ペルソナ6   作:似街楠理

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ロイヤル楽しいですよね。ペルソナシリーズはまだまだにわかですが滅茶苦茶ハマってます。
タイトルでお察しの通り完全に世界観だけ借りたものです。よかったら読んでください


第一話 4月6日

「『リソウの本』って知ってる?」

「あー、あれでしょ?読むと理想の自分になれるってヤツ」

「サッカー部の飯田先輩、あれ読んでレギュラーになれたらしいぜ」

「えー、いいなー!どこにあんのそれ」

「うちの学校の図書室にあるって聞いたけど……図書委員に聞いてもそんな本ないんだって」

「誰かが持って帰ってるとか?」

「そもそもそんな本が無いって言われたんだけどなぁ……」

「放課後探しに行ってみようよ」

 

 

『足が速い自分、頭がいい自分、喧嘩が強い自分、異性に好かれる自分、人は様々な理想の自分というものを描いて生きています。理想と現実の差を埋めるか妥協するか………はたまたこのような噂話に頼るか……』

『理想の自分に今すぐなれると言われたならば貴方はどうしますか?』

『我々は今は貴方の夢に語りかけるのみ……しかしすぐにお会いすることになるでしょう………』

『それでは良き物語を………』

 

 

4月6日 午前

引っ越しにごたついてしまったせいで始業式から微妙に遅れての転入になってしまった。

日伝(ひづたえ)市、総人口3万人程度の小さな街である。周辺が山に囲まれたいわゆる盆地で夏は暑く、冬は寒い、春は花粉が強烈とある意味春夏秋冬をとても感じる土地である。

そんな日伝市にあるごくごく普通の高校、日伝南(ひづたえみなみ)高校に今日から自分は転入することになった。

 

「転入生の朝宮(あさみや) (りょう)。中途半端な時期での転入になりましたが皆さんよろしく」

「はい、朝宮君の席はそこの空いてる席ね。困ったことがあれば隣の席の彼女に聞いて」

 

担任に促され一番後ろの窓際席に案内される。その隣の席には眼鏡をかけた黒髪の女子生徒がこちらに対して軽く会釈してきた。こちらも会釈で返すとそのまま席につく。

 

「よぉ、転入生」

「なんだ同級生」

 

前の席の男子生徒が体をこちらに向けて話しかけてくる。

 

「いや、その言い方はナンセンスだろ……」

「名前を知らない」

「知ってた方がコエーっての!天然かお前?」

「さぁ、どうかな?」

「いい性格してるよ、コイツ……。俺の名前は神奈木(かんなぎ) (しょう)ってんだ。名字で呼ばれるのは嫌いだから名前で呼んでくれ」

「翔ちゃんと呼ばせてもらおう」

「フレンドリーすぎだろ!?」

「俺も涼でいい」

「…………もうなんでもいいや。よろしくな涼」

 

反応が面白いからついついふざけてしまうな。顔立ちも整っているし、ここまでコミュニケーション能力が高ければモテるだろう。

 

「それでな、お前の歓迎会を開こうと思ってさ」

「リンチか?」

「しねーよ!そんなことするように見えんのか!?………この学校で今流行りのアイテムを探しに行くんだよ。よかったらお前も来ないか?ってお誘いさ」

 

歓迎会なのか、それは?純粋な疑問が頭をよぎるが、転入早々にこういった青春イベントへのお誘いが来るとは思いもよらなかった。素直に嬉しい。

 

「その話詳しく」

「無表情な割にノリがいいな……そうこなくっちゃ!」

「ちょっと二人とも」

「「???」」

 

話の核心に入る前に横の女子がこちらに話しかけてくる。

 

「どーしたんだよイインチョ。もしかしてお前も来るか?」

「そんなことよりもまだホームルームよ。ほら」

 

翔と揃って前を見ると担任がこちらを呆れ気味に見つめていた。しまった。今がまだホームルームの最中だということをすっかり忘れていた。

 

「……仲がいいのは結構だけど時と場所をわきまえるように」

「すみません」

 

転入早々に怒られてしまった。

 

「この話はまた休み時間にな」

 

そう小さく呟くと翔は体を正面に向けて退屈そうに肩肘をついて担任の話を聞いていた。

 

昼休み

 

「涼ー!飯食おうぜ」

「ああ」

「てか、お前、弁当は?」

「作る余裕がなかった」

「あー、引っ越しがゴタゴタしてたとか言ってたもんな。でもなーここの学食ぶっちゃけマズイしなー」

 

後頭部を掻きながら翔は教室の辺りを見渡している。

 

「なぁみんな!転入生にちょっとだけ弁当分けてやってくれないか?」

「それは気まずい」

「何も食わないよりはマシだろ?放課後のこともあるしさ」

 

翔は驚くほどスムーズにクラスメイト一人一人からおかずを頂戴していった。弁当のない哀れな転入生に対しての優しさも当然あるだろうがそれ以上に翔の人徳がなせる業だろう。

 

「こんだけありゃ十分だろ」

「ウィンナーばかりだ……」

 

タッパーの蓋に盛り付けられたおびただしい量のウインナー。あまり贅沢を言える身分ではないが白米とか、卵とか、トマトとか、そういう彩りも欲しいところだ……。

 

「はい、私のもあげる」

「イインチョさん」

 

その肉の山にそっと添えられたのはブロッコリー。茶色に加わった緑は非常に目に優しかった。というよりも山盛りのウインナーにブロッコリー一つとなると前衛的なオブジェにすら見える。

 

「……三輪(みわ) 凛那(りんな)よ。確かにクラス委員長だけど役職で呼ばれるのは好きじゃないわ」

「わるかった」

「まあいいけどね。ホームルームで先生にも言われたと思うけどなにか困ったことがあったら私に言って。できる範囲で手伝うから」

「ありがとう」

 

………真面目そうな子だ。でも肉まみれの施しを見て野菜を加えてくれるあたり優しいのだろう。このクラスもそうだが人に恵まれている。

 

「じゃあ食べもんも準備できたことだし今日の作戦会議するぞ」

「参加者は他にいるのか?」

「まぁ何人かには声かけたけどな。もしかしたらみんな部活でダメかもしれん」

「そうか」

 

いよいよ歓迎会の体を成さなくなって来ているような気がする……。

 

「ところで流行りのアイテムって?」

「よくぞ聞いてくれた!なぁ涼、理想の自分に簡単になれるとしたらどうする?」

 

理想の自分………?要領を得ない質問だ。

 

「まぁ、いいんじゃないか?」

「だよなー!それが叶うシロモノがうちの学校の図書室に眠ってるらしいんだよ」

「なるほど」

「『リソウの本』って俺らは呼んでる。実際に部活のレギュラーが決まった人もいるし、テストの成績が急に良くなった奴もいる。あとは好きなあの子と恋仲に……みたいな?」

 

恋仲……えらく古風な単語を使うな……。チャラチャラした軽い雰囲気の翔がそういった表現をすることに少し驚いた。

 

「自己啓発本の類か?」

「そーいうのは少しずつ変わっていくもんだろ?『リソウの本』は本当に一瞬で変身するんだよ」

「………やめときなよ」

「なんだよイインチョ。水差すなよなー」

「急に人が変わるなんて怖いじゃない。しかもしばらくの間昏睡状態に陥った人もいるっていうし」

 

雲行きが怪しくなってきたな。ノーリスクというわけにもいかないらしい。三輪は長い髪の先を触りながら不安そうに話を続ける。

 

「図書委員はもちろんだけど学校もそんな本を入荷したことはないって言うし。そもそもネットで調べてもどこの出版社も『リソウの本』なんて出してないのよ?得体が知れなさすぎるわ」

「く、詳しいんだな。もしかしてイインチョも探してたクチか?」

「………!そんなわけないじゃない!」

「落ち着け」

 

図星……なのだろう。三輪も理想の自分になるためにその本を探し、その過程で怖くなってやめた。自分達が探すのを止めようとしているのも本が危険だと思っているからだ。

 

「でも俺は探すぜ。ゼッテー見つける」

「翔はそんなに理想の自分になりたいのか?」

「………お前は違うっていうのか?」

「いや、すまない」

 

なんというか、そう。ちょっと必死すぎる気がする。普通、そこまでして眉唾もののアイテムを求めるだろうか?本当にあるかどうかの保証もないのに、まるでそれに縋るしか手段が無いような……。

 

「なら、私も行くわ」

「えぇ!?」

「無茶するな」

「別に無茶でも何でもないわ。朝宮君を案内するついでに噂の本を探す。どこにも問題点なんてないでしょ?」

「まぁ人数は多いにこしたことはねーし。じゃあ今日の放課後は図書室探索だ!」

 

昼休みの終わりを告げるチャイムがタイミングよく鳴り響く。しかし目の前には手付かずのウインナー……。急いで口の中にかきいれたが油で少し胸焼けしてしまった………。

 

放課後

図書室

 

噂の図書室はどこにでもあるようなごく普通の図書室だった。本当に特筆する点なんてどこにもない。しかし何故か人は一人もいなかった。図書委員の一人ぐらいはいてもいいものだが……まだ来ていないだけか?

 

「じゃあ早速探すぞ!」

「私はこっちの棚を探しておくね」

 

自分の案内はどこへやら、二人はそれぞれバラけて本を探し始めてしまった。しょうがないので自分も二人が探しているのとは別のエリアを探す。

………

………………

………………………

夕日ももう完全に沈もうとしている。おそらく図書室内の本は全て探しただろうが、目的のモノは見つからなかった。

 

「やっぱりねーのかな……」

「なんで翔はそこまでして『リソウの本』を探しているんだ?」

「ん………まぁ、いつか話すかもな」

「そうか」

「悪いな!付き合わせちまって。イインチョにも謝らなくちゃな。……て、イインチョは?」

 

そう言われると先程から姿が見えない。帰った様子もない。机に鞄を置きっぱなしにして帰るとは到底思えないし、そこまで広い訳ではないこの図書室で気付かれずに帰るなんてことは不可能だろう。

三輪を翔とともに探すが見つからない。その代わりに本棚の裏に妙な本が一冊落ちていた。

タイトルは………

『リソウの三輪 凛那』

 

「なぁ、これって……」

「まさか………」

 

翔と二人で恐る恐る本を捲る。次の瞬間、足元がおぼつかなくなり、目の前の景色が真っ暗になった。

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