プログライズキー作っちゃったお話。   作:翠晶 秋

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お前も社長で仮面ライダー?

「奥義。よろしく」

「おいおい正気かおやっさん。子供じゃないか」

 

名前もよく知らないおじさんに連れてこられたパソコン同好会は、そのメンバーの年齢差がかなりあった。

吹けば飛びそうな年寄りから、高校生くらいの者まで。……その中に、小学生()ほどのもにはいなかったが。

 

「おう。ただコイツは……名前の通り、奥義の坊ちゃんだ。実力は折り紙付よう」

「ふぅん……コイツが、あの奥義のかぁ? タイピング日本一の?」

「運が良かっただけだ。その時はたまたま指の調子が良かった」

 

異端児。

そんな風に言われていた俺を、渋々ながら、みんな受け入れてくれた。

そうすれば、あとは実力を見せつけ、俺がそれなりに機会を扱えるということを知ってもらい、その地位を上げていったのだが……。

 

「天津 垓という。よろしく」

「あぁ、よろしく。一番年齢が近そうだ。仲良くしたい」

「こちらもそのつもりだ」

 

思えばそのときから、あいつは目が死んでいた気がする。

 

 

 

 

perfect。パーフェクト。ぱーふぇくと。

会社経営のカフェだ。上に、ZAIAエンタープライズという会社が存在する。

ヒューマギアを一切使わないという経営方針のもと設立されているために、ZAIAには職をヒューマギアに取られた者が就職活動でよく来るとかなんとか。

 

「お待たせしました、コーヒーのホット二つです」

「ああ、すまない」

「……どうも」

 

天津(あまつ) (がい)

曰く、今は会社を経営していて、かなり上手くいっているらしい。その結果が、白いセーター白いコート白い靴に白い日傘というわけか。

 

「おいコーヒー跳ねてるぞ」

「えっ」

「嘘だ」

「…………」

 

この慌てぶり。だから白はやめておけと。

 

「で、要件は? ビジネスってなんだ」

「要件は、我が会社に来ないかと言う話だ」

「会社?」

「あぁ。現在我が会社はヒューマギアを上回るスペックを人間に付与する最上級のアタッチメントを作ろうとしている。お前がいれば、その完成は1000日早まるだろう」

「なるほどな。悪くは無い案だが……ま、生憎だが今に俺には職がある。転職する気もないしな」

「そうか……。まぁ、考えておくことだ。これが名刺だ」

 

ライズフォンにデータが転送される。

 

「俺データ名刺は受け取らない主義だけど」

「……これが名刺だ」

 

差し出された名刺には、しっかりと、天津が社長であることを示す代表取締役の文字があった。

会社名は……ええと。

 

「ざっ、ZAIAエンタープライズッ!?」

「まぁそうなるのも無理はない。どうだ? お前の腕なら、すぐに上の職務へ就けるだろう」

「……考えさせてくれ。こちらもこちらで事情がある」

「わかった。いい返事を期待しておこう」

 

はてさて。

ZAIAの技術力は目を見張る物があるし、ヒューマギアに頼りすぎないという姿勢も好きだ。

だが、既に俺は既に職に就いている身。

 

「要件はこれだけか?」

「いや、もう一つある。これだ」

 

ことりと置かれたのはUSBメモリとパソコン。

 

「……?」

「これを見てほしい」

 

天津がパソコンにメモリを挿すと、液晶に映像が映し出された。

どうやら監視カメラの記録のようで、人々が行き交っていた。

そこだけならなにもおかしなところはないのだが……急に画面にノイズが走る。

ノイズが晴れた瞬間に、画面に映っていたヒューマギアが苦しみ始め、その外郭が弾け飛び化け物へと変化した。

 

「これは……」

「近頃、噂になっているヒューマギアの暴走……そして変化の映像だ。私は、これを圧倒し、人類を救う力を人間側が所持するための研究をしている。そしてそれは、もうじき研究段階から実現可能な領域へと進化する。もし、暴走するヒューマギアを発見したら、私に連絡をしてほしい」

「……わかった」

 

それは、新兵器を作ると言うことだろうか。

頭の中にクソ親父がよぎり気分が悪くなるが、しかし、暴走マギアが出ても死傷者が出ないようにするという考えは素晴らしい。

ただひたすらにマギアを倒すよりも、こいつに任せて研究の糧にしたほうが良い。

 

「お前の研究は気に入った。協力するかの判断はまだできないが、応援はしてるよ」

「任せておくといい。いつかお目にかけよう……ん?」

 

と、天津の腕時計から着信音が鳴る。

メガネに装着された機械で電話をしているらしい。

そして、何を聞いたのか天津がニヤリと笑う。気持ち悪い笑みだ。

 

「どうやら、お目にかける時が向こうからやってきたようだ。付いてこい」

「は? あっ、ちょ、おい!!」

 

急に駆け出す天津。

後を追っていくと、向かう先から逃げてくる人々がちらほら。

暴走マギアか……共闘することも辞さない構えだが、天津の研究のとやらにも付き合いたいし、少し傍観していよう。

 

まぁ、天津が新兵器で負けそうだったら変身して……あぶなっ!!

その場にしゃがみ込んで()()()()()()を回避する。

飛んできた方向に目を向ければ、そこには青くメタリックな体を持つ暴走マギアが。

特徴は、頭にあるV字の角。

 

「見ていろ。アークによって進化、強化された、私の力を!!」

『ブレイクホーン!!』

「プログライズ、キー……!?」

 

天津が取り出したのは黄金に輝くプログライズキー。

それを、明らかに発明中な見た目のベルトに装填した。

ベルトに繋がった銅線やパイプが唸る。

 

『When the five horns cross, the golden soldier THOUSER is born.』

「これが、私の変身だ」

 

頭から突出した角。

全身を包む黄金の装甲。

ただ、なんか……。

 

「全体的に、中途半端でダサい……」

「………まだ未完成なんだ」

 

仮面の下で天津が顔をしかめた気がする。

頭から一本だけ出た角はカブトムシの表れだろうか。まぁ、たしかにパワーは持っていそうだ。

 

天津が手近にあったパイプを引っこ抜き構える。

余裕そうだなー……。

 

「ゼツメツ。ゼツ、メツ!!」

「せっかくだから映像を撮ってくれ! 実戦のデータは貴重だ」

「わかった」

 

画面越しに様子を伺っているとまずマギアが仕掛けた。

一直線の突進。天津が見切った。

 

「ふんっ」

 

すかさず攻撃。

回避しつつ隙を突いて攻撃するのが主な戦闘スタイルなのだろうか。

 

「ガァ!」

「軽い」

 

そしてタフネスも十分。

突進を受け止められるパワーもある。

 

「どうだ、これが私の力だ!」

「人間が必要とするステータスを大幅に増強させている。ドーピングアイテムとして理想的だ」

 

ただし、ベルトの細工が荒いのか、プログライズキーの力を出し切れていないようだが。

天津の力強い踏み込みでマギアが体制を崩す。そこに総攻撃を仕掛けるが……。

 

「ゼツ、メツゥ!」

「がっ」

「なるほど、パワーはあるが決定打に欠ける。スタミナという制限がないマギア相手には必殺技が必要だな」

「しかし、諦めてなるものか!!」

「天津、正面から見て右の装甲が外れている! 刺せ!!」

「ッ、おおおッ!!」

 

天津の突進。対するマギアも、天津より何倍も早いスピードで突進した。

衝突。天津が押される。

しかし。

 

「ふんッ!!!!」

 

パイプは、マギアの脇腹に刺さっていた。

ばちばちとスパークが起き、マギアが内側から爆発四散した。

 

「…………」

「ん、これは……プログライズ、いや、ゼツメライズキーか」

 

足元に滑ってきた青いキー。

あ、ある……アルシノ。アルシノのゼツメライズキーだ。

 

「変身、解除」

「……天津にしては泥臭い戦い方だったな」

「実戦経験は少ない。努力はして然るべきだ……それより、そのキーはなんだ。あのマギアのものか?」

「ゼツメライズキーだ。暴走マギアは全員これを腰につけていた」

「知っているのか?」

「いや。ゼツメライズキーについてはなんとも。実物をじっくり見るのも初めてだ」

「ふむ……どこまで知っている?」

「このキーが人間を超越した力を持っているということまで」

 

ゼロツーのことについてはいつ切り出そうか。

ゼロワンドライバーが飛電インテリジェンスの機密事項なために言ってしまうと俺が指名手配される可能性がある。

飛電直々にドライバーの件は不問とすると言ってもらえたので使用は許されてはいるが、さすがに情報の流出は許されないだろう。

 

「そのキーはこのプログライズキーとは違う力を持っている。いつも邪魔が入って何者かが回収してしまうが……今日はサンプルを手に入れられたな」

「なるほど。研究してみる価値は……」

「「ある」」

 

俺と天津は同時に、ZAIAエンタープライズへと駆け出した。

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