ターン26 誰?
目を覚ますと、そこは知らない部屋だった。
「ここは? 痛っ……!」
何故か知らないけど背中が痛い。
立ち上がろうとしたけど、痛みに負けてベッドに倒れ込んだ。
「お目覚めですか」
「誰! ……痛ぁ」
燕尾服の男に話しかけられつい声を上げると、また背中が痛んだ。
腰痛なんて歳じゃないのにな。筋肉痛?
「三葉葵家の者でございます。ご安心を」
「三葉葵家……?」
何その珍しい名字。
日本に100人いるかいないかみたいな名前だなー。
って、そんなことはどーでもいい。
「えっと、ここは?」
「病院です。レイ様はエキシビションマッチの後、暴漢に襲われ背中を拳銃で撃たれたのですよ」
「え!? っ痛、」
背中痛いのって、撃たれたの私!?
あ、やばい意識したらまた痛くなってきた。
そっか、私って怪我をして病院に運ばれたんだ。
「わざわざすいません」
「いえ、我々としましても、お護りすることが出来ず……申し訳ございません」
うん?ちょっと何言ってるのか分からない。
「えっと、なんでーー執事の方がここに?」
「ヒメ様より、レイ様がお目覚めになった際のお世話を任されております」
ヒメ様?レイ様?
ああなるほど、どーりで話が合わないと思った。
「私、レイなんて名前じゃないです。私の名前は
◇◆◇◆
あの後、お医者さんがやってきて、私の置かれている状況がやばいことが分かった。
まずここは日本じゃない。
お医者さんや看護師さんはみんな外国人だし、病院に来ている人もみんな日本人じゃなかった。
そういう人達の病院、と考えるよりは、ここが外国だと考える方が納得がいく。
(それが分かったところでどーしよーもないってのがまた……)
よく分からない機械の検査が終わり、再び部屋に戻る。
部屋でお医者さんから分からない言葉で質問をされたけど、私に外国語が分かる訳ない。
英語の成績、クラスで下から数えた方が早いんだぞ。
そして1番やばいのは……
さっきトイレの鏡に写った自分を見て「誰!?」てなったもん。
私いつの間に長身白髪の綺麗なお姉さんになってるんですか!?
しかし、おかげである程度何が起こったかについては予測がついた。
多分、私は誘拐された。
そして整形手術を施され、
私が外国におり、顔が変わり、知らない執事の人に人違いをされる。
それらから推測するに、嘘みたいな話だが、これが1番現実的だ。
(嘘みたいな話が1番現実的って、ほんと訳わかんない)
でも、私の立てた仮説が合っていたならば、私は家に帰れるかもしれない。
顔が同じ、別人だと分かってもらえば。
「すいません」
「はい」
さっきの執事の人を呼び、説明を試みる。
「えっと、私は水野風花って名前で、日本の〇〇って町に住んでるんです。なんか気がついたらここにいて、顔も変わっていて……」
「……失礼します。ドクター、もう一度検査をお願いします」
うっわ信用されてねぇ!
いや、よく考えたら私だって信用しないわそんな話。
そりゃ脳の異常を疑うよね。
「レイ! 大丈夫か!?」
「なにやら錯乱しておると聞いたが……」
執事の人がお医者さんと何か話をしていると、部屋に赤いバンダナをつけた同い年くらいの男の子と、蒼髪着物姿の私より3つ4つ下くらいの女の子が入ってきた。
「えっと、どちら様で?」
「……レイ、お主ホントに記憶が」
この子の話し方すごいな。
なんかのゲームのキャラみたい。
「えっとね、私はそのレイって子じゃないの。私は水野風花、風花って呼んで」
「……なんと。では風花、お主は我らのことを覚えておるかの?」
「いや、初めましてだよね?」
「そうか」
そう言うと着物の子は、手元から小さな箱を取り出した。
私がよく知る、あの箱。
「これに見覚えは?」
「バトスピのデッキケース……だよね?」
でも、ケースの色が白い。
私のは
「それは覚えておるのか……よし、風花とやら。妾とバトルをしよう」
「バトルって、バトスピ?」
「そうじゃ」
うーん、話の繋がりが見えてこない……。
「えっと、バトルしたら話を聞いてくれる?」
「うむ。約束しよう」
お、やった。
バトルすれば勝たなくてもいい、てのは嬉しい。
「先に言っておくけど、私そこまで強くないよ?」
「そうか。気にするでない。妾も強くないからの」
いや絶対強いやつじゃないですかそれ。
着物の子は手に持っていた白いデッキケースを私に渡す。
「私はこれを使えばいい?」
「そうじゃ。お主のデッキじゃからな」
おっとこれは完全に誰かと勘違いされてますね。
ケースを開けて、デッキを見る。
お、ストライクヴルム・レオが入ってる。
無限アタックのデッキかな。
あれシンボル持ちのブレイヴないのか、うーん。
「さて、風花。手は抜くでない。本気で来るとよい」
それなら、自分のデッキで戦いたかったなー……なんて。
◇◆◇◆
うーん、手札のコストが重いし、後攻でコアを増やしてもいいんだけど……ここはドロー優先かな。
「じゃあ先攻で。スタート、ドロー、リフレッシュ、メイン。『ダンデラビット』を召喚。ボイドからコアを1個、リザーブに置く。ターンエンド」
ドローステップで運良く1ターン目に動けるカードが引けた。
これは幸先いいね。
「『タワー・ゴレム』を召喚する。ターンエンドじゃ」
『タワー・ゴレム』か。
青デッキ、多分リブラゴレムかな。
しかし色もバラバラだなーこのデッキ。
緑のスピリットに、赤のブレイヴ、黄色のマジック、白のネクサス。
何がしたいのか全くわかんない。
とりあえず、出せるカードを出そうか。
「『砲凰竜フェニック・キャノン』を召喚。コスト3の『ダンデラビット』に直接
どうせリブラゴレムならライフは減らないし、ブロッカーを残す必要もないか。
「『ダンデラビット』でアタック」
「ライフで受けよう」
「ターンエンド」
まずはライフを1つ減らした。
あと4つだね。
シンボル持ちのブレイヴがいれば、あと2回のアタックでよかったんだけど……。
「メインステップ。『ヒノキ・ゴレム』『タワー・ゴレム』を召喚。『ヒノキ・ゴレム』をLv2に上げる。ターンエンドじゃ」
あれ、『タワー・ゴレム』って疲労ブロッカーだよね?
なら『タワー・ゴレム』をLv3で召喚して【粉砕】した方がよかったんじゃ。
いや、ライフを減らしてコアを与えたくないだけかな。
「『ダンデラビット』を召喚。召喚時効果でリザーブともう1体の『ダンデラビット』にコアを追加。ネクサス『侵食されゆく尖塔』を配置。
「『ヒノキ・ゴレム』でブロックじゃ。破壊される」
「ターンエンド」
相手のスタートステップに『侵食されゆく尖塔』の効果でコアが戻る。
「メインステップ。『ケンタウロス・ゴレム』を召喚。召喚時効果発揮、【粉砕】を持つスピリット1体につき相手のデッキを3枚破棄する。2体いるので6枚破棄じゃ。ターンエンド」
6枚破棄かー、辛い。
アタックしてこないのを見ると、かなり慎重な子なのかな?
「『獅機龍神ストライクヴルム・レオ』を召喚。『砲凰竜フェニック・キャノン』をレオにつけるよ。レオで
「『タワー・ゴレム』でブロックじゃ」
「『ダンデラビット』でアタック」
系統:「星魂」を持つ『ダンデラビット』がアタックしたので、レオは回復。
「『ケンタウロス・ゴレム』でブロック」
「『ダンデラビット』は破壊。レオでアタック」
「ライフで受ける」
「『ダンデラビット』でアタック。レオは回復」
「ライフで受ける」
「ターンエンド」
残りライフは2つ。
まぁレオはブロッカーに残しとこうか。
「メインステップ。天秤座の12宮Xレア『天秤造神リブラ・ゴレム』を召喚。Lv2にして、ターンエンドじゃ」
え、アタックしないんだ。
『ケンタウロス・ゴレム』のコアを使えばLv3、スピリットを破棄し続ければ勝てるのに。
「『イグア・バギー』をLv2で召喚。『ダンデラビット』をLv2、『獅機龍神ストライクヴルム・レオ』をLv3にアップ。レオでアタック、【激突】」
【激突】なんかなくても、レオのLv3効果でシンボルが1つ追加されてる。
ライフで受けるなんて選択肢はない。
「『ケンタウロス・ゴレム』でブロックじゃ。破壊される」
「『ダンデラビット』でアタック。レオは回復」
「『天秤造神リブラ・ゴレム』でブロックじゃ」
『ダンデラビット』もシンボルが追加されてダブルシンボル。
ライフが2個しかない着物の子はブロックするしかない。
「『ダンデラビット』は破壊。レオでアタック」
「ライフで受ける」
「ありがとうございましたー」
ふー、勝った。
リブラゴレムでアタックされてたらマズかったね。
「じゃあバトルも終わったし、話を聞いて。私はーー」
「いや、みなまで言うな。分かっておる」
おお!なんかカッコイイ台詞きた!
そう言えばアニメで言ってたな、『バトルは対話』だって。
もしかして、今バトルしただけで私が別人だって分かってもらえたのかも!
「もう一度、脳の精密検査じゃ! それとすぐ日本へ帰還する! プライベートジェットの用意をせよ!」
いやなんでそうなるの!