「『原始鳥フェニキオス』でアタック!」
「ライフで受けるしかないよー!負けたー!!!」
レツがバトスピを始めて3日経った。
レツは広場や学校など人の集まる場所で色々なカードバトラーと戦って経験を積んでいるらしい。
イツキはレツと何度もバトルをしたみたいだけど、あまり勝率はよくないようだ。
しかし、
「ねえレツ。そろそろ私とバトルしようよ」
「あー……俺もできるならやりたいんだけど、マドカがまだ早いって聞かないんだよな。カードも揃ってきたし、もういいと思うんだけど」
そう。
3日も経っているのに私は未だレツとバトルが出来ていない。
というのも、私がレツとバトルしようとするとマドカが「初心者を虐めるのはよくない」と止めてくるのだ。
それを言ったら私はマドカを虐めてることになるし、むしろ私は相手をしない方が虐めだと思うんだけど、マドカは聞く耳を持たない。
そしてレツもレツで、素直にマドカの言うことを聞いてバトルを拒否してくる。
めっちゃ尻に敷かれてますねレツさん。
「なあマドカ、まだダメなのか?俺も大分強くなったと思うんだけど」
「ダーメ。レイちゃんはホント強いのよ?今のレツが戦っても絶ッ対勝てないわ」
「いや、それは分からないよ」
バトスピに絶対はない。
どんなに強い人も手札が事故れば負けることだってあるし、勝てる盤面からフラッシュの1枚で大逆転、なんてこともある。
まあ、それがあるから面白いんだけどね。
「分かるわよ。それはね、レツには決定的に足りないものがあるからよ!」
「「足りないもの?」」
なんだろう。
カードも揃ってきてるし、
そんなレツに足りないもの……うーん、パッと思いつかない。
「それはね……『Xレア』よ!」
…………は?
「Xレアか。確かにまだ持ってないけど、そんなに違うものなのか?」
「もちろんよ!Xレアってホントに強力なカードなのよ!?これ1枚で勝負が決まるくらいにね!(ドヤァ)」
ドヤァじゃねえよ。
いやマドカの言うことも間違ってはいない。
それ1枚で勝負が決まるカードってのは確かにある。
だけどこの頃のXレアにそんな力はないよ?(ミカファールを除く)
「私だって『暴双龍ディラノス』があるから、弟やレイちゃんと渡り合えてるんだから。それがないレツに、敵うはずないじゃない」
渡り合えてない。
マドカとの戦績は私の全戦全勝だ。
「ディラノスは強かったな!前にマドカとのバトルした時はアイツにやられたし」
「そうでしょそうでしょ!」
え、あの
驚きなんだけど。
「Xレアか。パックは買ってるんだけど全然当たらないんだよな」
「そうそう当たらないからXレアなのよ(フフン)」
「別にXレアがなくても強いデッキはあるでしょ」
「へぇ、例えば?」
うーん、Xレアがない強デッキって何があったっけな。
『2コスビート』『姫ループ』『ギ・ガッシャループ』……あと赤緑連鎖もXレアなくても何とかなる気がする。
といっても
「レツ、ちょっと持ってるカード全部貸して」
「え? いいけど……はい、何に使うんだ?」
まあとりあえず『ストームドロー』3枚、『ライフチェイン』は2枚でいいや。
あとは低コストとドローカードを多めにデッキを組んで、と。
「お待たせ。出来たよ、
「わ、私???え、い、イツキとかじゃダメ???」
「いやXレアがどうこうって言い出したのはマドカだし、そこでイツキに投げるのは違うんじゃないか?」
「レ、レツ〜〜!!!(泣)」
レツからの援護射撃も入る。
逃げ道はない。
「デッキが違うし、手は抜かないよ。覚悟の準備をしておいてね」
「…………」
「て、あれ?マドカ?おーい」
「…………やるわ(ボソッ)」
「うん?」
「やってやろーじゃないの!!!いつもトールにやられてる恨み、返してあげる!!!」
うわっ、びっくりした。
急に大声を出すの、驚くからやめてほしい。
「やるわよ!Xレアの力、見せてあげる!」
へぇ、ならばこちらも見せてあげよう。
未来の制限・禁止カードの力を!
◇◆◇◆
マドカとのバトル。
じゃんけんに勝ち、先攻を選択した私は『ビートビートル』と『命の果実』を召喚・配置してターンエンドした。
2ターン目、マドカのターンだ。
「メインステップ!『リザドエッジ』『ドラグサウルス』を召喚!召喚時効果で『命の果実』を破壊よ!」
「はい、『命の果実』は破壊される」
『ドラグサウルス』は召喚時にネクサス1つを破壊する効果を持つ。
早々に軽減とドローソースを失ったのはかなり辛い。
「『ドラグサウルス』をLv2にしてターンエンド」
「おお、これはマドカの方が有利なんじゃないか?」
「まだ2ターン目だよ。マジック『ストームドロー』を使用」
『ストームドロー』は3枚ドローして2枚破棄する、強力なドロー効果を持つカードだ。
しかもそのコストは2ととても軽い。
さすが禁止カード、めっちゃ強いです。
「『ロクケラトプス』をLv2で召喚。アタックステップ『ロクケラトプス』でアタック」
「ライフで受ける」
「じゃ、ターンエンドで」
『ロクケラトプス』はコストの割にBPが高くて使いやすい。
Lv2維持コスト2でBP3000、Lv3維持コスト3でBP4000は初期の環境では破格だ。
「メインステップ『リザドエッジ』と『アイバーン』を召喚するわ!余ったコアは『ドラグサウルス』に置いとくわね。アタックステップ」
(『リザドエッジ』に置けばLv2に上がるのに)
さすが何世代も前のゲーム、NPCが狂ってる。
嘘みたいだけど、ホントにやるんだよこーゆーの。
「『アイバーン』でアタック!」
「フラッシュはないよ。ライフで受ける」
「『ドラグサウルス』もアタックするわ!」
「同じくライフで受ける」
「ターンエンド!」
さて、私のターン。
「メインステップ。2枚目の『ストームドロー』3枚ドローして2枚破棄」
これでデッキの1/3は掘った。
そして欲しかったカードもちゃんと来てくれた。
「『原始鳥フェニキオス』を召喚。不足コストは『ビートビートル』『ロクケラトプス』より確保」
「私がレツにあげたカードね。効果は知ってるわ。私のスピリットは全部破壊される」
『原始鳥フェニキオス』は召喚時、BP3000以下のスピリットすべてを破壊する。
マドカの『リザドエッジ』『アイバーン』『ドラグサウルス』は全て破壊対象だ。
「アタックステップ。『原始鳥フェニキオス』でアタック」
「ライフで受ける」
「ターンエンド」
これでマドカのライフは2。
ここからはCPUが防御に回って全然アタックをしてこなくなる。
相手がアタックしてこないならこちらも防御を考える必要がない。
後はイケイケどんどんで勝てる。
「メインステップ。『ドラグサウルス』を召喚するわ。そしてネクサス『燃えさかる戦場』を配置。『燃えさかる戦場』をLv2『ドラグサウルス』もLv2に上げてターンエンドよ」
『燃えさかる戦場』のLv2効果はターンの最初のアタックに相手は可能ならブロックしなければならないという擬似【激突】
どうせアタックしないなら『ドラグサウルス』をLv3にすればいいのに、CPUはそれをしない。
「メインステップ。マジック『ダブルドロー』を使用。デッキから2枚ドローする。さらにマジック『ライフチェイン』。フェニキオスを破壊することでボイドからコアを7個リザーブに置く」
「7個!?」
『ライフチェイン』は自分のスピリット1体を破壊し、そのコストの数だけコアブーストするカードだ。
『原始鳥フェニキオス』のコストは7、つまり7コアも増やすことができる。
もちろん今は禁止カードとなっている。
「『大鎌フール・ジョーカー』をLv2で召喚。アタックステップ、フール・ジョーカーでアタック。アタック時効果で『ドラグサウルス』を破壊する」
「くっ、ライフで受けるわよ!」
「ターンエンド」
『大鎌フール・ジョーカー』はアタック時にBP3000以下のスピリットを破壊できる。
コスト6のくせに効果はこれだけだが初期環境なら十分な強さだ。
「メインステップ。ふふっ、遂に来たわよ!まずは『ゴラドン』を召喚。そして!赤のXレア『暴双龍ディラノス』を召喚!!!」
(あ、勝った)
マドカはXレアを召喚して得意になってるが、実際はそれで勝敗が見えた。
マドカのライフは2。
フィールドには『ゴラドン』『暴双龍ディラノス』
そして手札は0。
私のフィールドには『大鎌フール・ジョーカー』がいて、手札には『ドラグノ偵察兵』が2枚。
フール・ジョーカーのアタック時も考えると十分打点が足りてる。
ドヤ顔でターンを返したマドカの顔が泣き顔に変わるのは、そのすぐ後だった。
◇◆◇◆
「はい私の勝ち」
「うわーん!負けたぁぁぁ!!!(泣)」
「だ、大丈夫か!?」
「大丈夫じゃない!うわーん!(泣)」
「レツ、カード貸してくれてありがとう。はいこれ」
「うん?これって」
泣きわめくマドカを無視してレツにカードを返す。
それと同時に1枚のカードを渡した。
「『龍皇ジークフリード』赤のXレアだよ。私は使わないから、よかったらどうぞ」
「え!いいのかレイ!?」
「うん。『龍皇ジークフリード』は破壊時にライフを1つ回復する効果がある。さっき使った『ライフチェイン』と組み合わせても面白いかもね」
「そうか……ありがとな!レイ」
「どーいたしまして。それよりも……えい!」
「痛い!」
まだ泣いているマドカにチョップを食らわす。
「ちょっとー!何すんのよ!」
「まったく。レツに良い所見せたい気持ちも分かるけど、もうちょっと私達を信用してよ。そんなことしなくても見捨てたりしないから」
「ん?なんの話だ?」
「何って、マドカがレツの成長にビビってるって話だよ。どーせレツに私とバトルさせないのも、『レツがレイちゃんに勝っちゃったら、いつもレイちゃんに負ける
「わーわーわー!!!!!(叫)」
マドカに口を塞がれて言葉が切れる。
ドンピシャだったのか、耳まで真っ赤にして涙目で睨んでくる。
ごめんて。
「とにかく、これでマドカもレツに私とのバトルを禁止する理由なんてないでしょ。さあレツ、バトルしようか。バトスピの大先輩として、私は絶対に負けないよ」