レイちゃんは強いカードバトラーと戦いたい   作:OZo-2

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世界大会編
ターン12 ゲームにないカード


CSが終わり、本来のゲームならこれでストーリーが終わる。

 

しかしゲームが終わっても、私は相変わらず過去に縛られているらしい。

ゲームクリアで元の世界に帰れる、なんて期待していたけど空虚な妄想だった。

結局ゲームが終わってもいつもと変わらぬ日常を過ごしている。

 

いや、そういえば変わったことが1つ。

 

「この度チカバ町に引っ越してきた、三葉葵姫子じゃ。皆の者、よろしく頼む」

 

ヒメ様が私たちの学校に転校してきた。

しかも同じクラスだ。

コジローに続いてなんで同じクラスに2人転校生入れてるんだよ。

 

あとヒメ様が着物以外着てるの初めて見たかも。

やっぱり可愛いなこの子。

 

ともかく、ゲームの主人公組全員(ワタルを除く)が1つのクラスに集まった。

 

そして、その記念(?)ということで、私たちは再び三葉葵家の所有する島に遊びにきている。

今度はブラックゴートを釣る目的はないので、バトスピ漬けではない。

 

代わりに私は別のものを釣ろうと思っている。

 

「どうじゃレイ。釣れておるかの?」

「うーん、全然アタリがない。人がいない場所なら入れ食いだろうとか、甘かったかなー」

 

つまり魚釣りである。

なお今のところの釣果は0。

 

「みんなは何してるの?」

「レツとコジローは中でバトスピ、マドカとワタルは浜で遊んでおる」

 

そういうとヒメ様は私の隣にちょこんと座ってきた。

 

「流石のチャンピオンも、魚との読み合いには勝てぬと見た。餌を取られておるぞ」

「え、うそ……ほんとだ、取られてた」

 

もう一度餌をつけ直して糸を垂らす。

重りが地面についたのを確認してから、軽く糸を巻き直した。

 

「……レイ、お主に話しておきたいことがある」

「ん? なーに?」

「ブラックゴートについてじゃ。確かにレツは奴らのアジトを破壊した。しかし肝心の裏サイトについてはそのままじゃ」

「管理人のいないサイトなんて、すぐ廃れるよ。ブラックゴートに代わる新しいサイトでも作られない限りは大丈夫大丈夫」

 

どうやらヒメ様はブラックゴートが復権しないか気にしてるらしい。

でもブラックゴートはナナシとハッカーがいて、ようやく運営できるものだからね。

凡人が手を出しても警察に見つかるのがオチだ。

 

「ふむ。まぁレイが問題ないというのなら大丈夫なのじゃろうな。しかし、裏でバトスピが悪用されていたのも事実。実は妾の父上はIBSAにも顔が利いての、少しわがままをきいてもらったのじゃ」

「IBSA?」

「International Battle Spirits Association……まあ簡単に説明すると、バトスピの運営機関じゃな」

 

え、そんなものあったの!?

てかバンダイじゃないの?バトスピを運営してるのって!?

 

「ブラックゴートについては元々IBSA内でも問題視する者はおったそうじゃが、その声は揉み消されていたらしい」

 

見て見ぬふりですか。

くそ運営ですね。

 

「しかし、今回父上が動いたことでIBSAも本格的に対処に移った。ブラックゴートを完璧に潰し、第2第3のブラックゴートが出現しないようにするためにの」

「なんだ、なら大丈夫じゃん」

「ここからが本題じゃ。バトスピを賭博に使われていることを知ったIBSAは、それを逆手にとった。つまりIBSAが主催となってバトスピ賭博を行うことで他の団体が生まれないようにする、という手段に出た」

「いや本末転倒それ」

 

なにそれ?

IBSAとかカッコイイ名前のくせに無能かよ。

もしかしてIBSA資金難なの?

そもそも運営が法律犯していいと思ってーーあ。

 

「あー、なるほどね。で、それはどこの国でやる大会なの?」

「流石じゃなレイ。相変わらず察しが良い」

 

だってどこかで聞いた話なんだもん。

賭博が禁止されているのは「日本内」の話。

法律で禁止されてないどこかの国で賭けバトスピを行えば問題はない。

 

そして、流石に運営がそんなことを毎日やる訳がない。

何年に1回くらいのペースで大会を開催すると考える方が自然だ。

 

「場所はオセアニアの小国『フェレンガル王国』。最近幾つも油田が見つかり、一気に発展した国じゃな。規模は世界大会。日本チームは妾とお主、そしてレツの3人じゃ」

 

え待って。ちょっと待って。

 

「世界大会って……マジ?」

 

そんなのあのゲームになかったけど。え、マジ?

 

「大マジじゃ。さて、」

 

ヒメ様はそういうと、携帯でどこかへ連絡を入れる。

数分後、私たちのいる島に一基のヘリコプターがやってきた。

 

「氷田零様ですね。どうぞお乗り下さい」

 

まァじですかァ。

 

 

◇◆◇◆

 

 

「お待ちしておりました。三葉葵姫子様、渡雷烈様、氷田零様でいらっしゃいますね。ようこそIBSA日本支部へ」

「うむ」

「へー、すごい広いな」

 

ど う し て こ う な っ た 。

 

ヘリコプターで連れてこられた先はIBSAの日本支部。

いやホントなにこのイベント。

というか日本は支部なのね、なら本部どこよ。バンダイ?

 

「私はIBSA日本支部代表の『天魔信秀』と申します。今回皆様をお呼びしたのは、違法賭博集団ブラックゴートの壊滅にご助力いただけたことへのお礼を申し上げるためです。本当にありがとうございました」

「いえいえ」

 

天魔信秀ってすごい名前だな。

いやそれ言ったらヒメ様もか。

私も別の意味でやばい名前だし、今更だったね。

 

「そして、今回のような事件を起こさないためにも、我々は新たな大会を開催することに決定致しました」

「大雑把な話はヒメから聞いたよ。よく分からないけど、南国で開催される大会に出られるんだろ?」

「ヒメ様、ホントに大雑把に話しすぎじゃないですか?(ヒソヒソ)」

「いや、妾はレイにした話と同じ話をしたのじゃが……(ヒソヒソ)」

 

なんだ、レツが理解しなかっただけか。

まぁこれが中学生のあるべき姿なんでしょう、うん。

 

「はい。御三方にはぜひ、日本代表として参加して頂けないかと」

「もちろん参加するぜ!」

「父上に頼んだ妾にも多少の責任はある。頼まれたならば出よう」

 

正直私がこれまでやってこれたのも、ゲームの知識があってこそだ。

この全く知らないストーリーで私は戦えるのか少し不安がある。

 

「(ま、いっか)私も出ます」

 

そんなこと考える私なら、この世界に来た時に必死に戻り方を探してますよ。

そこら辺はもう諦めてる。

なるがままになるといい。

 

「ありがとうございます。お礼といっては何ですが、こちらカードをどうぞ」

 

そうして信秀さんが取り出したカードは……

 

(嘘でしょ……)

 

「なんだこのカード?」

「妾も初めて見るの。最新のカードなのじゃろう」

 

レツとヒメ様には分からない。

でも、私はこれを知っている。

これに類するものを、過去にいくつも見た。

 

(……まさか、ブレイヴ環境とは)

 

赤のブレイヴ、『砲竜バル・ガンナー』。

私が失ったシステムの1つ、【ブレイヴ】が再び目の前に現れた。

 

 

◇◆◇◆

 

 

「ネクサス『オリンスピア競技場』をLv2で配置。ターンエンド」

「俺のターン。ドロー! おお! 初めて見るカードばっかりだな!」

 

この世界ではまだ出回っていない新カード『ブレイヴ』

信秀さんからそれを使った試作デッキがあるので使ってみてほしいと頼まれた私とレツは、IBSA日本支部の一室でバトルしていた。

 

まぁ最初の4枚で構築済みデッキなんだなって気づきましたよ。

『ブレイドラ』『オリンスピア競技場』『牙皇ケルベロード』『星海獣シー・サーペンダー』

詳しい説明は省くがお前は死ぬ、てやつですね。

 

私は先攻で『オリンスピア競技場』を配置。

Lv2効果は相手の合体(ブレイヴ)していないスピリットがアタックする時にリザーブのコア1個をトラッシュに置く効果。

非常に強力なアタック抑制効果だね。

 

「よし。『ブレイドラ』『剣竜人ステゴラス』を召喚するぜ。『剣竜人ステゴラス』は自分のスピリットが2体以下の間、Lv3として扱う。『ブレイドラ』をLv2に上げてアタック。リザーブのコア1個をトラッシュに置く」

「ライフで受ける」

「ターンエンドだ」

 

いきなりアタックしてくるのか。

初めて使うデッキなんだからもうちょい慎重に動かないと。

だってこのデッキには、ヤバいカードが何枚もあるんだから。

 

「メインステップ。『ブレイドラ』を召喚。さらに『星海獣シー・サーペンダー』を召喚」

 

『星海獣シー・サーペンダー』は召喚時にコスト4以下のスピリットを破壊できる。

もちろん『剣竜人ステゴラス』を破壊だ。

 

「さらに『牙皇ケルベロード』を『星海獣シー・サーペンダー』に直接合体(ダイレクトブレイヴ)召喚。不足コストは『ブレイドラ』より確保、『ブレイドラ』は消滅」

 

もはや様式美だよね、ブレイドラの消滅は。

さて、

 

合体(ブレイヴ)アタック。シー・サーペンダーの【強襲】で『オリンスピア競技場』を疲労させて回復」

「ライフで受ける」

「ケルベロードはシンボル持ちのブレイヴだから、2点だよ」

「3ターン目でダブルシンボルって、マジかよ!?」

 

それだけじゃないんだ、ケルベロードは。

 

「もう一度合体(ブレイヴ)アタック。今度はケルベロードの効果、私のデッキを5枚破棄して回復」

「ライフで受ける」

「はい、3度目の合体(ブレイヴ)アタック」

「ライフで受ける。これが『ブレイヴ』の強さか……」

「はい私の勝ち」

 

はい、3ターンキルでしたね。

私にスピリットがいないからって序盤にコアを与えたのはミスだったね。

『太陽龍ジーク・アポロドラゴン』を使えなかったことは心残りだけど、レツにブレイヴの強さが伝わったからよしとしよう。

 

「さすがチャンピオン、初めて見るカードをこんなにも……世界大会でも、期待しているよ」

 

ブレイヴが追加され、これから環境は大きく変わる。

果たして世界大会ではどんな相手と戦うのか。

 

(1人くらい、私と同じ転生者がいないかなぁ)

 

微かな期待と共に、私達は世界大会に向けて準備を始めた。




はい、ということで世界大会編という名のブレイヴ編です。
カードプールは星座編第4弾「星空の王者」まで、禁止制限も第5回制限改訂のルールを適用します。

【禁止】
・大天使ミカファール ・ライフチェイン ・イビルオーラ ・栄光の表彰台
【制限1】
・大天使ヴァリエル ・魔法監視塔 ・ストームドロー ・インビジブルクローク ・マインドコントロール

なお、この作品はあくまで『バトルスピリッツ デジタルスターター』の二次創作であるため、原作を意識して主人公以外のプレミは健在です。よろしくお願いします。

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