私は、その人に魅せられていた。
決して褒められたプレイングではない。
決して最善のプレイングではない。
しかし、それでも、綺麗だと感じた。
彼女の魅せるバトスピは、私の心を掴んだ。
「……すごい」
私が見ているのは、世界大会決勝戦の映像。
私の現在の体の持ち主である氷田零さんと、その友人である渡雷レツさんのバトル。
零さんは、レツさんの攻撃を
手札を見れば、もっと上手く立ち回ることもできる。
けど、零さんはそれをしなかった。
例えば『ウィッグバインド』を自分のターンで使っていたら、レツさんのターンの前に勝っていた。
相手が逆転のカードを引く前に、勝っていた。
他にも『アクゥイラム』の特攻や自壊など、敢えて自分の手を下げて戦っていた。
凄いのは、レツさんが逆転のカードを引いてからも
相手に勝ち筋を与えた上で叩く。
神がわざわざ地上に降りて人と戦う、そんなバトルだった。
まるでアニメのバトルでも見ているかのような綺麗なバトル。
けど、それは零さんがそうなるように演出していただけだということも見れば分かる。
舐めプといわれても仕方ない。
けど、それができるのは彼女が絶対的な強者であるからに違いない。
「これが……世界チャンピオン」
このバトルを見ただけでも分かる。
零さんはレツさんよりも遥かに強い。
世界1位と2位の間には、その数字以上の差がある。
けど、このバトルで零さんは、何を感じたのだろう。
私は零さんじゃないけど、多分それはーー
「……だから零さんは、対話することを諦めた。隣に立つ人がいないから」
バトルが終わった後の彼女はつまらなそうで、そして寂しそうな顔をしていた。
◇◆◇◆
「レツさん、私とバトスピしてくれませんか?」
翌日の放課後、私は決勝戦で零さんと戦ったレツさんにバトルを挑んだ。
「レイ……いや、今は風花だっけ。急にどうした?」
「レツさんって、世界2位なんですよね? 1度バトルしてみたいなって」
『バトルスピリッツ ブレイヴ』
元いた世界でやっていたバトスピのアニメだ。
その登場キャラクターの一人、月光のバローネ。
彼は最初、バトルに飢えていた。自身が強すぎたために、より強い相手とのバトルを望み、その深みに落ちた。
最強であることを退屈に感じていた。
……多分、多分だけど、零さんも同じだったんだ。
バローネと同じ、強さの深みに嵌った。
でも、アニメでバローネは馬神弾と出会うことで救われた。
強者同士のバトルが、バローネの渇きを満たした。
なら、私が馬神弾になればいい。
多分、私がここに来たのはそのためだ。
私は、零さんに負けないくらい強くなる!
零さんがいない今、この世界で1番強いのはレツさんだ。
そんな人が隣にいるのなら、バトルしない理由がない。
私は強くなる。
そして、必ず元の世界に戻るんだ!
◇◆◇◆
「先攻貰います。スタート、ドロー、リフレッシュ、メイン。『ブレイドラ』『カメレオプス』を召喚。ターンエンド」
『カメレオプス』は自分がコスト7以上のスピリットを召喚する時、自身に赤のシンボル2つを追加する。
つまり、コスト7以上のスピリットを召喚する時に限り、ブレイドラと合わせて私のフィールドには赤のシンボルが4つあることになる。
『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』はコスト8に赤の軽減を4つ持つスピリット。コアを全て使うけど、次のターンに召喚できる!
「メインステップ。『アクゥイラム』をLv2で召喚。『アクゥイラム』でアタック、【激突】!」
「『ブレイドラ』でブロック」
「ターンエンド」
さて、どーしようかな。
『ブレイドラ』が破壊されちゃったせいで、コアが足りないし……。
「メインステップ。『角獣ガルナール』を召喚。アタックステップ、ガルナールでアタック」
アタック時効果で『輝竜シャイン・ブレイザー』を手札に加える。
『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』もオープンされたけど、既に手札にあるからスルーした。
けど、そのせいで私がサジット・アポロドラゴンを持ってることがバレたかな?
「ライフで受ける」
「『カメレオプス』でアタック」
「それもライフで受ける」
「ターンエンド」
ブロッカーを残しても『アクゥイラム』に破壊されるだけだし、ここはフルアタックをするしかない。
「『北斗七星龍ジーク・アポロドラゴン』を召喚。召喚時効果で『武槍鳥スピニード・ハヤト』を召喚。そして1枚ドロー」
キャンペーンカード!
再録されるまで地元ではまったく手に入らなかったカードだ。
そのくせブレイヴ踏み倒せるから普通に強いんだよね。
「『武槍鳥スピニード・ハヤト』を『北斗七星龍ジーク・アポロドラゴン』に
うーん、高い。
「『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』を召喚。不足コストは『カメレオプス』から確保。サジット・アポロドラゴンで『アクゥイラム』に指定アタック」
「『アクゥイラム』でブロック」
Lv1のサジット・アポロドラゴンはBP6000。
『北斗七星龍ジーク・アポロドラゴン』には勝てないが、『アクゥイラム』には勝てる。
「ターンエンド」
「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。『北斗七星龍ジーク・アポロドラゴン』をLv3にアップ。ターンエンド」
これでさらにBPが上がって16000。
何がいやらしいって、コアがないから破壊できないんだよ!
「メインステップ。『輝竜シャイン・ブレイザー』を召喚。サジット・アポロドラゴンに
サジット・アポロドラゴンがLv3になれば相手の
でも、そのためにはコアが1つ足りない。
妖怪1足りないがここで出たか!
「メインステップ。『獅龍皇子レオグルス』を召喚。召喚時効果で『角獣ガルナール』を破壊して1枚ドロー。さらに『ダンデラビット』を召喚、召喚時効果でリザーブとレオグルスにコアを1個ずつ追加する。さらに『刃狼ベオ・ウルフ』をレオグルスに直接
くっそう!
相手のフィールドにはダブルシンボルの
BPで勝っているからサジット・アポロドラゴンでブロックしてもいいけど、そしたら
「ライフで受ける」
「ターンエンド」
上手いことしてやられた。
でも、ここから逆転だ。
「メインステップ。サジット・アポロドラゴンをLv3にアップ。さらに『アクゥイラム』をLv2で召喚。アタックステップ、
レベルの下がった『北斗七星龍ジーク・アポロドラゴン』はBP10000。
サジット・アポロドラゴンの
さらにここで「輝竜シャイン・ブレイザー」の効果発揮。
BP8000以上のスピリットを破壊したので、相手のライフのコア1つをリザーブに置く。
これでレツさんの残りライフは2!
「さらに『獅龍皇子レオグルス』に指定アタック」
「『獅龍皇子レオグルス』でブロック!」
レオグルスは
破壊してもシャイン・グレイザーの効果は発揮しない。
「『アクゥイラム』でアタック」
「『武槍鳥スピニード・ハヤト』でブロック」
「どちらもBP5000だから、破壊。ターンエンド」
これで相手のフィールドには『ダンデラビット』と『刃狼ベオ・ウルフ』のみ。
残りライフも2つだし、次のターンで決める!
「メインステップ。射手座の十二宮Xレア『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』を召喚!」
レツさんもサジット・アポロドラゴンか。
前のターンに『武槍鳥スピニード・ハヤト』を破壊しておいてよかった。
ダブルブレイヴとか洒落にならない。
「フィールドの『刃狼ベオ・ウルフ』を『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』に
ベオウルフが2体!?
「アタックステップ、
「サジット・アポロドラゴンでブロック!」
相手のサジット・アポロドラゴンはBP19000。
私のサジット・アポロドラゴンのBPは18000。
「私のサジット・アポロドラゴンが破壊……」
「『刃狼ベオ・ウルフ』の効果。BPを比べ、相手のスピリットだけを破壊した時、相手のライフのコア2個をリザーブに置く。それが2回、合計4個だ」
私のライフは4。
2体のベオウルフの効果で、私のライフは0になる。
「ありがとうございました……」
「こっちこそ。ありがとうございました」
さすが世界2位、強い……!
でも、私の目標はこの上、世界1位の人と対等に戦うことだ。
こんな所で立ち止まる訳にはいかない!
「すいません! もう1戦できますか!?」
「もう1戦? いいぜ、やろう!」
その後、レツさんと3戦したけど、結局勝ったのは1回だけだった。
零さんまでの道は、まだまだ遠い。