「どーなの風花ちゃん。元の世界に戻る手がかりは見つかった?」
「実は全く……」
私がこの世界に来てからそろそろ一ヶ月が経つ。
しかし状況は一切好転せず、ただ時間だけが過ぎていた。
でも、一月もすればこの生活にも慣れてくる。
みんなはまだたまに零さんと呼び間違えるけど。
「なに、心配する必要はない。それよりも風花は、自分が元の世界に戻った時の『氷田零』ために、最低限のことをするべきじゃの」
「つまり点数落とすなってことですよね……はぁ」
零さんはまだ中学生、これから受験を控えている。
内申点は大事だ。
かくいう私も元の世界では……うん、それは戻ってから考えよう。
まあ、まだ分かる範囲だから大丈夫……なはず。
零さんの点数が良すぎて、私はそれに追いつくのがやっとだ。
「レイちゃん頭良かったからね〜。でも次のテストまではまだ時間あるし、それまでに戻る方法を見つければオーケーでしょ!」
「そうですよねー。それまでには何とかしないと……」
でも何とかするって言って、具体的に何をしようか。
うーん……
「とりあえずもう1回ショップバトルに行ってきます」
「ごめんヒメちゃん、私風花ちゃんが何考えてるのか分からない」
「……すまん、これは妾のせいじゃ」
だってそれしかやることないんだもん。
すごいよね、毎日どこかしらでショップバトルを開催してるって。
さすが都会。
零さんより強くなると決めた私だけど、バトスピの腕はまだまだあの域には達してない。
レツさんとは何とか五分五分のバトルができるようになったけど、正直零さんには勝てる気がしない。
「んー、なら私もついてこっかな。私もこの後予定ないし」
「すまんが、妾はこの後用がある。2人で楽しんでくるといい」
◇◆◇◆
姫子ちゃんは用事があるからと別れ、マドカさんと2人で駅前のショップに来た。
「レイちゃ……じゃなかった、風花ちゃんは変わらず赤デッキ?」
「はい。色々試してみたんですけど、やっぱり赤が1番使いやすいので」
「そっか。レイちゃんが色々なデッキ使ってたから、ついいつもの癖で聞いちゃった」
店内に入ると全く人がいない。
珍しい日もあるんだなー。
なんて思っていると、店の奥で座っていた2人の男達が、こちらを見ると立ち上がり、迫ってきた。
「アンタが世界チャンピオン、氷田零だな?」
唐突に声をかけてきた男たち。
フードやキャップで顔がよく見えないけど、まず話し方から関わらない方がいいタイプだと分かる。
「えっと、人違いです」
「はぁ? ふざけてんのかオイ」
ひっ、やっぱりガチの不良じゃん!
なんでこんなのに目をつけられなきゃいけないの、零さん一体何したの!?
「ちょっとあなた達、いきなり何? 風花ちゃん困ってるでしょ!」
「
「ちっ……ハズレか」
おっ、分かってもらえたのかな?
はぁびっくりした。
いきなりあんな態度取られると心臓に悪い。
「で、誰よアンタ。レイちゃんを探してるって、何か用でもあるの?」
「あ゛? お前には関係ないだろ」
「……いや、待て。お前、
「そうよ。だからなに?」
え、いや待って。
マドカさんは身バレしてることを驚こうよ。
というかこの人達、一体何者!?
「俺たちは『ネオ・ブラックゴート』」
「ブラックゴートを継ぐ者だ」
あ、犯罪者予備軍の方でしたか。
警察行ってどうぞ。
なんて場合じゃない!
今すぐ逃げたい、関わりたくない。
「逃げましょう」と、ちらりとマドカさんの方を見るとーーマドカさんは目を見開いて呆けていた。
「ブラックゴート!? あんた達まだ残ってたの!?」
あー、これは逃げられないかも。
……いや、むしろ外に出るくらいなら、店員のいるここの方が安全かな?
「えっと、まずブラックゴートって何なんですか?」
「バトスピを使ってお金儲けをしてた悪い奴らよ!」
バトスピを使ってお金儲け?
偽物のカードを刷ってるとかかな?
「具体的には?」
「バトスピの試合をネットに上げて、その勝敗を賭けにしてるのよ」
あ、犯罪者予備軍じゃなくてガチの犯罪者でしたか。
うん、絶対関わりたくない。
「知ってるなら話が早い。なあ、俺たちとバトスピしないか?」
「……ルールは」
「俺たちは手札6枚、コアは6個から始まる。それでどうだ?」
「うっ……結構キツいわね」
「どーした? 自信ないのか?」
「や、やってやろーじゃないの! それくらい余裕よ!!!」
えーっと、なんでバトルする流れになってるんですか?
普通に断ればいいのに。
よく分からない流れのまま、マドカさんとキャップの男がバトルをすることになった。
……いや、ほんとになんで?
「おい」
「は、はい?」
もう1人のフードの男が声をかけてくる。
やめろ、私に関わるんじゃあない!
「他人の空似ってことはないだろ。氷田零の親戚か何かか?」
「いや違いますけど」
体を借りてるだけです。
「……まあいい。おいお前、俺とバトルしようぜ。大丈夫、ハンデはつけねぇからよ」
マジで私に絡んでくるんじゃない!
◇◆◇◆
「先攻は俺だ。『ノーザンベアード』を召喚。ターンエンドだ」
……いや、ホントにどうしてこうなった。
断れる訳ないじゃん!
私ってか弱い女子中学生ですよ!?
不良にガン飛ばせれて真顔でいられるほど心が強くないんです!!!
「メインステップ。『カメレオプス』『戦竜エルギニアス』を召喚します。ターンエンドで」
レツさんと戦う内に、自分のデッキの弱点が分かってきた。
まずキースピリット達が、みんなブレイヴに依存していること。
ライジング・アポロドラゴンもサジット・アポロドラゴンも
そのためにブレイヴに頼らない、新しいキースピリットを入れた。
そして、ブレイヴの赤以外の軽減を満たすカードが1枚も入っていないことにも気がついた。
デッキに入っている『輝竜シャイン・ブレイザー』『トレス・ベルーガ』が青の軽減を持っているので、赤としても扱えて邪魔になりにくい『戦竜エルギニアス』を採用した。
「メインステップ。『オオクチバ』『ヤミヤンマ』を召喚。『ヤミヤンマ』の召喚時効果でボイドからコアを1つ『ノーザンベアード』に置く」
相手は白緑デッキかな。
ラグナロックだろうし、防御マジックを引いておきたい。
「アタックステップ。『ノーザンベアード』でアタック」
「ライフで受けます」
「ターンエンド」
ラグナロックのことを考えても、最悪残りライフ3までは大丈夫。
ブレイヴでシンボルが増えることも考えて、できることなら4つ残しておきたい。
「メインステップ。『カメレオプス』の効果で、コスト7以上のスピリットを召喚する時、赤のシンボルを2つ追加する。7コスト4軽減、3コストで『金牛龍神ドラゴニック・タウラス』を召喚。ターンエンド」
ブレイヴに頼らない、新たなキースピリット。
それが牡牛座の十二宮Xレア『金牛龍神ドラゴニック・タウラス』
『金牛龍神ドラゴニック・タウラス』が真価を発揮するのはLv3の時だ。
アタックするのは次のターンからでいい。
「メインステップ。『ヤミヤンマ』をLv2に上げる。ターンエンドだ」
相手はスピリットのレベルを上げただけ。
手札事故を起こしているのか、それともマジックでカウンターを狙っているのか、だ。
ま、カウンターはくらってから考えればいいや。
色々警戒して手が縮む方がいけない。
「『金牛龍神ドラゴニック・タウラス』をLv3に。さらに『トレス・ベルーガ』を『金牛龍神ドラゴニック・タウラス』に直接
『トレス・ベルーガ』は
条件は厳しいけど、それに見合う効果はある。
「アタックステップ。『金牛龍神ドラゴニック・タウラス』で
『トレス・ベルーガ』の
アタック時効果でさらにBP+6000。
今の
「『金牛龍神ドラゴニック・タウラス』のアタック時効果【激突】、相手は可能ならば必ずブロックする」
「『オオクチバ』でブロック」
「『金牛龍神ドラゴニック・タウラス』の効果、相手のライフを2つ、リザーブに置く」
『金牛龍神ドラゴニック・タウラス』は相手のスピリットにブロックされた時、そのブロックしたスピリットより多い自身のシンボルの数だけ、相手のライフを減らす。
Lv3だと系統:「光導/神星」を持つスピリットの数だけ、自分にシンボルを追加する。
まず自身の持つシンボルが1つ、『トレス・ベルーガ』が
『金牛龍神ドラゴニック・タウラス』自身が系統:「光導」を持つのでシンボルを追加。
つまり『金牛龍神ドラゴニック・タウラス』のシンボルは合計で3つ。『オオクチバ』はシンボルが1つ。
差し引き2つ、相手のライフを奪う!
「『オオクチバ』は破壊だ」
「回復した『金牛龍神ドラゴニック・タウラス』でアタック。トレス・ベルーガの効果で破棄、対象のカードがあるので回復。【激突】」
「『ヤミヤンマ』でブロック」
「『金牛龍神ドラゴニック・タウラス』の効果、相手のライフを2つ、リザーブに置く」
「『ヤミヤンマ』は破壊される」
「もう一度アタック! 【激突】」
「『ノーザンベルード』でブロック」
「効果でライフを2つ、リザーブに置く」
「ライフ0、俺の負けだな」
2×3で合計6点。
『金牛龍神ドラゴニック・タウラス』と『トレス・ベルーガ』の回復効果のコンボは強い。
『牙皇ケルベ・ロード』?
あれはターンに1回しか回復できないから。
あとサジット・アポロドラゴンにシャイン・ブレイザーとトレス・ベルーガを
「『凶龍爆神ガンディノス』でアタック!」
「ライフで受ける……くそ!」
隣も終わったらしい。
マドカさんも手札6コア6のハンデマッチでよく勝てるなー。
「今日はこのくらいにしてやる! 覚えとけ!」
「一昨日来やがれってもんよバーカ!……はぁ、またアイツらが現れたなんて。レツにも相談しないと」
バトスピ賭博をする集団ブラックゴート、か。
黒い山羊……
「あれ、そういえばショップバトルはーー」
「すいません。あの人たちのせいで今日は人が集まらなくて……あ、よろしければ賞品をどうぞ」
「えぇ……」
その後、一応私とマドカさんで決勝戦を行い、勝った私が優勝賞品をもらった。