「レイちゃーん! あ、今は風花ちゃんなんだっけ」
「えっと、初めまして。水野風花です」
ショップバトルの翌日、私は姫子ちゃんに誘われて学校に来た。
『氷田零』という人物に私の存在が上書きされている以上、そこら辺もしっかりしないといけない。
学校の校長に事情を説明し、ほぼ転校生みたいな扱いでクラスに入る。
クラスの子にはほとんど納得してもらい(一部では姫子ちゃんの家で生体実験をされてその影響で、なんて噂がたったが)、何とか放課後までやりきった。
「風花ちゃんも、バトスピやってたの?」
「うん。サジット・アポロドラゴンの赤デッキ」
放課後になると、氷田零と仲の良かったらしい谷円さんが、声をかけてきた。
まさか学校で女の子とバトスピの話ができると思わなかった。
私の周りでは、バトスピしていた女子はいなかったし。
「ホント!? 私も赤を使うのよ! ねえねえ、よかったらバトルしない?」
「あんまり強くないですけど、お願いします!」
元いた世界だと、いつも同じ友達とばかりやってたからね.....。
バトスピやってた人が少なかったから、知らない人とバトルできる経験は貴重だ。
「うーん。レイちゃんの姿で強くないって言われると、なんか調子狂うなー」
「世界チャンピオンなんでしたっけ」
「うん。そうじゃなくても、誰にも負けたことがないくらい強かったんだから」
へぇー、やっぱり凄いんだ。
「じゃあやろっか。最初はグー」
「「じゃんけんポン!」」
◇◆◇◆
「じゃあ後攻で」
「てことは私が先攻ね。スタートステップ」
じゃんけんに勝った私は後攻を選択。
マドカさんのターンからだ。
「『戦竜エルギニアス』を召喚。Lv2にして、ターンエンド」
え、赤デッキって言ってなかったっけ?
あ、赤と青の混色かな、ジーク・アポロドラゴンとかその辺りの。
「メインステップ、『ブレイドラ』『アクゥイラム』を召喚。『アクゥイラム』Lv2で、アタック」
『アクゥイラム』はアタック時にBP+2000する効果と【激突】を持つ。
後攻1ターン目に出せば、相手のほとんどのスピリットは破壊できる!
「『戦竜エルギニアス』でブロック。そのまま破壊ね」
「『ブレイドラ』でアタック」
「ライフで受ける」
「ターンエンド」
よーし、早速1つライフを削った!
相手のスピリットも破壊してるし、順調順調。
「『星海獣シー・サーペンダー』を召喚。召喚時効果でコスト4以下の『アクゥイラム』を破壊。ターンエンド」
シーサーペンダー……やっぱり構築済みデッキを基盤にしたデッキだね。
今『砲竜バル・ガンナー』を出されたら、ちょっとキツいかも。
「『カメレオプス』をLv2で召喚。アタックステップ、『カメレオプス』でアタック」
「ライフで受けるよ」
「ターンエンド」
『カメレオプス』のLv2BPは5000。
『砲竜バル・ガンナー』でも破壊できないし、『太陽龍ジーク・アポロドラゴン』でも、疲労状態なら指定アタックできない。
私の手札的に、カメレオプスには次のターンまで、絶対生き残ってもらわないと。
「メインステップ。『凶龍爆神ガンディノス』を召喚」
「ガンディノス!? え、裏Xレア!」
実物初めて見た!
元いた世界では、近場でショップバトルがやってなかったからね……周りの子達も、裏Xレアとか持ってなかったし。公式サイトに載っている情報でしか見たことない。
「ターンエンド」
流石、町内にバトスピショップがある都会はすごい。
初めて戦う相手、初めて見るカードに心が踊る。
絶対に、負けない!
「メインステップ! 『カメレオプス』の効果発揮。自分がコスト7以上のスピリットを召喚する時、このスピリットに赤のシンボルを2つ追加する!」
これで私のフィールドには赤のシンボルが4つ。このスピリットが最大軽減で召喚できる!
「『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』を召喚!」
ガンディノスはBP6000。
サジット・アポロドラゴンもBP6000。
なら……
「『ブレイドラ』『カメレオプス』のコアで、『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』をLv2にアップ。サジット・アポロドラゴンの効果でガンディノスに指定アタック」
「『凶龍爆神ガンディノス』でブロック」
「ガンディノスを破壊。ターンエンド」
相手の裏Xレアスピリットを破壊できた!
サジット・アポロドラゴンもいるし、これは勝てる!
「うーん。メインステップ、『オリンスピア競技場』を配置。『牙皇ケルベロード』を召喚。そして『星海獣シー・サーペンダー』に
「スタート、コア、ドロー」
引いたカードは『輝竜シャイン・ブレイザー』
よし、ナイスなブレイヴが来た!
「メインステップ、サジット・アポロドラゴンをLv3にアップ。アタックステップ、
「『オリンスピア競技場』の効果で、リザーブのコアを1つトラッシュにおいてね。アタックは
サジット・アポロドラゴンはLv3でBP13000。
既に相手のスピリットに勝ってるけど、
「マジック『バーニングサン』を使用。『輝竜シャイン・ブレイザー』を、サジット・アポロドラゴンに
「『星海獣シー・サーペンダー』は破壊される」
「『輝竜シャイン・ブレイザー』の効果発揮。BP8000以上のスピリットを破壊したので、相手のライフのコア1個をリザーブに置く」
これで残りライフは2!
「
「ライフで受ける〜っ!(泣)」
そのアタックはライフを2つ減らす!
私の、勝ちだ!
「ありがとうございました!」
「えーん、負けたー!(泣)」
裏Xレア『凶龍爆神ガンディノス』
今回は効果を使われる前に運良く倒せたけど、次は勝てるか分からない。
いやー、ドキドキした!
「ほー、マドカに勝つんか。おいアンタ、ワイともやらへんか?」
「あ、ぜひーー」
声をかけられつい返事をするも、その声の主を見て固まった。
金髪ネックレス、不良じゃねぇか!
「ん? あぁワイは難波虎二郎、レイのクラスメイトやった男や」
「コジローくんまた授業サボったでしょ! 内申に響くよ?」
「響いたところで困る成績はしとらんわ。で、えーと、誰やったっけ?」
「風花! 水野風花ちゃんよ!」
「風花です、よろしくお願いします……」
ホントはあまりよろしくしてほしくないけど!
不良と関わりたくなんかないけど!
「ほな、やろうか。アンタとのバトル、楽しませてもらうで」
◇◆◇◆
続けて2戦目。
今度は私が先攻だ。
「『カメレオプス』を召喚します……ターンエンドで」
「ワイのターン、スタートステップ」
ただ正面に座ってるだけなのに、この人怖い!
なんかめっちゃ見てくる! 視線が怖い!
「『ジャイナガン』を召喚。ターンエンドや」
「す、スタートステップ……」
『ジャイナガン』、破壊時に相手のスピリットのコア1個をトラッシュに置く【不死】のスピリット。
破壊時効果を考えると、スピリットにコアを2つ乗せておきたい。
けど、先攻2ターン目でコアが……
「(仕方ない)『カメレオプス』をLv2にアップ。カメレオプスでアタック」
「ライフや」
「ターンエンド」
本当なら手札の『太陽神龍ライジング・アポロドラゴン』を召喚したかったけど、召喚してもコアが1個しか乗らない。
指定アタックしても破壊時効果でやられるだけだ。
でも、次のターンには召喚する!
「『闇騎士アグラヴェイン』を召喚。アグラヴェインをLv2に上げて、ターンエンドや」
「スタート、コア、ドロー、リフレッシュ、メイン! 『太陽神龍ライジング・アポロドラゴン』を召喚! 『カメレオプス』は効果で赤のシンボル3つになる! 7コスト3軽減、4コストで召喚」
『カメレオプス』を消滅させ、ライジング・アポロドラゴンのコアを2つにする。
「ライジング・アポロドラゴンでアタック! 『ジャイナガン』に指定アタック」
「『ジャイナガン』、ブロックや。BP2000のジャイナガンは破壊される。けど、破壊時効果で『太陽神龍ライジング・アポロドラゴン』のコア1個をトラッシュや」
「ターンエンド」
よし、これでOK。
次のターン、『砲竜バル・ガンナー』を
「マジック『ダンスマカブル』を使うわ。ワイの手札を全部破棄して、ライジング・アポロドラゴンのコア全てをリザーブに置く。ターンエンドや」
「そんな!?」
そんな、ライジング・アポロドラゴンが……でも、相手は手札を破棄してる。
なんでわざわざ全部捨てたのかは分からないけど、今がチャンス!
「『ブレイドラ』『角獣ガルナール』を召喚。『砲竜バル・ガンナー』をガルナールに直接
まずは『角獣ガルナール』の効果でデッキから3枚オープン!
その中の系統:「星竜」を持つカードを加えられるんだけど、今回は不発。
続いて『砲竜バル・ガンナー』のアタック時効果で1枚ドロー!
「ライフで受けるわ」
「ターンエンド」
これで相手のライフは残り2つ。
あと1歩の所まできた。
相手の手札は1、このターンにドローしたカードだけだし、次のターンにもう1体ブレイヴを用意して……
「『滅神星龍ダークヴルム・ノヴァ』を召喚。Lv3や」
「ここでダークヴルム・ノヴァ!?」
「ターンエンド」
なんて引きしてるの!
うーん、さっきから相手に上手く返されてる。
やろうとすることが、裏目に出る。
『滅神星龍ダークヴルム・ノヴァ』は素のBP13000に加えて、
私のデッキだと、23000の壁は高すぎるぞ。
ーーて、あれ。
「『ブレイドラ』『アクゥイラム』を召喚」
相手のスピリットは2体、ライフは2。
これで私のフィールドには、スピリットが4体。
届くじゃん。
あとは【不死】さえ気をつければ……
「えっと、すいません。トラッシュ見せてもらえますか?」
「ん? ええで。ほれ」
えっと、『ジャイナガン』はコスト7/8、『闇騎士ガヘリス』はコスト3のスピリットの破壊が不死の発動条件。
相手のフィールドはコスト5のアグラヴェインと、コスト7のダークヴルム・ノヴァ。
ダークヴルム・ノヴァはBP比べで破壊できないから問題ない。
「
「『闇騎士アグラヴェイン』でブロックや」
『闇騎士アグラヴェイン』を破壊しても、【不死】は発揮しない。
スピリットの頭数は増えない。
「アグラヴェインを破壊。『ブレイドラ』でアタック」
「『滅神星龍ダークヴルム・ノヴァ』でブロックや」
「『ブレイドラ』は破壊される。もう1体の『ブレイドラ』でアタック」
「ライフで受ける」
ブロックするスピリットはいない。
手札もないからマジックの心配もない。
「『アクゥイラム』でアタック!」
「ライフや。ワイの負けやな」
「ありがとうございました」
勝ったー!
ライジング・アポロドラゴンが破壊されたり、ダークヴルム・ノヴァが出てきた時はどーしようかと思ったけど、何とかなった。
「コジローくんにも勝っちゃった。風花ちゃん強いね!」
「まったくや。途中からレイと戦っとると錯覚したくらいや。といっても、レイの方がなんちゅーか、敵わないって感じはするけどな」
「わかる〜」
そんなに言われるとすっごい気になる。
氷田零さんって、どのくらい強かったんだろう。
「えっと、その零さんって、そんなに強かったんですか?」
「そうやで。ワイらが手も足も出ん! ちゅーくらいには強いで」
この人たちが、手も足も出ないくらい……すごい、やっぱり強かったんだ、零さん。
『キミはボクのことを全く見ていなかった。無意識に目を逸らしていた』
ーーなんでここで、あの人の言葉を思い出すんだろう。
零さんは強かった。
でも、対戦相手を敬う気はなかった。
(……バトスピは1人じゃできないのに)
周りでバトスピをやっている子がいなかった私にはよく分かる。
でも、こんな充実した世界にいたら、そんな大切なことも忘れちゃうのかな。