レイちゃんは強いカードバトラーと戦いたい   作:OZo-2

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ターン33 氷田零という人物

 

 

「ネオ・ブラックゴート……! まさかそれほどまでに下衆な集団じゃったとは」

 

デパートでの事件の翌日。

私は姫子ちゃんに連れられて、レツさん、マドカさん、コジローさんとIBSAというよく分からない会社に来た。

対応してくれたのは姫子ちゃんと知り合いらしい天魔信秀さんという方だった。

すごい名前してるなー。

 

「レツ達は目の前で殺人現場を見ちゃった訳だしね……大丈夫?」

「俺は……うん、大丈夫だ。それよりもレイ、じゃなかった風花は?」

「なんとか……出来ればもう見たくないですけど」

 

なんなら、思い出したくもない。

警察に話を根掘り葉掘り聞かれた時も、かなり気分が悪くなった。

 

「とにかく、今回の敵ネオ・ブラックゴートは今までと違い残忍で凶悪な犯罪者じゃ。各々に三葉葵家の護衛をつけても良いが……相手が拳銃まで使うとなると、焼け石に水じゃな」

「警察がネオ・ブラックゴートを潰すまでワイらが逃げるっちゅーのもありやが」

「いや、無意味じゃ」

 

ダメなの?

もう犯罪者集団なんかに関わりたくないから引きこもろうと思ってたのに。

 

「ブラックゴートならば、勧誘を断ったカードバトラーを追い詰めるだけで満足した。しかしネオ・ブラックゴートは、強いカードバトラーに命を賭けたバトルをしてギャンブルに……あまりこのような言い方はしたくないが、()()()()()()()()()()としての側面を強くすることが目的じゃ」

「まったく! アイツら人の命をなんだと思ってるのよ!」

 

姫子ちゃんの話だと、強いカードバトラーに無差別で襲ってくるクッッソ迷惑な殺人集団ってことですか。

逃げるなら国外逃亡くらいしないと、てことね。

 

「えっと、てことは根本的に解決する方法は?」

「一刻でも早く奴らの裏サイトと拠点を潰すことじゃな」

「……結局そうなるのか」

 

つまり警察の働き次第かー。

あれ、そういえばレツさん達が前にブラックゴートの拠点を潰した時って……いや、言わない方がいい。

もうあんなバトルはしたくないし、もうあんな奴らと関わりたくない。

 

「あ奴らの目的から、確実な防衛方法はバトスピで勝つことじゃな。レツ達が襲われた時も、レイが勝って事なきを得たのじゃろ?」

「風花です……」

「おっとすまん。ともかくバトスピが強くて困ることはない、ということじゃ」

 

バトスピが強ければ……か。

 

もしここに私じゃなく、零さんがいたままだったらどうなっただろう。

あの全てを見通す様なバトルで、ネオ・ブラックゴートなんか簡単に蹴散らすんだろうか。

 

 

◇◆◇◆

 

 

「なぁ風花、ちょっとエエか?」

 

話し合いの後すぐ、コジローさんに絡まれた。

最初に会った時は不良かと思ってドキドキしたけど、話してみると普通に面白い人だった。

今ではもう嫌悪感はない。

 

「いいですけど、何かあったんですか?」

「ちょっとな。アッチに休憩室あるらしいし、そこで話そか」

 

コジローさんも、レツさんや姫子ちゃんみたいな世界大会出場者ではないけど、チャンピオンシップに出場するくらいの実力者だ。

当然ネオ・ブラックゴートに狙われることになるだろう。

 

「ワイはバトスピに関しては強い自信があってな。地元では負けなしやったんやで?」

「確か大阪から引っ越してきたんでしたっけ」

「せや」

 

まぁそれだけコテコテの関西弁で話されたら分かる。

むしろそれで大阪じゃなかったら耳を疑う。

 

「チカバ町に引越してきてからも、結構暴れてたんやけどな。たまたま出会ったレイに、ボッコボコにやられてもーて」

「零さんに?」

「これまで多くのカードバトラーと戦ってきたが、レイは別格やった。正直今でも、レイには勝てる気がせん」

「……なんかすいません」

 

私のせいで零さんがいないことに対する罪悪感か、それとも私が零さんの代わりになれないことに対する無力感か。

今の謝罪の意味は、自分でも分からない。

 

「風花、アンタは自分のことどー思ってる?」

「……と、いうと?」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って聞いてるんや。いうとくけど、簡単に出来ることやないで?」

「それはーー」

 

 

『この世界がゲームだから。相手がCPUだから』

 

 

何か、聞こえてはいけないものが聞こえた気がした。

聞いたら全てを否定してしまいそうな、嫌な声だった。

 

「……多分、私も強くなってるんだと思います。レツさんとのバトルも、五分五分になってきてますし」

「そうや。風花、アンタは強い。ほな、ワイとバトルしてくれへんか?」

「……いいですよ、やりましょう」

 

そうだ、私は強くなってきている。

決して、決してさっきの声は関係ない。

 

私が強くなっただけだーー

 

 

◇◆◇◆

 

 

「先攻貰います。『カメレオプス』を召喚します。ターンエンドで」

「ほな、ワイのターンやな。ネクサス『旅団の摩天楼』を配置。配置時効果で1枚ドローや。おっと、さらに『旅団の摩天楼』を配置してドロー。ターンエンド」

 

コジローさんは『旅団の摩天楼』を2枚配置。

シンボルを稼ぎつつ、しっかりとカードを引いている。

 

私のデッキでネクサスを破壊できるのは『砲凰竜フェニック・キャノン』だけだからかなりキツい。

 

「マジック『リバイヴドロー』を使用。デッキから2枚ドローする。ターンエンド」

「ほー、ネクサス『闇の聖剣』を配置。『冥王神獣インフェルド・ハデス』を召喚や。ターンエンド」

 

『闇の聖剣』と『冥王神獣インフェルド・ハデス』

アニメで冥府魔道のラーゼが使っていたコンボだ。

 

「……さっきの話、続けようか。ワイはレイに負けた後、更にバトスピにハマった。レイに絶対勝ってやる、てな。まぁ勝てへんねんかったんやけど」

「それは、零さんが強かったという話ですか?」

 

リフレッシュステップまでの処理を終え、メインステップに入る。

コジローさんの話がイマイチ掴めないけど、多分大事な話なんだろう。

 

「それもあるけどな。レイに負けてなんでやなんでや考えとったら、いつやったか『レイが何を考えとるか』が分かるよーになってな」

「……なるほど」

 

言葉というのは、話し手の意図と聞き手の解釈は異なる。

「バトスピは対話」と言っても、聞く人によってその内容は違ってくる。

 

「それで、コジローさんは零さんの声は聞こえたんですか?」

「レイは確かにバトスピが強い。けど、その中によーわからん何かを隠しとった。せやないと、あんなバトルは出来ひん」

「…………」

 

あの人は、零さんは対話をする気がないと言い、レツさんは、零さんのバトルは魅力があるという。

コジローさんは何か隠していると言っているけど、零さんは一体何を隠していた?

それがあの表情(寂しそうな顔)の理由なんだろうか。

 

「メインステップ。『戦竜エルギニアス』を召喚。さらに『金牛龍神ドラゴニック・タウラス』を召喚。効果で『カメレオプス』は赤のシンボル3つとして扱うので、7コスト4軽減、3コスト支払って召喚。不足コストは『戦竜エルギニアス』から」

 

私は零さんのあの表情を見た時、何を考えてたっけ。

あの表情から、どんな声が聞こえたっけ。

 

「アタックステップ、『金牛龍神ドラゴニック・タウラス』でアタック、【激突】」

「『冥王神獣インフェフド・ハデス』でブロックや」

「ターンエンド」

「さっきの話は、あくまでバトスピをやってる時の話や。バトスピをしてない時のレイは、普通やったな。ちょっとませてた気もするけど」

 

分からない。

考えても、思考がまとまらない。

 

「メインステップ、『ソードール』『滅神星龍ダークヴルム・ノヴァ』を召喚。ダークヴルム・ノヴァはLv2に上げる。ターンエンドや」

「コジローさんは、バトスピ好きですか?」

 

気づけば、そんな質問が出てきた。

そうだ、まず零さんはバトスピを愛していたんだろうか。

 

「ワイは好きやで。嫌いならやっとらんやろ」

「ーーそう、ですよね。私のターン、『金牛龍神ドラゴニック・タウラス』をLv3に上げます。アタックステップ、ドラゴニック・タウラスでアタック! 【激突】」

「『ソードール』でブロックや」

「ドラゴニック・タウラスの効果。ドラゴニック・タウラス自身とカメレオプス、対象のスピリットが2体いるのでシンボルを2つ追加する。『ソードール』のシンボル数は1なので、相手のライフのコア2つをリザーブに置く」

「『ソードール』は破壊や。インフェルド・ハデスの【不死】は使わへん」

「ターンエンド」

 

零さんはバトスピが嫌いじゃない。

なら、余計に分からない。

何か大事なピースが足りない。

 

「……なぁ、1つ聞いてええか?」

「はい、なんですか?」

「風花が前におった世界のカードバトラーは、この世界よりも強いんか?」

「ーーッ!」

 

どっちのカードバトラーが強いか。

それは間違いなくーー

 

「……さよか、その反応でだいたい分かったわ。メインステップ。『磨羯邪神シュタイン・ボルグ』を召喚、召喚時効果でインフェルド・ハデスを手札に戻す。ダークヴルム・ノヴァをLv3に上げて、ターンエンドや」

「……メインステップ、ネクサス『光り輝く大銀河』を配置します。ターンエンド」

 

零さんは世界大会で優勝した。

間違いなくこの世界で最強の存在、決勝戦の様子を見てもそれが分かる。

 

もしも、零さんがその強さに飽いていたとしたらーー

 

「ワイのターンやな。『冥王神獣インフェルド・ハデス』を召喚や。ダークヴルム・ノヴァでアタック」

「ライフで受けます」

「……ターンエンド。なぁ、アンタ今何を考えとる?」

「私、はーー零さんが、()()()()()()()()()んじゃないかって、私と入れ替わりで、向こうにーー」

 

零さんは強いカードバトラーだ。

多分零さんは世界1位になったことで、この世界では満足のいくバトスピが出来ないと感じた。

それが、バトスピが好きな零さんに我慢出来なかった。

 

コジローさんの質問でハッとした。

私はこの世界に来てから強くなった自信はある。

でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

チャンピオンシップ出場者の、コジローさんに。

 

よく考えたら、おかしな話だ。

 

多分、私がこの世界に来たんじゃない。

零さんが私の世界に行ったんだ。

 

私はただ、その代わりで追い出されただけ。

零さんが向こうにいる限り、一生戻れないーー

 

「風花!」

「は、はい!」

 

目から涙がこぼれる。

けど、滲んだ私の視界でも、コジローさんのその顔はハッキリと映っていた。

 

「多分、風花の考えとることとワイが今たどり着いたことは同じや。せやけどな、()()()()()

「……でも、」

()()()()()()()()()()()()()()()()()。これがどういう意味か分かるか?」

 

えっ……? 零さんが、負けてるーー

 

「この世界にも勝ててへん奴がおるのに、他所の世界へなんて行くかいな。それはない、アンタは決して追い出された訳やない」

 

コジローさんのそのハッキリと断定する口調は、零さんとずっと一緒にいたから出来るんだろう。

なら、一度も会ってない私よりも、コジローさんの考察の方が、多分正しい!

 

指で涙を拭い、私のターンを進める。

ドローステップ、引いたカードは『太陽神龍ライジング・アポロドラゴン』

 

「メインステップ! 『光竜シャイン・ブレイザー』を召喚、ドラゴニック・タウラスに合体(ブレイヴ)! そしてネクサス『光り輝く大銀河』をLv2に! アタックステップ、『金牛龍神ドラゴニック・タウラス』でアタック!」

「ワイはフラッシュはないで」

「ネクサス『光り輝く大銀河』Lv2効果! 手札の『太陽神龍ライジング・アポロドラゴン』を破棄することで、『金牛龍神ドラゴニック・タウラス』をBP+6000し、赤のシンボルを1つ追加!」

「『磨羯邪神シュタイン・ボルグ』でブロックや」

 

『金牛龍神ドラゴニック・タウラス』は自身とブロックされたスピリットのシンボルの数を比べ、多いシンボル1つにつき相手のライフ1つを奪う。

 

『光り輝く大銀河』の効果で1つ、ドラゴニック・タウラス自身の効果でシンボルが1つ追加。

合体(ブレイヴ)しているドラゴニック・タウラスのシンボルは合計4つ。

対してシュタイン・ボルグのシンボルは1つ!

 

「『金牛龍神ドラゴニック・タウラス』のアタック時効果。相手のライフのコア3つを、リザーブに置く」

「これでワイのライフは0、ワイの負けやな」

「ありがとうございました。……本当に、ありがとうございました……!」

 

さっき拭ったはずの涙が、またこぼれた。

今度はいくら拭っても、それが止まることはなかった。

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