プログライズキー作っちゃったお話。   作:翠晶 秋

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思わぬプレゼント

「出社しました」

 

冗談まじりに社長室に向かって口を開いてみる。

奥で構えているのが社長のはずなのだが、スーツの中にパーカーを着ているために威厳のイの字もない。

 

「いらっしゃい」

「お茶をどうぞ」

「俺が歓待されてるのはなんでだ。用があったんじゃなかったっけ」

「まぁ……いいじゃん、本題は盛り上がったときに」

「いいけど……いいけど、さ……」

 

一体なにがしたいんだろう我が社の社長は。

イズの後ろにあるダンボールから察するに、きっとそれが俺に渡すものとかいうやつなのだろう。

 

「とりあえず……改めて、仲間になってくれてありがとう。心強いよ」

「あぁ、どうも。そうか、なかなか話す機会はなかったな」

「あぁ。俺たちは今、滅亡迅雷.netにかなり良いようにされている。不破さんもたまに一緒に戦ってくれるけど、奴らがどれだけゼツメライズキーを持っているかわからない今、新しく戦える人が増えたのはすごく嬉しい。それに……」

「それに?」

「迅や滅も、かなり前線で戦うようになってきた」

「迅と、滅……あいつらか」

 

飛電が空中に投影させたパネルに、ピンクと紫のライダーが映し出される。

純粋に戦闘能力が高いのは、滅と呼ばれる仮面ライダー。

二人が腰に巻きつけているものは見たことがある。確か、ゼロワンプロジェクトの資料の中に、こんな形のベルトがあったはずだ。確か名前は、サイクロンライザー。

 

───ロッキングホッパー!───

 

ぐっ、頭が、痛い。

どうにも、サイクロンライザーという名前以外の情報が思い出せない。

知っているはずなんだ、サイクロンライザーというものを、使用者を、変身者を……。

……待て。サイクロンライザーは実戦投入はされておらず、体へ負担がかかることからプロジェクトは途中で中断されたと書いてあったはずだ。

なぜ、変身者を知っている?なぜ、思い出せない?

クソ。頭から捻り出せ───

 

「旋人!!」

「うっ。な、なんだ」

「体調、悪いのか?顔が青いぞ」

「いや、なんでもない。少し休めば……そうだ、フリージングベアーを貸してくれ。あの回復能力はとても使える」

「……なら、いいけど……イズ、プログライズキーを」

「承知しました」

 

痛む頭を押さえ、現実へと意識を戻す。

イズがダンボールからアタッシュケースを取り出し、俺の目の前で開いた。

そこには、飛電が所有しているほぼ全てもプログライズキーが鎮座していて(主力であるライジングホッパーだけがそこにない)、どれもこれも、好きに触れていいというように手に取りやすくなっていた。

 

「おお……」

「加勢してくれる条件は何でも呑むって言ったからな。ちゃんと返してくれるなら、好きに使っていいよ」

「そうか……!」

 

これなら、かなりのデータ量が手に入る!

ノアの復活に、また一歩……いや、五歩は近づけるだろう。

 

「いっ、一度解析したい。これらを全て家に持っていくことは……」

「こ、これを全部?一度に?」

「ダメならダメでいい。一日一個、ちゃんと翌日に返すっ。いや、一日二個……ああ……」

「なんか、すっごく興奮してない?」

「体温上昇、脈拍不安定。興奮状態です」

 

す、すごいぞこれは……。ただでさえ、たった一つで街一個分のデータが入りそうなプログライズキーが、こんなにたくさん……。

ごくり。

 

「いや、わかったよ。明日必ず返す約束で、全部貸す」

「本当か!?」

「ただ、一個だけ、戦闘があったときのフォームチェンジ用に持っておきたいから、どれか一つ抜かせてもらうよ」

「なら、俺のカメレオンキーを持っていけ。汎用性が高いし、それのデータは既に入力済みだl

「入力済み?」

「……いや、こっちの話だ。気にするな」

「そ、そっか。それじゃあ、遠慮なく」

 

差し出したカメレオンキーが飛電の手に渡るのを確認して、アタッシュケースを閉じて抱える。

ふはは、すごいぞ。宝の山だ。

こんなことなら奪うなど考えずにとっとと飛電と手を組めば良かったんじゃないか?

もし裏切られても、こちらに損害はない。カメレオンキーだけでこれだけの量のプログライズキーが手に入るなら……そうか。

これが、飛電なりの信頼の表し方なのか。

俺が裏切らないと信じているから、大量のプログライズキーを出してもいい、と。

 

「……ありがとう」

「え?いま、なんか言った?」

「いや、何も言っていない。それじゃあな。翌日、これはちゃんと返すからな」

「ああ、うん……って、ちょっと待って!!」

「む」

 

なんだ。

社長室から出ようとしていると、飛電が何かを抱えて呼び止めてくる。

白いラインの入った長方形の物体だ。

 

「本題はプログライズキーじゃなくて、これなんだ」

「……これは?」

「アタッシュウェポンシリーズ、第……第……。イズ?」

「第五作目です」

「第五!!その名も、A(アタッシュ)L(ランス)!俺からのプレゼントだ」

 

渡されたそれはずっしりとした重さで、説明書にざっと目を通すと、どうやらこれは展開して一振りの槍になるらしい。

考えてみれば、俺は特定の武器を持っていなかったな。これは素直に感謝するとしよう。

 

「なるほどな。受け取っておく」

「あぁ。大事に使ってくれ」

「どうせ、お前のために使うことになるんだろう?」

「はは、そうだと嬉しいな」

 

俺はなんて現金なやつなのだろう。

ただ、戦力が増すことに変わりはない。

そのまま社長室を後にすると、すれ違う人物が。

 

「お疲れ様です、増添副社長」

「副添だ!!」

「……副添副社長」

「よろしい。……お前、最近何かあったのか?」

「……ん?というと?」

「最近、目に生気があるだろう。それに、今日は特に機嫌がいいように見えるが?」

「……まぁ、この会社の戦力ですから」

 

こんな冗談が言えるのだから、俺もかなり舞い上がっている。

ノアの復活が間近になるのだから、気分も高揚するというものだ。

 

「……戦力、か」

 

立ち去る俺の背中に投げられた、その言葉も聞こえないほど。

 

 

 

 

「爺、一時間ほど買い物に行ってきてくれ!」

「承知致しました」

 

家に帰ってすぐに階段を駆け上がり、ラボへと直行する。

ノアの入れられているケースに近づいてパスワードを入れ、データ入力フェーズへと移行。

アタッシュケースに入っていたプログライズキーを、次々とスロットへ挿していく。

 

「…………っ」

「!!気がついたか!?」

「…………」

 

今まで一定を示していた数値が、一瞬だけブレる。

そのことに慌ててノアに駆け寄るも、数値は既にいつものものに戻っていた。

 

「……っぐ」

 

やはり、これだけじゃダメか。

完全にノアが復活するには、もう少し……あともう少しのプログライズキーが必要だ。

 

「でも、かなり進歩した」

「…………」

「いつか、お前を救って見せる」

 

クソ親父にこんな風にされた、お前を……。

 

『〜♪』

「っ」

 

妄想の世界に入り込みそうになっていた俺を、電子音が現実へ引き戻す。

電話……誰から。

 

「……あ?何だお前、久しぶりじゃん」

『あぁ……いつぶりだったか?』

「数えてない。今更何の用だよ」

『ビジネスだ。良い話がある。時間は空いているか?』

「明日なら空いている。場所は?」

「perfectというカフェで落ち合おう。詳しいことはメールで」

 

突如切れた電話。

会社を起こしていたとは聞いたが、そんなにも忙しいのだろうか。

まぁ……昔、パソコン同好会で一緒に闘った同志だ。話だけでも聞いてやるとしよう。

 

電話の切れたライズフォンの履歴には、『1000%野郎』と表示されていた。

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