2回戦目の対戦相手はイギリス代表の紳士だった。
『白羊樹神セフィロ・アリエス』でスピリットを疲労させて『宝瓶神機アクア・エリシオン』で回復制限するコントロールデッキ。
しかし色の違うXレアを2枚揃えるのには時間がかかる。
しかもそれで得られるシナジーでもゲームを決定するほどの力はない。
要するに圧勝でした。
序盤は『月牙龍ストライクヴルム・シリウス』に『砲凰竜フェニック・キャノン』を
それだけで普通に勝てた。
続いて3回戦目、準々決勝。
対戦相手はIBSAの代表者、使用デッキはWノヴァデッキ。
私のデッキには普通にブレイヴが入っているからダークヴルム・ノヴァの相手は面倒だった。
まぁ面倒なだけ。
『月華龍ストライクヴルム・プロキオン』と『シユウ』で自分のライフを増やしながら相手のライフを削り、最後は『ウィッグバインド』で封殺して勝利。
破壊されてもフィールドに残る効果は偉大なり。
ともかく、これでベスト4進出となる。
そして私のこの勝利が世界大会に波紋を呼んだ。
これから多くの人が、私の勝敗に一喜一憂することになる。
何せ私の優勝予想の倍率は300倍以上。
それが当たりそうとなったら、まあ慌てる慌てる。
主に、反対の意味で。
32人の出場者がおり、その最下位の人に大金を賭ける酔狂な人がいるだろうか? いる訳がない。
つまり私が優勝すると、賭けに負けて大損する人ばかりだということだ。
「レイ、お主はもうホテルから出るな。理由は分かるじゃろ」
そんな状況なので、ヒメ様からこう言われるのも仕方ないだろう。
準々決勝の後、用を足そうと御手洗にいくと、中で暴漢に襲われそうになった。
護衛の人たちがすぐ来てくれたから助かったけど、ここから先も同じようなことが起こるかもしれない。
外出を控えるよう言われるのも納得だ。
「前の敵の正体も分かっておらぬのに、次から次へと襲われてたら身がもたぬ。食事にも気をつけよ、毒くらい盛られておるかもしれん」
「なーんで世界大会のレートを1万ドルとかにしたかな。100万円くらいでしょ? 頭おかしい」
まじでIBSA、価格設定間違えてるって。
個人戦だけでも何十億と動いてる、優勝予測なんて何兆レベルの賭場だ。
そりゃあ命も狙われますわ。
「レイのチップを買った者の話なぞ聞かんからの……味方はおらず、ただただ敵だけが多い現状じゃ」
「あー、IBSAは? 私が勝てば、あそこが1番儲かるでしょ」
「仮にも運営じゃ。一個人に肩入れはできんときた。まったく、原因はそちらにあるというのに……」
ヒメ様と話しながら、デッキを調整する。
世界大会もベスト4が決まった。
次が準決勝、私を優勝させたくないって動いてる人も多いらしいし、そろそろアレを使ってド肝抜かしてやりますか。
「どうしたレイ、悪い顔になっておるぞ」
「売られた喧嘩を買ってあげるだけだよ。……そのための踏み台になる次の対戦相手は可哀想だけど」
「勝利宣言か。さすが、頼りになるの」
世界大会準決勝。
私はついに「姫ループ」に手を出すことにした。
◇◆◇◆
運営の都合で準決勝からはバトルをする部屋が変わり、それもあって私はいつもより早く現場に来ていた。
初見の場所は迷うからね、ギリギリに行くのは怖い。
「おおー、いい設備の部屋だね」
準決勝ともなると、撮影機材やら何やらもグレードアップしており、いつもより広い部屋でないと入り切らないらしい。
精密機械が多いらしく、関係者以外立ち入り禁止と言われたので護衛の人には外で待っていてもらっている。
機材を壊さないように椅子に座って待っていると、今日の対戦相手がやってきた。
「まさか、またレイと戦うなんてね」
「これで3回目のバトルかな?」
準決勝の対戦相手はアバジャイ。
アバジャイには申し訳ないけど姫ループの餌食になってもらう。
そしてレツに勝って優勝して、私を狙ってきた奴らを全員破産させてやる。
「……レイ、ボクは負ける訳にはいかない。どんな手を使っても、勝たないといけない」
「私も負けないよ。そのために最強のデッキを持ってきたしね」
「レイは色々なデッキで戦ってたね。予選でラグナロックを使ったと思えば、初戦は青だし、その後も緑白、白黄と……正直レイがどんなカードバトラーなのか、未だに分からない」
あの店で色んなカードを手に入れたから、使ってみたかっただけなんだけどね。
そっか、外から見たら何をしてくるか分からない不思議な人に見えたのか……。
「別にそういう意図はないよ。あー、今日使うデッキは黄色デッキだよ。どんなデッキなのかは秘密だけどね」
「いや、もうどうでもいいかな、そのことは」
「え?」
アバジャイがおかしなことを口にする。
対戦相手のことを、どうでもいいだなんてーー
「レイはボクより強い。2回も負けたんだ、さすがに分かるさ。……やっぱり、
「え?」
初戦? それってーーまずい! 今は護衛の人がいない!
「ごめんねレイ。ボクは何をしても勝たないといけない。たとえそれが、人道に反することでもね」
背後に気配を感じて抵抗しようとするが、時すでに遅し。
後ろから伸びてきた腕は私の首に絡みつき、一瞬の苦痛と共に私の意識は遠ざかっていった。
◇◆◇◆
(……ここは?)
私は真っ白な空間に立っている。何もない、ただの無の空間。
(なんだここ。なんにもない。なんでこんな所に……?)
あ、思い出した。
アバジャイが私たちを誘拐して棄権させようとしたこと、そしてアバジャイが再び襲ってきたこと。
(そっか……死んだのかな、私)
人は死んだら天国にいくというが、もしかしてここが天国なのだろうか。
こんな何もない無が。
「まったく。見てられないね」
(……誰?)
いつからそこにいたのか、白い人影が私に話しかけてくる。
「ボクかい? ボクは君のように生きる力もない、ただのヘタレな亡霊だよ」
(私のように? ダメだよ、私はもう死んでるんだから)
「君はまだ生きている」
亡霊がそういうと、私の前にバトスピのカードが現れた。
亡霊も同じものを持っている。
「ボクとバトルをしてくれ」
(……バトルって、バトスピ?)
「そうだ」
カードをとり、確認する。
それは
(……どうして)
「このバトルに理由はいらない。やるのか、やらないのか。それだけだ」
やるか、やらないか。
ここにはカードがあって相手がいる。ならーー
(やるよ)
そういうと亡霊はコクリと頷き、さらにフィールドとコアが現れた。
「ボクはそちらのルールには詳しくない。その
亡霊はデッキをフィールドに置き、カードを引く。
私もカードを4枚引き、バトルが始まる。
「ボクが先攻だ。スタートステップ。ドローステップ。メインステップ。『冥機グングニル』を召喚。ターンエンド」
次は私のターン。
亡霊が、相手が何を思っているのかは知らない。
私も、私が何を思っているのか分からない。
分からないことだらけだ。
けど、何をすべきかは私のカード達が教えてくれた。
(メインステップ。
同名カードがないのでデッキから3枚トラッシュに。
その中の[界渡/化神/光導&コスト3以上]のスピリット1体につきコアを1個、創界神ネクサスに置く。
(アポローンにコアを3個追加)
「
(『天星12宮 光星姫ヴァージニア』を召喚。
『天星12宮 光星姫ヴァージニア』は召喚時、デッキから3枚オープンし、その中のヴァージニア以外の「光導」を持つカード1枚を手札に加える。
(『月紅龍ストライク・ジークヴルム・サジッタ』を加える。ターンエンド)
「もう1体『冥機グングニル』を召喚。2体のグングニルをLv2に上げる。アタックステップ、『冥機グングニル』でアタック」
グングニルはBP4000、ヴァージニアはBP3000。
(フラッシュタイミング。アポローンの
「それが、
(アタックはライフで受ける)
『光導創神アポローン』の
BP4000の『冥機グングニル』が破壊対象だ。
(私のターン。『月紅龍ストライク・ジークヴルム・サジッタ』を召喚。
さらにヴァージニアのコアをストライクジークヴルム・サジッタに移動。
ヴァージニアは消滅するが、これでストライクジークヴルム・サジッタにはコアが2つ乗っている。
(アタックステップ。『月紅龍ストライク・ジークヴルム・サジッタ』でアタック。アタック時効果、【界放】。アポローンのコアを1個、ストライクジークヴルム・サジッタに置くことでBP12000以下の相手のスピリットを破壊する)
「『冥機グングニル』は破壊か」
(界放によりLv2となったストライクジークヴルム・サジッタの効果。このスピリットが相手のスピリットを破壊した時、相手のライフのコア1個をリザーブに置く)
「さらにライフまで……!」
このためにヴァージニアのコアを移動させた。
でも、まだ途中だ。
(ストライクジークヴルム・サジッタの効果。相手のライフが減った時、1枚ドロー)
「これでもまだアタック時効果を解決しただけか。ライフで受ける」
(効果で1枚ドロー。ターンエンド)
「メインステップ。『鎧神機ヴァルハランス』を召喚。【装甲:∞】で赤のスピリット、ネクサス、マジックの効果は受けない。ターンエンド」
【装甲:∞】。相手のフィールドにあるシンボルの色の効果を受けない、だっけ。
でも、そんなの関係ない。
(私のターン。『月紅龍ストライク・ジークヴルム・サジッタ』にコアを全てのせる。アタック)
「スピリットは召喚しないのか。ボクはフラッシュはないよ」
(フラッシュタイミング、煌臨。『光星神ゾディアック・レムリア』。ソウルコアをトラッシュに置き、ストライクジークヴルム・サジッタに重ねる)
「赤いコアはそうやって使うのか!」
(煌臨時効果発揮。1コスト支払い2体目の『光星神ゾディアック・レムリア』をLv2で召喚。効果でライフを1つ、リザーブへ)
『光星神ゾディアック・レムリア』は煌臨時に手札の「系統:光導」を持つスピリットを1コスト支払って召喚できる。
さらに自分のアタックステップなら、相手のライフのコア1個をリザーブに置く。
(さらに
「ボクの残りライフは2個……仕方ない、『鎧神機ヴァルハランス』でブロック。破壊される」
(『光星神ゾディアック・レムリア』、アタック。アタック時効果で『天星12宮 氷星獣レオザード』を召喚。ライフを1つリザーブへ。
「ブロックできるスピリットはいない。マジックもない。ライフは1……うん、ボクの負けだ。ライフで受ける」
(あっ……)
その宣言と共にフィールドとカードは消え、再び無の世界に戻る。
「これが、君の過去か」
(……過去)
「そして、未来でもある」
白い亡霊が、ゆっくりと色を取り戻していく。
白い髪で眼鏡の男の子。
私はこの人を知っている。
そうだ、よく考えればヒントはあった。
ヘタレな亡霊だとか、白のカードを使うとか、ソウルコアを知らないとか。
(ふふっ、ありがとね。
そういうと、自称ヘタレな亡霊さんの顔が少し緩んだ気がした。
「行くんだ氷田零!君には、未来を掴む力がある!」
うん、そうだ。
私はこんな所で止まれない。
ここで死んだら、貴方に申し訳ない。
「もう一度、あの世界に飛び込むんだ! 異世界の扉を開ける言葉はーー」
「「ゲートオープン、界放!!!」」