うと、準備を整えて八十六層へと足を進める。

 

八十六層に転移した彼らはそのまま真っ直ぐクエストログが示す座標まで向かう。

 

座標に近づくと、周りの風景が一変した。

大きなドーム状の洞窟の天井に、まるでプラネタリウムのような星空が広がっていた。 

 

「わぁ……すごい…!」

 

ティアは星空を見上げて感激した声を上げた。

ティアやジェネシスが現実で暮らす都会では恐らく決してみられないような、満天の星空。

 

「こりゃ凄えな…」

 

ジェネシスも思わず感激した様子で頷く。

恐らく現実でも滅多に見られないような美しい星空が広がっていた。

 

「ねぇ、いつか現実に戻ったらさ……星を見に行こう?」

 

「ああ。天体観測、やるか」

 

「うん!」

 

二人はそう約束を交わすと、星空を堪能しながら洞窟の中を進んでいく。

 

しばらく進むと、洞窟を抜けて一風変わった部屋に出た2人。

そこは几帳面に並べられた木の椅子があり、部屋の奥には大きな十字架が飾られている。そこはまるで、教会のようだった。

 

「奥にあるのは…祭壇か?」

 

「という事は、あそこで“儀式”を行うのかな?」

 

ティアがそう疑問符を浮かべながら奥の祭壇へ足を進めると……

 

『絆の神殿を訪れし者達よ』

 

突如どこからか、柔和な女性の声が響いた。

 

『汝、健やかなる時も病める時も、喜びの時も悲しみの時も、これを愛し、これを救い、これを慰めこれを助け、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?』

 

続けて聞こえてきた声に、ジェネシスは「ん?」と首を傾げる。

何せ、この問答はどう考えても結婚式で神父が夫婦に問いかける言葉だからだ。

 

「はい、誓います!」

 

するとティアは迷うことなく、一呼吸置いてそう答えた。

それを見たジェネシスも咳払いを入れてから同じように「ち、誓いますっ」と宣言する。

 

『……いいでしょう。では、その絆を示しなさい』

 

「……え?」

 

その時、2人の前に騎士型のモンスターが出現した。

巨大な大剣を構え、2人にジリジリと詰め寄る。

 

『汝らの愛と絆を、その騎士に示しなさい』

 

再びあの柔和な女性の声が、ジェネシスとティアの2人に試練を課した。

 

「何でただの結婚式でこんな試練が来るんですかねェ」

 

ジェネシスは目の前に出現したモンスターを見て嘆息しながら大剣を引き抜いた。

 

「ふふっ、でも私達の絆を試そうって言うなら…簡単な試練だよね」

 

対してティアはやや楽しそうに左腰から刀を引き抜き、構える。

 

「はあ……仕方ねえ。サクッと片付けるぞ」

 

「うんっ!」

 

ジェネシスの言葉にティアは力強く頷き、そして同時に飛び出す。

 

銀色の騎士から振り下ろされる大剣をジェネシスが軽々と受け止め、その隙にティアが刀スキル《浮舟》で横腹を抉るように斬り付ける。

さらにジェネシスが暗黒剣スキル《ブランディッシュ・イーター》の連撃を叩き込み、一気にHPを削り取る。

さらにティアが抜刀術最上級スキル《飛閃一刀》を発動し、刹那の動作で抜刀し強烈な斬撃を放った。

 

更にジェネシスが暗黒剣最上級スキル《ジェネシス・ディストラクション》による史上最大級の攻撃を放ち、銀色の騎士を滅多斬りにしていく。

 

銀色の騎士は圧倒的な戦闘力を持つ2人の前になす術もなく撃破され、その身をガラス片に変えて消滅した。

 

一瞬のうちにボスを片付けた2人は各々の武器を収める。

 

「これで戦闘は終わりだけど……何も起きないね?」

 

ティアの言う通りボスは倒したものの、特に何も変化は起きなかった。これまでなら、イベントが進むたびに指輪が光っていたのだが、今回はそれが無い。

モンスターを倒すだけでは無く、あと一つ何かが必要なのかもしれないと、ジェネシスは考えこむ。

 

「………ねえ、久弥…」

 

するとティアが何かに気づいたのか頬を赤らめながら呼びかける。

 

「これが結婚式って事は、さっきのが誓いの言葉だとして次にやる事って………」

 

「あっ……」

 

瞬間、ジェネシスもティアの言いたい事を察した。

彼自身、一種の確信のようなものを持って、ティアを抱き寄せる。するとティアは「ぁ……」と切なげな声を上げてジェネシスの顔を潤んだ瞳で見上げる。

 

「久弥……愛しています……」

 

「………俺もだ」

 

瞬間、2人は唇を打ちつけあった。

 

『汝ら、神の前に於いて夫婦の誓約をなせり』

 

キスを交わした瞬間、再びあの女性の声が響いた。

 

「おっ…!」

 

「合ってたんだ!」

 

無事クエストが進行したことに喜ぶ2人。

 

『故に、神の名に於いて汝らの夫婦たる事を宣言す。神の会わせ賜し者は、人これを離すべからず』

 

次の瞬間、巨大な鐘の音が鳴り響く。

 

『祝え。2人の新たなる門出である』

 

そして2人の指輪が光り輝き、エメラルドグリーンから銀色のシンプルな、そして光沢があり高級感のある指輪に変化した。

 

「指輪が、変わった……!」

 

ジェネシスがそれを見て思わず呟き、そしてティアがハッとした顔でメニュー欄を開き、歓喜の笑みを浮かべる。

 

「……戻ってる…久弥のステータスも、アイテム欄も久弥とのリンクが戻ってる!」

 

「おお!やっぱこっちの方が落ち着くな」

 

「よ、よかったぁ〜!」

 

ティアが安堵したように地面に思わずしゃがみ込む。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

2人は手を繋いで、八十六層の道を戻っていく。

 

「それにしても、あの声ってどこか聞き覚えがあったよね」

 

ティアの言うあの声とは、儀式の際に流れた女性の声のことだ。

 

「なんか、ジャンヌの声に似てたよね?」

 

「ジャンヌか……あいつ、なんか聖職者染みてるし違和感もねえよな」

 

「ふふっ、ジャンヌが仲人さんかぁ〜…たしかにすごく似合ってるね!」

 

だがジェネシスは「そうだな」と頷きつつも、頭では別の人間が思い浮かんでいた。

それは、影で自分達を支えてくれている謎多き女性。ジェネシスには彼女の声に聞こえたのだ。

 

「それでね、久弥…」

 

すると唐突に、ティアがジェネシスに対して切り出す。

 

「ちょっと、2人で出掛けない?」

 

「出掛けるって……どこに?」

 

「だから、その………ね?」

 

ティアはつまり、『新婚旅行みたいなのがしたい』と言うのだ。

ここ最近、2人でゆっくり過ごす時間もう無かったので、この機会に2人でのんびり過ごしてはどうか、と提案した。

 

「……いいな、それ」

 

「本当?!それじゃついてきて!一緒に見たい景色があるの!!」

 

ティアは大喜びして、大変楽しそうにジェネシスの手を引っ張って歩き出した。

その後2人は様々な場所に出向いた。満面の桜吹雪が舞う道、青と緑のコントラストが美しく映える湖畔、色鮮やかな花が無数に咲き乱れるフラワーガーデン……ゲームの中ならではの絶景を、2人は堪能した。

 

そしてその日は、七十九層にある和風の温泉旅館に宿泊した。

温泉に入り、2人は宿の部屋に戻る。

 

「はぁ〜…今日は本当に楽しかったね!」

 

「ああ……まあめちゃくちゃ歩き回ったからちと疲れたが……」

 

布団の上ではしゃぐティアに対し、苦笑いを浮かべながらぐったりするジェネシス。

 

「あはは、それはごめんね?でもすごく楽しかったんだもん♪

それで、この後どうしようか?」

 

「そうだなぁ………」 

 

ジェネシスが両腕を頭の後ろに組みながら布団に寝そべると、ティアがジェネシスに擦り寄り、抱きつく。

 

「ふふっ♪」 

 

ティアはどこか嬉しそうにジェネシスに身を寄せる。

彼女の顔は紅潮し、口から放たれる吐息には熱が篭っている。

 

「ねえ………最近こう言うこと、してなかったよね?」

 

ジェネシスはティアの望んでいる事がなんなのかを察し、やや頬が赤く染まる。

 

「ひさや………もう貴方が欲しくて欲しくて堪らないの…………だから……いいよね?」

 

そしてティアはゆっくりと、自身の唇をジェネシスに打ち付けた。

 

 

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。前回のR-18が中々の反響でかなり手応えを感じているジャズでございます。

そしてこの後は、待ちに待ったジェネティアのR-18回でございます。
すんごいのをお届けする予定ですので、どうぞお楽しみに。

では、また次回!

そして最後に。ジェネシスくん、ティアさん……
ゆうべは おたのしみ でしたね▼
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