「ボクはネオ・ブラックゴートの幹部の一人、『ネオ・コレクター』だ。さあ、文字通り
ネオ・ブラックゴート。
幹部やボスがいなくなり、壊滅状態のブラックゴートのシステムを利用して再興した違法賭博集団。
そんな名乗られても正直関わりたくないので、何とか逃げられないかと辺りを探る。
けどエレベーターのスイッチは反応しないし、あまり露骨にやると周りにいるアイツらの仲間に手を出されそうだ。
「ネオ・ブラックゴート! お前達の目的はなんだ!」
「そんなの決まってるじゃないか! お金だよ!」
レツさんの問いに、ネオ・コレクターを名乗る男は堂々とそう言った。
「結局世の中お金が全て。こんな大きなデパートの地下にボク達が居を構えられるのも、全てお金の力だ!」
いっそ清々しいクズっぷり。
間違ったことは言ってないけど、その手段は間違っている。
「……お金が目的なら、なんでわざわざ私達をこんな所に連れてきたんですか?」
「もちろん、お金儲けのためだよ」
ネオ・コレクターは続ける。
「キミ達にブラックゴートを潰されてから、ボク達は何とかブラックゴートを再興した! あんなに簡単に、たくさんのお金が手に入るシステムを捨てたくなかった!」
「バトスピは金儲けの手段じゃない!」
「それはキミの価値観だ。IBSAだってやっていただろ? そのためにキミ達も大変な目にあったはずだ」
ネオ・コレクターの返事に、レツさんの言葉が詰まる。
それは多分、私がこの世界にくる前の話なんだろうなと悟った。
「それで、なんで私達をここに連れてきたんですか? 私達はそんな大金なんて、持ってませんよ」
「おっと、そういう質問だったか。それはもちろん、
パチン! と指を鳴らすと倉庫の奥で灯りが付いた。
そこにはテーブルと撮影機材。
「もちろん、少しネット放送をさせてもらうけど、まあ些細なことだね」
「ふざけるな!」
良くも悪くもレツさんは世界2位の実力者だ。
私も零さんと思われてるから、そう認識されているはず。
ネオ・ブラックゴートの目的は、私達にバトルをさせて賭けを盛り上げること……!
「キミ達が勝てば『自由』を保証しよう。無事にここから出られるとね」
つまり、ここに来た時点で、バトルしないという選択肢はないと。
話で聞いた以上の極悪集団だね、これは。
「分かった、やろう。それでルールは何だ!?」
「よし。ルールはボクの手札は8枚から始まる。それだけ」
「……コレクターと同じか」
「そして形式は『リアルライフバトル』だ」
リアルライフ……現実の命? まさか!
「……狂ってる」
「あれ、もしかして分かっちゃった? お察しの通り、カードバトラーの命を賭けたバトル、ということだよ」
「なに!?」
「ボクが勝ったらキミ達の命を貰う。中世、ギロチンによる公開処刑は
「そんなのはどうでもいい! これまでに一体何人を殺した!」
「さぁ? これまでに稼いだお金なら覚えているんだけどなー」
つまり数え切れないほど殺してきた、と。
……ホント、狂ってる。
これが、ネオ・ブラックゴート……!
「いやー、いいものだよ! 人の死ぬ姿を見たいと、世界中の金持ちがお金を落としてくれるんだから! これほど簡単に儲けられる仕組みはない……。さて、バトスピ世界チャンピオン氷田零。キミの命は、一体いくらなんだろうね?」
◇◆◇◆
バトルの前に、左の手首に謎の機械を取り付けられる。
腕時計のような形だけど、もちろん時計の針はついてない。
「これは?」
「それはキミを殺す装置だ。中には強力なバッテリーが内臓されていて、ライフが1つ減る、もしくはデッキが10枚破棄される毎に電流が強くなる。ライフが0か、デッキが0になったら死ぬ、分かりやすくていいよね」
相変わらずネオ・コレクターは飄々としている。
機械を付けているのは私だけ、相手はこのバトルで失うものはないってことね。
「先攻はボクからいこう。『ソウルホース』『盾騎士ガードナー』を召喚。ターンエンド」
『ソウルホース』は効果で赤のスピリットとしても扱う紫のスピリット。
『盾騎士ガードナー』は相手のアタックステップ中に自分の赤のスピリットが破壊された時、相手のスピリットのコア1つをリザーブに置く。
「メインステップ、『ブレイドラ』を召喚。そしてマジック『ブレイヴドロー』を使用。2枚ドローして3枚オープン、その中のブレイヴ『輝竜シャイン・ブレイザー』を手札に加える。ターンエンド」
引いたカードは『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』と『バーニングサン』
シャイン・ブレイザーも手札に加わったし、ハンデがあってもこれなら勝てる!
「『暗殺者ドラゴナーガ』を召喚。『ソウルホース』をLv2にアップ。アタックステップ、『ソウルホース』でアタック」
「ライフで受けるーー痛、痛い痛いたいイタタタタッッッ!」
ライフで受けた瞬間、左手につけた機械から電気が流れた。
電流が止まっても、指先が震える。冷や汗もすごい。
心臓がドクンドクン脈打っているのが分かる。
「痛い……」
「ターンエンド。まだ1つ目だよ、それでこの先大丈夫?」
涙を拭い、相手を見る。
ーーなるほど、これが、命を賭けたバトルってことね。
確かにこんな電流を何度も喰らったら危ないし、さらに威力が上がるのだったら尚更死ぬ。
「スタートステップ」
もうこれ以上、私のライフは減らさせない。
「メインステップ。『戦竜エルギニアス』を召喚。ネクサス『光り輝く大銀河』を配置」
『光り輝く大銀河』の効果でコストが下がっている今なら『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』を召喚できる。
けど、
「『カメレオプス』を召喚。ターンエンド」
ここはスピリットを横に並べてブロッカーを作る。相手は手札が多く、沢山スピリットを召喚できる。
一気に数で攻められると辛い。
「ボクのターン、『闇騎士ボールス』を召喚。ターンエンド」
次のターン、ネオ・コレクターはスピリットを1体召喚してターンエンド。
そっか、ネオ・コレクターはスピリットの維持にコアを使うから、コアの少ない今は数が並ばないのか。
このままお互いにスピリットを展開し続けても、最終的には初期手札の多い相手の方が有利。
チャンスがあるなら、相手のコアが少ない今だ。
でも、ライフを減らすと相手のコアが増える。
それなら、
「『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』をLv3で召喚! 不足コストは『ブレイドラ』から確保。アタックステップ、サジット・アポロドラゴンで『盾騎士ガードナー』に指定アタック!」
「『盾騎士ガードナー』でブロック」
相手のライフは減らさず、相手のスピリットを減らす。
それなら相手はスピリットの大量展開はできないままだ。
「フラッシュタイミング、マジック『バーニングサン』を使用。コストは『戦竜エルギニアス』から確保。『輝竜シャイン・ブレイザー』をサジット・アポロドラゴンに
「ボクのフラッシュはない。『盾騎士ガードナー』は破壊だ」
「
「『闇騎士ボールス』でブロック」
「破壊。さらに『カメレオプス』で『ソウルホース』に指定アタック!」
「『ソウルホース』でブロック」
「破壊!」
これでネオ・コレクターのスピリットは全て破壊した。
けど、私のスピリットも全て疲労状態。
相手が7コアでスピリットを4体召喚したら、そのまま負ける。
「『ソウルホース』『盾騎士ガードナー』『闇騎士ボールス』を召喚」
よし、何とか耐えた。
相手にはもう自由に使えるコアはない。
全スピリットでアタックしてきても、私のライフは1残る。
「『ソウルホース』でアタック」
とはいえ、相手はライフ5で余裕がある。
さすがにアタックはしてくるよね。
「ライフで受けるーーッッッ! 痛っ!」
手の平を机に付けて電気を逃がすことでダメージを軽減したけど、それでもやっぱり痛い。
「ちょっとー、そんなのされたら盛り下がるじゃん。視聴者はキミの苦しんでる様子が見たいんだよ?」
「知らないよそんなこと。それにバトル中のライフダメージについては、特に決めてなかったよ」
「……確かに。命を賭けろとは言ったけど、そこまで詳しくは話してなかったね。あー、これはボクのミスか。ターンエンド。……まぁ、ボクが勝てばみんな満足するか」
その話しぶりに、私はゾッとした。
負けたら殺される。
この人たちは、本当に娯楽として殺そうとしている。
「ホント狂ってるね」
「いやー、それほどでも。さて、キミのターンだよね? 早く進めてよ」
「……メインステップ。『輝竜シャイン・ブレイザー』を召喚。サジット・アポロドラゴンに
「『ソウルホース』でブロック。破壊される」
「ターンエンド」
絶対に負けられない、と思った。
負けたら死ぬとか関係なく、ただこんな人に負けたくないと思った。
「『闇騎士モルドレッド』を召喚。ターンエンドかなー」
痛いし、ライフで受けるのは正直嫌だ。
でも、だからといって守ってばかりでも勝てない。
相手のライフを減らさないと、勝てない。
相手の手が止まった、このターンで決める!
「私のターン! マジック『ブレイヴドロー』を使用!」
ここで使うのは『ブレイヴドロー』のメイン効果じゃなく、フラッシュ効果。
その効果は「スピリット1体をBP+2000する」これが勝負の決め手になる!
「『闇騎士モルドレッド』のBPを+2000する。これで『闇騎士モルドレッド』はBP9000!」
「ボクのスピリットのBPを上げた?何を企んでいるんだい?」
「
そしてこれが、私がモルドレッドのBPを上げた理由!
「『輝竜シャイン・ブレイザー』の効果発揮! BP8000以上の相手のスピリットを破壊した時、相手のライフのコア1個をリザーブに置く! 2体
「なるほどね……フラッシュタイミング、『サイレントウォール』!」
無駄だよ。
このアタックで、決着がつく!
「ライフで受ける」
「私の勝ち!」
やった、勝った! 勝った!
「ふー」
腕の機械を外して捨てる。
うっわ痕残ってる。
後で病院行こ。
ところで……
「レツさん。この殺人犯どうします?」
「どうするって言われてもな……抵抗されたら何も出来ないし、ここは引き下がるしかないかな」
まぁそうですよね。
ネオ・コレクターは今は負けて呆けてるけど、逆上されたらマズい。
ここはさっさと立ち去るのが正解だね。
「え、最期まで見ていかないんですか? せっかくのリアルライフバトルなのに」
ネオ・ブラックゴートの連中を無視してエレベーターに乗ろうとすると、ちょうどその扉が開いた。
そして、乗っていた女の子は、手に物騒なものを持っていた。
私が
ただの偽物かもしれないけど、何となくそれが本物だって分かった。
「こんにちはコレクターさん。バトル見てましたよ」
「……なんだ、アゲハかよ。ボクはせっかくのマネーチャンスを逃して傷心中なんだよ? 少しは気を使ってくれてもいいんじゃない?」
「大丈夫ですよ。ちゃんと視聴者さんのニーズには応えますから」
その人は持っていた銃をネオ・コレクターの頭に当て、躊躇いなくその引き金を引いた。
倉庫の中で銃声が反響する。
鉄と火薬の匂いが鼻につく。
そして、床に溜まる紅色の流体。
猛烈な吐き気に襲われてしゃがみこむ。
それでも、音と、匂いと、さっきまで見ていた光景が頭から離れない。
「はい、という訳で今回のリアルライフバトルは、バトルスピリッツ世界1位の氷田零さんの勝利でした。それでは次回の放送でお会いしましょう。さようなら〜」