レイちゃんは強いカードバトラーと戦いたい   作:OZo-2

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ターン21 裏Xレアの力

 

 

【レツ視点】

 

バトルスピリッツ世界大会。

その初戦を前に、俺たちは一度誘拐された。

 

その主犯はフェレンガル王国の代表選手の1人、アバジャイ。

しかしレイ曰く、まだその裏に黒幕がいるらしい。

 

決勝戦の前にカタをつけようと、俺たちは3人でその黒幕の所へ乗り込むーーはずだった。

 

「レイは行くな! お主は敵が多すぎる!」

 

とはヒメの台詞だ。

世界大会で公式に行われているギャンブルの配当で、レイは多くの人の恨みを買ったらしい。

レイを外に出すのは危険だからと、俺とヒメの2人で行くことになった。

 

「せっかくカッコつけたのにそれはないよー!」とレイは嘆いていたが、ただでさえ危険な黒幕がいる所に乗り込むのに、他の奴らの相手はしてられない。

レイには悪いが、俺とヒメだけで解決した方が良いだろう。

 

4人のボディーガードを連れて、例の店へ向かう。

 

珍しいカードを多く扱っていたのは、オーナーが元IBSAの一員で、カードを横流ししてもらっていたかららしい。

ヒメが調べた情報だと、そいつがIBSAを辞める原因があのBFS(Battle Field System)にあり、騙されたアバジャイたちはBFSを破壊するために、これまでの幾つもの犯罪を行ったそうだ。

過去に何があったのかは知らないが、レイやヒメを危険な目に合わせたことは許せない。

 

「.......いらっしゃい」

「我らを歓迎してくれるとは、随分優しい悪党じゃな」

「その感じだと、諸々バレちまってるってことか」

 

店のオーナーである隻眼の男は変わらずそこにいた。

初めて会った時からヤバい雰囲気を感じていたが、まさかこの人が黒幕だったなんて。

 

「……渡雷烈。前に来た時は白髪の嬢ちゃんに隠れてて気づかなかったが、お前がやってくれたらしいじゃねぇか。あのブラックゴートを壊滅させたんだってな」

「ブラックゴート……じゃと!?」

「お前も、ブラックゴートの仲間なのか!?」

「取引相手みたいなもんだ」

 

ブラックゴートまで関係してたのか……!

ブラックゴートの本体は潰したが、末端はまだ残っている。

この国にまでその根が広がっていたなんて。

 

「結構いい金蔓だったんだぜ? そのおかげでこんなリゾートでいい暮らしが出来てたんだ」

「……なるほど。かつてIBSAがブラックゴートに対して何もしなかったのはお主が裏で手を回していたから、という訳じゃな」

「そういうことだ」

 

そういえば、ヒメはこの隻眼の男が元IBSAのメンバーだとも言っていた。

IBSAがブラックゴートを認知していながら何もしていなかったのは、この男の仕業だったのか。

 

「ブラックゴートの賭けバトスピをさらに面白いバトルにするために裏Xレアを作って売り捌いた! ……はぁ、あのBFSさえなければ、俺はまだまだ遊べただろうに」

「BFS……? なんでBFSが関係するんだ?」

 

その質問に答えたのは、隻眼の男ではなくヒメだった。

 

「こやつがIBSAを解雇された遠因じゃ。自分が作った裏Xレアカードのスピリットを召喚しようとして失敗した。まったく、データベースにないカードなぞ実体化するはずなかろうて……」

「うるせぇ! 自分のスピリットが実体化する! それがどういうことか、お前には分かんねぇだろうな!」

 

BFSはスピリットを実体化させる夢の装置。

そこで男のスピリットが実体しなかったために全てが露呈し、この男の夢は崩れてしまった。

 

「結局は逆恨みじゃろ。まともな人生を過ごしておれば、そうはならんかったじゃろうに」

「……逆恨みか、違いねぇ。俺は全てを恨んださ。バトスピも、IBSAも、BFSも! だけどな……カードだけは、スピリットたちだけは恨めなかった」

 

この男もナナシと同じく、バトスピを金儲けの手段としてしか見てこなかった、はずだ。

でも、そう言葉を綴った男の眼は、なんというか、悲しそうで、嬉しそうだった。

 

「さて、もういいじゃろう。観念してお縄につけ」

「……あぁ。今更どうのこうのする気はない」

「よし。じゃあお主ら、捕らえよーー」

「待ってくれ!」

 

ヒメが使用人に指示を出そうとしているのを止め、俺は隻眼の男の前に立つ。

 

「俺とバトルしてくれ」

「…………は?」

「あんたが恨めなかった、あんたのスピリット達を見せてくれ」

 

セントラルタワーでのバトルの後、ナナシは失意のまま建物の崩壊に巻き込まれた。

 

俺はナナシを救えなかった。

俺は、もう誰にもアイツのようになってほしくない。

救える人は、みんな救いたい。

 

「頼む。俺とバトルしてくれ」

 

この人も分かってるはずだ。

ホントはバトスピが大好きなんだって。ただ道を誤っただけだ。

ナナシと同じように。

 

俺はこの人に、もう一度バトスピの楽しさを思い出させる。

それが、今の俺がやるべきことだ。

 

 

◇◆◇◆

 

 

「……ホントにやるのか」

「ああ。俺のターンからだ。『ダンデラビット』を召喚。召喚時効果、ボイドからコアを1個リザーブに。ターンエンド」

「『戦竜エルギニアス』を召喚。ネクサス『オリンスピア競技場』を配置。ネクサスをLv2にしてターンエンドだ」

 

前にこの人がレイとバトルをしていた時は白デッキを使っていた。

しかし今使っているのは青のカードだ。

多分、デッキそのものが変わっているのだろう。

 

「メインステップ。『アクゥイラム』をLv2で召喚。ターンエンド」

 

『オリンスピア競技場』の効果で俺は合体(ブレイヴ)してないスピリットでアタックする時、リザーブのコアを1個トラッシュに置かなければならない。

序盤でコアが足りない今は、スピリットを召喚しても攻められない。

 

「ネクサス『灼熱の谷』を配置。マジック『サジッタフレイム』を使用。『ダンデラビット』『アクゥイラム』を破壊する。ターンエンド」

 

『サジッタフレイム』は合計BP5000まで相手のスピリットを破壊できる。

『ダンデラビット』はBP1000、『アクゥイラム』はBP3000。

合計BP4000で破壊できる。

 

これで俺のフィールドは更地になる。

マジック1枚で戦況をひっくり返された。

 

「メインステップ。『獅龍皇子レオグルス』を召喚。召喚時効果で『戦竜エルギニアス』を破壊して1枚ドロー」

 

『獅龍皇子レオグルス』は召喚時BP5000以下の相手のスピリットを破壊し、破壊した時デッキから1枚ドローする。

 

「ターンエンド」

「ドローステップ。『灼熱の谷』の効果で2枚ドロー……ほぅ」

 

男の顔付きが変わる。

キーカードを引いたか!?

 

「そうだったな……俺はお前と共に戦いたいがために破滅した。ならばこのバトルにお前が来るのは必然か。召喚『凶龍爆神ガンディノス』」

「凶龍爆神、ガンディノス……!」

「ターンエンドだ」

 

これが裏Xレアか!

一体どんな効果が……?

 

「メインステップ。『北斗七星龍ジーク・アポロドラゴン』を召喚。召喚時効果で『刃狼ベオ・ウルフ』を直接合体(ブレイヴ)召喚。さらに1枚ドロー」

 

『刃狼ベオ・ウルフ』は合体(ブレイヴ)アタック時にBPを比べ相手のスピリットだけを破壊した時、相手のライフのコア2個をリザーブに置く。

相手のライフを2まで削れば、ベオウルフの合体(ブレイヴ)アタックで勝てる!

 

「アタックステップ。『北斗七星龍ジーク・アポロドラゴン』でアタック」

「ライフで受ける」

「ターンエンド」

 

これで残りライフは3。

あと2回、合体(ブレイヴ)アタックすれば勝てる。

 

だが、問題は相手の裏Xレアスピリットだ。

前のターンは召喚しただけ、まだその脅威は未知数。

 

「『戦竜エルギニアス』を召喚。さらにブレイヴ『牙皇ケルベロード』を召喚。『牙皇ケルベロード』を『凶龍爆神ガンディノス』に合体(ブレイヴ)。さらにガンディノスをLv3にアップ」

「BP17000……!」

「ガンディノス……アタック。アタック時効果【強襲】発揮! 自分のネクサス1つを疲労させることで回復する。『オリンスピア競技場』を疲労させることで回復!」

 

【強襲】!?

合体(ブレイヴ)しているガンディノスはダブルシンボル、ライフで受けたら2つも減る。

 

「ここは『獅龍皇子レオグルス』でーー」

「ガンディノスのアタック時効果はまだある! 『獅龍皇子レオグルス』を破壊して1枚ドローする!」

「えっ、」

 

ガンディノスはアタック時にBP5000以下のスピリットを破壊することで1枚ドローする。

まさか【強襲】の他にこんな効果もあるなんて。

 

「ライフで受ける!」

「もう一度アタックだガンディノス。【強襲】発揮、『灼熱の谷』を疲労させて回復」

「フラッシュタイミング、マジック『サイレントウォール』を使用! このバトルが終了した時、アタックステップを終了する。ライフで受ける」

「ターンエンドだ。どうだ? これが俺のガンディノスだ!」

 

俺のライフは残り1つ。

サイレントウォールがなければ、このままやられていた。

 

「……強いよ、ホントに強い。でも俺も、まだライフは残ってる」

 

諦めなければ未来は拓ける。

バトスピCS日本大会の決勝戦、レイが最後のドローでジーククリムゾンを引いたように!

 

「ドローステップ!」

 

引いたカードは『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』

ははっ、ここでお前か!

 

「メインステップ! 射手座の12宮Xレア『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』をLv2で召喚! 更にブレイヴ、『武槍鳥スピニード・ハヤト』を召喚」

「……Wブレイヴか!」

「『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』に、『刃狼ベオ・ウルフ』と『武槍鳥スピニード・ハヤト』をW合体(ダブルブレイヴ)!」

 

『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』はブレイヴ2つまでと合体(ブレイヴ)できる。

トリプルシンボル、BP18000のW合体(ダブルブレイヴ)スピリットだ!

 

「アタックステップ」

 

アタックステップ開始時、『武槍鳥スピニード・ハヤト』の合体(ブレイヴ)時効果が発揮。

「赤」を指定し、このターンの間W合体(ダブルブレイヴ)スピリットは赤のスピリットにブロックされた時回復する。

 

W合体(ダブルブレイヴ)スピリットでアタック! 『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』の効果で『戦竜エルギニアス』を指定アタック!」

「ブロックだ! エルギニアス!」

「『戦竜エルギニアス』は赤のスピリットとしても扱う。よってW合体(ダブルブレイヴ)スピリットは回復する」

 

さらに『刃狼ベオ・ウルフ』の効果、BPバトルで相手のスピリットを破壊した時、相手のライフのコア2個をリザーブに置く。

 

W合体(ダブルブレイヴ)アタック! 今度はガンディノスを指定アタックだ!」

「ガンディノスでブロック!」

「効果でW合体(ダブルブレイヴ)スピリットは回復する」

 

ガンディノスはBP17000。

W合体(ダブルブレイヴ)スピリットはBP18000!

 

「フラッシュタイミング、マジック『ストロングドロー』を使用! ガンディノスのBPを+3000! ガンディノスの勝ちだ!」

「2体のブレイヴはスピリット状態でフィールドに残す」

 

W合体(ダブルブレイヴ)スピリットは破壊された。

でも俺のフィールドには、まだスピリットがいる!

 

「リザーブのコアをトラッシュに置き、『北斗七星龍ジーク・アポロドラゴン』でアタック」

 

相手のライフは残り1つ。

 

「……ははっ、ハハハハハハハ! 楽しかったぜ、お前とのバトル! そのアタック、ライフで受ける」

 

男の最後のライフがリザーブに置かれる。

俺は、このバトルに勝ったんだ。

 

「……終わったかの」

 

隻眼の男は、これでまたバトスピの楽しさを思い出してくれただろうか。

俺がナナシに出来なかったことが、今度は出来ただろうか。

 

「さて店主よ。お主に1つ言っておくことがある」

「……なんだ?」

「お主の作った裏Xレアは、IBSAより公式のカードとして認められておる。現に妾の友人にも、ガンディノスを使う者はおるぞ」

「なんだと!?」

 

なんだって!?

ヒメの友人にガンディノス使いがいたのか!

 

「何故レツも驚いておる。『凶龍爆神ガンディノス』はマドカが使っておったじゃろうが」

「え……マジで?」

「……たまには身内でのバトルもするがよい」

 

知らなかった、マドカも裏Xレアを使ったのか。

帰ったら見せてもらおう。

 

「はは、そうか……俺の、カード達が……」

 

男の目から涙が伝う。

男はしばらく放心していたが、涙を拭い、俺に1枚のカードを差し出した。

 

「渡雷烈。お前にコイツを任す」

「ガンディノスーーいいのか?」

「あぁ。是非、BFSで使ってくれ」

 

BFS。

それは世界大会の優勝者だけが戦える、特別なフィールド。

 

「ああ。絶対、ガンディノスを召喚してみせるよ」

 

返事を聞いた隻眼の男は立ち上がり、待ってくれていた使用人達と外へ出ていった。

あの人も、これから罪を償うのだろう。

 

「さてレツ、約束してしまったな。守れるのか?」

 

明日は世界大会決勝戦、対戦相手はレイだ。

俺がまだ一度も勝ててない、俺の師匠。

 

「ああ。……俺は今度こそ、レイに勝って、世界一になってやる!」

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