漫画の主人公になるのは妄想の中だけでいい。   作:ロール

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今回で黒曜編は決着です。実質前回で終わりと言えなくもないですが。


決着とその次

先に動いたのは骸だった。ドス黒い闘気を撒き散らし、三叉槍を綱吉に叩き込む。

驚いたのは、綱吉がそれに足を止めて応じたことだった。

 

先ほどの瞬間移動じみた高速機動を目の当たりにしていた骸は、それを誘発して手の内を暴くつもりだったのだが……打ち合ってくれるなら、それはそれでいい。

 

「クフフ、見えますかこの圧倒的なオーラの差が!ちっぽけな貴方のそれとは桁違いだ!」

 

切っ先がかするだけで勝負は決まる。そんな圧倒的に骸に有利な打ち合いを、しかし綱吉は何合も防ぐ。

避け、いなし、逸らし、その全てを捌く。現れているのは明らかな技量の差だ。

 

それも初めは槍を捌くのに細心の注意を払っていたのに、徐々に余裕を増していくのだ。

骸が焦りを覚えるのも当たり前だった。

 

「くっ、ちょこまかと!」

 

少し力を込め、その分雑に振り下ろした一撃。綱吉は見逃さなかった。

 

「悪いな。こう(・・)なったときの準備はずっと前からしてきたんだ」

 

“死ぬ気の炎”の推進力を利用した、超高速機動。目にも留まらぬ速度で骸の背後を取った綱吉は、隙を晒すその首筋に手刀を叩き込んだ。

 

「うッ……」

 

骸は意識を刈り取られ、崩れ落ちる。撒き散らされていたドス黒いオーラが消えていった。

 

「——さあ、帰ろうか」

 

綱吉の勝利だった。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

その後、意識を失った骸たちは復讐者(ヴィンディチェ)に連れていかれた。その後再び脱獄を試みることになるのだろうが、その先は綱吉の関わるところではない。

恐るべき敵であり、未来の霧の守護者である骸を、綱吉は複雑な気持ちで見送った。

 

同じく気を失った仲間たちは、徐々に目を覚ましていった。

最初に目覚めた恭弥は、身体を起こして状況を悟ると、綱吉の手を振り払いすぐさま黒曜ランドを去っていった。足取りはふらついていたが、それ以上無理に引き止めるのも恐ろしい。

 

隼人と武は、話を聞くと悔しそうに俯いていた。幻術にしてやられ、骸の憑依を許し、綱吉に矛先を向けたのだ。

それが避けようのないことだったとしても、己の未熟さを責めずにはいられない。二人はそういう人間だった。

 

ランチアは、骸から解放されて晴れやかな顔だった。この後はかつて殺めてしまった者の遺族を巡り贖罪の旅をするのだという。綱吉に感謝を述べ、足取り軽く去っていった。

 

黒曜の生徒による襲撃事件は解決され、並中にも徐々に平穏が戻っていった。被害にあった生徒たちも次々と復帰していき、やがて事件のことは語られなくなっていく。

 

そうして綱吉はというと。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「精が出るな」

「リボーン」

 

並盛町の郊外。人目のない場所で、綱吉は一人修行していた。

 

「あんまり根を詰めんなよ。怪我したら何の意味もねーぞ」

「分かってるよ。でも、やらなきゃいけないことがたくさんあるんだ」

 

綱吉は手をギュッと握りしめ、呟く。

 

今回の戦いで得た“Xグローブ”の習熟。空中機動の訓練。自力での“超死ぬ気モード”の深度の向上。

そして何より、“死ぬ気の零地点突破”の習得。

 

やることは山積みだった。

 

「身体は大丈夫なのか?」

「ああ、まだちょっと筋肉痛が残ってるけど」

 

原作では、初めて“超死ぬ気モード”になった後強烈な筋肉痛に襲われていた「綱吉」。

こちらの綱吉はその前から頻繁に擬似“超死ぬ気”になっていたし、身体も鍛えていたからそこまでの負担はなかった。

 

あの時に到達した境地。そこを目指して、だんだんと深度は増しているが……未だ同じ場所には辿り着けていない。

 

「今回のことで痛感したよ、リボーン。俺はボスの器じゃないってさ」

 

綱吉は呟く。

 

「俺はまだ、絶望的な相手に立ち向かっていけるほどの度胸はない。今回だって、リボーンに発破を掛けられなきゃ立ち上がれなかった場面がいくつもあった」

「……まーな」

「だから、俺は強くなることにした。どんな敵も圧倒できるくらいに。それできっと、仲間を守れる」

 

今後襲い来る敵。XANXUS、そして白蘭だ。

極論だが、白蘭すらパンチ一発で倒せるようになったら怖くはない。綱吉が目指すのはそういう場所だ。

 

リボーンは「そうか」と一言呟いた。

 

「お前がそれを目指すってんなら、オレはそこに導いてやる。それがオレの仕事だからな」

 

ふとリボーンの方を向いた綱吉は、彼の嗜虐的な笑みに身が凍った。

 

「厳しくやるぞ」

「……おう、頼む」

 

綱吉は己の決断を少しばかり後悔した。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

イタリアの一角に、二人の男がいた。いや、片方は男というより赤ん坊という方が適切だろうか。

しかし赤ん坊を侮るものはいない。なぜなら、彼がマフィアで高名な“呪われた赤ん坊”、その一人なのだから。

 

「おい家光。本当にお前の息子にリングを託してよかったのか、コラ」

「あん?お前もリボーンからの報告書は読んでるだろ?コロネロ」

「だがよ、あっちは実戦経験がほとんどない中学生なんだろ?一方の敵は百戦錬磨の化け物ぞろいだぜ。勝ち目はあんのか、コラ」

「お、お前さては最新の報告書を読んでないな?」

 

家光はたばこの煙を吐き出し、嬉しそうに笑う。

 

「ツナのやつ、段違いに強くなったそうだ。跳ね馬の件は知ってるだろ?」

「同じことが起きたのか。となると強くなったってのは分かるが……それでも相手はあのヴァリアーだぞ、コラ」

「あのリボーンが太鼓判を押したんだ。そうでなきゃ俺も迷ったさ」

「なるほどな」

 

家光の自信の源を知って、コロネロも納得する。かの殺し屋の目に間違いはない。

 

「コロネロ、お前にも日本に飛んでもらうぞ」

「他ならぬボンゴレの非常事態だからな。オレも手を貸すぜ」

「ああ。俺はもう少し九代目からの返事を待ってみる」

 

神の采配と謳われた九代目の急変に、コロネロも顔を顰める。

 

「あの九代目がこんなことをするとはな」

「それ以上は言うな、コロネロ。きっと何か理由があるはずだ」

 

家光はそう呟く。それはまるで、自分に言い聞かせるように。

 

「お前もなるべく急げよ、家光」

「ああ、分かってる。頼んだぞ」

 

コロネロは手を挙げて応え、その場を去っていく。

それを見送って、家光は一服して大きく煙を吐いた。

 

(一体何が起こっているのか……何を企んでいる、XANXUS)

 

煙は闇に消える。家光の悩みは晴れない。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「はぁ、はぁ……」

 

そこは並盛町から少し離れた場所。一人の少年が、懸命に走っていた。

 

「何としても、これを、あの人のところへ……!」

 

追っ手は強く、少年はかろうじて逃げるので精一杯。しかしそれも限界が近かった。

それでも少年は走る。命を賭けても、これを彼に届けなければならないから。

 

——次の戦いは、近い。




というわけでリング争奪編に突入するわけですが、展開に悩み中なので遅くなると思います。
強化しすぎなんだよなあ。
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