レイちゃんは強いカードバトラーと戦いたい   作:OZo-2

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ターン34 過去の自分と未来の自分

 

 

「え、今? なんでこんなタイミングで?」

「ボクに聞かれても……何かきっかけがあったんじゃないか?」

 

コジローさんとのバトルの後、泣き疲れた私はIBSAの一室を借りて仮眠を取っていた。

瞼を閉じて休んでいると、どこからかそんな声が聞こえてくる。

 

人が寝てるのに、と薄ら目を開けると、そこにはーー

 

「えっと、なんですか? ここ」

「あ、起きた」

 

何もない真っ白な空間に、白い人影。

そして零さんがいた。

 

「零……さん?」

「うん。今は私が()()()。ごめんね、面倒な役押し付けちゃって」

 

私は零さんのことを、話や動画でしか見たことがない。

実際の零さんに会ったのは、これが初めてだ。

 

「とりあえず、自分の体を確認してみたら? ()()()()()()

 

零さんに促され自分の体を動かす。

それはずっと失っていた、私の元の身体だった。

 

「戻ったの?」

「半分だけね。まあ話をしよう。その前に」

 

零さんがパン! と手を叩くと、私の前にバトスピのカードと、フィールドが現れる。

 

「ここはあなたが元いた世界でも、さっきまでいた世界でもない。その境としての世界、それ以外の定義が決まってない世界だよ」

「だからこんな非科学的なことも起こる、と?」

「うーん、そこは気にしたら負けでいいんじゃない?」

 

零さんとは初めて話すけど、イメージと全く違う。

世界大会での、あのバトルの零さんとはまるで別人だった。

 

「これまでに何があったか、なんであなたがいるのか。その答え合わせといこーか。バトスピでもしながらね」

「……はい!」

 

 

◇◆◇◆

 

 

「先攻どーぞ」

「私のターン。ネクサス『光り輝く大銀河』を配置。ターンエンド」

 

何故私があの世界に行ったのか。

何故私が、『氷田零』として呼ばれたのか。

 

その答えを、零さんは知っている。

 

「うーん、どこから話そうかなー。まず、私とアナタが同一人物って話からでいい?」

「はい?」

 

零さんは、初っ端から爆弾を投下した。

 

「私の人格って、10年くらい後のアナタがベースなんだよね」

「え、ちょっと待ってください。10年後の私って、それはいくらなんでもーー」

「逆かな。()()1()0()()()()()()()

 

私には、零さんが何を言っているのかまるで分からなかった。

ただ信じられないような出来事が起こっていることしか、分からなかった。

 

「私のターン。創界神(グランウォーカー)ネクサス『創界神ダン』を配置」

「……なんですか? そのカード」

「だから、1()0()()()()()()()だよ。配置した時、神託(コアチャージ)発揮。デッキから3枚トラッシュに置いて、その中の系統:「神星/光導」を持つコスト3以上のスピリットカード1枚につき、ボイドからコアを1個このネクサスに置く。全部対象だから、3つコアを置く」

「一気に3コアブースト!?」

「このコアは創界神(グランウォーカー)ネクサス対象の効果でしか取り外せないから、コアブーストとは違うかな。『創界神ダン』はこの効果でトラッシュに置かれた系統:「光導」を持つカード全てを手札に加える」

「2コストで3枚ドローって、えぇ……」

 

これが未来のバトスピ?

なんかすごい変わっててよく分からない。

 

でも、何故かこのカードを知っている。

どこか遠くで、使っていたような気がする。

 

「最初にあの世界に来たのはアナタじゃない。私が先だった」

「えっと、その……私が10年前の零さんだったとして、なんでこんな事に?」

「えー、そこは『未来の私って、世界1位なの!?』くらい驚いてほしかったなー」

「それはーーはい、確かに言われたら驚きましたけど」

()()()()()()()()()()。ゲームが元となった世界。多分覚えてないよね、『バトルスピリッツ デジタルスターター』ってゲーム」

 

あの世界が、ゲーム?

 

「……いや、それはないです。だってレツさんも姫子ちゃんも、みんな人間でした」

「信じる信じないは勝手だから。『天星12宮 樹星獣セフィロ・シープ』を召喚。神託(コアチャージ)と召喚時効果でボイドからコアを1個、セフィロ・シープに。ターンエンド」

 

……怖い。

零さんの話を聞くのが、怖い。

 

そして何より()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

私が零さんの過去だってことも、あの世界がゲームだってことも。

 

全て本当だと直観してる。

だけど、受け入れるのが怖い。

 

「で、ゲームのキャラに転生した私はあの世界でもバトスピをしてた。だってバトスピが好きだから。辞めれなかった。……ところで、()()()()()()()()()()()C()P()U()()()()()()()()って、どう思う?」

「……だから零さんは、対話を辞めたんですよね?」

 

世界大会決勝でのあの顔は、多分そういうことなんだろう。

 

そしてコジローさんがそれを否定した要素「1度負けている」。

でも、負けたとしても、その人がゲームのキャラにしか見えなかったとしたら。

人と戦っている感覚がなかったのだとしたら。

 

「正解。1ヶ月もて気づかなかった? 対戦相手の動きが一定だって。全部プログラミングされた動きなんだよ、あれ」

「……違和感くらいは」

 

対戦相手の明らかなミス。

それが何度も続けば、さすがに何かおかしいと感じる。

 

「でも、みんな人間です! ちゃんと生きていて、決してCPUなんかじゃない!」

「私もそう思いたかったんだけどねー。結局、思考停止した人間なんて機械と変わらないよ」

 

零さんはハッキリとそういった。

その時、零さんは興味ないものを見る子供のように、わかりやすく失望した目をしていた。

 

「世界大会で優勝して、私は絶望した。その後、背中を撃たれたのがアナタがいるきっかけかな」

「それ、はーー」

()()()()()()()。『退行』っていう心理的な防衛機能の結果産まれたのが、10年前の私ーーつまりアナタのことだね」

「つまり、私はただの、零さんが生み出した幻想ーーてことですか?」

「違うよ? というかよく自分のことをそんな酷く言えるね」

「……別に、取り繕わなくていいですよ」

「アナタは『水野風花』私は『氷田零』その差が分かる? 同じ私なのにさ」

 

……分からない。

私は零さんの幻影だ。

なのに名前の違いなんて、わざわざ指摘する意味も分からない。

 

「千と呼ばれた千尋は、自分の名前を忘れる。ハクという名前をもらった少年は、自分の存在を忘れる。異世界っていうのは、そういうモノなんだよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……つまり?」

「『氷田零』と『水野風花』は同じ人だけど別人、てこと。千と千尋の関係だよ」

 

10年後の水野風花は、異世界で「氷田零」となった。

氷田零として生きていく内に、水野風花ではなくなっていた。

 

「そして『氷田零』はこの世界から出れないけど、『水野風花』なら元の世界に戻れる」

 

零さんが話しているのは、異世界間のルール。

元の世界に帰るには私が必要だった、ということ。

 

「……メインステップ。『アクゥイラム』をLv2、『ブレイドラ』をLv1で召喚。『アクゥイラム』でアタック」

「セフィロ・シープでブロック。破壊される」

「『ブレイドラ』でアタック」

「ライフで受ける」

「ターンエンド。……つまり零さんは、自分が元の世界に戻るために私を利用したい、てことですか?」

「いや、だから違うって」

「じゃあ! 私は何なんですか!?」

 

私は、私が何者か分からない。

零さんが戻るためでもないなら、私はなんのために生まれてきたのか分からない。

 

「きっかけは現実逃避だったとしても、今そこにいるのは私とは別の人間、水野風花だよ」

「でも……!」

「大事なのは、風花が何をしたいのかだけだよ。風花は元の世界に戻りたい?」

 

戻りたいか戻りたくないかで言えば、戻りたい。

でも私は零さんの幻影でしかない。

もし元の世界に戻ったら、私はどうなるんだろうか。

 

「……私のターンだったね。『天星12宮 氷星獣レオザード』をLv3で召喚、神託(コアチャージ)。アタックステップ。レオザードでアタック、【星読】。デッキから1枚オープン、『超神光龍サジットヴルム・ノヴァ』は系統:「光導」を持つカードなので手札に加え、レオザードは回復する」

「ライフで受ける」

「ターンエンド」

 

考えが纏まらないまま、ターンを進める。

私はマジック『ブレイヴドロー』を使ってデッキから2枚ドロー、オープンした『トレス・ベルーガ』を手札に加えた。

 

「『アクゥイラム』をLv3にして、ターンエンド」

「さっきも言ったけど、私と風花は同じ人間だけど別の存在なんだよ。それなら私は風花の意志を尊重したいし、そうしないといけない。たとえ後でそれを踏みにじることになろうとも、ね」

「……戻ったら、私はどうなりますか?」

「さあ? そんなの、戻ってみないと分からないよ。メインステップ、『銀河星剣グランシャリオ』をレオザードに直接合体(ブレイヴ)召喚。そしてリザーブのコア全てをレオザードに追加」

 

零さんは、私に何をしたいのかと聞いた。

零さんの過去としての私じゃなく、水野風花として、私が何をしたいのか。

 

「レオザードでアタック。【星読】『天星12宮 炎星竜サジタリアス・ドラゴン』を手札に加えて回復する」

「フラッシュはないです」

「じゃあフラッシュタイミングで『天星12宮 炎星竜サジタリアス・ドラゴン』をレオザードに【煌臨】。神託(コアチャージ)と、煌臨時効果でトラッシュのコア全てを回収」

「……私は」

 

そうだ、私のやりたい事。

 

元いた世界では漠然としか考えてなかった。

けど、この世界に来て本気でそうしたいと思ったこと!

 

「私は、バトスピがしたい。バトスピが強くなりたい。()()()()()()()()()()()()()()()()!」

「……それが風花の願い。じゃあ、私にも負けないでね 。フラッシュタイミング、『超神光龍サジットヴルム・ノヴァ』をサジタリアス・ドラゴンに【煌臨】。神託(コアチャージ)と、煌臨時効果で『アクゥイラム』を破壊する」

 

合体(ブレイヴ)したサジットヴルム・ノヴァはBP34000のトリプルシンボル。

 

私のフィールドにはまだ『ブレイドラ』がいる。だけど、

 

「まだ、フラッシュがあるんですよね?」

「『創界神ダン』の神技(グランスキル)を発揮。BP10000以下のスピリット、即ち『ブレイドラ』を破壊して、さらに相手は効果でアタックステップを終了できない」

 

やっぱり『ブレイドラ』を破壊してきた。

このアタックを受ければ残りライフ1、そしてサジットヴルム・ノヴァはーー

 

「先に言っておくけど、サジットヴルム・ノヴァはアタック時に効果で相手のライフを減らせる。これが最後のフラッシュタイミングだよ」

「知ってます! マジック『デルタバリア』! このターンの間、相手の効果とコスト4以上のスピリットのアタックでは、私のライフは0にならない! アタックはライフで受けます!」

「ターンエンド。さあ、これが最後のターンだよ」

 

次のターン、零さんはサジットヴルム・ノヴァでアタックするだけで勝利が確定している。

今度は『デルタバリア』を使うタイミングもない。

 

「ドローステップーーーー」

 

引いたカードに思わず笑みを浮かべる。

『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』私のキースピリットだ。

 

「ははっ、やっぱり私だ。その顔を見れば、だいたい分かるよ。運命が応えてくれた時って、1番嬉しいよね」

「はい! メインステップ、『ブレイドラ』『戦竜エルギニアス』を召喚します! さらにブレイヴ『トレス・ベルーガ』『輝竜シャイン・ブレイザー』を召喚!」

 

『光り輝く大銀河』の効果で手札の『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』はコストは5になる。

 

「召喚! 『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』! 5コスト4軽減、1コストで召喚!」

「ブレイヴが2体。しかも『輝竜シャイン・ブレイザー』と『トレス・ベルーガ』なんて、ホント好かれてるよ」

「『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』に『輝竜シャイン・ブレイザー』と『トレス・ベルーガ』を合体(ブレイヴ)! さらに『ブレイドラ』『戦竜エルギニアス』のコアで『光り輝く大銀河』をLv2にアップ!」

W合体(ダブルブレイヴ)スピリットはBP24000……なるほど、最後の手札はそれってことね」

 

私が勝つ条件はあと1つ、大きな壁を越えないといけない。

それでも、私は零さんに、未来の自分にも勝ってみせる!

 

「アタックステップ! 合体(ブレイヴ)スピリットでアタック! アタック時『トレス・ベルーガ』の効果発揮!デッキから6枚破棄することでBP+6000、さらにその中に系統:「光導」を持つカードがある時、回復する!」

 

1枚目、『砲凰竜フェニック・キャノン』

 

2枚目、『カメレオプス』

 

3枚目、『サイレントロック』

 

4枚目、『リバイヴドロー』

 

5枚目、『バーニングサン』

 

残り1枚ーー!

 

「大丈夫だよ。勇者ってのは、必ず運命を掴むものだから」

 

6枚目、『金牛龍神ドラゴニック・タウラス』

系統:「光導」を持つカードだ!

 

W合体(ダブルブレイヴ)スピリットは回復する! さらに『超神光龍サジットヴルム・ノヴァ』を指定アタック!」

「『超神光龍サジットヴルム・ノヴァ』でブロック。一応だけど、BPは34000だよ」

「フラッシュタイミング、『光り輝く大銀河』のLv2効果を発揮! 手札の『光龍騎神サジット・アポロドラゴン』を破棄することでW合体(ダブルブレイヴ)スピリットをBP+6000! 合計BP36000!」

「2枚目を引いてた、てことね」

 

これは最後のドローで引いたサジット・アポロドラゴン。

あのドローで、私のW合体(ダブルブレイヴ)スピリットは、『超神光龍サジットヴルム・ノヴァ』を超えた!

 

「『超神光龍サジットヴルム・ノヴァ』は破壊される」

「『輝竜シャイン・ブレイザー』の効果、BP8000以上のスピリットを破壊したのでライフを1つリザーブに置く」

「これで私のライフは残り3。綺麗に決まったね」

 

零さんはそう言うと手札を伏せた。

私は、最後のアタックを宣言する。

 

W合体(ダブルブレイヴ)アタック! アタック時効果で『銀河星剣グランシャリオ』を破壊する!」

「そのアタックは、ライフで受ける」

 

零さんのライフが全てリザーブに置かれる。

と同時にフィールドが消え、また真っ白な空間に戻った。

 

「水野風花。これが私の知ってる、これまでの経緯。それを聞いてアナタは、どっちを選ぶ?」

 

バトルの後、零さんは私にそんなことを聞いてきた。

 

「どっちって?」

「元の世界に戻るか、戻らないか。一応言っておくと、『名』というものは戻るための十分条件でしかない。それがある限りはいつでも戻れる。(ここ)を越えればね」

「なんで、そんなことを言うんですか?」

「別にー? 私は風花に、知ってる情報を教えただけだよ?」

 

意地悪な人だ。

私が悩んでるのを知ってて、答えはくれないんだから。

 

「別に私はどっちでもいいんだけどね。自分の知らないところで死ぬ人のことなんて」

「いいんですか? 私のせいで死ぬことになっても」

「風花こそ考えなよ。『ライフで受ける』なんて言ってる私達だよ? カードバトラーってのは総じてマゾヒストなもんだよ」

「すいません、謎理論に巻き込まないでもらえます?」

 

相変わらずこの人の思考が分からない。

レツさん達をCPUと断じるくせに、過去の自分である私には、普通の人間として接している。

 

「零さんからしたら機械でも、私からしたら大事な友達なんです。……結局、バトスピで勝てばいい。それなら私は、誰かが殺される前に戦います」

「……はは、私にもこんな頃があったんだなー。嬉しいような、悲しいような」

 

私の進む道は決まった。

もう悩まない。

私は私の意思で戦う!

 

「私はあの世界に戻る。そしてネオ・ブラックゴートをぶっ潰す!」

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