(すごい。ホントにスピリットが召喚されてるみたい)
フェレンガル王国に行くための飛行機の中で、私はマドカの言っていたバトルフィールドシステムの動画を信秀さんに頼んで見せてもらっていた。
プレイヤーがスピリットを召喚すると、カードの上にスピリットのホログラムが出現し、生物のように動く。
アタックすれば相手のフィールドへ向かってバトルする。
バトルの迫力もアニメに負けず劣らずの素晴らしいものだった。
ライフダメージはないけど、その方が安全でいいのかもしれない。
「ライフで受ける!」に憧れてた私としては少し残念だけど。
「BFSは今大会のエキシビションマッチが初公開になります。大会の優勝者とギャラクシー渡辺さんがバトルする予定ですね」
「なるほど」
まだ本格的に実装できるほど完璧じゃないのか。
でもおかげで負けられなくなったね。
絶対優勝してBFSバトルをするぞ!
「そうじゃ信秀殿。ちょうど時間もあるし、此度の旅で注意しておくことがあれば教えてほしいの」
「分かりました。そうですね……では、皆さん学生ということで外国語については不安に思われてるのではないでしょうか?」
「「うっ……」」
「なんじゃ。レツはともかくレイもその反応とは」
いや、英語とか無理ですよ私。
テストみたいなリーディングとライティングはまだ何とかなるけど、リスニングとスピーキングは自信がない。
ボディーランゲージにも限りがあるし。
「フェレンガル王国ではバトスピの影響もあり、日本語を覚えた人も少なからずいるのですが……今回はこちらの翻訳機を用意させていただきました。試してみましょう、『◼◼◼◼◼◼』」
え今なんて? 全く何言ってるのか聞き取れなかったんだけど。
ピピッ
翻訳が終わり、信秀さんは機械の液晶を見せてくる。
液晶には『私とバトスピをしませんか?』と書いてあった。
「今のはフェレンガル王国で使われている言語です。かなりマイナーな言語なので私もこれくらいしか話せないのですが、この翻訳機があれば現地の方とも会話できますよ」
「スゲー! これがあればテスト満点取れるんじゃね!?」
「いやこれ会話用のやつだから。でもこれすごい便利だね」
この時代ってまだGoogle翻訳すらマトモにできてないでしょ、多分。
それでこの精度の翻訳機とか、この世界の技術の発展の仕方がすごい。
いつか異世界転生装置とかも作っちゃうんじゃない?
「その他の注意点としましては、フェレンガル王国では都市部以外での治安はあまりよくありません。大丈夫だとは思いますが、街の外には行かないようにしてください」
光があれば闇もある、と。
急激なリゾート改革を行った国だ、問題もあったのだろう。
「これくらいですかね。それ以外は普通にリゾートですので、お楽しみいただけるかと」
「ふむ、了解した。気をつけよう。……さて、そろそろ着陸じゃな」
「マジか! もうフェレンガル王国に着くのか」
「いやインドネシアだから。そこからもう一度飛行機で移動ね」
◇◆◇◆
「すっげぇ……」
インドネシアで飛行機を乗り換えて3時間、ようやくフェレンガル王国に着いた。
空港からタクシーでホテルに移動。
その間に見える景色からもこの国の繁栄ぶりが分かる。
ぶっちゃけ住む世界が違いすぎてもう帰りたい。
「では、大会の日までは自由にお過ごしください。このホテルは1階にバトスピショップもありますし、街に出ればいくらでも見つかるでしょう。では、私は仕事があるのでこれで失礼します」
「ありがとうございました」
信秀さんは私たちをホテルまで送ってくれると、どこかへ行ってしまった。
ホテルは一人一部屋あてがわれていて、かなり広い。
うわ、キッチンまでついてるじゃん。
一応ホテルのレストランはあるけど、庶民な私には敷居が高い。
あとで食材を買ってきて作ろっと。
荷物の整理をしていると、ピンポンと部屋のインターホンが鳴った。
誰かなと思って見ると、ヒメ様だった。
「どうしたのヒメ様。何かあった?」
「いや、問題はない。先ほど信秀殿が下にショップがあると言っておったじゃろう。よければ一緒に行かぬかと思ってな」
「いいね。ならレツも誘おうか」
「そう思ってレツの部屋に行ったが、どこかに出かけたようじゃ。恐らく先に行っておるのじゃろう。他に行くところもないしの」
「なるほど確かに。じゃあ行こうかヒメ様」
◇◆◇◆
「うーん、やっぱりないか」
ホテルのショップに来た私たちは、カードが飾られているショーケースを見ていた。
外国で売られているカードなのに何故日本語?と思わなくもないが、まぁ気にしたら負けだ。
「何か探しておるのか?」
「うん。まあ目当てのカードはなかったんだけどね」
私のお目当てはもちろんガルード。
しかしここにも売ってなかった。
「大会の前に必要なカードは揃えておくのじゃぞ。始まってしまったらどうしようもないからの」
「あー、大丈夫大丈夫。大会用のデッキに必要なカードじゃないから。そういえばレツは?」
「あそこじゃ」
ヒメ様の視線の先にはフリースペースでバトスピしているレツの姿があった。
「『太陽神龍ライジング・アポロドラゴン』でアタック。『ナイト・ゴーン』を指定アタックだ」
「『ナイト・ゴーン』 で ブロック」
お、拙いけどホントに日本語だ。
信秀さんの話を聞いた時は半信半疑だったけど、少し安心した。
「『刃狼ベオ・ウルフ』の効果でライフを2つ、リザーブに置く。俺の勝ちだな」
「ライフ で 受けます。ありがとう ございました」
レツの対戦相手は金髪蒼眼の小学校くらい男の子だった。
あの歳でバイリンガルなんてすごいな。
「◼◼◼◼◼◼、◼◼◼◼◼◼◼◼」
「えーっと、『もう一度バトルしてくれませんか、あなたみたいな強い人に会ったのは初めてです』か。いいぜ、もう一度やろう!」
「はい。お願い します」
めっちゃ翻訳機使いこなしてる。
レツはもう一度あの子とバトルするようだ。
私も誰かフリーバトルに誘おうかな?
「◼◼◼◼◼、◼◼◼◼◼」
「ん?」
と、急に後ろから声をかけられた。
振り向くとそこには私たちより少し年上のお兄さんがいた。
「えーと、翻訳機翻訳機……『すいません、もう一度お願いします』」
「あー、キミたちここの言葉分からない? それはごめんね。いや、こんな所に可愛らしい女の子が2人もいるものだから、つい声をかけてしまったんだ。よかったら一緒にバトスピしないか?」
なんだ、バトスピのお誘いか。
まあ断る理由もないしいっか。
「『いいですよ。やりましょう。』……あ、ごめんヒメ様。フリー誘われたからやろうと思うんだけど、ヒメ様はどうする?」
「ならば妾は観戦させてもらおうかの。なにやら面白いことになっておるしの」
「そっか。『よろしくお願いします』」
「こちらこそ、よろしく」
◇◆◇◆
「先攻貰います。スタートステップ、コアステップ、ドローステップ。メインステップ、『ダンデラビット』を召喚。ボイドからコアを1個リザーブに置く。ターンエンド」
「では、ボクのターンだね。そうだな、『ノーザンベアード』を召喚。ターンエンドだ」
『ノーザンベアード』はブロック時にコアを増やす効果を持つ。
これは迂闊に攻められないな、攻める気もないけど。
「メインステップ、『ダンデラビット』を召喚。召喚時効果でリザーブに1個ともう1体のダンデラビットにコアを置く。マジック『リバイヴドロー』を使用、デッキから2枚ドロー。ターンエンド」
「もうコアと手札の数にだいぶ差がついちゃったな。『ガドファント』を召喚。Lv2にしてターンエンド」
しかしこの翻訳機、ホント便利だね。
おかげで言葉が通じなくてもサクサクバトルが進む。
ボディ・ランゲージでも何とかならないことはないけど、正確じゃないからね。
「メインステップ。『鉄騎皇イグドラシル』を召喚。召喚時効果で『ガドファント』と2体の『ダンデラビット』を手札に戻す。イグドラシルをLv2にしてターンエンド」
「白のカードも使うのか! おっと、ボクのターン。『ガドファント』を再召喚、さらに『ワルキューレ・ミスト』を召喚するよ。ターンエンドだ」
(『ワルキューレ・ミスト』かぁ、Lv2になったらちょっと面倒だけど……まぁあとはブレイヴさえ引けばいいし、あんまり関係ないかな)
『ワルキューレ・ミスト』はLv2、3効果で相手のスピリットがアタックした時に、スピリット1体を疲労させる。
数を並べるデッキとは相性が悪いけど、私には関係ない。
「メインステップ。『鉄騎皇イグドラシル』を転召、『終焉の騎神ラグナ・ロック』を召喚。召喚時効果、相手のスピリット全てを疲労させて6コアブースト」
「『ワルキューレ・ミスト』は相手のスピリットの効果を受けない。他の2体は疲労だ」
「増えたコアでネクサス『星空のコンサートホール』を配置。ターンエンド」
「おや、アタックはしないのかい? ならボクのターンだ。スタートステップ」
ドローステップーーと対戦相手がカードをドローした時、その表情が変わった。
んー、これはこれは。
「メインステップ。いい子が来てくれたよ。『月光龍ストライク・ジークヴルム』を召喚!」
わが友さんか、しかもホロ仕様。
カッコイイんだけど、傷が目立つんだよねアレ。
これがお相手さんのキーカードかな?
「ターンエンドだ」
「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ」
『砲凰竜フェニック・キャノン』こっちもいいカードを引きましたよ、と。
「メインステップ。『砲凰竜フェニック・キャノン』を召喚。召喚時効果で『ガドファント』『ワルキューレ・ミスト』を破壊する」
「なんてことだ! ブレイヴの効果で破壊されてしまうなんて!」
「『砲凰竜フェニック・キャノン』を『終焉の騎神ラグナ・ロック』に
まだコアが余ってるな。
『ダンデラビット』2体も召喚しておこう。
「アタックステップ、
「【激突】か! 仕方ない、『ノーザンベアード』でブロックしよう。ブロック時効果でボイドからコアを1個『ノーザンベアード』に置く」
「『ノーザンベアード』を破壊。もう一度アタック、回復と【激突】」
相手にこれ以上のBPのスピリットはいない。
「『月光龍ストライク・ジークヴルム』でブロックするよ。フラッシュタイミング、マジック『ブリザードウォール』を使用。このターン、ブロックされなかったスピリットのアタックでは、ボクのライフは1しか減らない」
「でも、ストライクジークヴルムは破壊される。再びアタック、回復」
「すまない、ストライクジークヴルム……アタックはライフで受ける。『ブリザードウォール』の効果でボクのライフは1しか減らないよ」
「ターンエンド」
止まっちゃったか。
まぁマジック1枚使わせたからオーケーってことで。
「メインステップ。あぁストライクジークヴルム、キミはなんて健気なんだ……強くなって帰ってきてくれるなんて! 召喚、『月光神龍ルナティック・ストライクヴルム』!」
ルナ友さん!
これもホロ仕様か、意識高いなぁ。
「『月光神龍ルナティック・ストライクヴルム』をLv2にしてターンエンド」
「メインステップ。『リバイヴドロー』で2枚ドロー。『鉄騎皇イグドラシル』を召喚、召喚時効果で『ダンデラビット』を手札に戻す。もう一度『ダンデラビット』を2体召喚する。イグドラシルをLv3にして【装甲:赤/白】を配る」
ターンをもらっても、コンボが完成したらもうやることはアドをとるくらいしかないんだよね。
「アタックステップ、
「『月光神龍ルナティック・ストライクヴルム』は【重装甲:可変】で白のスピリットの効果を受けない。アタックはライフで受ける」
そういえばそんな効果あったね。
あんまり関係ないけど。
「もう一度、
「『月光神龍ルナティック・ストライクヴルム』でブロック!」
BPの低い『月光神龍ルナティック・ストライクヴルム』は破壊される。
「
「フラッシュタイミング、マジック『ブリザードウォール』だ。アタックはライフで受ける」
持ってたかー。
2枚目の『ブリザードウォール』によって、相手のライフは1つ残る。
しかしルナ友が破壊される前に使えばいいのに。
まあCPUだし仕方ない。
「ターンエンド」
プレミだね、手札の『ウィッグバインド』を使ってればこのターンに決着がついたのに。
「来てくれ! ドローステップ! ……おぉ、神よ! メインステップ、『獅機龍神ストライクヴルム・レオ』を召喚!」
うお、まさかレオ友まで来るとは。
でもこれはホロ仕様じゃないんだね。
あ、サッポロがホロ枠だから、レオ友のホロ仕様は存在しないのか。
「『獅機龍神ストライクヴルム・レオ』をLv3にしてターンエンドだ」
「私のターン、メインステップはいいや。『終焉の騎神ラグナ・ロック』でアタック。効果で回復」
「『獅機龍神ストライクヴルム・レオ』よ! ブロックしてくれ!」
レオ友のBPは12000、
仮に破壊したところで、2体の『ダンデラビット』と『鉄騎皇イグドラシル』がいる。
ライフは1だから、もう『ブリザードウォール』も使えない。
「
「……潔く、ライフで受けよう。ボクの負けだ」
「はい私の勝ち」
お前のどこに潔さがあったんだよ。
潔かったらレオ友でブロックせずにライフで受けてるよ。
「対戦、ありがとうございました」
「いやー、キミ強いね。ボクもバトスピにはかなり自信あったんだけどな……ねぇ、もしかしてキミ、どこかの代表選手だったりする?」
「そうですよ。日本代表の1人です」
「やっぱり! ボクも代表選手の1人なんだよ。いやー奇遇だなー」
へえ、この人も代表選手だったのか。
「フェレンガル王国の代表選手、イ・アバジャイ殿じゃな。一目見てもしやと思ったが、まさか本人じゃったとは」
「ヒメ様知ってたの?」
「うむ。ある程度の対戦相手の情報は仕入れとる」
「それは光栄だ。じゃあ改めて自己紹介を。ボクはこの国の代表選手に選ばれたイ・アバジャイだ、よろしく。キミたちは?」
「妾は三葉葵姫子、そしてこっちがレイじゃ。我らは日本代表としてこの国に来ておる」
「氷田零です。よろしく」
「レイ。今回は負けたけど、本番ではボクが勝つよ。じゃあボクはこれで」
アバジャイは席をたつと、早足で店を出ていった。
あれで代表選手か……世界大会といっても、やっぱりあのゲームの延長だね。
ま、その方がBFSバトルに近づくからいいか!