ペルソナ6   作:似街楠理

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感想をくれた方ありがとうございます。とても励みになります。文章力に不安はありますが、楽しんでいただけるよう努力します。


第二話 4月6日 放課後(1)

4月6日 

放課後 

???

 

気がつくと見覚えのない奇妙な空間にいた。天井も床も緑一色なのだが壁にだけ大きく『目次』と書かれている。

たしか自分は学校の図書室にいて、三輪の名前がタイトルになっている本を発見して、それを開いたところで気を失った………。

 

「な、なんなんだここ!?」

「あ、翔か。無事で何よりだ」

「無事ではねーだろ!?学校はどこだよ!」

「落ち着け」

 

確かに意味がわからない場所だが、騒いだところで現状は何も変わらない。

 

「俺達は『リソウの本』らしきものを開いてここに飛ばされた」

「でもあれはイインチョの名前が……」

「そう。だから三輪もここにいる可能性が高い」

「なら探しに行かねーと!」

「そういうことだ」

 

あいにくここに彼女の姿は無い。しかしこんな訳のわからない場所にいたら心細いはずだ。一刻も早く見つけ出さないと。

 

「でも出口も何もねーぞ、ここ」

「それなんだが」

「なんだ?アイデアがあるのか?」

「俺達は今、本の中の世界にいるんじゃないか?」

「は?」

 

本を開いて意識を失い、壁に目次と書かれた部屋に飛ばされた。非現実的もいいところだが、ここは『リソウの本』の中にある世界と考えた方が納得できる。

 

「だから、多分これに触れてみたら……」

 

目次の字に試しに触れてみると新たに『第一章』の文字が浮かび上がってきた。やはりそうか。この場所は本の中の世界のスタート地点なんだ。三輪はこの先のどこかにいると思う。

 

「じゃあ行くぞ」

「お前、冷静すぎるだろ……」

 

同じ要領で今度は第一章の文字に触れる。すると部屋の壁が全て崩れ去り、一気に景色が広がった。そこにあったのは

 

「学校………なのか?」

「戻ってこれたわけでは無さそうだが」

 

確かに構造は日伝南高校によく似ている、と思う。今日一日しか過ごしていないのでなんとも言えないが翔も学校と認識しているようなので間違いないだろう。ただ、普段の学校と違いひどく暗い雰囲気だ。そしてやはりここも緑を基調としている。

 

「気味悪いな……」

「そうだな」

「なんか、こう、出てきそうっていうか」

 

今思えば見事なフラグ建設と回収だったと思う。悪趣味で不気味な仮面をつけた黒い獣が廊下の曲がり角からヌっと姿を現した。

 

「なぁ、これ、まずいよな?」

「聞くな」

《■■■■■■!!!》

 

獣はこちらを見た瞬間に鋭い爪を振りかざして襲い掛かってきた!間一髪で避けるものの直撃した壁は見事に抉られている。

 

「あーもう!夢なら覚めてくれ!!」

「現実逃避してる場合か?」

「お前は冷静すぎてコエーよ!!なんで無表情でいれるんだよ!?」

「生まれつきだ」

 

無表情だが内心では相当に焦っている。なにか武器になるようなモノは近くにないのか?

 

「警備員室はどこだ?」

「え?」

「警備員室なら不審者を取り押さえるための武器があるはずだろ!」

「あるにはあるけどここからは相当遠い!!それよりも……」

 

翔は走りながら廊下の隅にある何かを掴むとその中身を勢い良くぶちまけた。さらにオマケでその物体を怪物に投げつける。白い煙の向こうから鈍い音が聞こえた。

 

「消火器か、やるな」

「お褒めに預かりどーも!とりあえず教室に入れ、やり過ごすぞ!」

 

そのまま手近にある教室に飛び込み、鍵をかけて机を積み重ねる。その場しのぎにもならないだろうがやらないよりかはマシだろう。

 

「な、なんなんだよあのバケモンは」

「俺も分からない」

「ていうかイインチョは大丈夫なんだろうな?一人だとどうしようもないだろ、あんなの……」

「無事を祈るしかない」

 

《■■■■■!!》

 

廊下から叫び声とモノを破壊する音が聞こえてくる。まだまだ近くにいるな……。

ガタッ

 

「「!?」」

 

今、掃除用具入れのロッカーから物音がしたような……。

 

「おいおい、嘘だろ………」

 

ガタガタッ!!

 

間違いない。確実にあの中に何かいる。翔と目配せして各々椅子を振りかざす。怪物が出てきた瞬間に同時に殴りつけるために。

 

キィッ………

 

ゆっくりとロッカーが開き、その中から現れたのは……

 

「なんと狭く汚き場所だろうか。我の服が汚れてしまったではないか……。ムム?貴様ら、何者だ?」

 

人語を解するペンギン?だった。タキシードを着たペンギン、どこかで見たことがあるような………。

 

「ペンタゴンじゃねーか」

「そう、それだ」

 

ペンタゴン、日伝市のゆるキャラで街のどこにいても必ずと言っていいほど見かけるキャラだ。ちなみに日伝市にペンギン要素はない。ゆるキャラブームに乗っかった感がすごい。

 

「む、そこの軽そうなニンゲン、我のことを知ってるのか?」

「なんでこんな偉そうなんだよ………。軽そうって俺のことだよな?」

「そうじゃないか?」

「まぁ知ってますよー。他所では微妙キャラだけどここではそれなりに人気だしな」

 

らしい。オリジナルアニメまで動画サイトに投稿している力の入れようだったし、かなり認知度は高いのだろう。

 

「ふむ、ところで貴様らはなぜここにいる?ここはシャドウがうろついていてニンゲンが来てもいい場所ではないぞ」

「帰り方が分かんねーんだよ!」

「知り合いを探している」

「探し人か……」

 

ペンタゴンは手、というよりも羽をクチバシの下のところに当てて何やら少し考え込んだ。

 

「それでは我が貴様達を現実に帰す手伝いをしてやろう。ついでに探し人を見つける手伝いもな」

「いや、願ってもない申し出だけどよ」

「お前にメリットがない」

「フフフ、気にするな。どうやらここは我の知る場所ではないようだからな。散歩のついでだ」

 

どうやら腹に一物抱えているようだが、自分達よりもこの世界の勝手を知っているようだ。ここは一旦着いて行く方がいいだろう。

 

「ちなみになんだがその探し人は男か?女か?」

「え、あー、女子だけど?」

「よしっ!!すぐ行くぞ!!今すぐだ!!」

 

急にペンギンのテンションが変わった。な、なんだ?コイツ……。

 

「いや、ここの説明とか色々……」

「貴様らはレディをこんな場所に延々といさせる気か!?説明なんぞは我が道中でしてやる!!」

「妙なペンギンだ……」

 

ペンギンが威勢よくドアを開け放つ。

というよりも今はまだ外に怪物が………。

 

《■■■■■!!》

 

やはりまだいた!!

怪物は探していた自分達を見つけると先程よりも興奮した様子で襲い掛かってくる。

 

「無粋なシャドウめ………来いっ『キャプテン・フック』!!」

 

ペンギンが前に躍り出て、そう叫ぶとその体から青色の炎が吹き出てきた。炎の余波でこちらも少し後ろに押される。

 

「な、なんだこれ……」

「カッコイイな」

「ふ、見どころがあるな……フックのカッコよさが分かるとは」

 

海賊帽を目深にかぶった立派なガイゼル髭の男、その片手は義手になっており鋭い鉤爪が取り付けられていた。

 

「ちょうどいい機会だ。シャドウとペルソナについて教えてやろう」

「さっきから言ってるシャドウってなんなんだよ?あとペルソナってなんだ?」

「シャドウはそこのバケモノだ。外の世界の人間の影と言ってもいい。そしてペルソナは」

 

再び振るわれる、先程壁を破壊した爪を海賊帽の男は義手部分で受け止めて蹴り飛ばす。

 

「もう一人の自分である。チェックメイトだ、華麗に散れ……『フレイ』!!」

 

フックの鉤爪が砲身に変わったと思うとそこから青白い球体が発射される。怪物に着弾すると凄まじい熱を放ち、敵は塵すら残さずに消滅してしまった。

 

「フッ、他愛もないな」

「な、なんなんだよさっきから。意味分かんねー……」

「俺もだ」

 

突然繰り広げられた人知を超えた戦いに呆然とするしか無かった。

 

「これがペルソナ使いの戦いだ。この世界でシャドウに対抗するにはペルソナ使いになるしかない」

「その、ペルソナ?ってやつはどうやったら使えるようになるんだ?」

「そんなこと我が知るか」

「なんじゃそりゃ」

 

困惑したままの自分達をおいてペンギンはそのまま廊下を歩き出してしまった。

 

「ところでそのレディがいる場所の目星はついているのか?」

「……イインチョがいそうな場所……ねぇ」

「とりあえず俺達の教室に行ってみないか?」

「そうだな!そこにもしかしたら隠れてるかも!」

「では案内しろ」

 

案内役はそっちでは?と思わず言いそうになるが機嫌を損ねられても厄介なので飲み込むことにする。翔も全く同じことを思ったようだがグッと堪えていた。なんだか今日一日で彼との仲がすごく進んだ気がするな。

 

2-3

そこからは何故かシャドウに出会うこともなく、スムーズに自分達の教室に着いた。しかしなぜだろう?教室からはとても姦しい声が聞こえてくる……。

その声の中に聞き覚えのあるものも混じっている。

 

「な、い、イインチョ!?だよな?」

「イメチェンした?」

「あ、翔ピーと転入生じゃーん!オツカレーッス!」

「「「イェーイ!!」」」

 

教室には髪を染め、ケバくなった三輪が同じような見た目の派手な集団とお菓子を食べまくっていた。

 

「………お前たちの探し人は彼女か?確かに元の顔は麗しいのだろうが品性がなさそうだぞ」

「お前も大概失礼だな……てか、イインチョはこんなんじゃねーぞ!?どうなってんだ!?」

「えー、ナニコレ!?喋るペンギン!?ちょーエモいんですけど!」

「な、なにをするっ!?」

「なんかギャルっぽい喋り方も無理があるな……」

「見なかったことにしたい」

 

ペンギンを抱きしめて撫で回している三輪?を眺めながらなんとも言えない気持ちになる。普段と雰囲気が変わりすぎじゃないか?まぁ普段と言えるほど彼女のことを知っているわけではないが。

 

「なんかちょっと変だけど、おい、イインチョ!帰るぞ」

「えー、何言ってんのか分かんなーい。帰るも何もここが私の世界だしー!」

「やはりこの女、シャドウか!」

 

抱きかかえられたペンギンが激しく暴れて拘束から逃れる。

 

「三輪がシャドウ?」

「違う、さっきも言っただろう?シャドウは向こうの世界の人間の影でもあると。コイツは三輪というレディの影だ!しかもシュジンコウときている!」

 

急に専門用語が増えたな。主人公?………だから本のタイトルが『リソウの三輪 凛那』だったのか!ということは……

 

「これが三輪の理想の自分……」

「す、すげーな……」

「もー、アンタらチョームカつくんだけど。ここで死んじゃえ」

 

三輪シャドウがそう言うが早いか、取り巻きの連中が怪物化して襲い掛かってきた!

 

「下品とはいえレディに手を上げるのは心苦しいが……『キャプテン・フック』!」

《リンナに嫌がらせしてんジャネーヨ!!》

《ウチラのトモダチ傷つけるやつはブッコロス!!》

 

ペンギンのペルソナも善戦したのだが、多勢に無勢、あっという間に組み伏せられてしまった。そもそも自分達という足手まといを抱えている時点で不利だったのだ。

 

「む、無念……」

「おい、大丈夫か!?」

「ペンギンはカワイイしー、トモダチを殺すのはココロがイタムケドー、バイバーイ!」

「おい、これってもしかして絶体絶命ってやつなんじゃねーの……?オレ、まだ死にたくねーよ!」

 

自分だってそうだ。まだ死にたく………

 

『本当にそうか?』

 

?誰だ?どこから聞こえてくる?

 

『死を恐れる心は生物として当然だ。しかしオマエは本当に生に執着しているのか?』

 

生きたい……とは思っているはずだ。

 

『では生に何を求める?オマエの理想は何だ?』

 

理想………は無いのかもしれない。だから翔に理想の自分の話をされても実感が湧かなかった。自分についてすらどこか他人事のように感じていた。

 

『そんなオマエが死から逃れようというのか?』

 

ここで死んだら、自分の理想が無いままだ。それに、

 

『それに?』

 

友達を助けたい。

 

『フフフ、ハハハハ!今はそれで良かろう!!少しだけ力を貸してやる。それでは契約だ……』

 

『我は汝、理想の我………力を求めて我が名を叫べ!!』

 

「来いっ!『ピーター・パン』!!」

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