決勝前夜。
ヒメ様の思いつきで始まったバトルは、レツが「最強のデッキで」と言ったことが原因で、私の姫ループによるワンサイドゲームで終わった。
しかし困ったのはその後。
妙にレツとヒメ様がよそよそしい……。
また私なにかやっちゃいました?
いや分かってますよ、かなりえげつないバトルをしたことくらい。
うーん、罪悪感。
やっぱりバトルしないスピリッツはダメだね。
相手に何もさせないってのは、対人ゲームとして破綻してるよ。
バトスピは対話。
バトルしないスピリッツは対話する気がない時だけだね、うん。
またその気になる時まで封印しよう。
結局あの後、レツは部屋に戻ってまたデッキを組み直したらしい。
とりあえずヒメ様に、私が姫ループを使わないとレツに伝えてもらった。
決勝戦は、しっかりとバトスピしたいからね。
◇◆◇◆
バトルスピリッツ世界大会決勝戦。
対戦相手はこの
先攻後攻のじゃんけんに勝った私は後攻を選択する。
バトルはレツのターンからだ。
「ネクサス『灼熱の谷』を配置。ターンエンド」
「私のターン、ネクサス『侵食されゆく尖塔』を配置。ターンエンド」
お互いにネクサススタート。
赤デッキ相手にスピリットを召喚してもすぐに妬かれるのがオチだ。
まずは消えにくいシンボルから用意する。
「スタートステップ」
「ネクサス『侵食されゆく尖塔』の効果。私のトラッシュにあるコアをリザーブに」
ネクサス『侵食されゆく尖塔』は相手のスタートステップに自分のトラッシュのコアをリザーブに戻す。
これでフラッシュタイミングで使うコアを確保できる。
しかしレツもドローステップで『灼熱の谷』の効果を発揮。
ドローステップでドローする枚数を+1し、ドロー後に1枚破棄。
手札の合計枚数は変わらないがより多くのカードを見ることで、早くキーカードを引くことができる。
「メインステップ。『アクゥイラム』をLv2で召喚。ターンエンド」
『アクゥイラム』はアタック時にBPを+2000する効果と、赤のキーワード効果【激突】を持つスピリット。
私のフィールドにスピリットがいない今【激突】は効果を発揮しない。
ライフを減らすよりも私にコアを与えないことを選んだようだ。
「『イグア・バギー』を召喚。さらにネクサス『光り輝く大銀河』を配置。マジック『ブレイヴドロー』を使用、不足コスト確保のため『イグア・バギー』は消滅。効果で2枚ドローして、オープンされた『突機竜アーケランサー』を手札に加える。ターンエンド」
よし、これで1組揃った。
「ドローステップ、2枚ドローして1枚破棄。リフレッシュステップ、メインステップ。『天星龍アポロドラゴン・スピカ』を召喚。不足コストは『アクゥイラム』から確保。ターンエンド」
レツは『天星龍アポロドラゴン・スピカ』を召喚するが、やっぱり攻めてこない。
昨日とは打って変わってかなり慎重になっている。
「メインステップ。マジック『ブレイヴドロー』を使用。2枚ドローして3枚オープン。ブレイヴカードがないのでデッキの上に戻す」
ドローした2枚の方にブレイヴカードがあった。
こういう時、勿体ないと感じてしまう。
「『アクゥイラム』をLv2で召喚。アタック【激突】」
レツに続き、私も『アクゥイラム』を召喚しアタックする。
『アクゥイラム』はアタック時効果でBPが上がっている。
『天星龍アポロドラゴン・スピカ』と同じBP5000。
「『天星龍アポロドラゴン・スピカ』でブロック」
「フラッシュがないなら、お互いのスピリットが破壊。ターンエンド」
相討ちだけど、これでいい。
どうせレツは指定アタックと『刃狼ベオ・ウルフ』や『武槍鳥スピニード・ハヤト』のコンボをしてくる。
わざわざ的を作る必要はない。
「メインステップ。『ブレイドラ』を召喚。そして射手座の12宮Xレア『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』を召喚。不足コストは『ブレイドラ』から確保。アタックステップ、『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』でアタック」
今度は『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』を召喚。
でもアタックしてくるんだね。
前のターンのアクゥイラムが効いたかな。
さっきまではコアを与えないように動いてたけど、今は『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』が破壊されないために動いてる。
「ライフで受ける」
「ターンエンド」
「私のターン。マジック『リバイヴドロー』を使用、2枚ドロー。『イグア・バギー』と『ダンデラビット』を召喚。『ダンデラビット』の召喚時効果でリザーブと『イグア・バギー』にコアを1個ずつ追加。さらにもう1枚『ダンデラビット』コアを追加する」
これで4コアブースト。
相手には『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』がいるけど、私の手札には防御札『デルタバリア』がある。
このターンは準備に費やす。
「『リバイヴドロー』を使用。デッキから2枚ドロー。さらにもう1枚『リバイヴドロー』、2枚ドロー。不足コストはフィールドのスピリット達から。ターンエンド」
「メインステップ。『武槍鳥スピニード・ハヤト』『刃狼ベオ・ウルフ』を召喚。『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』に
きたか
BP18000、トリプルシンボルのスピリット、そのアタックは1度にライフを3つ奪う。
「アタックステップ。
「ライフで受けるよ」
「ターンエンド」
確かに3点パンチは痛い。
でもここで決めきれなかったってことは、レツの手札はあまり良くないのかな。
さて、前のターン丸々準備に費やした甲斐があった。
このターンで、あのコンボが完成する。
「メインステップ。ネクサス『光り輝く大銀河』の効果発揮。手札の系統:「光導」を持つスピリットカードのコストを5にする。『獅機龍神ストライクヴルム・レオ』をLv3で召喚。さらに『突機竜アーケランサー』を直接
まずは1組。
そして、
「『獅機龍神ストライクヴルム・レオ』のLv3効果、系統:「光導/星魂」を持つスピリットに白のシンボルを1つ追加する。2体目、『獅機龍神ストライクヴルム・レオ』をLv3で召喚。さらに『突機竜アーケランサー』を、召喚したストライクヴルム・レオに直接
これで2組目。
『突機竜アーケランサー』が
さらに効果でシンボルが2つ追加、トリプルシンボルのスピリットになっている。
「アタックステップ。1体目のストライクヴルム・レオでアタック。トリプルシンボル」
「ライフで受ける」
レツの残りライフは2。
これが通ればそれで終わる。
「もう1体のストライクヴルム・レオでアタック。効果で疲労状態のストライクヴルム・レオは回復する」
『獅機龍神ストライクヴルム・レオ』は自身以外の系統:「光導/星魂」を持つスピリットが疲労した時回復する。
ストライクヴルム・レオ自身も系統:「光導」を持つ。
2体いれば無限アタック/ブロックが可能だ。
「フラッシュタイミング、マジック『デルタバリア』を使用! ライフで受ける!」
「ターンエンド」
まあ持ってるよね。
でも使わせたからOKってことで。
「メインステップ。
そっか。アタックしてくるのか。
このコンボはこの世界では未発見だからね、知らないのも無理はない。
でも、それは私のせいじゃない。
知らないのは、レツの責任。
「ストライクヴルム・レオでブロック」
「スピニードハヤトの効果で
「私も、もう1体のストライクヴルム・レオを回復させる」
これはレツのミスだ。
知らなかったとはいえ、カード効果を確認せず、何が起こるか理解しえなかったことによるミスだ。
「フラッシュタイミング。『突機竜アーケランサー』の
疲労の対象はブロックしていないストライクヴルム・レオ。
これでBPは18000。
そして系統:「光導」をもつスピリットが疲労したため、ブロックしているストライクヴルム・レオは回復する。
「さらにブロックしていない
「ーーまさか!」
やっと気づいたね。
「ブロックしている
無限ループ。
アーケランサーが
つまり
元の世界では、このループはBP∞のスピリットとして扱われると特殊裁定が出来るほど注目を集めたループだ。
でも、CPUしかいないこの世界でこのループに気づけるのはレツと私だけ。
この無限ループを発見出来なかったこと、それがレツのミスだ。
「もう1度、ブロックしていない
「……2体のブレイヴはスピリット状態でフィールドに残す。ターンエンド」
私のターン……といっても、もうやることもないね。
「メインステップ。ネクサス2枚をLv2に上げる。アタックステップ、ストライクヴルム・レオでアタック」
「マジック、『デルタバリア』! ライフで受ける!」
「ターンエンド」
2枚目か。
でも、もうやることもないでしょ。
「メインステップ。ネクサス『灼熱の谷』を配置。ターンエンド」
「スタートステップ。『侵食されゆく尖塔』の効果で『武槍鳥スピニード・ハヤト』を手札に戻す。メインステップーーーーは、何もしない。アタックステップ、
「フラッシュタイミング、マジック『デルタバリア』!」
「ターンエンド」
ここで3枚目の『デルタバリア』もう後がない。
そしてレツの手札は1枚『武槍鳥スピニード・ハヤト』ももう透けてる。
「ドローステップ。『灼熱の谷』の効果で2枚ドローするーーーーッ!『武槍鳥スピニード・ハヤト』を破棄!」
レツのドローステップ、レツは明らかに良いカードを引いた。
防御札?
いや、今更1ターン延命した所で変わらない。
レオを破壊するカード?
いや、破壊した所で私には『デルタバリア』がある。
このターンで決めきれるとは思ってないだろう。
「メインステップ。『ブレイドラ』をLv3で召喚! アタックステップ、『ブレイドラ』でアタック!」
レツが召喚したのはコスト0の『ブレイドラ』
これなら『デルタバリア』をすり抜けて最後のライフを減らせる。
となると、その最後の1枚は『インビジブルクローク』だろう。
「それしかない」という1枚を引き寄せる運命力。
さすが主人公だ。
ーーでもね、それをフラッシュで使おうとしたのは完全に間違いだよ。
「マジック『ウィッグバインド』を使用。相手は黄以外の手札のカードは使えない」
「なんだって!」
「さて、何かマジックはある? ないなら
「……ターン、エンド」
「スタートステップ、『刃狼ベオ・ウルフ』を手札に戻す」
実は前のターン、私がメインステップで『ウィッグバインド』を使っていればそのまま勝っていた。
だけど、いざその時になったら酷い考えが頭をよぎったんだ。
「アタックステップ。『獅機龍神ストライクヴルム・レオ』で
今思えば酷い舐めプだ。
でも、だけど、
また昨日のように、一方的なバトルのまま終わるって思ったんだ。
「ライフで受ける」
「はい私の勝ち」
普通にやってたら私の圧勝だった。
舐めプだったから負けかけた。
舐めプだったから負けなかった。
じゃあ一体私はいつ、勝ち負けの分からない全力のバトルが出来るのだろうか。