ソードアート・オンライン〜二人の黒の剣士〜   作:ジャズ

74 / 81
どうも皆さん。タイトルにある通り、今回はあの2人が出ます。
原作では悲しい人生を送る2人ですが、本作ではどうなるか……見届けてください!!


七十四話 歌姫

 ある日、ジェネシスとティアが攻略を終えて七十六層アークソフィアの宿に戻ると、シリカやリズベット・ハヅキ・サツキ達が円形のテーブル席に集まって座り、大いに盛り上がっていた。

 

「やっぱり綺麗な歌声でしたよね〜!」

 

「SAOに歌唱系のスキルがあるのは聞いてたけど、まさか鍛えるとあんな風になるなんてね〜」

 

 シリカとリズベットがそれぞれ何かを噛み締めるように感想を述べ、ハヅキとサツキも頷いて同意する。そして他の仲間達も一様に「凄かった」だの「癒された」だのと絶賛の言葉が飛び交う。

 

「よお、何かあったのか?」

 

「あっ、お帰りなさいジェネシスさん!実はですね……」

 

「なに?あんた達知らなかったの?」

 

 ジェネシスが問いかけると、シリカが笑顔で彼を出迎え、リズベットが彼に対して逆に聞き返した。彼女の口ぶりだと、どうやら何か大きなイベントがあったようだ。

 

「『歌姫ユナ』よ。あんた達も知ってるでしょ?その人が今日この層に来てライブをやってたの」

 

 すると彼らの背後からシノンが現れ、代わりに応えた。『歌姫ユナ』と言うのは、この世界で度々話題に上がる歌い手の名だ。娯楽の少ないSAOにおいて、彼女のように『歌』を供給するプレイヤーは殆どいないどころか、彼女ただ1人と言っていい。

 

「いやぁ〜……まさかデスゲームであんな綺麗な歌が聴けるなんて……」

 

 リーファがうっとりとした顔で呟き、皆も首を縦に振って再びユナの話題で盛り上がった。

 

「あと、伴奏の人も凄かったですよね!ピアノがとても上手くて!」

 

「なんていう人だっけ……『ノーチラス』だっけ?」

 

「あの人、元々血盟騎士団の人だったとか……」

 

 そんな話を繰り広げる仲間達を横目に、ティアが「ふふっ」と微笑み、

 

「そっかぁ……元気でやってるんだ、あの2人」

 

 遠くを見つめながらそう呟き、ジェネシスも「そうだな」と軽い笑みをこぼす。

 ここで時は、一年ほど前に遡る。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

2023年10月15日 最前線第四十層

 

 この日は最前線でボス攻略が行われていたのだが、実は裏でとある作戦が行われていた。あるパーティが閉じ込め型トラップにかかって脱出できなくなってしまい、全滅しかけているという情報が入り、所謂攻略組二軍というレベルに相当する者達が救出に向かった。

 そしてこの時、1組の男女がこのメンバーに加わっていた。紺色のワンピースの上に白いマントを羽織り、羽付きの帽子を被った少女───ユナと、白い下地に赤いラインの入った騎士風の装備を見に纏った少年───ノーチラス。ユナはこの世界でただ1人と言っていい《吟唱》スキル保有者で、文字通り歌う事でフィールドに立つ物達にさまざまなバフを盛ることができるものだ。そしてノーチラスは現在のSAOでもトップクラスの実力を持つ血盟騎士団の団員であるのだが、訳あって彼はボス攻略に参加することができない。

 2人とも、かなり緊張した面持ちで目的地へと足を進める。

 

「ねえ、エー君」

 

 不意にユナが不安げな表情で話しかける。ノーチラスは彼女の声を聞くとその方を向き、そして優しく頭を撫でて微笑を浮かべ、

 

「大丈夫。君のことはボクが必ず守ってみせるよ」

 

 ノーチラスはそう言いながら心中で覚悟を決める。現実でも幼馴染の関係である彼女を、生きてこの世界から返すために彼は戦い続けている。

 

 やがて一行は現場のダンジョンに到着した。洞窟の中は薄暗くて湿った空気が充満しており、そこを通る者たちに対して並々ならぬプレッシャーをかけてくる。非常に不快な雰囲気が一行の心中をじわじわと蝕み、これから何か良からぬことが起きるのではないかと感じさせた。

 

 そして最悪な事に、その予感は的中してしまう。

 閉じ込めトラップに到着し、中にいた人々の救出は成功したのだが、一行の前に突如としてモンスターの群れが出現した。その数は少なくとも二十体近くおり、しかもその内の一体はこのダンジョンのボスモンスターである。救出部隊の数は10人程度しかおらず、状況は既に絶望的だった。

 ノーチラスもまた、彼女を守るようにその前に立って剣を取ったのだが、ここで彼に異変が起きた。目の前にいる獄吏型モンスターを見た瞬間、身体が石になったかのようにぴたりと動かなくなってしまい、目の前には《error》の文字が出現した。

 

 「クッソ……こんな、時にっ……!!」

 

 忌々しげに舌打ちをしながらノーチラスは叫んだ。

 『FNC』、と言うものがある。所謂「VR不適合者」の意味なのだが、不安な事にノーチラスはそれに該当する者であった。彼の場合、理性よりも生存本能がアバターに伝達され、強敵を目の前にすると身体が竦んでしまうのだ。

 誤解されがちだが、彼は決して戦えないわけではない。必死に努力を重ねて血盟騎士団に入る程の実力は持ち合わせており、恐怖もまた克服している。だが、彼の体質の関係上、ノーチラス自身は問題ないのにナーブギアがそれを無視してしまうのだ。

 そしてその発作が、よりにもよって最悪のタイミングで起きてしまった。いくら体に力を込めても、手足は一ミリたりとも動かない。その間にも、モンスターはじわりじわりと距離を詰めてくる。周りのメンバーは果敢に応戦するが、状況は全く変わらないどころか徐々に悪化してくる。

 だがその時、彼の背後から美しい歌声が鳴り響いた。そしてモンスター達は動きを止めて一斉にその方向を見る。

 ユナが《吟唱》スキルを使って自身にヘイトを集めているのだ。

 

「だ……ダメだ!やめろ悠奈!!」

 

 ノーチラスは思わず現実の彼女の名を叫んで止めようとするが、ユナは既に覚悟が決まっているようで少しだけ悲しみを帯びた笑顔を見せると、踵を返して走り出す。モンスターもそれに続いて彼女を追いかける。

 モンスターが引いていったのを確認した救出部隊のメンバーは、一斉にボスモンスターに向けて攻撃を仕掛ける。ノーチラスは彼らに対してユナの救出を懇願するが、部隊のメンバーは『全滅を避けるためにここでボスを倒す』という彼にとって非情な決断を下した。

 ノーチラスは何度も彼に対して訴えたが、その願いが聞き遂げられることは無かった。やむなく彼は単独でユナの救出に向かった。

 

 洞窟の奥へ奥へと進んで行くと、行き止まりとなった道に追い詰められたユナが地面に蹲っており、そんな彼女に対して二十体以上の獄吏型モンスターからリンチに近い攻撃を行なっていた。既にユナのHPはイエローゾーンにまで減ってしまっている。

 

「悠奈ぁ!!」

 

 ノーチラスは無我夢中で彼女の元へ駆け出すのだが、その途中で再び発作が起きてしまい、足が止まる。

 

「くそっ……たれが!!動け、動けよ!!」

 

 ノーチラスは言うことを聞かない自身の足を思い切り殴りつけるが、それでも彼の足は全く動かなかった。

 ノーチラスはこんな状況でも動けない自分自身に激しく怒り、その悔しさのあまり両目から涙を流しなら叫んだ。

 

「誰でもいい……頼む!誰か助けてくれ!!僕の全部を捧げてもいい……だから……悠奈を救ってくれえぇぇ!!」

 

 目の前で危機的な状況にある大事な女性を救えない自分の無力さを呪う慟哭と、助けを求める悲痛な叫びが洞窟にこだました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の望み、聞いたぜ」

 

 その時、背後から男性の声が響き、更に2人の人間が走ってくる音が近づいてくる。

 そして、彼の右から赤黒い装備の男性が、左を青と白の女性が走り抜け、一目散にユナに向けて走っていく。

 ユナを襲う獄吏型のモンスターの群れに対して、先ず銀髪の女性が刀を引き抜いてユナの前に彼女を庇うように立ち、素早い動作で刀を横一閃に振るってモンスターを切り裂いた。そして赤い髪の男性が赤黒い大剣を両手で構えると、地面に叩きつけて衝撃波を発生させ、周囲のモンスターを纏めて吹き飛ばす。

 刀使いの女性と大剣持ちの男性がモンスターの群れを挟撃する形で次々と討伐していく。

 

「すごい……」

 

 ノーチラスは彼らの戦闘に思わず釘付けになってしまった。2人の戦い方には一切の無駄な動きがなく、最低限の動作で次々と敵を撃破していくその姿は、まさに彼の理想的な剣士のあり方であった。

 数分も経たぬうちに、目の前に溢れかえるほど存在していたモンスターの群れは全て消え去っており、それらを片付けた2人は剣を納めてこちらに歩み寄る。

 

「よお、立てるか?」

 

 赤髪の男はノーチラスに手を差し出す。ノーチラスがその手を掴むと、男は彼を引っ張って立ち上がらせた。一方女性の方は回復結晶を使用してユナのHPを全快にしてくれていた。

 

「あの、貴方たちは……?」

 

「ん?あぁ……まあ通りすがりに攻略組だ」

 

 ノーチラスが問いかけると、赤髪の男がニヤリと口端を釣り上げてそう答えた。

 

「攻略組がどうしてこんなところに……今はボス戦のはずじゃ……」

 

「ボス戦?ああ、サボった」

 

 ユナの問いに対して男があっけらかんと答え、ノーチラスは思わず絶句した。ボス戦は毎度とてつもない厳しい戦いを強いられ、常に戦力が枯渇している状態であると聞いたことがある。しかし、この2人は自分達を助けるためだけにボス攻略を休んだという。

 助けてくれたのは本当にありがたいが、そこまでしてなぜ自分達を助けに来てくれたのか、甚だ疑問だった。

 するとノーチラスの疑問に気づいたのか、銀髪の女性が答える。

 

「ボス戦ももちろん大事だよ?でも、人の命がかかってるんだもん。こっちに来ちゃいけない理由なんてないでしょ?」

 

 彼らとて悩んだのだろう。ボス戦に行かなければそこで誰かが犠牲になるかもしれない。しかしここで自分達を見捨てればここにいる者たちも死んでいたかもしれない。最前線で戦うもの達に加勢するか、こちらの命を救うか。命に優劣は存在しない。だがどちらかは斬り捨てなければならない。それでも彼らは、こちらを助けることを選んでくれた。

 

「ありがとう……助けてくれて」

 

「うん、気にしなくていいよ。2人とも無事でよかった」

 

 ノーチラスが礼を述べると、銀髪の女性が柔和な笑みを浮かべながら答えた。

 

「僕はノーチラス。まあ血盟騎士団には入ってるけど、訳あってボス戦には参加できないまだまだ弱小のプレイヤーさ」

 

「私はユナ。エーく……ノーチラスと普段一緒に行動してるの」

 

 ノーチラスとユナが名乗った後、今度は赤髪の男性と銀髪の女性が名乗る。

 

「私はティア。こっちはジェネシス。普段は最前線にいるの。よろしくね!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 その後、ノーチラスは自分達を助けた2人があの攻略組の中でも最強クラスの実力を持つ“四天王”の2人であると知り、彼はジェネシス達に戦闘のレクチャーを頼み込んだ。

 2人は快く引き受け、その後フィールドに出てしばらくノーチラスの戦闘を見学していた。

 

「ダメだな」

 

 全てを見終わったジェネシスがキッパリと一言告げ、ノーチラスは思わず目を見開く。

 

「悪ぃがノーチラス、おめぇは戦うのをやめたほうがいい」

 

「そ、そんな……どうして!!」

 

 ノーチラスはジェネシスに掴みかかる勢いで問い詰めた。彼とて、これまでジェネシス達のようなプレイヤーに憧れ続けてひたむきに努力を続けていた。それが、目標としていた人物から面と向かって否定されるのは、ノーチラスにとってこの上ない程にショックであった。

 

「筋は悪くねえ。だが、こいつはお前に戦う意思があるかどうか以前の問題だ。ノーチラス、お前に戦いはどうしても無理だ」

 

 ジェネシスは淡々と、ノーチラスに対して現実を突きつけた。彼は既に、ノーチラスのもつ障害とその厄介な特性を見抜いており、その上で「無理だ」と口にしたのである。

 ノーチラスは思わず地面に蹲った。これまで、大切なユナを守るためにずっと努力し続けていた。その苦労や時間を全て否定された気分になってしまった。

 

「まあ、おめぇも今までそれなりに努力してきたんだってことは理解できた。だが、それでもおめぇはもう前線で戦うべきじゃねえ。それが克服できない以上、戦いに出ても無駄死にするだけだ」

 

 ジェネシスから発せられる言葉に、ノーチラスは悔しく歯噛みしつつも反論できずにいる。ジェネシスの言うことは全て理解できたし、自分自身納得は出来た。確かに、強敵を目の前にして一歩も動けなくなる自分が戦場に出たところで、そのまま嬲り殺しにされるか仲間に迷惑をかけて終わるだけだ。だがそれ以上にどうしようもなく、悔しかった。自分自身の手でユナを守り、このゲームを終わらせて彼女と共に現実に帰りたかった。

 そんな彼を見かねて、ティアが彼の隣に跪き、背中を撫でながら語りかける。

 

「そんなに気落ちしなくてもいい。人には向き不向きというものがある。時には出来ないことを受け入れて別の道を進むというのもある。

それに、戦うことだけがユナを守る手段と言うわけでは無いよ。彼女だって、貴方にずっとそばにいて欲しいはずだと思うよ」

 

 するとユナもノーチラスの隣にしゃがみ込み、ゆっくりとその背中に両腕を回す。

 

「私は……エー君にはずっと、生きてそばにいて欲しいな……」

 

「悠奈……」

 

 ノーチラスはゆっくりと顔を上げて、ユナと目を合わせる。

 

「ま、そう言うこった。おめぇの分まで俺たちが背負って前線で戦ってやるからよ。おめぇらはおめぇらのやり方で生き続けろ」

 

 ノーチラスはジェネシスの言葉を聞き、しばし目を伏せたのちにやがて口元に笑みを浮かべる。その表情は無念が残りつつも、新しい道を歩むと言う確かな決意が表れていた。

 

「そう、か……そうだな」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 その後、ノーチラスが今後どうするのか、どうやってアインクラッドを生きていけばいいのかと言う話し合いが起きた。ノーチラスとしては、下層に引きこもって脱出を待つと言うのは本意ではなく、何かジェネシス達最前線で戦う者を支えられるような役割はないか必死に考えた。

 しかし、鍛冶屋をするには一からスキルを取る必要があるし、何よりこの世界の鍛治師は十分足りていた。

 

 そこでティアが提案したのが、「この世界には娯楽が全く足りないので、ユナの歌を広める活動をしてはどうか」というものだった。具体的には、ノーチラスが各層ですユナの歌唱のイベントを開くプロデューサーのような役目をすると言うことだ。彼女の案を聞いた皆は賛同し、特にユナは「エー君が私の専属Pになってくれるの!?」と大層嬉しそうに反応した。ノーチラスとしても満更ではないようなので、これで案は纏まった。

 しかし、この先アインクラッドを生きる中で彼ら2人だけだと何かしら危険が伴う。例えば、彼らがフィールドを移動する際に危険なモンスターと遭遇する可能性もあるし、この先彼らが有名になれば、それをよく思わないプレイヤーに襲われる事もあり得る。なので彼らには護衛をつけようと言う話が上がる。

 するとジェネシスが「それならいいアテがある」とメッセージを飛ばす。数分後、彼らの元に6名のプレイヤーが現れた。

 

「やあ、久しぶりだねジェネシス、ティア」

 

 リーダーらしき長身の男性がさわやかな笑みと共に手を振って歩み寄る。その他のメンバーも皆優しげな者達だ。彼らの左胸には三日月に黒い猫が描かれたマークが付いている。

 

 そう、彼らはジェネシスとティアがかつて自ら鍛え上げたギルド《月夜の黒猫団》。今や中層ゾーンでは向かう所敵無しと言われ、攻略組に最も近いギルドと噂されている。そんな彼らを目の前にしたノーチラスとユナは目を丸くした。

 

「よお、久しぶりだなケイタ」

 

「ああ。2人とも相変わらずなようで何よりだ。あの時君たちが鍛えてくれたお陰で、もうすぐ2人のいる最前線に追いつけそうだよ」

 

「それはそれとして、なんでここに《歌姫》がいるんだ?」

 

 ケイタと再会の挨拶を交わす中、ユナを目にした黒猫団のメンバーが問いかける。

 それに対してジェネシスが事情を簡単に説明すると、ケイタは「なるほど」と頷き、

 

「そう言う事なら、承ったよ。歌姫ユナとその専属Pのノーチラスの護衛、黒猫団の名に掛けて努めてみせるとも」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「そっか、ならよろしく頼むわ」

 

 ケイタの力強い言葉を聞き、ノーチラスは頭を下げた。

 

「あの、それはそれとして……あの方はどうされたのですか?」

 

 その時、ユナが気まずそうにある一点を指差す。皆がそれを聞いてその方向を見た瞬間、思わず絶句してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ、待って待ってサチ!!お願いだから落ち着いて!!」

 

「ウンダイジョウブダヨワタシスッゴクオチケツイテルヨ」

 

「オチケツイテルって何!?全く落ち着いてないよね!てか危ないから槍振り回さないで!!」

 

「くおえうえーーーるえうおおおwww」(^p^)

 

 そこには、奇声を上げオワタの表情で槍を振り回しながらティアを追い回すサチの姿があったのだ。

 

「ちょ!?何あれ!!何してんのサチの奴!?」

 

 ジェネシスが驚愕のあまり早口で捲し立てる中、ケイタは「あー……」と何かを察した様子で目頭を押さえた。

 

「とりあえずジェネシスには馬鹿野郎とだけ言っておく」

 

「なんで!?なんで俺がおめぇに罵られないと行けねえんだよ!それとサチがあんな事になってる事となんの関係があるんだよ!?」

 

 ジェネシスは全く身に覚えが無いため慌てるが、黒猫団の皆は憐れみと若干怨嗟を込めた表情でジェネシスを見つめる。

 

「俺は無実だああぁぁーーーー!!!」

 

 ジェネシスの叫びがフィールドに響き渡り、目の前の光景にただ困惑するノーチラスとユナだった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 約1年後・七十六層アークソフィア

 

 七十六層での講演を終え、その日の宿に向かうノーチラスとユナ。

 

「エー君、今日も伴奏ありがとうね!」

 

「ああ。これが今の僕にできる事だ。君の歌をたくさんの人に届けるために、やると決めた事だからな」

 

 あの日、ジェネシスからのアドバイスを受けてノーチラスはアインクラッドの各所でユナのライブを開く企画を提供し、更に自身は『楽器演奏スキル』を取ってピアノの伴奏を行い、ユナの歌を盛り上げる役割を担っている。彼女の歌声は、絶望に満ちたアインクラッドの中で人々の心を確かに癒し、皆に希望を与え続けている。そして今、彼らは七十六層の異変を聞きつけて、下層に戻れない事を承知の上でここにやってきた。全ては、ジェネシスとティアに今の自分たちの姿を見てもらうために。

 

「今日は、来てなかったね……あの2人」

 

 残念ながら姿を見せなかった恩人の姿を思い浮かべ、ユナはやや寂しげに呟く。

 

「ああ、そうだな……でも、すぐに会えるさ。彼らはこの層にいるのは間違い無いんだから。

必ず、聴いてもらおう……君の歌声」

 

「うん!!」

 

 ユナはノーチラスの言葉に、晴れやかな笑顔で頷いた。

 

 




お読みいただきありがとうございます。そして……ユナが生存ルートに入りました!!
個人的に、ノーチラス……エイジ君が本作で辿る道は作者自身が考えた一つの道と言いますか……原作で彼に必要だったのは、「彼を戦いから遠ざけるきっかけ」だったのかな〜と思うんです。エイジ君の持つ障害は、気合云々でどうにかなる問題では無いんですよね。
人は時に、どうしても超えられない壁にぶつかる事があります。超えられないのに無理に頑張って越えようとするよりは、無理な事は無理ときっぱり諦めて、自分が今できる事をやる方がいいと言うのが作者自身の持論なのです。そしてエイジ君には、その選択肢を示す人が必要だったのだと見てて感じたので、今回ジェネシス君にその役を担ってもらいました。

そしてユナが生存ルートに入った事により、オーディナルスケール編はかなりの改編を予定しています。本作のOS編がどうなるか……どうかご期待ください!

また、今回サチがどうして(^p^)な顔になってティアに襲いかかったのかは、第七話を参照していただけると一発で分かるかと思います。

では、また次回!いよいよ年末も近くなってきました。皆様、コロナに気をつけつつどうか寒さ対策をしてお過ごしください。








   〜予告〜

「なんだよ……このボスは……!?」

「いつになったら終わるのよ……?」

ジェネシス達が挑むのは、九十九層ボス。
立ちはだかるは、《古代の英雄》《龍の蒼槍》《天馬の緑弓》《巨人の紫剣》
そして目覚める────《凄まじき戦士》

「ったく、いつまでもガキどもにやらせてたら大の大人が廃るってもんだ」

立ち塞がる究極の闇を前に、遂に世界最強『星海坊主』が立ち上がる。
『伝説は塗り替えるもの』────さあ、勇者達よ。“十二の試練”を乗り越え、紅き城へ辿り着け!

  ソードアート・オンライン
    〜2人の黒の剣士〜
ホロウ・フラグメント「最後の試練編」
      近日開始!!




そして、『大いなる悪意』が胎動する───
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。