「世界大会優勝、おめでとう!」
「ありがとうございます」
実況席にいたギャラクシー渡辺に優勝を祝われ、私は心にもない返事をする。
「優勝した氷田零さんはこの後、現在開発中のBattle Field System、つまりスピリットが実体化するフィールドで俺ギャラクシー渡辺と、エキシビションマッチをしてもらうぞ! それも世界に中継するから、スピリットの召喚を夢見ていた皆! 楽しみにしていてくれ!」
決勝戦の後、私はスタッフに連れられて、よく分からない機械のある部屋に来た。
多分これがBFSなんだろう。
「久しぶりだね。今日はよろしく!」
「……よろしくお願いします」
しばらくして部屋にギャラクシー渡辺が入ってくる。
気分が落ち込んでる時にこのテンションはキツいけど……まあどうでもいいか。
「BFS起動しました。いつでもいけますよ」
スタッフさんが声をかけ、BFSバトルの準備が終わる。
「世界チャンプの腕前、見せてもらうぜ! ゲートオープン、界放!」
「……界放」
◇◆◇◆
「ネクサス『光り輝く大銀河』を配置。ターンエンド」
この世界に氷田零として転生した直後、私は期待していた。
バトスピが主流の世界。
前世のように過疎っておらず、誰とでも、いつでも、バトスピができる世界なのだと喜んだ。
「『角獣ガルナール』を召喚! ターンエンドだ」
しかし、私はすぐに失望した。
この世界に。
この世界が
私はバトスピは好きだ。
だが、それとこれとは話が違う。
一定の動きしかしない対戦相手。
何度戦っても同じことの繰り返し。
バトスピがただの作業になっていた。
相手よりBPが高いスピリットを立てる。
自分のライフが0にならないようにフィールドのスピリットの数を調節する。
そんな作業。
「『イグア・バギー』『獅機龍神ストライクヴルム・レオ』を召喚。不足コストは『イグア・バギー』から」
何度元の世界に戻ろうとしたか。
何度この世界から抜け出そうとしたか。
でも、結局どうしようもなかった。
どうしようもないからと、考えるのを辞めた。
「ストライクヴルム・レオでアタック」
「ライフで受ける!」
「ターンエンド」
そして私は彼の参戦を待っていた。
私は知っていた。
この世界には、私以外に
それが渡雷烈。
私の、氷田零としての友人だった。
実際レツは主人公として、NPCとは違うバトルをした。
スピリットが1体でもアタックする。
スピリット上のコアを使う。
マジックの無駄撃ちもない。
レツは、私の希望だった。
私がこの世界で唯一、バトスピができる相手だと思っていた。
「『太陽龍ジーク・アポロドラゴン』を召喚。ターンエンド」
しかし、その希望も今や絶望に変わった。
世界大会の決勝戦。
その大舞台でレツと戦い、私は絶望した。
よく考えれば分かったはずなのに、何故気づけなかったのか。
私とレツには、決して埋まらない差がある。
「『砲凰竜フェニック・キャノン』を召喚、ガルナールを破壊。ストライクヴルム・レオに
レツは、私と戦うには圧倒的に知識が、経験が、知恵が足りない。
「
「『太陽龍ジーク・アポロドラゴン』でブロック!」
私は元の世界で10年以上バトスピをしてきた。
レツはこの世界でバトスピを始めたばかりだ。
単純な年月でも、私はかなり先にいる。
だが、それはまだいい。
時間が足りないだけなら、どうにでもなった。
どうにもならないのは、ここがゲームの世界という環境だ。
「俺のスピリット達が! くそぅ!」
「ターンエンド」
あの世界には、私ではできない凄いバトルをする人がいる。
「姫ループ」や「未ザギ」なんて、初めて見た時は感動した。
考えた人をホントに尊敬するくらいに。
でも、この世界に、開拓者はいない。
「『竜騎合神ソードランダー』を召喚。Lv2にして、ターンエンド」
主人公のレツはこの世界のバトスピしか知らない。
CPUとのバトルしか知らない。
ゲームに生きるレツでは、私には勝てない。
「2体目の『獅機龍神ストライクヴルム・レオ』を召喚。アタック」
それに気づいた時は、もうダメだった。
私にはこの世界が、ただのゲームにしか見えない。
目の前にあるのは
レツは人間だと、そう信じていた。
レツとなら、私はバトスピができると信じていた。
でも、違った。
結局レツも、
CPUと違う動きをする?
だからなんだ。
発達したCPUとレツの間には、何の違いもない。
結局はただのゲームのキャラクターだ。
「ライフで受ける!」
「もう1体、アタック。激突」
世界1位。
本来なら喜ぶべきことだが、今はそれよりも虚しさの方が大きい。
この世界では、誰も私に勝てない。
誰も私を負かしてくれない。
勝敗の分かってるゲームなんて、それほどつまらないものがあるだろうか。
一生ソリティアをし続ける……それに満足する人もいるだろうが、私は勘弁だ。
「ストライクヴルム・レオの効果、系統:「光導」を持つスピリットが疲労したので回復」
なんで私は、こんな世界に来たのか。
こんな退屈でつまらない世界に。
なんで私は、戻ってきてしまったのか。
あのまま、真っ白な世界に逃げ続ければ良かったんだ。
「『竜騎合神ソードランダー』でブロック!」
なんで私は、こんな世界でバトスピを続けているのか。
戦う前から結果が、運命が分かっているというのに。
「レオでアタック、もう1体のレオは回復」
「ライフで受ける」
私は、
「レオでアタック」
「マジック『サジッタフレイム』! ネクサスを破壊する。そのアタックは……ライフで受ける」
……ああ、やっぱりダメだ。
考えれば考えるほど嫌になる。
ならいっそ、考えなければいい。
何も考えず、ただ無関心になればいい。
「レオ、アタック」
「ライフで……受ける! 俺の負けだ!」
「はい私の勝ち」
一人回しをするように、自分の中だけで完結すればいい。
それなら他人に期待することも、絶望することも、傷つくことはないのだから。