レイちゃんは強いカードバトラーと戦いたい   作:OZo-2

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ターン25 目

 

 

【レツ視点】

 

「フラッシュタイミング、マジック『デルタバリア』を使用。コスト4以上のスピリットのアタックでは、俺のライフは0にならない」

「ターンエンド」

 

バトルスピリッツ世界大会、その決勝戦。

対戦相手はレイ。

俺がまだ1度も勝ててない、バトスピの師匠だ。

 

レイのフィールドには『突機竜アーケランサー』が合体(ブレイヴ)した2体の『獅機龍神ストライクヴルム・レオ』

BP(無限)のコンボで、俺の『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』が破壊された。

 

そして今、俺の手札は『武槍鳥スピニード・ハヤト』1枚だけ。

 

「ドローステップ。ネクサス『灼熱の谷』の効果で2枚ドローする」

 

何か、逆転のカードが来てくれ!

そう願って引いたカードは『ブレイドラ』と『インビジブルクローク』だった。

 

レイのライフは残り1つ。

しかしレイはいつも『デルタバリア』を使っている。

『刃狼ベオ・ウルフ』ではストライクヴルム・レオの壁を破っても、デルタバリアの壁は越えられない。

 

でも、『ブレイドラ』はコスト0のスピリット。

デルタバリアでは防げない!

 

「『ブレイドラ』でアタック!」

 

その時、俺は勝ちを確信していた。

絶対にこのアタックが通ると、そう思っていた。

 

「マジック『ウィッグバインド』を使用」

 

でも、届かなかった。

レイは俺の考えてることが分かっているかのように、そのカードを使ってきた。

 

「ストライクヴルム・レオでブロック」

「……ターンエンド」

 

もしメインステップで『インビジブルクローク』を使っていれば、俺の勝ちだった。

でも、俺はそうしなかった。

できなかった。

 

合体(ブレイヴ)アタック」

 

あと一歩のところで俺はレイに届かなかった。

 

「ライフで受ける」

 

最後のライフをリザーブに置く。

この瞬間、俺の負けが決まる。

 

「……やっぱり強いな、レイは」

「ありがとう」

 

元々はカガミに勝ってやると始めたバトスピだった。

でも今は違う。

 

俺はレイに勝ちたい。

こんなすごいバトスピをするレイに、いつか、必ずーー

 

「エキシビションマッチがあるから、また後でね」

「おう。頑張れよ」

 

優勝したレイはこの後、ギャラクシー渡辺さんとBFSでバトルをするらしい。

 

スピリットが実体化するフィールド、楽しみだ。

ヒメと合流して、特別席に座る。

観客席が満員だからと、スタッフの人が気にかけてくれた。

 

「おお! 本当に実体化しておる! 『獅機龍神ストライクヴルム・レオ』……なんと美しい獣じゃ」

「『太陽龍ジーク・アポロドラゴン』もカッコイイな! カードのイラストもカッコイイけど、迫力が違う!」

 

レイのストライクヴルム・レオと、ギャラクシー渡辺のジーク・アポロドラゴンがバトルをする。

スピリット達が動き、バトルする様は本当に生きているようだった。

 

「すごいな……」

 

俺も、あのフィールドでバトルしてみたい。

きっとレイも、目を輝かせてーー

 

その時、俺は信じられないものを見た。

 

見間違いかと思った。

幻覚でも見ているんじゃないかと疑った。

 

レイの顔は、つまらない玩具で遊ぶ子供のような顔をしていた。

 

レイはなんであんな顔をしてるんだ?

スピリット達が、現実に動く。

バトルをする。

 

レイは、これを楽しみにしてたんじゃなかったのか。

飛行機の中で、キラキラした目で言ってたじゃないか。

「スピリットの召喚は、昔からの夢だった」って。

なのに、なんでそんな顔をしてるんだ?

 

『ストライクヴルム・レオでアタック』

 

レイはつまらなそうに、カードを横に倒す。

ギャラクシー渡辺のライフを削る。

流れ作業のように、淡々とそれを繰り返していく。

 

『レオ、アタックーーーーはい私の勝ち』

 

そしてそのまま、ゲームは終了した。

残りライフは5対0、レイの圧勝だった。

 

「一方的な試合じゃったな。いくらカリスマといえど、世界チャンピオンには敵わぬか」

「……ちょっと、行ってくる!」

「レツ!?」

 

俺は部屋を飛び出した。

 

嫌な予感がした。

レイが、どこか遠くへ行ってしまうような、そんな感じがした。

 

通路を走り、レイの元へ向かう。

階段を駆け上がると、ちょうどレイが部屋から出てくる所だった。

 

「レイ!!!」

「うわっ、どうしたの急に」

 

レイに駆け寄り、肩を掴む。

しっかりとその顔を見る。

 

間違いなくレイだ。

だけどその目は、俺を見ていない。

 

「…………」

「どうしたの? 何かあった? というか離してくれると嬉しいんだけど」

 

かける言葉が見つからない。

なんて言えばいいのか、分からない。

 

でも、手の力を抜くことはできなかった。

ここで離したら2度と戻ってこないような気がした。

 

「……レイ」

「なに?」

 

お前は今、何を見ている。

 

「レイ」

「……なに」

 

レイの視線の先に俺はいない。

レイの目に、もはや俺の姿は映っていない。

 

「レイ!」

「いやだからーー」

 

 

 

 

その()をきっかけに、俺の頭は真っ白になった。

何かが爆発したようなその音が、しばらく俺の耳に残っていた。

 

「ーーぇ」

 

レイがガクリと、俺の方に倒れ込む。

 

「レイ?」

「……ごめん、ちょっと、無理そうーー」

 

レイはそう言い残すと、静かに目を瞑る。

何が起こったのか、俺は理解できなかった。

 

「…………レイ?」

 

ガシャンという鉄の塊が落ちた音にハッとして、そちらを見る。

するとそこには拳銃と、ヒメの使用人達に組み伏せられた男の姿があった。

 

「……なんで」

 

レイの体がずるりと落ちそうになるのを腕で支える。

暖かいものが、手に触れる。

ベチャリと嫌な感覚で、手に纒わりつく。

 

「お前の、せいだ。お前の、お前さえいなければ!!!」

 

男の言葉が、通路に響く。

その言葉はレイに届いていない。

でも、俺はその言葉に、呪詛に縛られた。

 

分からない。

分かりたくもない。

何が起こったのか。

そしてどうなったのか。

 

本当は分かっている。

けど、俺の頭は、それを理解することを拒否した。

 

頭が真っ白なまま、ゆっくりと、ただ時間だけが流れていく。

 

俺が覚えていたのは、手についた紅い記憶と、いつまでも俺を見なかった、レイのあの目だけだった。

 

 

◇◆◇◆

 

 

あの後、レイは救急車で病院に運ばれた。

 

「…………」

「……犯人は、元ブラックゴートの一員。ブラックゴートが消え収入がなくなり、最後の金をこの世界大会に投じて破産した男じゃ」

 

ヒメが、今回の顛末を語る。

 

「……なんで、そんな奴がレイを」

「元々、レイが勝ち残った辺りから手を出してくる輩はいた。そやつらに誑かされたのじゃろう」

 

そうだ。

レイはこの大会で多くの敵を作った。

本人が関係しないところで。

 

「……レイは」

「銃弾を受けたものの、背中の骨で止まり命に別状はない。痛みで気を失っておるだけじゃ。今は病院で安静にしとる」

「……そうか」

 

よかった。

本当に、よかった。

 

「お主が気に病むことはない。全ては、犯人のせいじゃ」

「……もしも」

 

これは本当にもしもの話だ。

でも、あの時に限り、あと一歩でありえた未来。

 

「もしも、俺がレイに勝ってたら、レイはこんな目にあったと思うか?」

「……そのもしも、は辞めておけ。それはレイにも悪い」

 

分かっている。

でも、分かっていても、そう思わずにはいられないんだ。

 

「…………ええい! こんな所で燻っておっても埒が明かぬ! レツ、今から病院へ向かうぞ!」

「え? えええぇぇぇっ!!??」

 

ヒメの使用人に担がれて車に乗せられる。

通りを走る車の中で、ヒメが話しかけてくる。

 

「レイのことを不安に思うくらいじゃったら、さっさと会いにゆけばよかろう」

「……それは、そうだけど」

 

ヒメの言うことはもっともだ。

でも、何故か、()()()()()()()()()()()と、直感が言っている。

 

あの目を。

あの、俺を無視して遠くを見るあの目を、見たくないと思う自分がいる。

 

あの時、手を離してからーーもう、レイとは会えないような気がしていた。

 

「……着いたぞ」

 

車から降り、病室に向かう。

陽は傾き、院内も人がまばらだ。

ヒメの後ろをゆっくりついて行く。

病室に近づくにつれて、あの目を鮮明に思い出す。

 

「レツ、大丈夫か?」

「……大丈夫だ」

 

止まった足を、再び前へ進める。

コンコン、と軽くノックをして、病室に入る。

レイはベッドの上で、横たわっていた。

 

「……ふむ、息も正常じゃの。数日安静にしておれば問題なかろう」

「……そうか」

 

レイの無事を確認し、ひとまずホッとした。

 

ーーでも、もしまたあの目で見られたら。

 

「ーーっ」

「……大丈夫じゃ。お主には、妾もおる」

 

ヒメの冷たい手が、頬に触れる。

ヒメは、真っ直ぐに、俺を見ている。

 

「……ありがとう」

「どういたしまして、じゃ」

 

手の震えが止まる。

首筋に、冷たい汗が流れたのを感じる。

さっきまでは気づかなかったが、かなり汗をかいていたらしい。

 

「さて、レイの無事も確認したことじゃし、そろそろ病院も閉まる。我らはホテルに戻るとしよう」

「……ああ」

 

今はヒメに助けられた。でもーー

 

()()()』の恐怖は、俺の中で、確実に大きくなっていた。

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