ソードアート・オンライン〜二人の黒の剣士〜   作:ジャズ

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大変お待たせいたしました。ここ最近とある事情でほとんど執筆できておりませんでした。最近は少しだけ落ち着いたので、ここから少しでも巻き返していきたいと思っております。


七十七話 開幕・99層ボス

 石レンガで構成された威厳ある闘技場のようなフィールドに、プレイヤー達の怒号が響き渡る。皆それぞれの獲物を手に一斉に駆け出し、目の前に立ちはだかる真紅の戦士に突っ込んでいく。それに対して赤き古代の戦士────クウガは直立の体制から視認不可能な程の速さで駆け出し、一瞬でプレイヤー達との距離を詰めて捕捉した重装備の男性プレイヤーの鳩尾を拳で殴りつけた。

 

「ぐうぉあぁ!?」

 

 男性はパンチのダメージでその場から数メートル後方まで吹き飛ばされ、身につけていた胴体の重厚な鎧が弾け飛んだ。彼が身につけていた鎧は防御パラメータが高めに設定されていたものであるため、それを一撃で破壊せしめたクウガの破壊力は、歴代ボスの中でも屈指の高さを誇るのだと言うことをメンバーはこの一撃の攻撃で察知し、皆は一層気を引き締めた。

 攻略組の指揮を執るアスナが全員に支持を飛ばし、盾役を前にクウガの全方位を囲みながら接近するという作戦がとられ、ジャンヌやエギルと言ったHPと防御力が比較的高めのプレイヤーが最前線でクウガに突っ込んで行き、その後ろにヴォルフやジェネシスと言った攻撃力の高いプレイヤーが続くという陣営で果敢に攻め込む。

 

 まず、一番前に立っていたジャンヌがクウガと接敵した。クウガが左右の拳を交互に繰り出してパンチのラッシュを浴びせるが、ジャンヌは旗の持ち手で器用にそれを弾いていく。ジャンヌがここまでクウガのパンチを捌けるのは、単にジャンヌの防御力が高いというだけでなく、彼女の筋力値が現在この場にいるプレイヤーの中でもトップクラスの高さを持っているからだ。

 

「こっちを忘れてもらっては……困ります!!」

 

 クウガがジャンヌに集中攻撃を浴びせている隙をつき、アキレアがクウガの横から片手剣ソードスキル『ヴォーパル・ストライク』による重い刺突攻撃を決め、クウガを吹き飛ばす。

 

「グゥレイトだぜアキさあぁぁぁぁぁん!!」

 

 地面に仰向けになって倒れ込んだクウガに対し、すかさずヴォルフが大ジャンプしてクウガの真上からハルバードを振りかぶり、両手斧スキル『ワール・ウインド』を叩き込む。

 斧の刃が轟音を立ててクウガの胴に深々と突き刺さり、HPを大きく削った。しかしクウガは胴体に叩き込まれた斧の刃を掴み取ると、そのままヴォルフごと斧を投げ飛ばした。ヴォルフはしばらく宙を舞ったのちに地面に落下し、さらにクウガは追撃を加えるために彼に向かって駆け出す。

 

「やらせないっての!」

 

 だがそれを、リズベットがクウガの背後から片手棍スキル『トライス・ブロウ』で無防備な背中を殴り、さらにシノンが遠距離から射撃スキル『シングル・ショット』でクウガの背中を正確に射抜いた。その攻撃を受けて一瞬怯んだ隙をついてシリカ、フィリアが滑り込みながら両足の脹脛を斬りつける。足を切られて体制を崩したクウガに、正面からイシュタルが顎に飛び蹴りを叩き込み、さらに続けてオルトリアが胴をビームサーベルで抉るように斬り込み、そして立て続けにイシュタルが大型弓《マアンナ》で極太のレーザー光線を放つ。

 

「オラアァァァァァァ!!!」

 

 クウガがイシュタルの放った光線に焼かれた直後に、ジェネシスが大剣を横薙ぎに振るってクウガの胴を叩きつけた。その威力によってクウガは空のペットボトルのように軽々と吹き飛んでいき、石レンガの壁に衝突した。

 

「いいぞ、攻撃を緩めるな!!」

 

 キリトが指示を飛ばしながら双剣を構えてクウガに突っ込んでいく。右手の黒剣を上段から振り下ろし、続けて左手の真紅の剣で突き技を放つ。しかしクウガは素早い反応でキリトの両手首を掴み取ると、そのまま背負い投げで地面に叩きつけ、さらにその胴を蹴り飛ばす。数メートル地面を転がったキリトに、クウガは追撃をかけるために彼目掛けて駆け出す。

 だがその道にツクヨが割り込み、左右の手に逆手持ちで握られた苦無を素早い動作で繰り出していく。ツクヨの無駄のない洗練された動作で苦無の斬撃が襲いかかるが、クウガはそれを拳で容易くあしらっていく。短剣特有のスピードによる攻撃をものともしないクウガだが、ツクヨは苦無を繰り出す中でカウンターの回し蹴りを顔面にヒットさせ、体制を崩したクウガに対し苦無術《雷電纏・迅雷一閃》を発動し、稲妻の如く電気を纏った苦無をクウガの両肩に突き刺す。

 

「行くよえっちゃん!」

 

「りょーかいです」

 

 続いてティアとオルトリアが刀とビームサーベルを手に駆け出し、刀居合スキル《辻風》・双頭刃ソードスキル《ライトニングスラッシュ》でクウガの腹を左右から斬り上げた。これで残りHPは最後の一本の半分まで減少し、あと少しというところまで来た。

 

 だがその時、クウガの身体に異変が走る。ツクヨが突き立てた苦無、そしてオルトリアが放った電気系ソードスキルによる電流が「バチバチッ」と音を立てながらクウガの全身を走る。そしてその肩アーマーの縁、腰のベルト周り、そして右足の足首周りがゴールドのアーマーに変化した。

 

「ここに来てパワーアップしたって言うの……?」

 

 一連の光景を見ていたアスナが思わずそう声を発し、全員もクウガの方を見て固まってしまう。その不意を突いてか、クウガは腰を深く落とし、そして勢いよく駆け出す。一歩、2歩と力強く踏み締めたのちに空中へ飛び上がり、前方宙返りをしたのちに攻略組全員に向けて飛び蹴りを放つ。

 

「やらせるか!!」

 

 しかしいち早く反応したサツキが双頭刃スキル《ロー・アイアス》を発動し、7枚の縦を展開してクウガの飛び蹴りを受け止める。しかし飛び蹴りの威力は見かけに反してかなり高く、アイアスの盾は次々と破られてあっという間に最後の1枚に到達してしまう。サツキは歯を食いしばって踏ん張るが、それでも最後の一枚に徐々にヒビが入っていく。

 

「お兄ちゃんそのまま!」

 

 しかしサツキの背後に回り込んだハヅキが弓を構え、クウガの足底目掛けて射撃スキル《ディメンションシュート》を放つ。シアンの矢印状の光線がサツキの左頬すぐ横を通過し、そのままクウガの右足裏に命中。爆発と衝撃波を起こしてクウガは宙を待って後ろへ吹き飛んでいく。轟音を立てて落下し、クウガはそのまま地面に横たわった。

 

 攻略組が仕掛けた怒涛の連続攻撃によってクウガのHPは全て削り取られたが、攻略組のメンバーは皆不審がった。

 “これで終わりなはずがない”ーー誰もがそう予感した。当然だ。これで終わりなら、99層ボスとしてはあまりにも弱すぎる。そして彼らの予感は最悪の形で的中することとなる。

 

 クウガは徐に起き上がると、両足を開いて深く腰を落とし、右腕を真っ直ぐ左上に伸ばし、左手をベルトに翳す。水の流れのような清らかな音が流れ、深紅だったクウガの装甲が徐々に青く染まっていく。

 

「これは……流石に予想してなかったな」

 

 その光景を見たキリトが苦虫を噛み潰したような顔で言い、アスナも冷や汗を流して首肯した。そして完全復活を果たしたクウガーー《クウガドラゴン》はいつのまにか出現していた槍を構えて再び相対した。

 

「チッ……やるしかねえか」

 

 ジェネシスは忌々しげに舌打ちしつつ、大剣を再び肩に担いで身構えた。だが次の瞬間、クウガはジェネシスとの距離を一瞬で詰め、槍の先端を彼の腹部に向けて突き出しており、瞬きする間も無く唐突に繰り出された攻撃に、ジェネシスは反応が遅れてしまった。

 

抜刀術《蓮華》

 

 だがそれよりもいち早く反応していたティアがジェネシスの前に割り込み、抜刀術ソードスキルで槍の中腹を叩き、軌道を逸らした。クウガは標的をティアに切り替えると、槍を複雑な軌道でティアに突き出していく。なんとか持ち前の反射神経と剣速でそれらを捌いていくティア。

 

“こいつ……さっきまでとスピードが違う!”

 

 槍という武器はその長さ故に取り回しが悪くスピードが落ちやすい武器だが、クウガは達人の如く無駄のない素早い動作で槍を操る。

 

「たぁーっ」

 

 押され気味のティアに、オルトリアが双刃形態のビームサーベルでクウガの背中を斬った。さらに、

 

「槍だったら、私も負けていられない!」

 

 サチが真横から槍ソードスキル《ソニック・チャージ》で横腹に突きを放つ。続けてリーファが片手剣ソードスキル《ソニック・リープ》で、フィリアが短剣ソードスキル《ファイトエッジ》で同時に斬り込む。

 

 だが、サチ・リーファ・フィリアの攻撃は効かなかった。たしかに命中した筈の3人の攻撃は、まるで鉄筋コンクリートの壁を殴ったかのように全て弾かれたのだ。意表を突かれ一瞬硬直した3人に対し、青いクウガは長槍を横長に振るってリーファ達を吹き飛ばした。

 

「スグ!」

 

 吹き飛ばされたリーファをキリトが抱きとめた。彼女のHPは思いの外削られたものの、致命傷には至ってはいない。

 

「………うそ……」

 

 ここで敵の解析を行ったサクラが青ざめた顔でつぶやく。

 

「このボス……リーファさん達のソードスキルに耐性を得ています……」

 

 サクラ曰く、クウガは既にマイティフォーム時の時に受けた技全てに耐性を得ているとの事。決め手となったのはラストアタックとなったハヅキの《ディメンションシュート》。これにより《ディメンションシュート》級以下の攻撃ではクウガに傷一つすら与えることは出来ないと言うのだ。

 

「そんな無茶苦茶な……!」

 

 シリカが思わず悲痛な叫びを上げた。つまりこのボスを倒すには「事実上最低限の攻撃力を持つ技で、尚且つクウガに有効なソードスキル戦わなければならない」のだ。

 

「じゃ、ここは俺らが引き受けるしかなさそうだな」

 

 するとエギルが斧を肩に担いで前に出た。クラインもそれに続く。

 

「この場は俺たちが引き受ける。おめぇらは一旦下がっててくれ」

 

「エギル?そんな、無茶だ!」

 

「ここでおめぇらの攻撃に耐性つけられて、後々手ェつけられなくなったら困るだろ。それに、いつまでもてめぇらに任せっきりじゃ面目が立たねぇしな」

 

 キリトが引き止めようとするも、エギルは不敵な笑みでそう告げると果敢に駆け出す。それに続きクラインやリーファ、シリカらが獲物を携えて飛び出していく。

 エギルが斧をクウガの真上から振り下ろし、続けて横薙ぎに振るいクウガを吹き飛ばす。

 

「行くよ、ピナ!」

 

『きゅるるっ!』

 

 シリカとピナが続けてクウガに挑む。彼女の得意分野である敏捷性を活かして素早くクウガの懐に飛び込み、短剣ソードスキル《ラビット・バイト》でクウガの太腿に短剣を突き立てる。しかしその攻撃を受けてもクウガは怯まずシリカを蹴飛ばした。それでもシリカは食い下がって再び挑むが、その直後クウガの槍先がシリカの腹部を貫いた。

 

「シリカ!!」

 

 刺されてダメージを受けたシリカの救援に向かうサチを殴り飛ばし、更に追撃をかけるためにゆっくりと歩み始める。

 

『きゅるっ!!きゅるるるるっ!!』

 

 主人の危機を察知したピナがクウガにブレス攻撃をかけるが、まるで蠅を追い払うかのような動作でピナを弾き飛ばす。

 

「ピナっ……!」

 

 槍で身体を貫かれた状態のシリカがピナを抱き止める。幸いHPの全損は免れたが、それでもかなりのHPは削られてしまっている。そこへ青いクウガが無慈悲にも拳を振るって2人を殴り飛ばす。

 地面に倒れ込んだシリカに、とどめの一撃を与えようと槍を構えるクウガ。

 

「こんな、ところでっ……やられるもんかあぁぁぁ!!」

 

 その時、シリカの叫びに応えるかのように彼女の周りを突如発生した炎が包む。

 

《上位EXスキルNo.09 テイマーズワルツ 発動》

 

 そして炎の中からシリカの短剣がクウガの青い鎧を焼き斬った。一瞬怯んだクウガは直ちに距離を取ってシリカの方を注視する。そこに立っているのは、もう先程までの愛らしい少女などではなく、勇ましい“戦士”の表情で堂々と立ち続けるシリカの姿だった。

 

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。
あぁ……しばらく書いてないから少し描写力が落ちてる感が……申し訳ない。
そして満を辞して遂にシリカ覚醒の時。もうMOREDEBANだなんて呼ばせません。超強化を果たしたシリカの勇姿、乞うご期待ください。
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