プログライズキー作っちゃったお話。   作:翠晶 秋

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オマエが社長で仮面ライダー……?

 

バイクをすっ飛ばし、ヒューマギア記念公園で降りる。

冬のクソ寒い中で沢山のおじさんたちが池の周りを半袖で走っていた。

まぁそんなおじさん達に用はない。

俺が見たいのはサポーターヒューマギアの……いた。

 

「ヒューマギアのお兄さんはなんでさむくないのー?」

「それはね、みんなと走るのを楽しむためだよ!ほら、くっついてごらん?あったかいだろう?」

「あったかーい!」

 

サポーターヒューマギアのススム。

内臓ヒーターを起動させ、親を待つ子供を相手にしている。

ススムも子供が自分に頬擦りする姿に気を良くしたのか、「うがー!」と怪獣のように起き上がって見せ、子供を宙に浮かせた。

キャッキャと笑う子供達。

 

遠巻きに眺めていると、ススムがこちらを見た。

びっくりした。視界センサーの性能がいいんだな。

 

「あなたは?」

「テレビを見ただけの一般人だ。子供と戯れられて楽しそうだな」

「……はい。僕が育てた選手でみんなを熱狂させる。それが、僕の使命であり……夢なんです」

「そうか」

 

ヒューマギアに夢、ねぇ。

 

『なんで父さんが変身してんだよ!』

『ヒューマギアが……笑える世界を創るためだ』

『父さんを止められるのはただ1人……俺だッ!!!』

 

ズキン。

 

「……?」「……ん?」

 

謎の頭痛に、二人して首を傾げた。

 

「なんか頭痛が」

「スキャンしますね……最近筋肉を酷使しましたか?繊維が酷く傷んでいます」

「まぁ、全身が痛むような運動はやっているな」

「身の丈に合わない運動は良くありません。ですので……」

 

あ、嫌な予感。

ススムは背中のアタッシュから布を取り出した。

こころなしかそれはTシャツとハーフパンツに見える。

 

「走りましょう!」

「気が狂っているのか!!」

 

 

 

 

肌を露出した服で走り始めて早10分。

体温は丁度良いくらいに上がり、寝起きで凝り固まった全身がほぐれていくのがわかった。

正直みくびっていたぞ、ススムメニュー。

首にかけたヘッドホンからスピーカー式で音楽が流れる。

リ、ラーイズ。はーじまぁりのっ、あーいず。

 

ススムから深呼吸サインが出たので立ち止まって深呼吸する。

首をポキポキと鳴らしていると、前方───……丁度先ほどまで俺がいたあたりに更なる犠牲者が見えた気がした。

栗色っぽい癖のある髪の毛の青年だ。後ろに緑のリボンのヒューマギアを従えている。

何となく気になったので歩いて近づいてみる。

 

「この寒い中半袖で走るのは無理があるよイズぅ!」

「しかし、ススムのスキャン性能はヒューマギアの中でもトップクラスとされています。ススムの判断は間違っていません」

「そんなぁ……」

 

ふむ、どことなく既視感のある少年だ。

苦労する若社長感あるな。

 

「ススム。あと何周走るんだこれ」

「そうですね……あと二周にしましょうか」

「わかった」

 

ススムにスキャンしてもらって目標を見据える。

と、青年の後ろのヒューマギアが俺を指した。

 

「このように、ススムのスキャンは高性能であることが証明されています。或人(あると)社長も一度走ってはいかがでしょうか」

「或人?もしかして、飛電(ひでん)インテリジェンスの後継者の?」

「おっ!俺有名!どうも、飛電インテリジェンス社長の飛電 或人です。社長なのに、新入シャイ〜ン!ハイッ、或人じゃ〜、ないとぉ!!」

 

…………。

 

「体感温度が低くなりましたね。2周から3周に増やしましょう」

「25点だ」

「えぇ〜!?そんなぁ!!」

 

まさか、こんなおちゃらけた人が社長とは……。

飛電も終わりと思ってたけど、ほんとに終わりそうだな……。

 

「まあいいや飛電。せっかくだから走ったらどうだ?なんだ?自分の会社の商品も信用できないのか?」

「っ、ぬぬ……っ!言ってくれるじゃんか!競争だ!イズ、ちょっと待ってて!」

「よーいどん」

「あちょっ!!それはズルいって!!」

 

慌ただしい若社長を置き去りにして、俺は走り出した。

若社長、飛電 或人か……。

どうみてもただの一般的な青年って感じなんだけどな……。

ふむ。しかしらどっかで聞いたことがある声だな?

最近聞いたような……。

 

「待てぇぇえええ!」

「おっ?」

 

大声に振り返ると、遠方から爆速でこちらへ走ってくる飛電の姿があった。

意外と早い。芯はあるようだ。

 

「ぜぇ、ぜぇ、追いついた……!!」

「へえ。ボロボロなのによくやるもんだな」

「ウチのヒューマギアをバカにされちゃ、たまんないからね!」

 

ウチのヒューマギア、か。

 

「飛電の社長さん。あなたにとってヒューマギアってなに?」

「俺にとってのヒューマギア?……ヒューマギアは……夢のマシンかな。いつか、人間とヒューマギアが笑い合えるような世界を作りたいって、そう思ってる」

「人間とヒューマギアが笑い合える世界……?」

 

どうしてまたそんな。ヒューマギアは機械じゃないか。

そんな俺の感情を汲み取ったのか、飛電は息を落ち着かせてから池の中心にある記念碑を見た。

 

「俺の父さんはさ、ヒューマギアなんだよ」

「……?」

「正確には、事故で死んだ両親の代わりに、爺ちゃんが作ってくれたんだ」

「そのヒューマギアが、父親」

「そう。でもその父さんも、12年前……デイブレイクで俺を庇って死んじゃった……だから、二度とそんな事起きないように……人間だけじゃなくて、ヒューマギアも、心から笑える世界を作りたくて社長やってるんだ」

 

……まったく。

社長ってそんな簡単なものでもないでしょうに。

きっとあのヒューマギア……イズとか呼ばれてたやつが、ほとんどの仕事を引き受けているのだろう。

 

「まあ生き方は人それぞれだ。否定も肯定もしない」

「……そっか。……よし、走るか!えっと……」

旋人(せんと)奥気(おうぎ) 旋人(せんと)だ」

「よろしく旋人。名前似てるな、俺たち」

 

或人と旋人か。

まあ確かに。

 

「よーいどん」

「だから早いって!!」

 

飛電を置いて走る。

俺もまだ若い。ただの若社長に引けは取らんわい。ふはは。

……ああ、なるほど。

スポーツで人と人を繋ぐって、こういうことなんだな。

 

ちょっとだけ。ほんのちょっとだけ、ススムの在り方が分かった気がした。

ヒューマギアの力を信用していないわけではないけど、やっぱりどこかで憎んでいた所もあったのかもしれない。

これからの、ヒューマギアのカタチか。

……いやいや、いらんだろそんな考え。おじいさんでもあるまいに。

 

お、もうすぐ一周。

……んお?なんか新しい犠牲者が……無邪気そうな、少年?

……あ。

 

「君も僕のオトモダチだよ?」

 

……あの少年じゃないかバカコノヤロウッ!

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