レイちゃんは強いカードバトラーと戦いたい   作:OZo-2

24 / 54
ターン24 BFSバトル

 

 

「世界大会優勝、おめでとう!」

「ありがとうございます」

 

実況席にいたギャラクシー渡辺に優勝を祝われ、私は心にもない返事をする。

 

「優勝した氷田零さんはこの後、現在開発中のBattle Field System、つまりスピリットが実体化するフィールドで俺ギャラクシー渡辺と、エキシビションマッチをしてもらうぞ! それも世界に中継するから、スピリットの召喚を夢見ていた皆! 楽しみにしていてくれ!」

 

決勝戦の後、私はスタッフに連れられて、よく分からない機械のある部屋に来た。

多分これがBFSなんだろう。

 

「久しぶりだね。今日はよろしく!」

「……よろしくお願いします」

 

しばらくして部屋にギャラクシー渡辺が入ってくる。

気分が落ち込んでる時にこのテンションはキツいけど……まあどうでもいいか。

 

「BFS起動しました。いつでもいけますよ」

 

スタッフさんが声をかけ、BFSバトルの準備が終わる。

 

「世界チャンプの腕前、見せてもらうぜ! ゲートオープン、界放!」

「……界放」

 

 

◇◆◇◆

 

 

「ネクサス『光り輝く大銀河』を配置。ターンエンド」

 

この世界に氷田零として転生した直後、私は期待していた。

 

バトスピが主流の世界。

前世のように過疎っておらず、誰とでも、いつでも、バトスピができる世界なのだと喜んだ。

 

「『角獣ガルナール』を召喚! ターンエンドだ」

 

しかし、私はすぐに失望した。

この世界に。

この世界が()()()()()()()()()何も変わらないことに。

 

私はバトスピは好きだ。

だが、それとこれとは話が違う。

 

一定の動きしかしない対戦相手。

何度戦っても同じことの繰り返し。

バトスピがただの作業になっていた。

 

相手よりBPが高いスピリットを立てる。

自分のライフが0にならないようにフィールドのスピリットの数を調節する。

そんな作業。

 

「『イグア・バギー』『獅機龍神ストライクヴルム・レオ』を召喚。不足コストは『イグア・バギー』から」

 

何度元の世界に戻ろうとしたか。

何度この世界から抜け出そうとしたか。

 

でも、結局どうしようもなかった。

どうしようもないからと、考えるのを辞めた。

 

「ストライクヴルム・レオでアタック」

「ライフで受ける!」

「ターンエンド」

 

そして私は彼の参戦を待っていた。

私は知っていた。

この世界には、私以外に思考する(CPUじゃない)人がいると。

 

それが渡雷烈。

私の、氷田零としての友人だった。

 

実際レツは主人公として、NPCとは違うバトルをした。

スピリットが1体でもアタックする。

スピリット上のコアを使う。

マジックの無駄撃ちもない。

 

レツは、私の希望だった。

私がこの世界で唯一、バトスピができる相手だと思っていた。

 

「『太陽龍ジーク・アポロドラゴン』を召喚。ターンエンド」

 

しかし、その希望も今や絶望に変わった。

 

世界大会の決勝戦。

その大舞台でレツと戦い、私は絶望した。

よく考えれば分かったはずなのに、何故気づけなかったのか。

 

私とレツには、決して埋まらない差がある。

 

「『砲凰竜フェニック・キャノン』を召喚、ガルナールを破壊。ストライクヴルム・レオに合体(ブレイヴ)、Lv2」

 

レツは、私と戦うには圧倒的に知識が、経験が、知恵が足りない。

 

合体(ブレイヴ)アタック、【激突】」

「『太陽龍ジーク・アポロドラゴン』でブロック!」

 

私は元の世界で10年以上バトスピをしてきた。

レツはこの世界でバトスピを始めたばかりだ。

単純な年月でも、私はかなり先にいる。

 

だが、それはまだいい。

時間が足りないだけなら、どうにでもなった。

 

どうにもならないのは、ここがゲームの世界という環境だ。

 

「俺のスピリット達が! くそぅ!」

「ターンエンド」

 

ゲーム(この世界)でのバトルなんて、現実でのバトルと比べようもない。

 

あの世界には、私ではできない凄いバトルをする人がいる。

「姫ループ」や「未ザギ」なんて、初めて見た時は感動した。

考えた人をホントに尊敬するくらいに。

でも、この世界に、開拓者はいない。

 

「『竜騎合神ソードランダー』を召喚。Lv2にして、ターンエンド」

 

NPC(この世界の人)は規定のデッキを使い、同じように動くだけ。

主人公のレツはこの世界のバトスピしか知らない。

CPUとのバトルしか知らない。

 

ゲームに生きるレツでは、私には勝てない。

 

「2体目の『獅機龍神ストライクヴルム・レオ』を召喚。アタック」

 

それに気づいた時は、もうダメだった。

私にはこの世界が、ただのゲームにしか見えない。

目の前にあるのは現実(リアル)なはずなのに、全てが偽物に見える。

 

レツは人間だと、そう信じていた。

レツとなら、私はバトスピができると信じていた。

 

でも、違った。

 

結局レツも、ゲームの(この世界に生きる)キャラクターにすぎない。

 

CPUと違う動きをする?

だからなんだ。

発達したCPUとレツの間には、何の違いもない。

結局はただのゲームのキャラクターだ。

 

「ライフで受ける!」

「もう1体、アタック。激突」

 

世界1位。

本来なら喜ぶべきことだが、今はそれよりも虚しさの方が大きい。

 

この世界では、誰も私に勝てない。

誰も私を負かしてくれない。

 

勝敗の分かってるゲームなんて、それほどつまらないものがあるだろうか。

一生ソリティアをし続ける……それに満足する人もいるだろうが、私は勘弁だ。

 

「ストライクヴルム・レオの効果、系統:「光導」を持つスピリットが疲労したので回復」

 

なんで私は、こんな世界に来たのか。

こんな退屈でつまらない世界に。

 

なんで私は、戻ってきてしまったのか。

あのまま、真っ白な世界に逃げ続ければ良かったんだ。

 

「『竜騎合神ソードランダー』でブロック!」

 

なんで私は、こんな世界でバトスピを続けているのか。

戦う前から結果が、運命が分かっているというのに。

 

「レオでアタック、もう1体のレオは回復」

「ライフで受ける」

 

私は、()()()()()()()()()()()()()を、好きと言えるだろうか。

 

「レオでアタック」

「マジック『サジッタフレイム』! ネクサスを破壊する。そのアタックは……ライフで受ける」

 

……ああ、やっぱりダメだ。

考えれば考えるほど嫌になる。

ならいっそ、考えなければいい。

何も考えず、ただ無関心になればいい。

 

「レオ、アタック」

「ライフで……受ける! 俺の負けだ!」

「はい私の勝ち」

 

一人回しをするように、自分の中だけで完結すればいい。

それなら他人に期待することも、絶望することも、傷つくことはないのだから。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。