ソードアート・オンライン〜二人の黒の剣士〜   作:ジャズ

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シリカ「もうMORE DEBANなんて、言わせない」(`・ω・´)キリッ


七十八話 Alive A life

 燃え盛る炎の中からゆらりとシリカは立ち上がる。皆が彼女の豹変ぶりに戸惑う中、クウガは槍を構えて突っ込んでいく。一瞬の動作であったため全員反応が遅れたが、シリカはその攻撃を槍の刃先を短剣で叩くことで軌道を逸らし、容易く弾く。その反撃に、シリカは短剣を逆手から順手に持ち帰ると、刃に炎を纏ったソードスキルを発動し、クウガの鳩尾に叩き込む。

 

テイマーズワルツ ソードスキル“ストライクベント”

 

 腹に炎の一撃が叩き込まれたクウガは、その衝撃で後方に吹き飛んでいく。そこは間髪入れずにシリカは追撃を加える。

 

「行くよ、ピナ!」

 

『きゅるるるっ!』

 

 シリカの掛け声に応えたピナが彼女にブレスを吐いてバフをかける。ピナからのブーストを受けたシリカは、背中に竜の羽のような炎のエフェクトを発してその場から飛び出す。

 

テイマーズワルツ バフスキル“インフェルノウイング”

 

 ほぼ一瞬の速さでクウガと距離を詰めたシリカは、立て続けに短剣ソードスキル“エターナルサイクロン”を発動し、緑の旋風を伴った剣戟でボスの身体を斬り刻む。

 

「この機を逃すな!シリカに続け!!」

 

 ここまでシリカの奮戦を見届けていたエギルたちも我に帰り、それぞれの得物を構えて一斉に飛びかかる。

 まずエギルが大型のバトルアックスを振りかぶってクウガの胴に叩き込み、続けてサチが後ろから槍で背中を突き刺す。手持ちの長槍で反撃に出るクウガだが、間髪を入れずにアキレアが片手剣で脇腹を抉り切り、リーファがその反対側から長剣で首下を一閃する。攻撃部隊はクウガに反撃の隙を一切与えず、連携をとってとにかく攻撃し続けた。

 見事な連携プレーと止まらない攻撃を続けたことによってクウガのHPは瞬く間に減少していき、やがて残りがイエローゾーンに到達。もうゴールは近い、全員がそう思った瞬間。おそらく僅かに出来た油断を感じ取ったのだろう、クウガは一瞬の動作で自身に突っ込んできたサチの腹部に槍の先端で突きを加えると、その場から飛び上がって全員と距離を空けた。そして攻撃部隊の動きが微かに止まり、クウガはメンバーに対して槍ソードスキル“リヴォーブ・アーツ”を発動してリーチ内に立っていたメンバーを吹き飛ばした。

 

「く、っ……ここまで来て……!」

 

 腹部に切り傷を受けたアキレアが悔しげにクウガを睨みながら起き上がる。しかしその直後、炎の翼のようなエフェクトを背中から生やしながらシリカが突っ込んだ。

 

「たああぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 勇ましい掛け声と同時に飛び蹴りをクウガの顔面に放ち、後方にバランスを崩したと同時に今度は脚部を短剣で切りつけた。

 槍を直立させて先端の刃をシリカに向けて突き刺すクウガだが、シリカは前方に転がり込んで瞬時に背後に回り込み、背中を短剣ソードスキル“ラビットバイト”で切り込んだ。

 そこからクウガとシリカの技の応酬が始まった。青の刺突と赤の斬撃が虚空を斬り、衝突し、互いの身体を抉る。クウガの蒼き装甲に赤い切り傷がついていき、シリカの華奢な身体に槍が何度も突き立てられる。しかし、それでもシリカは決して止まらなかった。

 

「負けない……負ける、もんかあぁぁぁぁ!!!」

 

 そしてシリカの短剣に真紅のエフェクトが走り、いよいよ最後の決め技にかかった。リーチは十分、狙いも完璧。誰もが“決まった”と確信した。

 だがクウガも簡単に終わらなかった。左拳を下から突き上げてシリカの短剣を握る右手を打つと、怯んだシリカは思わず短剣を離してしまう。続けてクウガは、槍の先端に青いエネルギーを収束させると、力を込めてそれをシリカの腹部に突き刺した。

 

 

「が、ふっ……!」

 

 「ドシュッ」と痛々しいサウンドエフェクトが鳴り、シリカはその場に立ち尽くす。そしてクウガはそのまま彼女に蹴りを入れて奥の壁に叩きつけた。全身を強打したシリカはそのまま力なく地面に倒れ込む。既に残りのHPはレッドゾーンに到達し、すぐに回復しなければ危険な状態だ。

 

「シリカ!!」

 

 キリト、アスナ達が慌ててシリカに駆け寄り、サクラが回復スキルを発動してHPを全回復させた。だがシリカにはデバフがかけられており、その頭上に59秒のカウントが表示されて刻々と時間を刻んでいる。

 

「これは……“封印エネルギー”……!!」

 

 分析したストレアが絶望的な表情で叫ぶ。

 

「やばい、これは一種の“死の呪い”だよ。あと1分以内にあのボスを倒さないと……シリカは死ぬ」

 

 ストレアから告げられた言葉で皆は驚愕した。このデバフはサクラのスキルを使っても解除は不可。ただ、シリカ本人が青いクウガを撃破しなければならない。

 

「あ、はは……やっぱり、ダメだなぁ……あたし……」

 

 しかしシリカは、力なく笑うと目元に涙を溜めて悔しそうに呟く。

 

「いつもいつも……皆さんの足ばっかり引っ張って……結局今回もまた……あたしは役立たずで終わっちゃうんだ……」

 

「泣き言なんざ言ってる場合か」

 

 だが気落ちするシリカの頭をごつごつした掌が思いきり引っ叩いた。見上げると、ミツザネが険しい表情でシリカを見下ろしていた。

 

「そんな事言ってる暇なんざねぇだろ。見ろ、もうあと40秒しかねえ。やると決めたんならとことん戦い抜け。負けないと決めたんなら絶対に勝て。そんなもんで折れるタマじゃねぇだろ、お前さんは」

 

「ミツザネ、さん……」

 

 ミツザネはシリカの腕を掴むんで引っ張り上げ、彼女を立ち上がらせた。

 

「若ぇもんが簡単に命を手放すな。さあ行け、自分の命くらい自分で守って見せろ!」

 

 力強くシリカの背中を叩きながら、ミツザネは叱咤激励をかけた。

 

「シリカ」

 

 不意に、ジェネシスがシリカを呼び止める。彼は真剣な眼差しでシリカを見つめると、一言こう告げた。

 

「……俺は信じてるぞ」 

 

 彼の言葉を聞いた瞬間、シリカの折れかけていた心が再び息を吹き返す。

 

「行くよ……ピナ」

 

『きゅるるるっ!』

 

 相棒の小竜に声をかけると、ピナは頼もしい声でシリカに答えた。時間は残り30秒。もう猶予は残されていない。クウガは槍を両手で保持してシリカを待ち構える。先ほど落とした短剣はクウガの足元に転がっている。

 シリカは「フゥ……」と息をゆっくりと吸い込んで深呼吸すると、次の瞬間勢いよく飛び出した。ピナからのブースト“インフェルノウイング”による加速能力も経て凄まじい勢いで突っ込んでいく。

 

「だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」

 

 全速力で駆け抜けると、クウガは槍ソードスキルを発動してシリカに向けて突き出す。だがシリカはそれを回避せずにそのまま突っ込む。槍の先端は彼女の横腹を深々と貫き、再びHPを大きく削る。

 

「ピナアァァァァァァァ!!」

 

 だがシリカが相棒の名を叫んだ瞬間、彼女の背中に隠れていたピナが飛び出し、『きゅるるるうぅぅーーっ!!』と叫びながら身体を丸め、弾丸のごとくクウガの胴部に体当たりを入れた。その勢いで体制を大きく崩したクウガ。その隙にシリカは槍を引き抜くと右足で床に落ちていた短剣の柄を踏みつけると、その反動で短剣が空中に飛び上がる。

 それをキャッチしたシリカは、その場から空中に飛び出し、身体を大きく捻って赤い炎を纏ったソードスキルを発動した。テイマーズワルツ最上級スキル“バーニングレイン”。炎の懺悔が雨のようにクウガに襲いかかる。シリカの短剣はクウガのアーマーを何度も切り裂き、同時に青い槍がシリカの身体に何度も突き刺さる。互いのHPを大きく削りながら、2人は最後のラッシュをかけた。

 ソードスキルが終わり、残り時間は4秒を残してシリカは着地した。その背後で、クウガは2、3度よろめいた後地面に倒れ伏した。

 

「シリカちゃぁぁん!!」

 

 アスナ達がシリカに駆け寄り、満身創痍の彼女を抱き上げる。

 

「よくやったぜ、シリカ!」

 

「うん!いい戦いっぷりだったよ!すごくかっこよかった!!」

 

 ジェネシスとティアはシリカの頭をわしゃわしゃと撫でて褒め称え、当の本人は照れ臭そうに頬を赤らめていた。

 

 だが、戦いはまだ終わらない。

 

 クウガは再びその場で立ち上がると、両足を広げて腰を深く落とし、再びフォームチェンジの体勢に入った。

 今度は獣の足跡のようなサウンドがなり、緑の疾風と共にフォルムが変化する。複眼と鎧は真緑に染まり、右肩のアーマーが黒く、左肩のアーマーが肥大化した左右非対称の見た目となった。

 

「また、姿が変わった……」

 

 次なる相手は『天馬の緑弓』。戦いはまだ、終わらないーーーー




お読みいただきありがとうございます。
今回、シリカを大いに活躍させました。今後も、いろんなキャラに満遍なく見せ場を作って行けたらなと考えてます。
では、次回もどうぞよろしくお願いします。
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