日本に戻った私は、三葉葵家のお世話になることとなった。
「風花が言っておった自宅を調べたところ、水野家はしっかりと存在し、そこに風花自身も確認した。記憶と現在が一致していることから、風花がレイではない、ということも一応は納得した」
「いやー、何から何まですみません。……え、
「うむ。これがその写真じゃ」
姫子ちゃんはスっと1枚の写真を出す。
確かに私だ。
「どういうこと? 私が2人?」
「話し方や思考パターン、その他学力等も色々比較させてもらった。そして、その結果は完全に一致した訳ではない」
「と、いうと?」
「まず学力は全ての科目においてお主の方が秀でておる。また、バトスピについてもお主の方が腕が立つ」
えっ、なにそれこわい。
いや既に怖い状況が起きてるんだけども。
「結論は『水野風花』という子よりも、『氷田零』の姿であるお主の方が諸々優れておる、ということじゃ」
「えぇぇ……」
「じゃが、ヒントはある。お主が言っておった、『お台場』についてじゃな」
「そう! そうだよ!」
そういえば、日本に戻ってから不思議なことがいくつかあった。
例えば、お台場がオダイハマという名前に変わっていたり、私の周りではバトスピをやっていた人は少なかったのに、ものすごい流行ってたり。
私の記憶と違う点がいくつかあった。
「パラレルワールド、というのを知っておるか?」
「平行世界でしょ? もしも〜だったらー、てやつ?」
「うむ。パラレルワールドの『水野風花』が『氷田零』の意識を乗っ取った、と考えるのはどうじゃろうか」
「なるほど……」
姫子ちゃんの提示した答えは、如何にもといったものだった。
しかしパラレルワールドって、私これからどーすればいいの?
どーしようもなくない?
「なに、原因が分かればどうにでもなろう。まずお主、どうやってこちらの世界に来たか覚えておるか?」
「いや、気づいたら病院で寝てて……ごめんなさい覚えてないです」
「まぁそうじゃろうな」
どうやって来たか覚えてたら、同じことして帰ってるよ。
というかその
「しかし困ったのう……原因が分かれば何とかなりそうなものじゃが、こうなると……」
「何か私にできること、ある?」
「そうじゃな……よし風花、今からオダイハマのショップへ行って、ショップのバトルに参加してこい」
「へ?」
「お主の世界との相違点は『オダイハマ』と『バトスピ』。その2つを同時に調査するには都合がよかろう」
なるほどら確かに。
「姫子ちゃんって、頭いいんだね」
「世辞はよい。早く行かねば、ショップバトルが始まるぞ?」
「分かった! いってきまーす」
直後、道が分からずまた三葉葵家に戻ってくるんだけど、それはまあご愛敬ってことで。
◇◆◇◆
なるほど。
姫子ちゃんの言いたいことがよく分かった。
「『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』でアタック」
「ライフで受けます」
私はバトスピを友達とか、小さなコミュニティでしかやっていない。
たまーに市外に出てバトスピの大会に参加するけど、その大体は初戦負け。
カードが揃わない子供は、大人買いしてカードを揃えている人達に勝てない。
だからバトスピは好きだけど、私は自分のことをあまり上手いとは思っていなかった。
そのせいもあると思うけど、オダイハマのショップバトルに出て、最初に感じたのは「あれ、周りの人あまり上手くない?」というものだった。
例えばアタックすればライフを減らせるのにアタックしないとか、コアの調整をしないとか。挙げればキリがない。
「ライフで受けます……ありがとうございました」
「ありがとうございました」
私は1度も接戦という接戦をしないまま、ショップバトルに優勝した。
「さすが世界チャンピオン、全く歯が立たなかった」
「ははは……」
そういえば、この体の人はバトスピの世界チャンピオンなんだっけ。
そんな人の体に入るくらいなら、この体の人とバトルしたかったなー、なんて。
さて、ショップバトルも終わったし、誰か対戦してくれる人はいないかな……と、周りを見ると、1人壁にもたれかかってこちらを見てる人がいた。
「すいません、対戦できますか?」
「……氷田零」
あれ、この体の人の知り合いだったかな。
ミスった、ボロが出ない内に退散しよー、と。
「えっと、無理そうならーー」
「……やろう。今度こそボクは、キミに勝つ」
うぅ、こっちから誘った手前、今更辞めようとは言いにくい……。
ま、まぁ姫子ちゃんの仮定通り、この世界のバトスピが元の世界と違い、
なんとか、なんとかこのバトルだけでも誤魔化しきってみせる!
◇◆◇◆
「……ボクが先攻だ。『ヴェロキ・ハルパー』を召喚。Lv2にしてターンエンド」
「スタート、コア、ドロー、リフレッシュ、メインステップ。『ブレイドラ』『角獣ガルナール』を召喚。『角獣ガルナール』でアタック」
『角獣ガルナール』はアタック時にデッキを3枚オープン、その中の系統:「星竜」を持つスピリットかブレイヴを手札に加える。
「『輝竜シャイン・ブレイザー』を手札に加えるね」
「アタックは、ライフで受ける」
「ターンエンド」
ガルナールでいきなりブレイヴを加えられた、ラッキー。
「『ヴェロキ・ハルパー』をもう1体召喚。ターンエンド」
やっぱりアタックはしてこない。
『ヴェロキ・ハルパー』はLv2、3のアタック時効果でライフを減らしたらドローできる。
今の私のフィールドには『ブレイドラ』のみ。
アタックしていたら私は、ライフで受けるか、BPで負けている『ブレイドラ』でブロックするしかない。
どちらにしても、相手の方が有利な結果だったはずだ。
「メインステップ。ネクサス『光り輝く大銀河』を配置。手札の系統:「光導」を持つスピリットのコストを5にする。『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』を召喚、不足コストは『ブレイドラ』から確保!」
今日はデッキが面白いくらいに回ってる。
これならボロを出す前に決められそうだ。
「アタックステップ、サジット・アポロドラゴンでアタック。アタック時、Lv2の『ヴェロキ・ハルパー』を指定アタック」
「……『ヴェロキ・ハルパー』でブロック」
「BPバトルはサジット・アポロドラゴンの勝ち! 続けて『角獣ガルナール』でアタック! 3枚オープン」
『太陽神龍ライジング・アポロドラゴン』がオープンされた。
いつもは全然決まらないのに、ありがとうガルナール!
「アタックはライフで受ける」
「ターンエンド」
これで相手のライフは残り3つ。
「メインステップ。『太陽神龍ライジング・アポロドラゴン』を召喚」
うお、相手もライジング!?
しまった、指定アタックされたらサジット・アポロドラゴンが……
「ターンエンド」
あ、はい。
そうですか、そうですよね。
さっきから、こんな事が多々ある。
やばいと思っても、相手が斜め下の行動をしてくる。
最初は相手が何を考えているのか分からなくて怖かったけど、実の所ただ何も考えてなかっただけ、みたいな感じで私も驚いた。
「メインステップ。『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』をLv3にアップ。ライジング・アポロドラゴンに指定アタック!」
「『太陽神龍ライジング・アポロドラゴン』でブロック」
「フラッシュタイミング『バーニングサン』を使用! 『輝竜シャイン・ブレイザー』をサジット・アポロドラゴンに
「……『太陽神龍ライジング・アポロドラゴン』は破壊される」
「
「ライフで受ける」
残りライフは1!
「ガルナールでアタック!」
「ライフで受ける」
「ありがとうございました!」
ふーっ、なんか今のバトルは上手く回してた気がする!
これなら世界チャンピオンって言われても信じる……信じない?
「……氷田、零」
「は、はい」
なんだろう。
え、もしかしてバレた!?
上手く誤魔化せてると思ったのに!
「……キミにとって、バトスピとは何だ?」
「えっ」
あ、これやばい。
絶対ボロが出ちゃう。
だって私は氷田零さんじゃない。
私は水野風花、全く別の人だ。
別の人が何を考えているかなんて、分からない。
「えっと、対話? とか」
「……そうか」
やばい、絶対間違えた!
「バトスピは対話」とかいつも言ってるから、つい言っちゃった!
「……以前戦った時、キミはボクを全く見ていなかった。無意識に、目を背けていた」
「へ、へぇ(何してんの氷田零さん!)」
「……だが、先日の世界大会では、キミはもっと酷い顔をしていた。
うっそ、世界チャンプがそれでいいのか。
歴代バトスピアニメ主人公達をリスペクトしろよおい。
「でも、今日のバトルは違う。キミは間違いなく、対話していた。……キミがどういう人間か、分かった気がする」
「あ、ありがとう……」
話を終えると、その人はショップから出ていった。
その後ろ姿は、彼がチャンピオンと言われても納得できるほど、カッコよかった。
「……私も帰ろうか」
ーーキミにとって、バトスピとは何だ?
私は勢いで対話と答えたけど、いざ落ち着いて考えてみると難しい。
姫子ちゃんはなんて答えるのか。
今はいない世界チャンピオンの氷田零だったら、なんて答えたのだろう。
そして、私にとってのバトスピとは。
……そういえばあの人、結局誰だったんだろう。