プログライズキー作っちゃったお話。   作:翠晶 秋

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暗い、昏い、don't クライ!

真衣。

真衣。

真衣……!!

 

『工場島に行ってくるね』

 

真衣……?

 

『聞いてくれ旋人!ヒューマギアボディに一番の適性をもつ理想個体が手に入ったんだ!』

 

真衣……!

行かないでくれ、真衣!あれは危険だ!!

 

───被験体【No,A(ナンバーエー)】───

 

 

 

 

コード確認。

チップデータ復元……失敗。

状況解析。成功。

 

私は、謎の施設にある謎の箱の中で、眠らされていた。

なんだか、とても不思議な気分。

心にぽっかり穴が空いたような。……うん?ココロ?ココロ。

ヒューマギアの私に?

 

「……?」

『構築が終わりました』

 

これは……衛星ゼアからの受信?

レーザー射出装置がこちらを向いている。恐らくあれで私は修理……復元、されたのだろう。

理由は……データに残っている、謎の少年のせい。

自動で開いた扉の外に出ると、なにかの工房だろうか……大量の飛電の段ボールと工具が見えた。

少なくとも、飛電インテリジェンスが関係している……ユーザーの工房か、それとも小企業の工場の一室か。

 

「あ、起きた?」

「……?」

 

集音装置で拾った音の中に、声が混じっている。

もしかして、この声は……。

 

「ひ、飛電或人社長」

「うん。旋人君からのメッセージで、君と彼がピンチになってるって言うから。急いで駆けつけて、ザットに修理させたんだけど……」

「あの人は?」

「今は病院だよ。かなりダメージを負ったみたいだけど、本人の回復力が凄まじくて、なんとかなりそうってさ」

「……」

 

やはり、私は何かがおかしいんだと思う。

だって、こんな胸が締め付けられる原因、知らない。

あるとすれば、シンギュラリティ。ヒューマギアの私が、ココロを持つと言う事。

 

「とりあえず、ドールはここでゆっくりしてて。俺は今から調査に行ってくるから」

 

私は廃棄かな。

でも修理しなければ良い問題……?

でも、今の私に利用価値なんてない気がする。となると、どうして私は修理されたんだろう?

まぁ、大人しくしていればわかることかな。

 

椅子に腰掛け、正面のヒューマギアボディなにとはなしに見る。

初期のヒューマギアだ。ヘッドギアの形が、私と違う。飛電インテリジェンスの推を集めた、最高のツール……の、はずなんだけど。

私は人間に、不信感を抱いてるんだよね。失礼ながら。

どうして私を生み出したのか。どうして私を廃棄しないのか。

悪意とかシンギュラリティとか、私にはよくわからない。

けど、それって人間側からの押し付けじゃないの?

人間1人が植物状態になったって、世界は騒がないのに。ヒューマギアが少し自我を宿しただけで、ニュースで駆り立て、絞り尽くした後にデータの海に捨てられる。

 

おかしい。ヒューマギアがヒューマギアらしく生きる世界だってあって良いはずなのに。

なんか、納得いかない。

 

───キィィィン───

 

うーん……やっぱりよくわかんない。

もう少しすれば、ヒューマギア差別だってなくなるよね。きっとそうだ。

 

───キィィィン───

 

あの少年……ベルト(?)を私にくっつけた人のことは気になる。

あのベルトを通して私に流れ込んできた、人間に対する憎悪や絶望、そして()()

あれからなんだか、もやもやしていて思考が定まらない。

 

───キィィィン───

 

「ああもうさっきから何!?耳鳴り!?ハウリング!?ちょっとちょっとおー、マイクテストくらいちゃんとしときなさいよー!」

「───……」

 

あっ、なんか耳鳴りがしょんぼりしてる気がする。ごめん。

ノイズとハウリング音が幾重にも響き、私の意識がだんだん持っていかれつつある。

 

「───」

「なっ、あなたいつのまに後ろに……」

「───」

 

育成……?

なに、なんのこと?何を言ってるのかさっぱりわからない。

 

「───」

「あっ……」

 

ガクン、と視界が揺れる。

このベルトは……あの時の……。

…………。

 

「滅亡迅雷net.に……接続……」

 

目の前のフードの人物が、何かを渡してくる。

水色の……。

 

っ。

 

 

 

 

……。

…………。

 

「───がぁっ!!!!」

 

急な覚醒。

全身の体温が上がり始め、ポタポタと落ちるほど汗が浮かんでくる。

まだ全身が痛い。背中から受けた……あの、『スティングディストピア』とかいう技のダメージが残っているらしい。

 

「起きられましたか」

「……イズ、って言ったっけ?」

「はい。社長秘書の、イズと申します」

 

周囲を見渡す。

主に白を基調に作られた部屋。そして、俺が纏っているのは病衣。どうやらここは病院らしい。

イズはヘッドギアに手を当て、「或人社長。奥義旋人の意識が戻りました」と告げた。

また、守れなかった……。また?またって、どういうことだ?

あ、いや、そんなことより。

 

「ドールは、ドールはどうなった」

「愛 ドールは既に修理を終え、現在は社長室の隠しラボで待機を命令しています」

「そっか……」

 

っていうか隠しラボあったんだ。やっぱり。

 

「なぁ、俺はどれくらい気絶してた?」

「19時間です」

 

あれ。意外と少ないな。

結構眠ってたもにだと思っていたが……どうやら思い違いだったらしい。

 

「解析の結果、ハイブリッドライズしたクライミングラビットプログライズキーの能力による、危機察知能力が発動してオートモードで致命傷を避けたものと思われます」

「なるほど」

 

プログライズキーには個々に特殊な能力があるとは思っていたが、ハイブリッドライズしても能力が残っているとは。

背後からの攻撃でも、致命傷は避ける。

これはいい。命に変えられるものは、命以外に無い。

 

起き上がろうとすると、突き刺すような痛みが全身を駆ける。

 

「イズ、そこの俺の服とって」

「行動するにはまだ回復しきっていない様子ですが」

「飛電からフリージングベアープログライズキーを借りれば、体力は回復するはずだ」

「……承知いたしました」

 

背中が痛む。動くのはまだ早いと、全身が悲鳴を上げる。

だが、それだけで休んではいられない。

滅亡迅雷net.が、既に動いている。それを解決するまで、そうやすやすと、眠るわけにはいかない。

 

まだ、あともう少しだけ。

待っていてくれ、ノア。

 

枕元に置いてあったベルトとプログライズキーをつかんで病院を出る。

後処理はイズが行ってくれる筈だ。

ライズフォンで電話をかける。

 

「爺!」

『お久しぶりです。今までどちらへ?」

「圏外のところにいた。無事だ」

『それはそれは。メールも拝見いたしました』

 

迷惑はかけていなかったようで安心する。

爺は何も悪くないからな。

帰ってきたときはバスもなかったからそのままホテルに泊まったが、そういえば爺に連絡してなかったな。

ごめん爺。

 

「早速で悪いが、バイクを壊したっ。安物で、いいから……代わりの物を用意しておいてくれ」

『かしこまりました……もしかして、走ってらっしゃいますか?』

「ご明っ、察っ」

『お気をつけて』

 

代わりのバイクは用意できた。

あとは、ここから走って飛電インテリジェンスに向かうだけ。

 

間に合え……!

 

 

 

 

「頼む!目を覚ましてくれ!!変身!!」

『ライジングホッパー!!』

 

俺は。

俺は、何をしていたのだろう。

いまいち思い出せない。

しかし、そんなことはどうでもいい。

 

ただひたすらに、プログラムに沿って戦う。

そろそろ、熱が溜まってきた。アレの使いどきと判断。

 

 

 

 

 

『ドードー!!』

 

 

 

 

 

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