こんな時期ですが、自宅での生活の楽しみの一つになっていたらとても嬉しいです。
これからもよろしくお願いします……。
「ところでなんだけどさ」
三輪の『モノガタリ』内を探索している最中、翔がおずおずといった調子で手を挙げる。
「どうしたんだ?」
「何か質問か?答えられることなら答えてやるぞ」
「いや、ペンタゴン……なげーな。ペンタでいいか。ペンタがこの『モノガタリ』を探索してる理由って何なんだ?」
「ペ、ペンタ……?まぁ、いいが……」
なるほど。確かに気になる。せっかく協力関係を結んだところだし、彼の目的についても知っておきたいところだ。
翔と二人でタキシード姿のペンぎんを見つめると彼は少し考え込んでやがてすべて面を上げた。
「実はなんだが、我はつい最近生まれたシャドウなのだ」
ペンタがシャドウ……。予想はしていたが彼は誰のシャドウなのだろう。そしてシャドウがペルソナをなぜ使える?彼の話を聞く限りシャドウとペルソナは同質のようなものに思えるが。
「だがどうにも我には記憶が無い。もちろん誰のシャドウかも分からん。どうしたものかと途方に暮れていたら『モノガタリ』をシャドウが形成し始めた」
「ふむ」
「じゃあお前もそこまで『モノガタリ』について理解してるわけじゃないんだよな」
「まぁな。しかし『モノガタリ』にこそ我の記憶の鍵があると思ってな。いくつかの『モノガタリ』を巡っているうちにある程度の仕組みを理解した」
失われた記憶を探して『モノガタリ』を渡り歩いているところで三輪の『モノガタリ』に迷い込んだ自分たちと出会ったのか。
「そろそろ一人で探索するにも限界だったからな。そんな時にそれなりに使い物になりそうなお前たちがいたというわけだ」
「これも日頃の行いが良いからだな」と一人得意げに頷くペンタ。シャドウから金銭を巻き上げようとしたり、三輪のシャドウに品性が無いと言ったりと行いが良いとは言い難いと思うのだが……。
「事情は分かった。それより、この奥の部屋からまた声が聞こえないか?」
もしかしたらまた三輪のシャドウがいるのかもしれない。薄暗い緑の廊下の奥の部屋から明かりが漏れている。
「間違いなくシャドウがいるだろうな。見つからないように中の様子を確認しよう」
ペンタが先行し、扉の手前で身を潜める。俺達もそれに倣って陰から中の様子を覗いてみた。
部屋の中には女性が二人いた。何やら片方の女性がもう片方に説教をしているようだが……?
「凛那……貴女この間の成績、あれは一体どういうことなの?」
「ごめんなさい、お母さん」
「はぁ……勉強が貴女の取り柄でしょう?それぐらいは頑張りなさいよ」
あれは三輪と、その母親……?厳しい言葉をかけられているようだが。それに三輪は先日のシャドウのような派手な見た目ではなく、眼鏡をかけた普段通りの彼女だ。
「あれは三輪なのか?それともシャドウなのか?」
「待て、様子がおかしいぞ」
ペンタが言った次の瞬間、三輪の姿は再び派手でケバいものとなり、母親の姿も少し砕けた雰囲気のものとなった。
「ねぇママー、今度また一緒にショッピング行こうよ。タピオカできたんだって」
「ホントー?じゃあ週末にでも行きましょうか」
先程までのギスギスした空気から一転し、仲睦まじく会話を交わす母娘。これが三輪の理想……。また一つ『モノガタリ』が進んだ、ということか?
「おい、これって『モノガタリ』っつーのが進んでるってことだろ?」
「あ、おい、ショウ!勝手に飛び出すな」
「危ないぞ」
「うるせぇ!ペルソナなんか使えなくてもなぁ!俺は……俺は!」
翔が静止を振り切って部屋に飛び出していってしまう。そのまま三輪のシャドウに殴りかかろうとしたが、母親らしき女性に取り押さえられる。
《ワタシ、わ、ワタシのムスメに何するのよォォぉお!?》
母親の体が異形の姿へと変わる。翔を押さえつけていた腕は巨大な鉤爪となり、暴れる彼を容易く制している。
「翔!」
「……っ!馬鹿め!」
慌てて自分たちも飛び出す。
「翔と転校生……アンタらまた来たんだ。もーしつこいー!死ねっシネっ!」
押さえつけられた翔を助けるために前に出ようとするが地面からシャドウがあふれ出て、行く手を阻まれる。
「くそっ、邪魔だ!来いっ『ピーター・パン』」
「蹴散らせっ『キャプテン・フック』!」
ペルソナを呼び出して応戦するものの、シャドウが放つ火炎による高熱で風を上手く放てない。さらに相性が悪いのだろう、こちらの動きが制限される。
「アンタ達はそこで見てなよ、とりあえず翔を殺すからサァ!」
《リ、リンナァ、リンナの為にぃィ!!》
「翔!!」
翔side
あー、やっちまった。本当に馬鹿だな。俺は。イインチョがピンチってなったときに俺が助けれたらなって思っちまった。でも、俺は無力で、転校生の翔がペルソナなんて力に目覚めて、なんで俺じゃないんだって。
一人でイライラして、アイツは、涼は俺を頼ってくれてたのになぁ。
多分俺はこのまま死ぬんだろう。
神奈木 翔として何も為さず、神奈木家の息子として、死ぬんだろう。取るに足らないコンプレックスを抱えたまま。
くだらねえ。
『不様だな』
あ?頭に妙な声が響く。どこか自分の声に似ている。
『自分を見てもらえないと孤独を気取るその姿……。我が事ながら見るに耐えぬ』
そうだな。そのせいで俺は死ぬんだよ。
「翔!!」
涼の声が聞こえる。アイツは、そうだ。イインチョとは俺とは違ってアイツは付き合いが浅い。なのにアイツは命を懸けている。今も、今までも会って間もない誰かのために涼は戦っている。
………クソッ。カッコイイじゃねぇか……!
『理想を求めながら、理想を持たず彷徨う姿、まさに道化そのもの』
あぁ、そうだな!俺は神奈木の息子以外で見てもらいたかった!具体的にどうなりたいかなんて知ったこっちゃなかった!
『だが、今はもう違うだろう?』
そうだな。俺はせめてあいつの友達として恥ずかしくない男になりたい。
『ならば力を貸してやろう。契約だ』
あぁ、契約だ。
『我は汝、汝は我……今こそ愚かな自分との決別の時だ。その証明に我が名を叫べ』
「来やがれ、『ハーメルン』っ!!」
主人公side
「来やがれ、『ハーメルン』っ!!」
翔が叫ぶと青い炎が吹き出して、怪物も吹っ飛ばされる。そして姿を現したのは、笛を担いだ長身の男。その周辺には小さい人影のようなものが蠢いている。
「涼!悪かった!目が覚めたぜ……。俺は大丈夫だ!そっちは任せた!」
「………あぁ!」
翔との絆を感じる。
そうこうしている内に自分の目の前のシャドウが再び火炎を吐き出してきた。だが、確信があった。今の自分にはまたもう一つの力が芽生えていると。
「ペルソナっ!!」
「なっ!?」
姿を見せたのはピーター・パンとはまた違うペルソナ。
「『ジャックランタン』!」
「違うペルソナを操る……だと?これがリョウの力なのか!」
ジャックランタンは放たれた火炎を吸収する。攻撃が無効化されたことでシャドウにも大きな隙が生まれた。
「ペンタ!」
「あ、あぁ!『キャプテン・フック』!!」
ペンタのペルソナの砲撃がシャドウを消し飛ばす。黒煙が晴れるとその向こう側では翔のペルソナが母親シャドウを倒し切ったところだった。
「三輪のシャドウは、もう消えたか」
「しかし、ショウもペルソナに目覚め、もう限界だろう。一旦帰るぞ」
「へへ、そうしてもらえると助かる……」
フラフラの翔に肩を貸す。今度は立場が変わってしまったな。
「なぁ、涼」
「なんだ?」
「色々すまなかった。あと、ありがとうな」
「何がだ?」
「へへ、なんでもねぇよ!」
初めて二人で心から笑えたような気がした。
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ベルベットルーム
「新たに結ばれた縁は『魔術師』のアルカナ。さらにまた一つ力に目覚めたご様子……」
「お客様の素晴らしき旅路に祝福を。そしてこれから来るであろう災厄に打ち勝つ力を……」
ペルソナ:ハーメルン
レベル 7
力 6
魔 10
耐 5
速 5
運 12
念動無効 電撃弱点
スキル
・サイ・マリンカリン
翔のペルソナを出すタイミングは結構悩みました。翔の『モノガタリ』を出そうかも悩んでいたのですが、思い切って出しました。