漫画の主人公になるのは妄想の中だけでいい。 作:ロール
日刊上位の方に入って喜びの舞更新。
数日は平和だった。
綱吉も元は原作の愛読者だったから、リボーンが次々と「綱吉」に試練を与えていたことは知っている。
だからこそ身構え、警戒し。
それが薄れた4日後、変化が訪れた。
「転校生を紹介する」
教師の言葉とともに教室に入ってきたのは、銀髪の不良イケメン。間違いない。
「えー、今日から転校してきた、獄寺だ」
嵐の守護者の登場だ。
「じゃあ、自己紹介を」
その言葉に反応する事なく、鋭い視線は教室を見渡し、綱吉で止まった。そのままにじり寄る。
「お前が沢田綱吉って奴か」
「そうだけど?」
頷いた瞬間、視線に殺気が乗る。だが、日頃恭弥の殺気を真っ向から受け止めている綱吉にとって、それは動揺するほどのものではなかった。
正面から睨み返すと、
「……チッ」
舌打ちと共に空いた席へ移動する。
「あの沢田にガンつけるなんて……」
「あの転校生、死んだぞ……」
周囲の囁き声が耳に入る。綱吉は自分の評価が花の言う通りだったと知りこめかみを押さえた。
◇ ◇ ◇
「で?どういうことなんだ」
昼休み。リボーンに呼び出された綱吉は校舎裏に来ていた。
そこには不機嫌全開で睨みつけてくる隼人と、相変わらず表情の読めないリボーン。
「マフィアのボスとして、お前は自分のファミリーを集めなきゃなんねェ」
「ファミリー、ねえ。何人か心当たりはあるけど?」
「そいつらは元から交流があるってだけだろ。ボスたるもの、力でねじ伏せて従える必要もあるんだぞ」
「はあ」
対する隼人は、既に臨戦態勢で綱吉を睨んでいる。
「リボーンさん。こいつをやったら、俺がボンゴレ十代目に内定ってのは本当なんでしょうね」
「ああ」
そんなわけがない。
しかしボンゴレの血筋を引いていなければリングに拒まれるというのは、XANXASですら知らなかったことだ。隼人が知らないのも無理はないだろう。
綱吉は溜息を吐いた。
「どうせやらなきゃいけないんだろ。じゃあ、とっとと済ませようか」
“
額に灯る“死ぬ気の炎”に、放たれた威圧感に、隼人は一瞬気圧される。
「くそ、腐ってもボンゴレ十代目候補か。だが素手で俺に勝とうなんて無理な話だぜ!」
どこからともなく取り出されたダイナマイト。
「それがお前の武器か」
「“人間爆撃機”って名前で有名なマフィアだぞ。油断するとドカンだ」
「ハッ、油断しなくても一瞬で沈めてやるぜ。果てな!」
放られたダイナマイトは、綺麗な放物線を描いて宙を舞い、そしてぼんやりとそれを眺める綱吉に直撃した。
轟音と共にダイナマイトが爆ぜ、煙が舞う。
「直撃だな」
「は?」
まさか一撃で終わるとは思ってもみなかった隼人は、思わず口をあんぐりと開ける。
「……へ、へへ。結局は見掛け倒しの雑魚じゃねえか。ほら、リボーンさん。約束通り俺がボンゴレ十代目に——」
「——それは早計だな。戦果確認はちゃんとすべきだよ」
「なっ!?」
爆煙が晴れ。現れた綱吉はいくらか傷を負っていたものの、戦いに支障あるほどのダメージはなさそうだった。
「思ったより痛かったけど……個々のダメージは雲雀さんの蹴りくらいか」
綱吉は制服を払いながら、こともなげにそう言う。
「馬鹿な、直撃したはずじゃ!?」
「特別頑丈な人種も存在するってだけの話だよ」
何のこともない、ただ“死ぬ気の炎”で防御しただけの話だ。
ただダイナマイトは打撃とは異なり攻撃範囲が広く、“炎”を集中させることはできない。その分も踏まえて「恭弥の蹴りと同等のダメージ」と表現したわけだが。
しかしプライドを持ってダイナマイトを使う隼人にとって、それが効かないというのは大きな衝撃だった。
「くそっ、ならこれだ。2倍ボム!」
取り出したダイナマイトの量は先ほどの倍。流石にこれを直撃でもらうと綱吉も少なくないダメージを負う。しかし。
「ダイナマイトが増えるほど扱いは難しくなり、動きは遅くなる。鈍重な大技をもらってやるほど優しくないよ」
ダイナマイトを放り投げる隙に、綱吉は距離を詰める。2倍ボムが背後で爆発する。
もう拳の間合いだ。次のダイナマイトは間に合わない。しかし隼人はニヤリと笑った。
「へっ、掛かったな!」
綱吉に飛びかかる隼人。その両手には大量のボム。
綱吉の顔色が変わる。
「この距離なら投げる必要もねえ。これなら食らうだろ。3倍ボム!」
「おい馬鹿やめろ!」
——爆音。
隼人の抱えた3倍ボムは、二人もろとも爆発し、その身に大きなダメージを——。
「な、なんでだよ……!?」
——与えていなかった。
「……ったく、馬鹿じゃないのか?」
爆煙の晴れた先には、目を見開き茫然とする隼人。そして両手を真っ黒に焦がした綱吉の姿があった。
「なんで、俺を庇って……?」
「あのままだと俺はともかくお前は死にかねなかった。だからどっちも生かすようにしただけだよ」
平然とする綱吉だが、別にダメージがないわけではない。見た目通り、両手と胸に甚大な火傷を負っていた。
2倍ボムですらダメージを受ける、と言っていたところに3倍ボムを、しかも抱え込む形だったから至近距離で受けたのだ。いくら防御に“炎”を回しても足りないのは当然のことだった。
自分を庇い傷を負ったその姿を見て、隼人は感銘を受けたようだった。
ガバリ、とその場に土下座し額を地面に擦り付ける。
「敵をも庇うその器の大きさ。不肖獄寺隼人、感服しました!十代目に一生ついていきます!」
「……ああ、うん。分かったから立って」
綱吉はその場にひれ伏す隼人を立たせようと動き、顔を顰めた。
「っつ……痛えな。リボーン、手当てできないか?」
「偉そうに言うんじゃねェ。ったく、仕方ねーな。獄寺」
「は、はい!」
「保健室に行って包帯と氷嚢とってこい」
「はい!すぐに取ってきます!」
脱兎の如く駆けていく隼人。それを見送り、リボーンは綱吉に目を向けた。
「おいツナ、あれは狙ったことなのか?」
「はは、そこまで咄嗟に頭が回るほど俺は賢くない。ただ、仲間は守んなきゃって思ったら勝手に動いてたんだ。それだけだよ」
「そうか」
いくら睨んでこようとも、攻撃してこようとも、綱吉にとって獄寺隼人はボンゴレ嵐の守護者なのだ。守らない、という選択肢が存在しない。
「とにかく、よくやったじゃねーか。マフィアのボスは時として自らを犠牲にしても部下を守んなきゃなんねェ。だからこそ部下はボスについていくんだ。自分の命すら預けてな」
「そう、だな。背負わなきゃなんないんだよな。……うん、分かってる」
そう呟く綱吉の姿に何を見たのか、リボーンは目を細めた。
「とにかく」
「十代目〜!氷持ってきましたからね〜!!」
遠くから叫ぶ隼人の姿を見る。
「ファミリーゲットだな」
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