4月11日 放課後
担任の
「朝宮くん、この学校にはもう慣れた?」
「ええ、皆よくしてくれているんで」
「そう、良かったわ。なら、そろそろ部活に入ってくれない?校則で義務付けられてるの」
そんなルールがあったのか。知らなかった。
「何か気になる部活は?前の学校では何か入っていたの?」
「……特には」
「そう。うちは文化部と運動部の兼部ができるの。内申点もちょっと上がるから兼部してる生徒も少なくはないわ」
「珍しいですね」
とは言いつつも、裏図書委員の活動もある。部活動に入るのは時間的拘束が厳しそうだ。
「月、水、金が運動部で火、木、土が文化部の活動指定日よ。今日は文化部が活動しているわ。試しに見に行ったら?」
「はい」
何か顔出しできる程度の楽な部活があればいいのだが。檜山先生に渡された部活一覧表、文化部の欄には吹奏楽部や美術部など様々な部活がある。
どの部活にしようか悩みながら歩いていると、曲がり角のところで人とぶつかってしまった。相手が持っていたカードの束が飛び散る。
慌てて拾い集めてぶつかってしまった相手にカードを返す。
女子生徒だった。自分に弾かれてしまい、尻餅をついてしまっている。
「すみません。大丈夫ですか?」
「え、えぇ。こちらこそぼーっとしてて」
「自分も不注意でした。カードはこれで全部?」
手を差し伸べて彼女を起こすと、カードの束を手渡す。申し訳ないことをした。
「あの、転校生……の人ですよね」
「あ、はぁ。そうですが」
「あの、私、同じクラスの」
失礼なことをしてしまった。まだ、クラスメイトの顔をしっかり覚えられていない。言われてみれば居たような気がする。転校してからずっと翔といたのも原因な気がする。
「申し訳ない。まだ、クラスメイトの顔を覚えることができていなくて」
「いえ、私も初めて話しますし、気にしないでください。自分でも印象に残りにくいタイプだと自覚してますし」
「改めて朝宮涼です。よろしく」
「………竜胆 しのです。よろしくお願いします」
竜胆しのさん。覚えた。
「朝宮君は放課後に何をしているんですか?」
「部活に入るように檜山先生に言われて、文化部を覗こうと」
「そうですか。どこを見に行くのかは決めたんですか?」
「いや、特には。竜胆さんは?部活か?」
「え、えっと、まぁ、そんなところです……」
急に竜胆さんは言い澱んでしまった。何かまずいことを聞いてしまったのだろうか?
「何部なんだ?差し支えなければ見学したいんだけど」
「えっと………部です」
「すまない。聞き取れなかった」
「お、オカルト同好会です」
オカルト同好会か。別にそんなに歯切れ悪く言う必要はないと思うのだが。
「調査対象に『リソウの本』は取り扱ってるか?」
「興味深くはあるんですが、私は占いとか、お呪いとかが好きで……」
そういえばカードの柄はタロットだったように思える。
「なぁ、入会してもいいか?『リソウの本』に興味があるから、部活動に出来るなら都合がいいんだが」
「え、えぇ!?あの、悪くはないんですけど、その、」
「じゃあ、よろしく頼む。早速部室に行こう」
「あの!え、えぇ!?」
………
………………
………………………
オカルト同好会の部室は2―3の教室だった。他の会員は居ないのだろうか。
「じゃあ、竜胆さん、これからよろしく」
「あ、はい。よろしくお願いします……朝宮君」
早速部活が決まって幸先がいいな。初日なので竜胆さんにタロット占いについていくつか説明してもらって活動は終わった。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
ベルベットルーム
「新たな縁は『星』のアルカナ」
「素晴らしいわ。私、星は好きよ」