レイちゃんは強いカードバトラーと戦いたい   作:OZo-2

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ターン31 ブラックゴート

 

私がこの世界に来た時はちょうど夏休みだった。

そこから一ヶ月が経ち、今は10月の初め。

 

つまり文化祭だ。

学校によってはやらないところもあるけど、千樺中学校では毎年10月の第2木金で文化祭を行っているらしい。

 

そして文化祭と言えば出し物。

千樺中学校はクラス別で出し物をする。

 

私のクラスにはレツさんに姫子ちゃんと、バトスピ世界大会出場者がいるわけで、「文化祭でバトスピをやりましょう!」とのマドカさんの提案に反対する人は、まさにその世界大会出場者組以外いなかった。

 

「よく学校の許可通りましたよね。文化祭でバトスピって」

「うーん。オダイハマも市長がバトスピ好きってだけで色々やってるし、それに比べたらマシじゃないか?」

「えっ、それかなり酷い話じゃないですか。よくクビになりませんね……あとそれも買いましょうか」

 

文化祭の準備のため、私はレツさんと近くのスーパーに買い出しに来ていた。

結局、バトスピだけをするのは文化祭的にもつまらないから、という理由でバトスピカフェみたいなことをやることになった。

カードゲームと飲食を組み合わせるって、難易度高くない?

 

「それよりも俺たちは当日の心配をしないとな。酷いと一日中バトスピすることになるぞ」

「それはまだ妥協しますけど、他のクラスの展示に行けないのが残念ですよね」

 

そう、この企画で1番キツいのはレツさん達世界大会出場者組だ。

部屋の一角にフリースペースを設けて、そこで文化祭の間ずっとバトルするらしい。

私も、零さんが世界大会優勝しているせいでそれに巻き込まれた。

 

しかし所詮中学の文化祭。世界大会出場者がいるとはいえ、そんなに人は集まらないでしょう!

他のクラスの出し物に面白そうなのあったし、見に行けたらいいなぁ。

特に『ブレイドラーメン』なんか、すっごい気になる。

 

「あれ、頼まれたものが1つ売ってないな……どーするか」

「なら明日、私オダイハマに行くので、その時にデパートで買ってきますよ。何が足りないんです?」

「うーん。結構荷物になるから、俺も行こうかな。その方が面倒がなくていいし」

 

え!? それってデートってことですか!?

 

「いいんですか!?」

「気にするなって。おじさんの家に用があったし、ちょうどよかった」

「いや、そういう意味じゃ……」

 

マドカさんに怒られません? て意味だったんだけど……ま、いっか。

どーせレツさんからしたら、幼なじみの零さんと出かけるくらいの感覚でしょーし。

 

「じゃあ明日、駅前で」

 

 

◇◆◇◆

 

 

(ちょっと早く来すぎたかなぁ)

 

レツさんとの待ち合わせ時刻よりも早くに到着し、改札の前で待つ。

まだ10月とはいえ、外で待つには寒い。

 

「あの、ちょっといい?」

「? はい?」

 

壁にもたれていると、大人の女性から声をかけられた。

スタイル良くて美人、モデルさんかな?

 

「アンタ、渡雷烈のツレでしょ。アイツに伝えといてよ、『私達は関係ない』ってさ」

「は、はい?」

「チョーコか、アゲハって言えば伝わると思う。それじゃ」

「あ、あの!」

 

私はその人が帰ろうとするのを無意識に止めていた。

いきなりのことだし、戸惑ったけど、何とかその細い腕を掴んだ。

 

「この後、レツさんはすぐここに来ます。自分で伝えたらどうですか?」

「……ダメ。私達は私達のやるべき事をやる。じゃあね」

 

その人は腕を振り払って外へ向かった。

なんか意味深だったけど、深く知らない方がいいこともある。

 

「おーい、お待たせ」

「あ、レツさん。おはようございます」

 

レツさんと合流して、私達も別の電車に乗り込んだ。

 

「レツさん、さっきチョーコさんって方から、伝言を頼まれたんですけど……」

「チョーコ?」

「えっと、モデルみたいにスタイルのいい人でーーあ、アゲハとも言ってました」

「アゲハーーあぁ、あの人か」

 

アゲハさんの言伝を伝えると、レツさんは黙りこくった。

私が「知り合いの方ですか?」と聞くとレツさんは、ブラックゴートとの最後の戦いについて教えてくれた。

 

 

 

 

『ブラックゴート』と名乗る違法賭博集団は、裏サイトでバトスピの試合を放送し、その勝敗を賭けていた。

かなり大きな組織の割にセキュリティが固く、レツさん達もその実態を掴むのに苦労したという。

 

しかしブラックゴートには残念な特性があった。

賭けバトルを盛り上げるために強いカードバトラーを勧誘し、粘着するという特性だ。

断られたら諦めればいいのに、彼らは金と人脈を使って、断ったカードバトラーを廃人に追いこんだ。

 

レツさんや姫子ちゃんも狙われたらしい。

けど、レツさん達はそれを逆手に取った。

相手が接触してくる時なら、逆に捕まえることができると。

 

レツさん達は姫子ちゃんの別荘に集まり、ブラックゴートの幹部達を誘い込んだ。

その幹部の一人が、さっきの『アゲハ』さんだ。

 

レツさん達はそこでブラックゴートのルールに則り、『破滅』と『情報』を賭けたバトルを行った。

それに勝利したレツさん達はブラックゴートの本拠地の情報を得る。

 

彼らが『ダークトピア』と呼ぶそこは、廃遊園地を改造したもので、レツさんはそこに1人で(実際には裏で工作員の人も入っていたらしいけど)乗り込み、ブラックゴートの幹部の人達と戦った。

 

最初は『アフロ』と呼ばれていた赤デッキ使い。

変則ルールで相手のライフが8から始まる、というふざけたものだった。

 

次に『アゲハ』さん。

相手はコア8個から始まる、というルールだ。

最序盤から中型スピリットを並べられて大変だったと、苦笑いで教えてくれた。

 

3人目『パンク』

ルールは7ターン以内に勝利というルールで、レツさんは速攻で決めなければならないバトルを強いられた。

 

4人目は『コレクター』

ルールで相手の手札は8枚から始まる。

これもかなりのハンデだけど、レツさんは勝ち進んだ。

 

そして最後の幹部『ハッカー』

自分のライフが3でスタートするバトルは、うかつに攻めることも出来ずで苦戦したらしい。

 

5人の幹部に勝ち、ついにブラックゴートのボスとのバトル。

しかしその場にいたのは、レツさんのクラスメイトだった七篠正人、通称『ナナシ』だった。

 

『ナナシ』とのバトルは相手のライフは8、手札も8枚、しかも最初の手札が決まっているという無茶苦茶なものだった。

レツさんはそのブラックゴートの消滅を賭けたバトルに勝利し、事件は幕を閉じた。

 

 

 

 

……この話で大事なのは、ブラックゴートの幹部もボスも、実力行使に出ることなく、正々堂々とバトスピで勝負していたことだ。

彼らはその事に誇りを持っていた。賭けで決まったことが全てだった。

 

「……多分、アゲハが言いたかったことは、幹部の皆はネオ・ブラックゴートに関わってない、てことだ。今でもあのバトルの結果を大事にしている」

「……すごいですね」

 

まるでアニメやゲームのような話だ。

でも、ほんとにすごいのは今のレツさんの発言。

 

「よく、そんなに信用できますね。元ブラックゴートの幹部と分かっていて」

「分かるさ。そうじゃなかったら、あんなに本気でバトルをしない」

 

レツさんは彼らと本気で戦ったから、そう言いきれるんだ。

バトスピで相手を知れたから、こんなにもーー

 

「あっ」

「ん? どうかしたか?」

「レツさんって、零さんのバトルをどう思いますか?」

 

そこで私が思い出したのは、世界大会での零さんの寂しそうな表情だった。

レツさんは零さんと何度もバトルしている。

もしかしたら、レツさんなら当時の零さんの思いを理解しているのかもしれない。

 

「ーーごめん、俺もレイのバトスピについてはよく分からない」

「そう、ですか」

「分かるのはレイのバトルには魅力があるって事と、多分レイもそういう()()()()好きってことくらいかな」

「なるほど」

 

レツさんの発言に若干の違和感を覚えながら、私達はデパートに向かった。

デパートは駅から少し歩いた所にあり、その間にも零さんについて質問してみた。

レツさんは快く答えてくれたけど、その違和感は最後まで晴れなかった。

 

デパートに到着し、目的のものは上の階だからと私達はエレベーターに乗り込んだ。

 

「ん?」

「? 何かありました?」

「いや、気のせいかな……このエレベーター、()()()()()ないか?」

 

ピンポーン、と到着の合図が鳴る。

エレベーターの扉が開くと、そこは地下倉庫だった。

 

「キミ達が世界チャンピオンの氷田零と、世界2位の渡雷烈だね? ようこそボクの秘密基地へ」

 

薄暗い明かりの下で私達を歓迎したのは怪しい眼鏡の男。

その胸には、黒い双頭の山羊のマークがあった。

 

「ボクはネオ・ブラックゴートの幹部の一人、『ネオ・コレクター』だ。さあ、文字通り(ライフ)を賭けてバトルしよう!」

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