「滅亡迅雷……ッ!!」
「は?滅亡迅雷?」
不破も言ってたやつだな。
謎は深まるばかりだ。
「ちが……ウ!ボクの使命は、ミンナを、マラソンで笑顔に……」
「違う違う。君の仕事は人類の滅亡。ほら♪」
「ああああああああ!!」
ススムの体から赤いスパークが散る。
ヘッドギアの色が赤く染まり、ススムが肩から力を抜いた。
「滅亡迅雷net.に、接続」
やがてその瞳は……一番近くにいた、俺と飛電に向けられる。
色が……赤い。
「旋人、離れて」
『シーラカンタス!!』
「人間、絶滅!」
『ゼツメライズ!!』
「ああああああああっ!!」
けたたましいアラートと共にススムの体が外殻に包まれる。
シーラカンスを思わせる頭部に、両手首から膝に渡って再生された鋭利な刃。
飛電は俺を背にススムを睨みつけると、どこからともなく……ベルトを取り出した。
……そのベルト……。
『ファング!!』
『オーソライズ!!』
そして……青いプログライズキー。
スキャンされた直後、公園の池から青色のサメが現れた。
ざぱんざぱんと水しぶきを上げ、うねり、うなり、そのおぞましい姿を見せつける。
そして決め手に、飛電の背後を巨大なバッタが飛び回っている。
飛電が正面に構えたキーを振って、展開した。
「変身ッ!!」
『プログライズ!!』
『キリキリバイ!キリキリバイ!!』
『バインディングシャーク!!』
『
サメが、飛電を飲み込んだ……と思ったら次の瞬間には、バッタが外殻となって飛電に絡みついたときには……俺の、慣れ親しんだ姿がそこにあった。
ゼロツー……いや、これが……これこそが。
「ススム。お前を止められるのはただ一人……俺だ!!」
ゼロワン。ちんちくりん男が言っていた、あのときの覆面バッタなのだろう。
青い鎧を纏った飛電は駆け出し、シーラカンタスマギアに肉薄する、
腕に生えた刃で装甲を切り裂かれ、シーラカンタスマギアから火花が散る。
不利を悟ったか、マギアは池に潜り込んだ、
「あっ、待て!!」
続き、飛電も池に飛び込む。
水中の戦いは俺には無理だ。そんなプログライズキー持ってない。
今何をすべきかを考え、そして……。
◇
別に酸素が無いとかじゃない。
ゼロワンドライバーとバインディングシャークプログライズキーの高等な技術により、水中の酸素を抽出して変身者に送り届けることができているからだ。
苦悶の理由はただ一つ。シーラカンタスマギアが放つ魚雷にあった。
魚雷は数の暴力をもってゼロワンのありとあらゆる死角から攻撃し、その身を爆破しようと試みる。
来る度来る度にスライスしてはいるが、いかんせん数が多すぎる。
少し気を抜くと出力アップした
バインディングシャークは水中特化型。泳ぐだけなら何分、何時間でも泳げる。
だが、ゼロワン───或人は別。彼はしがない一般人である。
重力の薄い水中での戦いは彼の体力を大幅に減少させ、このままではジリ貧───。
『飛電!!』
……?
『聞こえるか、飛電或人!』
これは今し方話した一般人の声だろうか。
イズを通して通話しているらしい。
『そいつは俺がなんとかする!水中で倒さなくてもいい、隙を見て水から引き上げろ!』
「なんとかするってどうやって!?」
『企業秘密だ!』
「……よぉし、わかった!!」
或人は出力を上げ、魚雷を見切って躱した。
迎え撃つのではなく、ただ引き上げるだけなら容易い。
機動予測してルート表示された魚雷を軽く躱しつつ、マギアの真下に到達。
「んんんサメちゃんアッパーっ!!」
全力で浮上し、マギアに硬い拳を喰らわせた。
シーラカンタスマギアが水面から飛び出し、空中でもがく。
或人は水面に浮上して成り行きを見ていた。
どんな銃や大砲が飛び出すのかと思ったが……マギアの体を吹き飛ばしたそれは、意外にも巨大なウサギの形をしていた。
「ええええええええ!!」
或人は目を向いた。
ウサギが飛び跳ねる方向に目をやれば……そこに、見慣れたベルトを巻いて見慣れたデバイスを展開する友人の姿があるではないか。
「な、ん、で、君がそれを……」
「変身!」
『プログライズ!』
英文とともに旋人の体が白い外装に包まれる。
ウサギがモチーフになっているであろうその姿は。
「白い、ゼロワン……?」
「俺はゼロツー。俺のために戦う存在だ」
『クライミング!インパクト!』
白いゼロワン───もとい、ゼロツーが高く跳躍する。
マギアは空中にジャンプして身動きの取れない相手を好機と見たのか、自らも飛んで追い討ちをかけようとした。
ク イ
ラ ン
イ パ
ミ ク
ン ト
グ
繰り出されたキックはマギアの胸を穿ち、湖に叩き落とした。
やがて、湖が爆発する。
水から上がった或人は、雨のように降りかかる水の中人影を見つめた。
振り返った、白いゼロツー。
何も言おうとしないその眼に生唾を飲み込んだ或人は数日前のイズとの会話を思い出していた。
『衛星ゼアが、何者かにハッキングされたようです』
『衛星ゼアが……?』
『はい。人工知能である衛星ゼアが無線ハッキングされたのは、前代未聞です』
『えっ、それって大丈夫なの?』
『はい。ファイアーウォールこそ突破されましたが、ハッキングされたのは数分です。見たところ、我が社の重要な情報に手は付けられていません』
『じゃあ、なんで衛星ゼアをハッキングなんてしたんだ……?』
『衛星ゼアのデータの中で、コピーされた形跡が発見されました。それは……』
『それは……?』
それは───ゼロワンドライバー。
衛星ゼアをハッキングした者が今、目の前にいる。
一般人ではないと決まった以上、気を許すことはできない。
「……そのベルトは……どこで……?」
「関係ないだろ」
「あるよ社長だもん!」
「……俺の目的の為には……ッ!!」
ゼロツーが肉薄し、ゼロワンを軽く吹き飛ばす。
ゴロゴロと転がったゼロワンは彼を危険視し、ホルダーから緋色のプログライズキーを取り出した。
「見たことあるやつだ」
ゼロツーは体勢を低くして前に跳躍する。
赤虎の熱量を彼はすでに経験していた。
ゼロツーの拳がゼロワンの手首に当たり、オーソライズ前のキーがゼロワンの手を離れた。
キーは伸ばしたゼロワンの手ではなく、もう一人の手に渡った。
「これが……あのキーか」
『ファイヤー!』
『オーソライズ!』
今まで味方だったライダモデルが自分に牙を向いた。
ゼロワンにはそれが信じられなかった。
だがもう、後には退けない。
バインディングシャークのまま駆けるゼロワンの前で、ゼロツーはキーを展開する。
「ハイブリッドライズ」
『プログライズ!』
『ギガントフレア!フレイミングタイガー!』
『
白いボディと緋色の装甲。
ゼロツー、フレイミングタイガー。
「「うおおおおおおおおおっ!!!!」」
鮫と寅が、吼える。