「妾は初戦で敗退したが、2人にはまだ先がある。故に、妾はお主らのサポートをすることにした」
夕食の時間、気持ちの整理がついたヒメ様が私たちにそんなことを言ってきた。
「サポートって……具体的に何をしてくれるんだ?」
「まずは我らを誘拐した犯人を捕まえる。そして二度と同じ目に遭わぬよう、家から使用人をつれてきた。何かあれば彼らに頼め。お主らは件の輩のことは気にせず、大会に集中すると良い」
誘拐犯か。
そういえば、初戦の他の試合で棄権した人はいなかった。
てことは、多分狙われたのは私たちだけだ。
私たちを狙うって、犯人の目的は一体……
ま、どーでもいいや。
ヒメ様が何とかしてくれるらしいし、任せましょーと。
「ボディーガードがいれば敵も襲ってこないだろうし、明日は街のショップにいかないか? 元々いく予定だったしさ」
そんな予定あったね、誘拐されて行けなかったけど。
護衛がつくならまた攫われることもないだろうし。
「いいね。行こうか」
◇◆◇◆
街に出ると、前に信秀さんが言っていた通り、多くのバトスピショップがあった。
あまりに数が多いので、売られているシングルカードを一通り見たら次の店へと、どんどん消化していく。
ホントならフリー対戦とかもやりたいけど、そうなると時間がかかるからね、仕方ないね。
しかし、数が多いからといって、何でもあるわけではない。
実際、私が探していたカードはどこへ回っても見つからなかった。
私のお目当ては裏Xレア『鳥獣烈神ガルード』
颶風ガルードをやりたかったんだけど、そのキーカードが見つからない。
そういえばゲームでもガンディノスとか裏Xレアは入手しづらかったんだよねー。
なんだっけ、あのモヒカンとのトレードだった気がする。
別の店にも入るが、やはりという結果だった。
結局目に入った店全てを訪ねたが、1枚もない。
「珍しいカードか……街の外のあの店なら、もしかしたらあるかもしれないよ」
とはショップにいたお兄さんに聞いた話だ。
道を教えてもらい、そのお店を目指す。
しかし1歩街の外に出ると、そこは私たちには縁遠い世界だった。
「ここは……?」
背丈の低いボロボロの木造家屋が並んでいるお世辞にも清潔とは言えない街。
恐らく、貧民街だろう。
そういえばこの国って、急なリゾート改革で成り上がった国だっけ……そりゃこんな所もあるか。
もしかしたら政策のために追いやられた人達かもしれない。
住人と思しき人達は、こちらを見るとサッと視線を逸らす。
護衛の人達を恐れたのだろう。
いなかったら確実に襲われてたね。
「さっさと店に行って、戻ろう。あんまり長くいる所じゃないよ」
「お、おう……」
チラチラと見られながら、私たちは目的の場所へ向かう。
ガセを掴まされたかもーーそう思った時もあったが、聞いていた場所には小さな看板をかけたお店があった。
「(こんな所で客いるのかな)早速入ってみようか」
「え、大丈夫か? いきなり襲われたりしないよな……」
その時はボディーガードの人の仕事だよ。
私は店の扉を開け、中に入る。
店内はボロボロでショーケースなどはなく、ただカウンターにカードが山積みされていただけだった。
「……いらっしゃい」
カウンターの奥から隻眼の店主が声をかける。
うっわすごい迫力、あんまり関わりたくないなー。
私は椅子に座り、積まれたカードを見る。
そして噂の通り、珍しいカードだらけだった。
「(すごいな。プロモってこの世界では手に入りにくいのに)これ、幾らですか?」
『光ってるやつは1000G、光ってないやつは500Gだ』
マジか!すっごいお買い得じゃんそれ。
持っていないカードをいくつか見繕って購入する。
冬の大三角や春の大三角もあったので買っておいた。
「すいません。探してるカードがあるんですけど、この店にあるのってこれで全部ですか?」
「……いや、奥にまだある。どんなカードだ」
「『鳥獣烈神ガルード』ってカードです」
「……それならあるぞ。何枚欲しい」
「え、あるの!?」
やった! ついに颶風ガルードが組める!
店主さんにはガルードを3枚頼んだ。 少しして奥から戻ってくると、店主さんは『鳥獣烈神ガルード』を3枚、カウンターの上に置いた。
代金を払おうと財布を取り出すと、店主さんは私の手をガッと掴んだ。
すぐ護衛の人が反応し振り払うが、店主さんはその片方しかない目でずっとコチラを睨んでいる。
「……そのカードは、表に出回ってないーー裏のカードだ。お前みたいな小娘が、何故知っている?」
裏のカード?裏Xレアってことかな。
というか知識くらいはありますよ。
昔これに酷くやられたんだから。
「……代金はいらねぇ。そのカードを使って俺とバトルしろ。勝ったらそのカードはくれてやる」
「バトル?」
「そうだ。バトスピで決めようって言ってるんだ」
うーん、これもしかしてヤバい店に入店した?
まあバトスピに勝てばもらえるならそれでもいいか。
「10分ください。デッキ組むので」
「いいぜ。準備が出来たら声をかけろ」
「10分って……大丈夫か?」
「大まかに形になってればどーにでもなるよ」
『鳥獣烈神ガルード』『颶風高原』を3枚ずつ、あとは低コストのコアブ要員と青の手札交換。
あ、疲労マジックも入れないとね。
ならウォール系はいらないや。
「よし出来た」
「すげぇ……ホントに10分で作ってる」
「出来たみてぇだな。……やろうか」
◇◆◇◆
「『ダンデラビット』を召喚。召喚時効果でボイドからコアを1個、リザーブに置く。ターンエンド」
「俺は『機人アスク』を召喚する。ターンエンドだ」
ガルードを賭けて始まった店主さんとのバトル。
相手は白かな?
『機人アスク』なんて昨今見ないからなー。
「『バルカン・アームズ』を召喚。召喚時効果で3枚ドローして2枚破棄。『バルカン・アームズ』を『ダンデラビット』に
『バルカン・アームズ』は召喚時に『ストロングドロー』を内包したブレイヴ。
未来では制限入りしているけど、それは逆に強さがお墨付きということだ。
「メインステップ。『共鳴する音叉の塔』を配置。『偵察機マグニ』を召喚。ターンエンド」
『共鳴する音叉の塔』はLv1、Lv2効果でお互いのコスト4以下のスピリットの召喚時効果は発揮しない。
Lv2になると相手がドローステップ以外でドローした時、自分も1枚ドローできる効果を持つ。
召喚時効果が使えないのは、かなり辛い。
「マジック『ストロングドロー』を使用。3枚ドローして2枚破棄する。ネクサス『颶風高原』『オリンスピア競技場』を配置してターンエンド」
『共鳴する音叉の塔』がLv1の内にドローカードは使っておこう。
「『獣機合神セイ・ドリガン』を召喚。転召の対象は『偵察機マグニ』だ。ターンエンド」
『獣機合神セイ・ドリガン』か。
Lv2、3だとバトル時に【転召】を持たないスピリット1体を手札に戻す。
鬱陶しいからLv1の今処理したい。
けどこの手札だと厳しいなー。
「『鳥獣烈神ガルード』を召喚。『颶風高原』の効果で5コアブースト」
『颶風高原』は自分が【暴風】を持つスピリットを召喚した時、その【暴風】で指定された数ボイドからコアをそのスピリットに置く。
『鳥獣烈神ガルード』は【暴風:5】を持つ。
つまり召喚するだけでコアを5個も増やせるコンボだ。
しかもこれは重複し、2枚あれば10個、3枚なら15個という恐ろしさ。
「2体目の『鳥獣烈神ガルード』を召喚。もう一度5コアブースト」
『颶風高原』を配置し、『鳥獣烈神ガルード』で大量のコアブースト。
増えたコアでさらに展開する。
これが「颶風ガルード」の力だ!
と、言ってもこれ以上続くカードはないんだけどね。
「アタックステップ」
「『獣機合神セイ・ドリガン』の効果発揮。『ダンデラビット』はステップの最初に必ずアタックしろ」
セイドリガンのアタック強制効果か。
まあ元々アタックする気だったし。
「『ダンデラビット』で
「そのアタックはライフでーー」
「あ、フラッシュあります。マジック『ソーンプリズン』。相手は相手のスピリット2体を疲労させる」
「……『機人アスク』と『獣機合神セイ・ドリガン』を疲労させる」
これで店主さんのスピリットは全て疲労状態。
そしてさらにここでガルードの効果が発揮する!
「『鳥獣烈神ガルード』のアタックステップ中の効果発揮。相手のスピリットが疲労した時、そのスピリット1体につき相手のデッキを3枚破棄。2体疲労したので6枚、ガルードが2体いるので計12枚破棄する」
これがガルードのデッキ破棄。
でもまだ半分だ。
「ちっ……フラッシュはもうねぇな? 今度こそライフで受ける」
「『鳥獣烈神ガルード』でアタック」
「ライフで受ける」
「『鳥獣烈神ガルード』のアタック時効果、相手のライフを減らした時デッキを12枚破棄する」
『鳥獣烈神ガルード』のアタック時効果。
このスピリットのアタックで相手のライフを減らした時、相手のデッキを12枚破棄する。
ブロックしたら【暴風】で疲労してデッキ破棄、ライフで受けてもデッキ破棄。
この破棄の嵐からは逃れられない。
……てあれ、これLOいけるのでは?
「もう1体の『鳥獣烈神ガルード』でアタック」
「ライフで受けるしかねぇよ」
「じゃあ12枚破棄ね」
この破棄で、店主さんのデッキは0になる。
うん、セイドリガン処理する前に終わったや。
「ターンエンド」
「……俺の負けだ。そのカードはくれてやる」
即席のデッキでも何とかなったね。
やっぱ強いなー颶風ガルード。
でも思ってたより手札が減っちゃってたし、リバイヴドローでも入れようかな?
「ありがとうございました。じゃあレツ、帰ろっか」
「あ、ちょっと待ってくれ……すいません、このカードください」
「……全部で3000Gだ」
「はい。ありがとうございます」
レツも何かカードを買ったらしい。
あの山にあったカードだと……スピカかな、多分。
2人とも新たなカードを手に入れ、ホテルに戻る。
さあ、明日は2回戦だ。
どのデッキ、どのカードで戦おうか。
選択肢が多くて悩む。
部屋の灯りは消えぬまま、ただ夜は更けていく。