ペルソナ6   作:似街楠理

3 / 10
いつも読んでくださりありがとうございます。
今回は説明回です。矛盾してるなーと自分で思ったら随時変更しますがひとまず完成しました。少しわかりにくいと思いますが楽しんでいただければ嬉しいです。


第三話 4月6日 放課後(2)

「これが……涼のペルソナ………?」

「凄まじい力だ……」

 

三角帽子を深く被り、鳥のクチバシのような仮面をつけた青年が風を巻き起こしながら姿を現す。

彼がもう一人の自分……、ペルソナ……。力の覚醒による錯覚なのか自分というものをより理解できたような、存在が確立されたかのような安心感がある。

 

「………これなら……いけるっ!『ピーター・パン』!」

 

さすがもう一人の自分だ。イメージをするとその通りに動いてくれる。先程まで恐怖の対象でしか無かったシャドウの動きも目を逸らすことなく見ることができる。

ピーター・パンが起こす暴風はシャドウ達の体を浮かせ、そのまま地面に叩きつける。その衝撃に怯んだ隙に物理攻撃を叩き込んだ。

 

《マジ……ありえねーんだけど……》

《逆にウケる………》

 

シャドウは姿を保てなくなり、そのまま空気に溶けていってしまった。それと同時にペルソナも姿を消す。凄まじい疲弊感だ。自分の生命力を全て使い切ってしまったような、とにかく立つことすらままならない……。

 

「だ、大丈夫かよ涼!?」

「無理もないな。ペルソナとの契約は体力を使う上にそのまま戦闘まで行ったのだ。しばらくは動けんぞ」

「だが三輪がそこに……」

「ヤツはもう逃げた。このエリアには居まい」

 

確かにシャドウ三輪は姿を消していた。自分が取り巻きのシャドウと戦っている間にまんまと逃げおおせたのだろう。

 

「今日は引き上げた方がいい。レディ三輪を助けることは確かに重要だが、我らが死んでは元も子もあるまい」

 

どうするべきか、ここはペンギンの言うとおりにしてくべきなのか。

 

「でもイインチョがシャドウに襲われてたらひとたまりもねーだろ?」

「それは心配するな。レディのシャドウがシュジンコウならば問題ない。他に質問があるなら答えてやるからとりあえず『モクジ』を探すぞ。このままここに留まればまたいつシャドウに襲われるかも分からん」

 

『モクジ』や『シュジンコウ』、いかにもって感じだ。おそらくモクジは自分達が最初にいた空間だろう。大きく目次と書いていたし。

 

「大丈夫か?涼。肩貸してやるよ」

「すまない」

 

この間に少し休むことは出来たのだが、やはり歩けるほどの体力は回復しなかった。どうしようもない疲労感で体の重さが2倍になったようだ。

 

「ここからの戦闘は最小限だな。物陰に隠れてシャドウをやり過ごしていくぞ」

「クソ、俺もペルソナが使えれば……」

「無い物ねだりをしてもしょうがないだろう?とにかく行くぞ」

 

ペンギンはそう言うとこちらを振り向くことなく先へと進んでいく。翔に支えられながら自分達もその後を追いかけた。その後は何度かシャドウを見かけたが、戦闘にはならず隠れてやり過ごしたり、別の道を進んだりで校内を歩き回った。

 

「む、見つけたぞ。この先がモクジだ」

「図書室じゃん」

「図書室だな」

 

たどり着いたのは図書室だった。本の中の世界の目次が図書室、よくできた話だ。

扉を開ける。普段は本棚が多く置かれている場所だがそういったものは一切ない、壁に目次とだけ書かれた緑一色の部屋だった。

 

「やはりな。ここは現実と異世界の間に位置する場所だ。だからシャドウは現れない」

「てか、ここが異世界ってのはなんとなく分かるよ。あんなバケモノやペルソナを見ちまったら納得するしかねーし」

「そうか、ならばどこから話したものか……。まずこのセカイだが我は単純に『本のセカイ』と呼んでいる。ここはいわばシャドウのためのセカイで、人間は普通来れないし、認識することもない。逆もまた然り、だ」

 

シャドウと人間が接触することは本来ありえないということか。

 

「しかし最近交わらないはずの2つの世界が急接近している。謎の綻びから人間がこちらに、シャドウはあちらに行くようになってしまった」

「その綻びってまさか……」

「『リソウの本』じゃないか?」

「心当たりがあるようだな。今回のケースで当てはめるとレディ三輪がこちらに来るとシャドウは彼女が理想と思っている自分に姿を変える」

 

それがあのケバケバしい三輪ということか。

 

「そしてシャドウは彼女を元にしたセカイを一から形成する。ここで形成されたセカイを『モノガタリ』とする 。ここまでは分かるよな?」

「なぁ、分かるか?涼」

「最後まで聞こう」

「お、おう……」

「シャドウは形成したモノガタリのシュジンコウとしてレディの理想を演じ続ける。先程までのエリアはその『第一章』だ」

 

難しい話だな……。なんとか理解できるが気を抜くと一瞬で何もわからなくなりそうだ。

 

「なんでシャドウは理想を演じるんだ?」

「理想を演じきって元の人格に囁くのだよ。『ワタシの方が上手くやれる。ワタシが代わってやろうか?』と」

「………おい、それってまさか」

「元の人格がそれに同意してしまうとシャドウは現実世界に出ていく。そして元の人格は消滅してシャドウになる」

「ふざけんなよ!じゃあ噂の理想の自分って……」

「シャドウだったのか……」

 

恐ろしい話だ。自分が消えてなくなるのに誰も気付かない。それどころか全く別の存在に居場所を奪われるとは。死ぬよりも恐怖かもしれない……。

 

「今すぐに助けねーとマズイじゃねーか!このままだとあいつがシャドウになっちまう!!」

「落ち着け、今すぐに代わるというわけではない!言っただろう?理想を演じきる必要があるんだ。逆に言えば演じきる前にシャドウを倒してしまえば助けることが出来るはずだ。恐らくレディはモノガタリの最後、『最終章』にいる。そして先程までシャドウが演じていたのは『第一章』、まだ時間はある」

 

余裕はないが時間が全く無い訳でもなさそうだ。切羽詰まっているもののここで焦って突貫するほうが危険かもしれない。

 

「最終章までどれほどかかる?」

「今日、モノガタリに我々が介入したことで少し進行は遅れているだろうから長く見積もれば2週間、短くても9日はある」

「その間イインチョはどうなんだ?」

「分からん。そもそも我は現実世界の存在は知っているが行ったことはない」

 

普通に考えるとこのペンギンもシャドウのような存在ではないのか?必ずしも人間だけがペルソナ使いになれるわけではないのだろうか。

 

「とりあえず今日のところは帰れ」

「………そうしようか」

「と言うよりもそもそもどうやって帰るんだ?」

 

そう言えばそうだ。色々あって忘れていたが自分達は迷子だった。

 

「なぁペンギン。分かるか?」

「知らん。なぜ我が行ったこともない場所への帰り方を知っている?」

 

確かにそうだ。しかしまいったな。方法を考えながらなんとなくポケットに手を突っ込むと何か入っていることに今更ながら気づいた。

 

「………栞?」

 

奇妙な絵が書かれた栞が入っていた。材質は分からないがかなり固く、軽く指で弾いてみると、指の方にジンジンと痛みがやってくる。

 

「これは?」

「いや、俺に聞かれても分かんねーよ。ペンギン!なんか知ってるか?」

「知らん」

「さっきから知らねーこと多すぎないか?」

「が、栞だろう?物語を読むのを中断するときに使うモノだ。もしかしたらそれを使えば帰れるかもしれんぞ」

 

しかしどうやって使えばいいのだろうか?色々考えてみよう。

 

「帰りたい!」

 

栞を天高く掲げてそう叫んで見る。が、帰れない。

 

「………何やってんだ突然」

「お前は見どころがあると思っていたが思い違いだったようだ……」

 

散々な評価を受けてしまった……。違う方法を試そう。

 

「ハイどーん!」

 

栞を床に叩きつけてみる。が、帰れない。

 

「お前、大丈夫か……?」

 

翔に心配されてしまった。他にないか?

たしか最初ここに来たとき、自分は目次の文字に触れた。ならば帰りも………。栞を手に持った状態で目次の字に触れてみる。すると最初と同じように『第一章』の文字が浮かび上がり、その隣に『帰還』の文字が新たに浮かび上がってきた。

 

「おお!やるじゃねーか!これで帰れるな!」

「良かったな。では我はここで失礼する」

「一緒に来ないのか?」

「…………まぁ、今はいいさ。我はまだ探索を続ける。足手まといもいなくなることだしな」

「悪かったな足手まといでよ!………でもありがとな。お前がいなけりゃ俺達は死んでたよ」

「助かったよ」

「フフフ………まさか人間に感謝される時が来るとはな。リョウとショウだったか?また会うことがあればいいな」

 

ペンギンはそう言うと姿を消した。最後まで正体の分からない存在だったが悪いやつでは無かったのだろう。

 

「変な奴だったな。エラソーだったし」

「でも良い奴だった……だろ?」

「ヘヘ、まぁな!帰ろーぜ涼。英気を養って早くイインチョを助けねーと!」

「ああ」

 

二人で『帰還』の文字に触れる。すると行きと同じように緑の壁が崩れ去り、今度は図書室が現れた。先程とは違い緑色ではない普通の風景である。しかしあたりはもうすっかり暗くなってしまった。

 

「………ようやく帰ってこれたか。て、おい、涼、どうした、………!…………!!……………!!!」

 

何か翔が叫んでいる。が、意識が遠のいてよく聞こえない………。

 

………

………………

………………………

 

「ようこそ……我がベルベットルームへ……申し遅れましたな。ワタクシの名はイゴール」

 

意識が戻ると自分は青色を基調とした劇場の客席、その最前列にたった一人で座っていた。舞台上には席についた長い鼻の男とその隣に佇む銀色の髪の女性がこちらを見下ろしている。

 

「この部屋……夢と現実、精神と物質の狭間の場所……ベルベットルームの主をしております……」

「ワタシはその秘書兼このベルベットルームの主演女優を務めますアルテイシアと申します。以後お見知りおきを………」

 

奇妙な二人組だ……。思えば今日は奇妙な経験しかしていない……。

 

「まずは貴方様の新たな出会いと力の発芽に祝福を贈らせていただきます……」

「『運命とは、もっとも相応しい場所へと貴方の魂を導くのだ』!!シェイクスピアの言葉でございます。これから旅路を進んでいくお客様に相応しいかと……」

 

イゴールと名乗る男は血走った大きな目とは逆に非常に落ち着いた物腰でこちらに語りかけてきて、アルテイシアを名乗る女は逆に芝居がかった口調で語りかけてくる。

 

「しかし貴方様の力はまだ目覚めたばかり……これからより大きく育っていくでしょう……」

「ワタシ共はそのお手伝いをさせていただく者でございます」

「目覚めた力は『愚者』、全ての始まりであるアルカナ……」

「名残惜しいですが本日はそろそろお時間です……最後にコレを……」

 

虚空に突然鍵が現れて、自分の掌にゆっくりと落ちてくる。

 

「それはこのベルベットルームの鍵でございます。お客様はそれを使うことでここに来ることができます……」

「それでは良き物語を………」

 

そのセリフはどこかで聞いたような気がする………。

再び意識が遠のいて行ってしまう………。思い出せない………。

………

………………

………………………




ペルソナ:ピーター・パン
レベル 3
力 2
魔 8
耐 1
速 5
運 3
疾風耐性 火炎弱点
スキル
・ガル・突撃

今回の戦闘では覚醒補正でガルはマハガルーラぐらい、突撃は猛突進ぐらいに強化されてます。その分疲労度も高いです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。