レイちゃんは強いカードバトラーと戦いたい   作:OZo-2

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ターン3 関西弁の男

「さあレツ、バトルしようか。バトスピの大先輩として、絶対に負けないよ」

「あ、悪いレイ。ちょっとデッキを考えたいんだ。また後でいいか?」

 

断られました。

 

「ぷっ、くふふ……」

 

マドカに笑われました。

 

「うわあああぁぁぁあああ!!!」

「ああレイちゃん!?待ってーーー!!!」

 

こんな空気の部屋にいられるか!

私は家に帰るぞ!

 

 

◇◆◇◆

 

 

部屋を飛び出した私は、その後家に帰るーーことはなく、バトスピショップ近くの千樺(ちかば)神社に来ていた。

 

理由はまあ、家に帰るには早いし、お金もないしでテキトーに近くのカードバトラーとバトスピで荒稼ぎしようと思って。

あれ、完全に思考がポケモントレーナーのそれになってる?

 

(そういえばこの神社って、ゲームでは()()()が来てたよね。でもまだそんな時期じゃないか)

 

神社はゲームだと背景くらいしかないが、休み場としては普通にいい場所だ。

青々と茂った木々が陰を作って涼しいし、掃除されてるから居心地がいい。

それになんたって静かだしーー

 

「ここが攻め時!『シャ・ズー』でアタックや!」

 

静か、だしーー

 

「続けて『グリプ・ハンズ』でアタックすんで!フラッシュはあるか?」

 

静か、だしーー

 

「『幻龍シェイロン』もアタックや!マジック『イビルオーラ』を使うで」

 

う る せ え ぞ 関 西 弁 。

 

厳かな神社を何だと思ってんだ、誰だこの不届き者はと声のする方を見ると、

 

「あれ、ワタル。どーしたのこんな所で」

「あ、レイねーちゃん。こんにちは」

「こんにちはー。ちゃんと挨拶できて偉いね」

 

そこにはマドカの弟の(わたる)と、どこかで見た金髪のチャラ男がいた。

 

「おーなんやネーチャン、こんな所になんか用か?」

「そこで休んでたら喧しい声が聞こえてね。神様の前で騒ぐ不躾な蝉の姿が気になって」

「そりゃあすまんな。せやかて大きな声やないと神様にも声が届かんのとちゃうか?」

「そんなのどうでもいいから。あまり周りに迷惑かけるなって言ってるのよ」

「はは、すまんすまん。もうバトルも終わるし帰るわ。魔界七将デスペラードでアタック。これで終いや」

 

金髪の関西弁はそういうとカードを片付けて立ち上がった。

最後の盤面はかなり一方的で、関西弁のフィールドには『シャ・ズー』『グリプ・ハンズ』『幻龍シェイロン』『魔界七将デスペラード』

それに対してワタルのフィールドにはスピリットが1体もいなかった。

 

(シェイロンとデスペラードのコンボにやられたのかな)

 

『幻龍シェイロン』でスピリットのコアを1個だけにして『魔界七将デスペラード』で最後のコアを外す。

シンプルでわかりやすいコンボだ。

 

「ほなありがとなボウズ。楽しかったで」

「まぁ待ってよ」

 

立ち去ろうとする関西弁の行く手を遮って止める。

 

「なんやネーチャン、帰れ言うたと思ったら引き止めて。ツンデレか?」

「ごめんね。友人の弟が泣かされてるのを見て無視できるほど人がよくないもので」

「れ、レイねーちゃん……(泣)」

「てのは嘘で、噂の関西弁の凄腕バトラーさんにちょっとお願いがあってね」

「れ、レイねーちゃん……(呆)」

 

ワタルの表情が明るくなったと思ったら一瞬で元に戻った。

うん、なんかごめんね。

 

「なんやワイのこと噂になっとるんか。モテる男はツラいのー。で、お願いってなんぞや」

「この町にレツっていう赤いバンダナのカードバトラーがいるんだけどね。よかったら彼とバトルしてくれないかな?」

「レツ……赤いバンダナ……知らへんカードバトラーやな」

「ホントなら私がバトルしたいんだけどねー。やむを得ない事情があって」

 

流石にあの雰囲気で飛び出した所に戻りたくないです、はい。

完全に私情でサーセン。

 

「なんや知らんが、まぁええわ。どうせこの町のカードバトラーは全員倒すつもりや」

「あら、それならわざわざ頼む必要もなかったね」

「せやな。せやけど、この町のカードバトラーにはアンタも含まれてるでネーチャン」

「あらら」

 

レツの成長のために早い段階でこのメインキャラクターをぶつけようと思ってたら、まさかの展開になっちゃったよ。

 

ま、いっか。

 

「レイねーちゃん気をつけて!そいつ強いよ!」

「だいじょーぶ。でもその前に、このあとも長い付き合いになりそうだし自己紹介くらいはね。私は氷田零、よろしく」

「ワイは難波虎二郎(なんばこじろう)や。しかし不思議なやっちゃな。アンタとは面白いバトルが出来そうや」

「(私が面白いとは限らないんだけどね)まあやろうか、コジロー君」

 

 

◇◆◇◆

 

 

「ネクサス『百識の谷』を配置。ターンエンド」

「赤のカードか。っとワイのターンやな。『グリプ・ハンズ』を召喚するで。召喚時効果で1ドローっと。レベルを上げてターンエンドや」

 

『グリプ・ハンズ』は召喚時に1枚ドローするシキツルさんの仲間だ。

ただし3コストに軽減が1個しかないので、BPはシキツルさんより高いのに使われる所を見ない可哀想な子でもある。

 

「ドローステップ、『百識の谷』の効果で2枚ドローして1枚破棄。マジック『ストームドロー』3枚ドローして2枚破棄。続けて『ダブルドロー』で2枚ドローする。ターンエンド」

「おお、どえらいドローするやんけ。キーカードが引かれてそうやな。メインステップ『スケル・バイパー』を召喚、召喚時に1枚ドローや。ターンエンド」

「私は『鋼人スルト』を召喚。ターンエンド」

 

序盤はお互いドローやスピリットの召喚だけで動かない。NPCは大体スピリットが3体以上いないとアタックしてこないからね。

0コストや1コストの少ないコジローの紫デッキ相手なら序盤はゆっくりできる。

 

「『グリプ・ハンズ』を召喚するで。召喚時1ドロー。『グリプ・ハンズ』をLv2にしてターンエンドやな」

「ドローステップ、『百識の谷』で2枚ドロー、1枚破棄。マジック『ライフチェイン』を使用。『鋼人スルト』を破壊して5コアブースト」

「あんだけドローした上にコアまで増やすんか!ネーチャンかなりのやり手やな」

「続けて『デュアルキャノン・ベル』をLv2で召喚。ターンエンド」

「赤のネクサス、緑のマジック、白のスピリット。面白いデッキやな。メインステップ『シャ・ズー』を召喚。ターンエンドや」

 

コジローのフィールドには『グリプ・ハンズ』2体と『シャ・ズー』『スケル・バイパー』

4体もスピリットがいるが、私の『デュアルキャノン・ベル』のBP5000に届かないため攻撃できないでいる。

 

BPで敵わず数も足りてない内はアタックしてこない。

これもNPCの重要な特徴だ。

 

「メインステップ。『巨神機トール』をLv3で召喚。アタックステップ『デュアルキャノン・ベル』でアタック」

「おお、来るか!そのアタックはライフで受けるで」

「『巨神機トール』でアタック」

「そっちもライフや!もってけどろぼー」

「『巨神機トール』のアタック時効果、バトル終了時に「系統:武装」を持つ『デュアルキャノン・ベル』を破壊することで回復する。もう一度アタック」

「おいおいマジかいな。ライフや!」

「ターンエンド」

「白で堅固に守ると思ったら苛烈に攻めてくるなんてな。まったく、予測不能な動きやな」

 

こいつうるさいな。

 

あー、でもゲームでもそんなこと言ってた気がする。

マドカだったかが「関西弁に気を取られてて負けた」とかなんとか。

まあいいや、無視すればいいだけだし。

 

「さて、ほなワイも本気を出すか。『幻龍シェイロン』を召喚や!召喚時効果で全てのスピリットのコアを1個だけ残してリザーブ送りや!『グリプ・ハンズ』2体のレベルを2に戻して、残りのコアをシェイロンに置くで」

 

デスペラードには続かない、と。

まあコア数的にそうだよね。

 

「アタックステップ!『シャ・ズー』でアタックや!」

 

コジローのフィールドにはスピリットが5体、私のライフは5でスピリットは皆疲労状態。

一応打点は届いてるのか。

 

……ま、この手札だしさっさと使おうか。

 

「マジック『サイレントウォール』このバトル終了時にアタックステップを終了する。アタックはライフで受けるよ、これでアタックステップは終了」

「んー、止められたか。ターンエンドや」

「私のターン、諸々省いてメインステップ。『神機ミョルニール』2体と『機人アスク』を召喚。『巨人機トール』をLv3にアップ」

 

紫には強マジックの『デッドリィバランス』があるけど、これだけスピリットを召喚していれば問題ない。

 

「アタックステップ、『巨神機トール』でアタック。フラッシュで『インビジブルクローク』を使用、このターンの間トールはブロックされない」

「ほな、ライフで受けるしかないな」

「『巨神機トール』の効果、『神機ミョルニール』を破壊して回復。もう一度トールでアタック、ブロックされない」

「んー、こりゃしゃーないわ!ライフで受ける!ワイの負けや」

「はい私の勝ち」

 

返しのマジックはなく、そのままゲームエンド。

 

『百識の谷』や『ストームドロー』はデッキを多く掘ることができるけど、手札の総枚数は変わらないんだよね。

手札枯渇気味だったし、さっさと勝負が決まってよかった。

 

「対戦ありがとうな。えーと、レイやったか。また会ったらバトルしような、約束やで。次は負けへん」

「こちらこそ。レツに会ったらよろしくね。いい経験になるだろうし」

「赤いバンダナの男やったか、分かったで。にしてもそのレツって子、幸せ者やな」

「?どうして?」

「だってこんな可愛ええ子にそんなに想ってもらってるんやで?幸せ者やないかい」

「……そうだね」

 

レツを想ってる、か。

 

私はこの世界に来てからCPUとしかバトルできなかった。

一定の行動しかしない変わり映えしない相手。

 

レツはそんな退屈を壊してくれるかもしれない存在だ。

想わない訳がない、期待しない訳がない。

 

(今はまだ初心者だけど、いつか、きっとーー)

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