久々の本編、どうぞお楽しみください!
〜茶番〜
オルトリア「ぶおん……ぶおんぶおん……ばっきゅーん、ずっきゅーん!ずしゃぁーっ!!」
ジェネシス「( ゚д゚)……」
ティア「(*´꒳`*)ニッコリ」
イシュタル「(*゜∀゜*)プギャw」
オルトリア「あぁっ!?見ましたね……私のひみつのイメトレを……!!」
八十五層・鉱山エリア
真っ暗闇が延々と続く岩のトンネルの中を、3人の人物が慎重に足を進めていた。そのメンバーは、イシュタル・オルトリア・ティアの3名。
「悪いわね、付き合わせちゃって」
イシュタルが自分の前を歩く2人に向かって言った。今日彼らがここに来ている理由は、イシュタルが武器を使用する際に消費する宝石アイテムを集めるためだ。彼女の主要ウェポンである『天弓マアンナ』は、宝石を砕いてそのエネルギーを矢として放つので、定期的に宝石アイテムを集める必要がある。
「大丈夫。凛ちゃんが戦うのに必要なものなんだもんね」
「それにしても、毎度毎度大量の宝石が必要なんて燃費悪くないですかね?」
ティアは屈託のない笑顔で答えるのに対し、オルトリアはポテトチップスのようなお菓子を頬張りながらため息をついた。しかしオルトリアがこのように嘆息してしまうのも無理のない話である。
本来宝石アイテムなるものは全てのゲームにおいてかなりレアなアイテムである場合が多く、ここSAOもその例外ではない。イシュタルの弓が必要とする宝石類は全てそれなりのレア度を要求してくるのだが、そのようなアイテムは滅多に手に入るものではない。現在居候しているエギルの雑貨屋にはごく稀に宝石が入ってくることがあり、イシュタルはそこで買い取ったりしているのだが、その度にエギルは目を見張るような金額を要求してくるので、なるべく彼女はエギルの世話にならずに自分の手で見つけようとし、このように宝石探しに出かけているが、それでも確実に手に入るものではない。
早い話、オルトリアの言う通りイシュタルの弓は一撃一撃が彼女本人や仲間たちの苦労が詰まった結晶であるのだ。故にオルトリアはため息を吐いてしまったのである。
「し、しょうがないじゃない!私の弓はそう言うものなんだから!」
「でも他に弓なかったんですか?ハヅキちゃんやシノンさんみたいな矢を使うのが弓というものでしょう。
と言うか、凛ちゃんの弓って威力高すぎてこっちまで死にそうになるんですけど。もう少し調整してください」
くどくどと発せられる毒舌にイシュタルは「うぐっ……」と頬を引き攣らせる。
「き、今日は随分と手厳しいじゃないアンタ。何かあったわけ?」
イシュタルの問いかけにオルトリアはジト目で睨み返しながら答える。
「……私の髪を黙って触ったこと、まだ許してませんよ」
「まだ根に持ってたの!?どんだけ執念深いのよ!ていうかあれは私だけのせいじゃないでしょうが!!」
「雫ちゃんはいいんです。毎日美味しいお菓子作ってくれますし。でも凛ちゃん、貴女はダメです」
「うわあぁ〜ん!雫うぅ〜!!澄香が私をいじめてくるうぅぅ〜!!」
とうとうイシュタルは泣き出してティアに抱きつき、そんな彼女の背中を優しい手つきで撫でる。
「よしよし。大丈夫だよ凛ちゃん。普段はうっかり屋さんでみんなに迷惑かけてるけど、凛ちゃんの弓はみんな頼りにしてるよ。えっちゃんだって本当は凛ちゃんのこと信頼してる筈だし」
「そ、そうよね!まあ私だし?貴方達の役に立つなんて当然よね?」
雫に慰められたイシュタルは一瞬で涙目から自信満々の彼女に立ち戻り、「おほほほほ」と高笑いを上げながら堂々と歩みを進める。
「雫ちゃん、ダメですよそんなに甘やかしたら。ああいう凛ちゃんはすぐにやらかしますから」
そんな彼女を見ながらオルトリアがティアの横に立ち、小さな声で耳打ちをした。
その時だった。2人の前を進むイシュタルの右足が何かを踏みつけ、『カチッ』というスイッチのような音が鳴り響いた。瞬間、3人の空気が凍りつく。
「……えっ、と……凛ちゃん?何か踏んだよね?今」
苦笑いで問いかけるティアに対し、イシュタルは首を『ギギギ……』と回して振り向くと、
「え?なに?何かあったかしら?」
と冷や汗を垂れ流しながらも、何事もなかったかのようにとぼけた。
「いや、今完全に『カチッ』って音したよね?明らかに凛ちゃん何か踏んだよね?」
「は、はぁ〜!?何も踏んでませんけどぉ〜?やーねー人をそんなに疑うとか、雫らしくないわよ〜???
再三言っておくけど、私は何も踏んでないからね!!」
気まずそうに追及するティアに対してイシュタルはあくまで何もしていない体を装った。
「じゃあ聞きますよ凛ちゃん。今貴女の後ろに現れたそれはなんですか?」
そんなイシュタルをジト目で見つめながらオルトリアが彼女の背後を指さす。ここで彼女も漸く自身の背後に何かがいるのに気づいたのか、ハッとした顔で恐る恐る振り返る。
そこには、体長4メートルはある巨大な狼がおり、低い唸り声を上げながら3人を見下ろしていた。凛はそれを見上げて「あ、あわわ……」と震えながら声を発した。そんな彼女に向けて、狼は爪でイシュタルを引き裂こうと勢いよく前足を突き出した。
しかしその攻撃を、いち早く反応したティアが飛び出して凛を抱き寄せると同時に、刀を引き抜いて逆手に持つとその刃で爪の軌道を逸らした。ティアの身体のすぐ横を狼の巨大な前足が通過し、彼女の足元の地面を爪が抉る。
そして続け様にオルトリアが飛び出し、ビームサーベルで狼の懐に飛び込んで斬りつけた。狼はその攻撃を受けると素早くその場から飛び退き、一旦彼女達から距離をとった。
「はぁ……やっぱりうっか凛ちゃんでしたね。フラグ回収の速度で言うならギネスレベルじゃないですか?」
オルトリアはやれやれと嘆息しながらイシュタルを見下ろすと、懐からもう一本ビームサーベルを取り出して柄同士を接続し、薙刀状にする。
ティアも立ち上がって刀を間違えて構える。
「凛ちゃん、危なかったら後ろに下がっていてね?」
ティアがそう告げると、2人は同時に飛び出した。オルトリアが左から、ティアが右から狼に接近し、胴体に斬りかかる。
「ふっ……!」
「せやあぁぁっ!!」
双頭刃スキル《ライトニング・ソニック》による電気を伴ったソードスキルを放つオルトリアが狼の足を切り刻んでいき、ティアが抜刀術範囲攻撃《真蒼》を放ち、狼の巨大な胴体に斬撃を叩き込んでいく。
「……毎度思うんですがその技はずるいと思うのです」
「え?あ、あはは……まあ、ユニークスキルだし、多少はね?」
やや嫉妬気味にオルトリアからソードスキルのことを言われたティアは苦笑いで答える。次にティアは刀ソードスキル《緋扇》を発動し、狼の背中を斬りつけていく。
しかしここで狼が大きな遠吠えを放つと、その場で飛び上がってそのまま彼女達の周囲を高速で走り回った。
「む……中々素早いですね」
オルトリアは自分達の周りを囲むように走り回る狼を目で追いながら毒を吐いた。
「気をつけて。この動き……間違いなく何か仕掛けてくる……」
ティアは刀を中腰に構えながら狼をしっかり目で捕捉して狼をじっくり観察し、狼の新しい攻撃に備える。
その次の瞬間、狼が突然身体の向きを変えて真っ直ぐにティア達に向けて突っ込んでくる。
「2人とも、下がって!!」
ティアは2人に指示を飛ばすと、刀を納めてゆっくりと腰を落とし、抜刀術の体勢を取る。
狼がティアを噛み砕こうと牙を剥き出しに突撃してきたその瞬間。ティアの刀が眩い銀色の光を放ち始め、そしてそのまま一瞬の動作で引き抜き、狼に強烈な斬撃を叩き込む。
一太刀の刃は狼の胴体を真っ二つに切り裂いた。
抜刀術最上級スキル《飛閃一刀》
切り裂かれた狼の下半身がガラス片となって消滅した。しかしその上半身がまだ残っており、最後の悪あがきとして前足で這って彼女らに近づいてくる。
「オルトリアクター臨界突破……」
しかしその前に、オルトリアが双頭刃のビームサーベルを肩に担いで構える。
「我が暗黒の光芒で素粒子に還れ!」
そしてその場から勢いよく飛び出すと、双頭刃を左右の手で器用に回しながら狼の上半身を滅多切りにしていく。HPが凄まじい勢いで削られていき、いよいよ最後の数ドットになった瞬間。
「《
二つのビーム刃が容赦なく狼の胴に叩き込まれていき、一瞬でバラバラに刻んでいった。大ダメージを受けた狼はそのまま悲痛な叫びを上げながらガラス片となって消滅した。
ティアはそれを見て安堵のため息をつくと、刀を左腰の鞘に納め、オルトリアもビームサーベルの電源を切ってコートの内ポケットに直した。
「お疲れ様2人とも。お陰で助かったわ」
そんな2人にイシュタルが労いの言葉をかけながら歩み寄るが、オルトリアは恨めしい目でイシュタルを見つめる。
「元はと言えば凛ちゃんが変なスイッチを押すからこうなったんじゃないですか。ちゃんと気をつけてください」
「うぐっ……わ、分かったわよ!!私が悪かった!次からは気をつけるのだわ!!」
イシュタルはオルトリアの言葉に対して少々ヤケ気味に叫ぶ。そんな2人のやりとりを、ティアは微笑を浮かべながら見つめていた。
「なんか……昔を思い出すね」
不意にティアが呟き、オルトリアとイシュタルが彼女の方を見つめる。この3人は、現実では幼馴染の関係。小さい頃も、やんちゃな凛とそれを咎める澄香、それを見守る雫という関係が何年も続いていた。SAOに入ってからその時間は途切れていたが、こうして縁あってまた集ったこの3人の変わらない雰囲気に、ティアは思わず懐かしさを感じたのだ。
「ま、凛ちゃんが何かしでかすのも変わらないですけどね」
「ちょ、どんだけ私をうっか凛にしたいのよ!」
「まあまあえっちゃん。凛ちゃんがやらかし体質なのは変わらないから」
「ちょっと雫!そこでフォロー外れちゃうのあんた!?」
3人はそんなやり取りを交わしながら奥は奥へと進んでいった。
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それから数十分洞窟内を歩き回った3人だが、一向に宝石類や宝箱が見つからない。未踏のダンジョンであるため地図や手がかりなどはなく、手当たり次第に歩き回るしかない。このダンジョンは外れだったのかと、3人の中にやや諦めの雰囲気が漂い始めていた。
「一向に見つかりませんね〜……モンスターをたおしてもドロップするものはそう良いものでもなし、経験値もそんなに貰えないですし。おやつも切らしちゃったのでそろそろ帰りませんか?」
「なんでおやつないから帰るって言う発想になるのよ……まあ、たしかにここまで探索して出ないとなると、アテが外れたかもしれないわね。そろそろ時間も遅くなってきたし、もう少ししたら帰りましょうか」
若干疲れの色が出始めているオルトリアの提案に、イシュタルも頷いてそう答える。目の前には大きな鋼鉄の扉があり、僅かな期待を持って3人はその扉を押し開けた。
扉の中は直径200メートルのドーム状のフィールドで、奥の方には小さな小部屋があり、そこには如何にも何かあると言わんばかりの宝箱が置かれていた。
「あっ!!あんな所に宝箱があるのだわ!!」
イシュタルが宝箱を見つけると、そこに向かって駆け出した。
「待って凛ちゃん!!この部屋は……」
そんな彼女を、何かを察知したティアが引き止める。それと同時に、ボス部屋の天井から巨大な物体が落下してきた。咄嗟にティアがイシュタルを抱き寄せて引き戻し、同時に大きな地響きと土煙が上がる。
煙が晴れると、そこには巨大なゴリラ型のモンスターがいた。まるで鎧のような硬い隆起した筋肉。全てを握りつぶしてしまいそうな剛腕に、万物を踏み潰しそうな筋肉質な両足。カーソルはフィールドボスであることを示す赤。HPバーは2本。名前は、『Punching Kong』。
「正にゴリラという言葉をそのまま形にしたようなゴリラですね」
「そりゃあゴリラだもん」
オルトリアがボスのゴリラを見てそう呟き、ティアが当然だとばかりに答える。するとボスは雄叫びを上げて自身の胸部を両腕で殴るドラミングを始めた。ボスの腕が胸を打つたびに、ティア達には彼女らの全身に響く空気の振動が伝わる。そして威嚇のドラミングを終えたボスは一目散にティア達に突っ込んでいく。
ティアはその突撃に対して刀を引き抜いて抜刀術ソードスキル《蓮華》を発動し、ゴリラの胴体に斬りかかる。それに対してボスは右腕を突き出してティアの刀を弾き飛ばす。その強烈な一撃で、ティアは刀ごと上体が後方に大きく反れた。
「うわっ!すごいパンチの威力……パンチングコングって名前は伊達じゃないみたいね……」
ティアはその感触を確かめると一旦後ろに引いて距離を取り、もう一度ソードスキルの構えを取った。日本刀を右腰あたりに水平に構える。刃が紫の光を帯び始めると、ティアはその場から飛び出してボスに斬りかかり、彼女の動きを見たゴリラももう一度拳を突き出し、刀と拳がぶつかり合う。
先程と違い今度はティアの刀が弾かれることが無く、ボスのパンチとティアのソードスキルが拮抗して打ち合った。刀ソードスキル《鷲羽》。これは全体的にパワー不足気味な刀ソードスキルの中でもSTRが高めなスキルである。HIT数も9連撃あり、このボスと打ち合うにはうってつけの技である。
ソードスキルが終わり、今度はオルトリアがティアと入れ替わる。彼女の武装は実体験ではないため、拳と打ち合おうとすれば自身がダメージを負いかねない。そのためオルトリアは、兎に角ボスの攻撃を回避しつつ攻撃を叩き込んでいく。片手剣ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》で強烈な突きを放ち、ゴリラの胴体を貫く。技後硬直が終わると即座に引き、再びソードスキル《ソニックリープ》で今度は背後に一瞬の動きで回り込み、背中を斬りつける。ヒットアンドアウェイ戦法でダメージを受けないように注意しながら隙を見て突っ込む。これが今のオルトリアの戦法だ。
しかしこのボスは耐久力が高く、ティアとオルトリアが奮戦しても中々削ることが出来ない。
彼女らが攻めあぐねていると、突然ボスの身体に光線が直撃した。2人が後ろを見ると、イシュタルが天弓マアンナを展開して砲撃した後だった。
「凛ちゃん!?どうして……」
「宝石ならまだあるのだわ!援護するから遠慮なく突っ込みなさい!」
「でも、残りは少ないんじゃ……」
「何言ってんのよ!!ここまで来たら出し惜しみは無し!弾切れになってもやってやるのだわ!!」
そう叫ぶと、イシュタルは懐から新しい宝石を取り出して空中に放り投げる。するとそれらは空中で弾けて光のエネルギー体になり、マアンナに吸収される。
「さあ、これでもくらいなさい!!」
イシュタルが人差し指をゴリラに向けて真っ直ぐに伸ばすと、マアンナからオレンジの光線が一直線に飛び出し、ボスの顔面に直撃した。その攻撃で逆上したボスは牙を剥き出しにして叫ぶと、イシュタルに向けて真っ直ぐに突っ込む。
だがそれを、ティアとオルトリアが阻んだ。2人のソードスキルが両脇を抉り、ボスの視線を彼女らに引きつける。
「これじゃどっちが援護してるのかわかりませんね。ま、無理のない程度でお願いします」
「ええ、そっちは任せるわ!!」
オルトリアとイシュタルはそう掛け合い、オルトリアはビームサーベルでボスの足を斬りつけ、イシュタルは弓で腕を狙い撃つ。
イシュタルの強烈な一撃が加わった事で攻撃力が一気に増し、HPを順調に削っていく。ティアとオルトリアが近接で攻め、イシュタルが遠距離から攻撃する事でボスの注意を引きつけ合い、その剛腕から放たれる強烈なパンチを撃たせないように努める。
そして見事にHPバーの一本を削り切った。ここでボスの攻撃パターンが変わるのがここSAOの定石だ。ティア達は一度距離を取って、ゴリラの次の一手を注意深く見つめる。
するとボスは一度『ウオオオォォォ!!!』と一際大きな叫び声を出すと、一度空中に飛び上がって両拳を付けて上に振りかぶる。そして着地と同時にその巨大な握り拳を地面に叩きつける。瞬間、衝撃波が発生してティア達は空中に吹き飛ばされた。
「ぐっ……!」
地面に転倒してしまったティア。そんな彼女にボスが一瞬の動作で迫り、ゆっくりと右拳を後ろに引く。
「雫!!」
イシュタルが慌ててマアンナに宝石のがエネルギーを集めようとするが、もう間に合わない。オルトリアも先程の一撃でティアと引き離されてしまったので援護に行くことが出来ない。
そしてゴリラは無慈悲に、拳をティアに振り下ろす。反撃のタイミングもなく、ティアは諦めて瞳を閉じて拳が自身を打つのを待つ。
「オラアァァァァァ!!」
だがその時、勇壮な男性の声が彼女の前で響き、強烈な金属音を立てる。
ティアが目を開くと、そこには彼がいた。赤黒い装備と大剣、逆立った赤い髪。その背中に、ティアは……否、ここにいる皆は幾度となく助けられた。
「よお。随分と楽しそうなやつとやり合ってんじゃねえか」
ジェネシスが、不敵な笑みを浮かべながら振り返った。
「久弥!?どうしてここに……」
「いや、野暮用が済んだからテメェらの方手伝ってやろうかとこっちに来てやったんだよ。メッセージ送ったんだが見てなかったか?」
ティアはその言葉を聞いてハッとした。そういえばこのボス部屋に来る直前、メニュー欄に一件のメッセージが来た通知があったのだ。
「ごめん……見てなかった……」
「別にかまわねぇよ、間に合ったんだし。んじゃ……サクッと片付けるか!!」
そう言ってジェネシスは大剣を肩に担いで駆け出し、ティアも思わず緩んでいた頬を直して刀を携えそれに続く。
イシュタルはそれを見て「私の援護射撃に当たらないようにね!」と煽り、オルトリアは心なしか安心したような笑みを浮かべて再びビームサーベルを展開して走り出す。
ジェネシスというパワー型の戦士が入った事で一気に均衡が崩れた。彼がタンク役でボスの攻撃を一身で引き受け、その間にティア・オルトリア・イシュタルの3名が同時に隙を見て攻撃を叩き込むので、HPの減りが一気に速くなった。
「歯応えねぇなぁ!!ま、八十五層くれえじゃこんなもんか!!」
ジェネシスは終始余裕たっぷりな表情で笑いながら大剣を振り抜いてボスの拳を弾き続ける。
だが、ジェネシスもいい加減拳を弾くだけで飽きてきたのか、ここで一気に決着をつけにかかった。大剣から赤黒いオーラが出始め、一気に途轍もないエネルギーとなる。赤黒い光を纏った大剣の刃がゴリラに襲いかかり、その巨大な身体を切り裂いていった。暗黒剣ソードスキル《ドレッド・ブレーズ》。5連撃の強烈な斬撃が全てボスの身体に撃ち込まれ、残りのHPを一気に消しとばした。
ゴリラは最期の雄叫びをあげて、その身をガラス片に変えて消滅した。
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ボスを無事撃破した彼らは、いよいよ悪の部屋にある宝箱の中身と対面する。イシュタルはもう待てないとばかりの勢いで宝箱に飛びついた。
「さぁて……漸く見つけた宝箱の中身はなんなのかなぁ〜?」
口を三日月状に吊り上げたニヤけた顔で宝箱の取っ手に手をかける。
「トラップじゃねえだろうな?」
一度宝箱のトラップに引っかかった経験のあるジェネシスが問いかけるが、イシュタルによるとその心配はないようだ。実は彼女、宝探しのプロであるフィリアからトラップの宝箱の見分け方を教わっており、既にマスターしているそうなのだ。そして彼女によると、どうやらこの宝箱は大丈夫らしい。ティアとオルトリアも期待の表情で箱が開けられるのを待つ。
「よっし、開けるわよ〜……」
ゆっくりと、箱の蓋を上にあげていく。そしてその中身に光が当てられる。
中に入っているのは一本の棒だった。中は空洞で筒状であり、感触はグニグニと弾力がある。色は白で、所々茶色い文様がある。
「これって………」
困惑の表情でティアがそれを見つめながら呟く。彼女だけでなく、その場にいる者全員が同じ表情をとってしまった。
それもそのはず。その宝箱の中身の物体は、3人がよく知っているもの。基本的に食用であり、よくおでんに入っていたりおつまみにされていたりするもの。
そう、それは……
「……ちくわ、ですね」
オルトリアがその名を告げた。
その瞬間、イシュタルは勢いよく立ち上がると、手に取ったちくわを地面に叩きつけた。耐久値が無くなり、ちくわはガラス片となって消えた。
「なに!?どういうこと!?これだけ探して宝箱の中身がちくわ!?」
イシュタルは怒り心頭の様子だ。期待していただけに、その失望も大きいようだ。
「まあ、そんな簡単に宝物が入ってるわけないよね……」
ティアも少々苦笑いで呟く。
「でも、オチとしては最高ですね。さすが凛ちゃん、略してさすりん」
「これほど嬉しくない褒め言葉は初めてだわ」
オルトリアが鼻で笑いながら言い、イシュタルは恨めしそうな目で見つめながら言い返した。
「ま、今回は残念だったな。つぎまた探しに行こうや」
「うわあぁぁぁん!!あぁんまりなのだわあぁぁぁ!!!」
イシュタルの無念の泣き叫ぶ声が洞窟中に響き渡った。
お読みいただきありがとうございます。
今回は幼馴染三人衆の冒険でした。
オチがちくわのイシュタルって最高じゃん?
では、次回もよろしくお願いします!!